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「第12回つやまロボットコンテスト」レポート
~今年の課題は「ロボサッカー」


 11月4日、岡山県津山市の津山工業高等専門学校において、第12回つやまロボットコンテストが開催された。主催は、津山市と、津山圏域工業会や津山高専技術交流プラザなどで構成されるザ・チャレンジ実行委員会。

 今年で第12回を迎えたつやまロボットコンテストは、若者に課題を与え、ものづくりの楽しさや面白さを体験することにより、ものづくりへの意識を高揚し地域産業の活性化につなげていくことを目的としている。

 毎年、テーマと競技内容は変わっており、今年はサッカーをベースにしたロボット競技を開催した。岡山県内の学生と社会人が参加する「高校一般の部」と、昨年から始まった「小中学生の部」がある。


津山工業高等専門学校で開催された 松永圭司さん(津山工業高等学校電子機械科2年生)の選手宣誓で大会が始まった

さまざまなチャレンジがあった「高校一般の部」

 高校一般の部は、規定に応じたサイズや機能を持つ自作ロボットで参加する。ロボットは重量が3kg以内、直立して可動部を最大に広げた状態で、直径245mm、高さ250mmの円筒に収まるサイズでなくてはならない。有線ではなくラジコンまたは自立で動作し、ボールをキックする機能が必要だ。

 試合を行なうフィールドには緑色のパンチカーペットが敷かれた。サイズは1,800×2,700mmで短辺の中央に幅600mmのゴールエリアがある。ボールは、ソフトボール3号球を使用する。予選は、参加31チームを3~4チームずつ10リーグに分けてリーグ戦を行なう。予選リーグでは、勝ち点3、引き分け点1が与えられ、予選勝ち点の上位チームが決勝トーナメントに進出する。試合時間は3分間だが、決勝トーナメントの準決勝以降は、前後半それぞれ3分間で試合を行なう。

 上位のチームを紹介する前に、技術的チャレンジをしていたロボットを紹介しよう。

 「ロボットつくろう会」(津山高専☆現役OB混合チーム)は、ネットワークカメラで画像認識を行なっていた。ロボットのサイズは、直径240mm、高さが230mm、重量は2.7kg。3つのオムニホイールで全方向に移動することができる他、側面の3方向にもエアシリンダーを使用したキック機構を搭載し、どの角度からでも攻撃ができる。アルミ板金からすべて自作し、開発期間はハードの設計に1カ月ほどかかったという。

 フィールド上部に設営したカメラから入手した映像をPCに取り込み、自分のロボットの位置を正確に把握できる。画像認識を初めて開発したために、今大会ではデモンストレーションにとどまったが、将来的には画像認識でロボットが自立で競技できるようにしたいという。


【動画】赤いロボットが、ロボットつくろう会(津山高専☆現役OB混合チーム)。全方向に動き、どの角度でもボールをキックすることができる 試合中は、モニターにカメラで捉えた試合の映像を流していた。右側にある支柱の上方にカメラが設定されていて、PCで処理した映像をモニタに送っている 3つのオムニホイールで、全方向に移動できる。側面の赤い板がボールをキックする

 「電子工作部C」(岡山県立津山工業高等学校)が制作した「インセクト」は、唯一の六足歩行ロボットだった。チームメンバー5人は全員1年生で、「先輩達とは違うロボットを作りたかった」と、あえて難しい六足歩行にチャレンジしたという。ロボットはサイズも重量も規定ぎりぎりで設計した。7月の終わりから製作に取りかかり、夏休みは毎日集まってロボットの開発をしたという。ロボットを作る時には、車輪ロボットのようにスムーズに前進することができず、みんなで相談し何度も調整した。試合には負けたが、気合いとやる気で先輩達に追いつきたいと抱負を語り、アイデア賞を受賞した。


【動画】電子工作部C(岡山県立津山工業高等学校)が制作した「インセクト」。唯一の歩行型ロボットだった インセクトの機構部分。敢えて難易度が高い歩行型にチャレンジし、アイデア賞を受賞した 【動画】電子工作部C(岡山県立津山工業高等学校)が、プレゼンテーションで足の動きとキックを披露した

メカトロニクス研究部(倉敷工業高校)の二足歩行ロボットデモンストレーションを見て、子供達が喜んでいた
 「メカトロニクス研究部」(倉敷工業高校)は、試合中、フィールド外で二足歩行ロボットを動かしてサッカーモーションのデモンストレーションをしていた。「試合に出しても勝てないので」とデモに出演することにしたという。

 決勝トーナメントに出場したチームの中で、一番注目を浴びていたのが、予選で1試合16点と最多得点をあげた「Nothing」(津山工業高等専門学校)だった。Nothingは順当にトーナメントを勝ち上がり準決勝まで進んだ。その他、準決勝に駒を進めたのは、「津工電子機械科B」(津山工業高等学校)、「玉野光南高等学校2」(玉野光南高等学校)、「Soken Flash」(津山工業高等学校)だった。

