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「QRIO」は子供達と仲良くなれるのか―PNASで論文発表


 ソニーが開発していた二足歩行ロボット「QRIO」を、数カ月間、幼稚園のなかに入れて生活させるとどうなるか――。最先端のロボットは社会的な存在になれるのか? 3年間にわたったQRIOの日常インタラクション観察に関する論文が米国アカデミー紀要 (PNAS)に発表された。第一著者はカリフォルニア大学サンディエゴ校/ソニーの田中文英氏だ。

 最初は、子ども達はQRIOを、自分達とはとても違ったものとして接していた。だが5カ月後には、QRIOを「おもちゃ」よりはむしろ「仲間」として扱うようになり、最新技術のロボットはクラスルームにすっかり溶け込んでいたという。現在のロボット技術は人間の幼児と継続した関係を形成・持続させることができ、教師のアシストや教室の雰囲気をよくすることなど教育においても大きなポテンシャルを持っていることを実験結果は示していると論文は述べている。

 多くの人々はロボットと長時間接していると飽きてしまう。ロボットと人間の間に社会的な関係を構築し、持続させることはロボットの目標の一つだ。

 実験は、パーソナルロボット技術で教育をアシストする「RUBI Project(リーダー:Javier Movellan氏)」の一環として、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の早期幼児教育センター(Early Childhood Education Center:ECEC)にて、2005年3月から2005年7月までの5カ月間にわたって行なわれた。ロボットに対して先入観を持っていないと考えられる月齢18カ月~24カ月の幼児の教室にQRIOを持ち込んだ。こちらのサイトから動画で実験の模様を見ることができる。


 研究は3つのフェイズで行なわれた。1) ロボットがその行動レパートリー全てを使ってインタラクションを行なうフェイズ、2) ロボットが、面白いけれども非常に予測しやすい動きをするフェイズ、3) ロボットが行動レパートリー全てを示すように再プログラミングされたフェイズ。実験の様子は2台のビデオカメラで記録され、2年間にわたって量的な解析が行なわれた。

 解析は4つの観点から行なわれて報告されている。1つ目はインタラクションの質の変化(発達)の過程。社会的なロボットが、飽きがくる10時間の壁を超えて子どもたちの心を掴めるかどうかを目的としたものだ。

 2つ目はインタラクションにおけるハプティックな行動分析。ロボットのボディのうち、どの部分を幼児がさわるのかに注目することで、幼児とQRIOの間のインタラクションと、幼児間でのインタラクションを定量的に比較した。すると5カ月間の間に徐々にQRIOは特別な存在から仲間同様に扱われていくようになったことをデータで示せたというもの。なお、QRIOの指や腕の部位に触る行動は、最後まで飽きられにくいことも分かったという。

 3つ目は、ロボット(QRIO)と、自分では動かない普通のおもちゃのロボットに対するハプティックな振る舞いの違い。おもちゃに対する態度と、ロボットに対する態度の違いを行動分析で見たものだ。QRIOが居る教室でのおもちゃのロボットは、QRIOがいない教室の場合と比較すると、非常によくさわられる傾向にあり、それはQRIOの存在が原因なのではないかという。特に、QRIOに興味があるのだが触ることを躊躇われる段階で、おもちゃのロボットをさわる傾向は顕著であり、逆にQRIOに対する接触が始まると、おもちゃのロボットは急激に触られなくなることを示している。

 4つ目はロボットに対するインタラクションの自動査定機能の開発・実装である。人間の観察による「ロボット―幼児」間のインタラクションの良さに関する主観的評価と、幼児のロボットへのタッチ行動パターンという客観指標を比較することで、タッチ行動パターンからインタラクションの良さを有意に予測できることを示している。

 子ども達はたとえばバッテリが少なくなって横たわってしまったQRIOに毛布をかけたりするなど、世話をする振る舞いを見せた。結論として、子どもとロボットの相互作用は、時間が経つに連れて向上していったという。

 社会的な関係が生まれるためには、物理的な接触が非常に重要になるようだ。特に数分のタイムスケールの接触イベントが、人間社会における相互作用を計測する上では非常に有効なインデックスとなるという。

 論文は、現在のロボット技術は社会的存在になれるロボットの実現に近づいているとし、「RUBI Project」では現在、この研究に基づいて子ども達と数週間にわたって自律的なインタラクションを行なえるロボットを開発中であると述べている。


URL
  PNAS
  http://www.pnas.org/
  RUBI Project
  http://mplab.ucsd.edu/projects/RUBI/index.html
  【2006年4月27日】ソニー・インテリジェンス・ダイナミクス2006レポート(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0427/kyokai47.htm
  【2006年1月27日】ソニー、AIBO、QRIO、QUALIA撤退(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0127/sony.htm


( 森山和道 )
2007/11/08 14:34

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