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「第6回愛知中学生ロボットコンテスト」開催
~愛知県下57校から178台のロボットが出場


 2007年10月7日、愛知県の岡崎中央総合公園体育館において、「第6回愛知中学生ロボットコンテスト」が開催された。主催は、三河地区技術家庭科教員の自主研修組織である「コイルの会」。

 愛知中学生ロボットコンテストには、学校の授業や部活動、または個人が自由課題で制作したロボットが参加できる。今大会には、県下57校が参加。トーナメント制の「あの壁を越えろ!」部門に120台、レース形式の「より高くより多く!」部門に58台が出場した。各学校から、それぞれの部門に3台までしかエントリーできないため、学内予選を通過したロボットが大会に出場している。


第6回愛知中学生ロボットコンテスト 県下57校から178名の参加者が集まった 16のフィールドで2種目の競技が行なわれた

あの壁を越えろ!

 「あの壁を越えろ!」は、フィールド内にあるフィルムケースやフロッピーケース(以下オブジェクトと呼ぶ)を壁の向こうにある相手のフィールドに運ぶ競技だ。3分間の試合終了後に、相手フィールドに運んだオブジェクトの点数で勝敗が決定する。フィールド中央にあるラッキーボックスにオブジェクトが入ると高得点が得られる。

 試合はトーナメント制で、予選は16のブロックに分かれて行なう。1回戦で負けたロボットは、敗者復活トーナメントに挑み、最後にブロック勝者と敗者復活戦の勝者が、決勝トーナメント出場権を争う。

 ロボットのサイズは床に接地する部分が300×300mm以内と規定されているが、床から浮いているパーツには制限がない。オブジェクトを粘着テープや接着剤等の粘着力で運搬することは禁止されている。

 ロボットの多くはシャベルでオブジェクトをすくい上げて、相手側のフィールドにオブジェクトを落とす。ロボットの前後にシャベルを持つロボットや、ラッキーボックスに入ったオブジェクトをはじき出す機能を持ったロボットもあった。


フィールドは片面1,800×1,800mmのベニヤ製。フィールドを仕切る壁を越えて、オブジェクトを多く運んだ方が勝つ。中央ににある箱にオブジェクトが入ると高得点になる 【動画】仕切り壁を利用してオブジェクトを落とす構造のロボット 左の黒いロボットが「プーマVer.6」(小坂井町立小坂井中学)。デザインが美しい。上部のローラーは、相手が投げ入れたオブジェクトを受け止めて、ダイレクトに相手フィールドへ戻す仕掛け

 予選トーナメントが一番白熱したのは、Mブロックだろう。1回戦第2試合の「ムック」(碧南市立新川中学) vs 「Queen」(豊田市立高橋中学)の試合は、見応えがあった。

 Queenは俊敏に動いて、相手がラッキーボックスにオブジェクトを入れるのを防御するのが抜群にうまい。ムックもとてもいいロボットで、事実、敗者復活戦では全オブジェクトを相手フィールドに入れてパーフェクトな勝利を納めている。

 一方のQueenは、予選2回戦でパーフェクト、続く3回戦は試合中にリモコンの操縦スイッチが壊れてしまい爪先でなんとか動かしながら勝利した。Queenは、故障箇所を昼休みの間に修理し、決勝トーナメント出場を賭けたムックとの再試合で、再び勝利した。

 他には試合中にタイヤが取れたり、操縦不要になるロボットがいる一方で、シャベルがラッキーボックスに届かずに1回戦で敗退したロボットが、敗者復活戦までにシャベルを改良し決勝トーナメントに出場するといった逆転試合もあり盛り上がった。

 トーナメントの決勝戦は、前述のQueenと、同じく高橋中学のJackの対決となった。どちらもよく動くが、Queenはラッキーボックスをディフェンスしている時にわざと隙を見せて、相手を誘い込むなど操縦が巧みであった。結果は、Queenが10ポイント差をつけて優勝を決めた。


【動画】予選Mブロック 2回戦。ムック(碧南市立新川中学) vs Queen(豊田市立高橋中学)。ムックも安定して動いてるが、小回りの利くQueenが有利に試合を運んでいた 【動画】3位決定戦。ひょっとこ(岡崎市立岩津中学)VS プーマVer.6(小坂井町立小坂井中学)。プーマVer.6は、準決勝でタイヤが取れてしまい修理をして3位決定戦に挑んだ。3位入賞したのはひょっとこ

【動画】決勝戦は、Jack VS Queenの高橋中学対決となった。両者とも素早く攻守を切り替えながら試合を進めている 「あの壁を越えろ!」部門で優勝し参加ロボット150台の頂点に立った今颯さん(豊田市立高橋中学)

より高く、より多く!