 それでは、上位の試合を動画とともに紹介する。

 準決勝第1試合は、津工電子機械科B VS 玉野光南高等学校2。玉野光南高等学校2のロボットは、子供に人気のアニメキャラクタを外装に使っていた。タイヤの配置を工夫して前後左右自由に動くことができ、攻撃よりも防御主体に作ったという。

 前半に玉野光南高等学校2のタイヤが外れるアクシデントがあり機動力を発揮できずにいる隙に、津工電子機械科Bが4点を獲得した。後半になっても、津工電子機械科Bが押せ押せムードで2得点を追加した。その後、ロボットが接触した時に、玉野光南高等学校2は頭の外装パーツが外れてしまった。ところがその後、玉野光南高等学校2の動きが、俄然速くなり反撃に転じ3点を返したが、勝利は津工電子機械科Bのものとなった。


【動画】準決勝第1試合。津工電子機械科B VS 玉野光南高等学校2の前半戦。いい試合だったのだが、玉野光南高等学校2にトラブルがあり、津工電子機械科Bが4得点を獲得した 【動画】後半開始直後に玉野光南高等学校2の外装が外れた。その後、猛反撃で3点を返したものの、津工電子機械科Bも2点を追加し勝利を決めた

 準決勝第2試合は、Nothing VS Soken Flash。Nothingは試合開始7秒で得点を決め、一気に波に乗った。そのまま勢いで一方的に6得点を追加。最後の得点は、自軍エリアのゴール前で、Soken Flashと接触。Soken Flashが倒れている間に、一気にドリブルでボールを運びシュートを決めた。

 Soken Flashは、素早く連続でボールをキックする機構を持っているのが特徴だ。壁際でのボール処理が上手く本体を回転させてボールをフィールド中央に戻していた。だが、そのボールをNothingがすかさず拾ってシュートを決めるシーンも多かった。

 後半に入っても、Nothingの調子は衰えずスピードと操縦性にものを言わせて次々と得点を重ね、結局は18得点と今大会最多得点を自ら更新した。


【動画】準決勝第2試合。Nothing VS Soken Flashの前半戦。横から見たときに三角形のフォルムをしているのがNothing(津山工業高等専門学校) 【動画】Nothingはスピードがあるだけではなく、タイヤのグリップ力が強く、押し合いにも負けない。スピードとパワーで大量得点をあげた

 3位決定戦は、Soken Flash VS 玉野光南高等学校2。両者の力量が均衡しており見応えのある面白い試合だった。Soken Flashが試合開始直後にシュートを決めると、すぐに玉野光南高等学校2が取り返す。両者が点を取り合い試合時間の3分が今までで一番短く感じた。

 前半を2対2で終えて、後半戦に突入。Soken Flashのタイヤが外れるトラブルがあり、フィールドで立ち往生している間に玉野光南高等学校2が追加点を入れた。Soken Flashは懸命に1点を追いゴールを決めたが、ほぼ同時に試合終了のブザーが鳴りノータイムの判定。3位入賞は、玉野光南高等学校2となった。


【動画】3位決定戦。Soken Flash VS 玉野光南高等学校2の前半戦。玉野光南高等学校2は準決勝で壊れた外装をイメチェンしてきた 【動画】後半早々に玉野光南高等学校2が追加点を決めた。Soken Flashが懸命にゴールを狙ったが、最後のシュートはタイムアウトと見なされ涙をのんだ

 決勝戦は、Nothing VS 津工電子機械科B。決勝トーナメントも大量得点で勝ち上がってきたNothingだったが、さすがに決勝戦ともなると得点は取りづらくなった。津工電子機械科Bの奮闘もあって、前半は3対1で終了した。

 Nothingはスピードとデザインを重視してロボットを制作したという。スピードをアップするためにバッテリを2本搭載。電圧を回路で制御し、コントローラーの操作に応じて電圧を変えて、緩急をつけた走行で縦横無尽にフィールド内を走り回っていた。

 実際に見ていると、Nothingは試合運びが抜群にうまかった。例えば、フィールドの四隅にボールが入ると、どのチームもボールをフィールド中央へ戻すのに苦労する。そんな場面になると、Nothingはボールの処理は相手に任せて自分はフィールドのいいポジションに素早く移動する。相手は、ボールがフィールドに出れば当然ゴールを狙ってシュートを打ってくる。Nothingは、それを待ってボールを拾いに行きそのままシュートを決めてしまうのだ。

 自分がシュートを打つときも、ゴール前に相手ロボットがいれば、わざと壁に向けてシュートを打つ。相手がボールを拾いに壁の方に向かう間に、Nothingは壁パスで返ってきたボールをゴールに決めていた。そうした戦術が使えるのも、スピードとロボットの操縦に自信があるからだろう。