 「より高く、より多く!」部門は、ロボットで積み上げたフィルムケースの高さを競う。

 得点は1段目が1点、2段目が2点、3段目が3点と段数がポイントになり全ポイントを合算する。フロッピーケースの上にフィルムケースを積むと、得点は2倍になる。フロッピーケースが2段で3倍、3段で4倍、4段で5倍と高得点を狙うことができる。3分間のレースを2回行い、合計点で順位を決定する。この部門はレース形式になっており、全競技終了後に上位16位が決勝レースに進む。

 ロボットのサイズは、「この壁を越えろ!」と同じ規定になっている。


奥にフィルムケースを3段積んだので(1+2+3)×2=12。アームが掴んでいるフィルムケースを立てることができれば、6点が加算される 予選1位のJr(豊田市立高橋中学)の第1レース。(1+2+3+4+5)×5+(1+2+3+4+5)=90点を獲得した。床においてあるだけのフィルムケースは得点とならない

 「より高く、より多く!」では、なんといっても豊田市立高橋中学校が圧倒的に強く、予選の上位1位~3位を独占した。高橋中学のロボットは1位のJrが230点、2位のSecodが180点、3位のfishが138点と高得点をあげていた。4位の得点が50点台なのだから、段違いの実力といえるだろう。

 「より高く、より多く!」に出場するロボットは、筒状のアームにフィルムケースを収納して立てる方式が主流だった。確かにアームでオブジェクトを1つずつ持ち上げて積むよりも格段に効率がいいだろう。

 多くのロボットがこの方式だったが、高橋中学のロボットにはいくつも特徴があった。ひとつめは、筒の中にスポンジを貼りフィルムケースが滑らないように押さえていること。もうひとつ他の学校にはない仕組みが、ロボットの本体の横に取り付けられたサイドフレームだ。このフレームを使ってフィールドの隅に固まっているフィルムケースを3つまとめて中央に移動し、筒の中に次々と納めていく。ロボットの移動が少なく効率がよい。

 ロボットの構造だけではなく、操縦も上手かった。筒アームを開いて、フィルムケースを立てる時には、床に筒アームをトントンと当ててフィルムケースが確実に積み上がっていることを確認している。少しアームを開いて、不安があれば、またアームを閉じてトントンと微調整をやり直していた。

 手際よくフィルムケースを格納しているから、筒から取り出す時に調整する時間的余裕があるのだ。


【動画】高得点を出すためには、フロッピーケースを積み上げる機能も必要となる。フロッピーケースだけを積んでも得点にはならない 【動画】サイドフレームを使いフィルムケースを中央に運んで効率よく取り込んでいる。高橋中学独自の機構

【動画】フィルムケースを立てる前に、慎重にバランスを確認して微調整を繰り返す 【動画】フィルムケースを見事に積み上げる瞬間。練習では12段積み上げた記録を持っているという

 決勝レースは、第1レースで「Jr」が186点、「Second」が180点と高いレベルの接戦となった。続く第2レースでも、両者が順調にフィルムケースを筒型アームに取り込んでいった。Jrの方が、50秒も早く取り込み終えたのだが、アームを開いてフィルムケースを立てる段階になって、重なり具合のバランスを確認し何度も微調整を始めた。レース終了時間ぎりぎりまで繰り返し調整したが、アームを開くことができなかった。この場合、終了後にアームを開いてフィルムケースが無事に立てば得点となるのだが、残念ながら崩れてしまった。


第6回愛知中学生ロボコン大会 上位入賞者と敢闘賞受賞者
 一方のSecondは、4段重ねたフロッピーケースの上にフィルムケースを見事8段積み上げて優勝した。JrとSecondが取り込んだ数は同じだっただけに、本当に際どい優勝争いだった。

 Jrの制作者上ノ園さんは、「スポンジの調整が甘く最後に立てることができなかった」と敗因を語った。

 優勝したSecondの制作者西村さんは、思いがけない形の勝利に少々複雑な気持ちだったようだ。「友達とお互いのアイデアを真似したり改良してロボットの性能をアップしてきて、大会でいい成績を出すことができた。一人で作っていたら、これだけの高得点は出せなかったと思う」とコメントをした。


技術家庭科教員の自主研修組織による大会運営

 同大会を主催する「コイルの会」は、三河地区技術家庭科教員の自主研修組織である。技術家庭科の授業成果は、料理コンテストや物作りの作品展などでアピールする機会があるが、技術や技能を競う場が少ない。ロボットコンテストは、「物を作る」だけではなく、技術を競いあうことで学習意欲を育てるとともに、目に見えない「技術」に関心をもってほしいという願いから始めたという。

 大会後、出場した生徒達は、ロボットの機構や特徴、工夫した点をレポートにして提出する。その全てのデータは、製本し参加校に配布される。中学生のロボットコンテストは、指導する教員のスキルも成績の優劣に影響するため、全体のレベル向上を目指し互いの技術を公開しているのだ。


両部門で活躍した高橋中学のメンバーと坂本先生。3年生はこの試合で部活から引退する。最後に部長が「マジメだけじゃなく、楽しくロボットを作ってほしい」と後輩にメッセージを贈った
 各校が翌年の大会に向けて、成績のよかったロボットのデータを参考にし、自分たちのロボットを改良する。例えば、「より高く、より多く!」の筒型アームや、「あの壁を越えろ!」のラッキーボックスからオブジェクトを弾き出す機能も、高橋中学が始めたことを他校が参考にしているという。

 高橋中学の坂本先生に話を伺った。「学校によって状況は異なるが、技術家庭科の授業や選択授業で作ったロボットで参加しているところが多い。高橋中学では、週に3日、部活動でロボットを作っている。現在部員は30名いて、学内予選で大会出場者を決定した」という。

 大会名は「愛知中学生ロボットコンテスト」となっているが、県外からの参加も受け入れている。ものづくり教育の推進に精力的に取り込む愛知県のロボットコンテストに、全国から中学生が参加するようになったら面白い。


URL
  コイルの会
  http://www.anjonet.ne.jp/~coil/


( 三月兎 )
2007/10/16 00:01

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