 Nothingのキック機構は、ボディ前面にポツンとある棒状のもの。レギュレーションを満たすために、キックオフ専用に搭載している。キック力は皆無で、基本的にシュートはボディ全体で決めている。それが可能なのも、走行スピードがあることとグリップのよい四輪タイヤで制止も素早く行なえるからだろう。

 オペレーターの池田さん(3年生)は、ロボット競技に必要なのは、何よりもコントローラーの操作性であるといい、「ロボットの操縦が簡単な仕様でなければ、競技には勝てない」と語った。

 試合は津工電子機械科Bが後半に1点返したものの、12対2でNothingが優勝を決めた。


【動画】決勝戦は、Nothing VS 津工電子機械科Bの前半戦。Nothingは試合開始直後に得点をいれたが、その後オウンゴールで失点。前半は3-1で終了した 【動画】後半、Nothingが調子を上げて攻めまくり9得点を追加。試合終了後、勝利のパフォーマンスの披露した

アレンジしたキットで参加する「小中学校の部」

 小中学生の部は、ザ・チャレンジ実行委員会が配布するキットで制作したロボットで参加する。モーターや駆動部の追加は不可だが、キックの機構に関してはキットに附属している予備や、自分で追加した部品で製作してもよい。ロボットのサイズは重量に制限はないが、縦横高さが250mmに収まることが条件だ。

 フィールドには緑のカーペットが敷いてあり、サイズは1,200×1,800mm、ゴールは幅40mmで短辺の中央にある。フィールドの中央にはアクリルの仕切り板があり、ロボットはアクリル板を超えたり触れたりしてはならない。ボールにはゴルフボールを使用する。試合時間は3分間。

 キックの機構に各チーム工夫を凝らしているものの、移動スピードにはそれほど性能差がないためか、試合で得点を上げるのは難しかったようだ。準決勝2試合と3位決定戦は全て無得点で、PK戦で決着をつけた。

 3決定戦は、「ドラゴンファイターズ」(鏡野町立南小学校)VS「北陵中ロボット部4班」(津山市立北陵中学校)の対戦となった。

 ドラゴンファイターズのロボットは、前方につけたフレームでボールを受け止め、ロボットが前進するパワーでボールを転がしていた。対する北陵中ロボット部4班は、前後にフレームをつけている。後方のフレームはキャッチするだけだが、前方のフレームは可動してキックができるようになっている。ロボットを停止したままボールをキックできるため、中央の仕切り線際のボール処理も上手にできていた。試合はラリーの応戦が続いた。際どいシーンもあったのだが、両チームとも得点をあげることができずに、PK戦にもつれ込んだ。

 ドラゴンファイターズのロボットは、小回りが効く反面、直進性がやや不安定で、オペレーターは後ろのフリータイヤを慎重にセッティングしてPK戦に臨んでいた。ドラゴンファイターズの1球目はゴールに入ったのだが、シュートを放つ時に機体の一部がアクリル板を超えてしまったために、ノーゴールと判定された。2球目は慎重にシュートを決めたものの、北陵中ロボット部4班が3本ともゴールを決めたので、北陵中ロボット部4班が3位に入賞した。


3位決定戦。ドラゴンファイターズ(鏡野町立南小学校)VS 北陵中ロボット部4班(津山市立北陵中学校)。機体に幟を立てているのが北陵中ロボット部4班 【動画】両者ともよく動いてボールを回していたが、決定打には至らずPK戦で決着をつけた

 決勝戦は、「北陵中ロボット部5班」(津山市立北陵中学校)VS「チーム陸ス」(真庭市立落合中学校)の対戦となった。北陵中ロボット部5班のロボットは、後方につけたフレームは、2重になっておりボールの衝撃を吸収してキャッチできるようになっている。前方の短いアームを回転させてボールを蹴り出していた。

 対するチーム陸スのロボットは、クレーンを巻き上げてボールを救い上げてスローブを滑らせて発射する凝った機構になっていた。チーム陸スは、ボールを壁にあてて、ゴールに向けて跳ね返るようにシュートを放つなど戦略にも工夫が見られた。

 両チームともに前半戦を無得点のまま終了し、後半戦に突入した。後半戦開始そうそうに、チーム陸スがゴール前でボールを拾おうとして取りこぼし、痛恨のオウンゴール。最終的にこの1点が決勝点となり、北陵中ロボット部5班が優勝した。


【動画】決勝戦。北陵中ロボット部5班 VS チーム陸ス。後半戦そうそうに北陵中ロボット部5班が痛恨のオウンゴール。これが決勝点となった 北陵中ロボット部5班(津山市立北陵中学校)のロボットは、凝った機構でボールを発射していた

URL
  つやま市
  http://www.city.tsuyama.lg.jp/index.cfm/1,html
  第12回つやまロボットコンテスト
  http://www.city.tsuyama.lg.jp/index.cfm/20,11888,57,150,html
  ザ・チャレンジ つやまロボットコンテスト
  http://event.tsuyama.org/robocon/robo2007/index.html


( 三月兎 )
2007/11/12 17:59

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