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名古屋「第3回堀川エコロボコンテスト2007」レポート
~ロボットの技術で清流を再生


 26日、名古屋市熱田区の宮の渡し公園にて、「第3回堀川エコロボコンテスト2007」が開催された。主催は、名古屋工業大学、名古屋堀川ライオンズクラブ。


堀川エコロボットコンテストとは

 「堀川エコロボットコンテスト」は、ものづくりを通して河川浄化に対する市民の関心を高めることを目的とし、2005年から毎年開催されている。今年は県内外から31チームがエントリーした。ロボットは堀川の浄化、美化、環境の改善を目的とするもの、また堀川をアピールする装置やアート作品もあった。

 コンテスト会場となった堀川は、名古屋城築城(1610年)の際、開削された人工川だ。そのため独自の水源がなく、海の干潮によって水が行き来するだけで、川本来が持つ自浄作用が失われている。

 かつての堀川は町で生活する人々が必要とする生活物資を大量輸送する手段として使われ、また憩いの場所としても長く親しまれてきた。だが、名古屋が産業都市へ成長し続ける大正時代終わり頃から、堀川は水質汚濁が目立つようになった。現在の堀川は1960年代の汚濁ピーク時と比較すると、かなり改善されたとはいうものの、ヘドロが完全に除去できていないため、夏場や干潮時には臭いが気になる。

 コンテストを主催する名古屋堀川ライオンズクラブは、堀川の浄化・美化を通じ堀川沿岸のまちづくりに奉仕するクラブとして2003年に発足した。


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 堀川ライオンズクラブの服部氏は、「汚い川というイメージが先行しているため、堀川に無関心な市民が多い。また心ない市民によるゴミの投げ捨ても目立つ。その反面、行政や関心の高い市民による浄化運動が、近年非常に活発になってきており、都市河川の浄化・再生を通じた観光資源などの発掘や都市の活性化運動、心の浄化運動などに発展する可能性を見せている」と語る。コンテストを通じて、多くの市民が堀川に関心を持ち、歴史ある堀川に愛着を感じてもらいたいという。

 堀川の水質汚濁の問題には、川の成り立ちや下水処理方式の問題、また伊勢湾から逆流する海水も含めて溶存酸素が不足しているなど、さまざまな要因が絡み合っている。こうした一般参加型のイベントを通じて、身近な環境問題を考えるきっかけが生まれるのは、楽しい試みだと思う。会場で印象に残ったロボットを紹介する。


水質浄化ロボット

 コンテストも3回目を迎え、水質浄化とともに観客へのアピールも考えたロボットが目立った。バイオコードや炭などを使い、水をろ過して堀川に戻すロボットが多かった。


「ろ過山脈」(三協)。水中ポンプで水を吸い上げ、水中につり下げた網の中にいれたバイオコードで水を浄化し、噴水にして川に戻す 200本のペットボトルを使い、3週間かけて製作したという

「倉工タナバタ2号」(岡山県立倉敷工業高校 電子機械科年)。水中に資質浄化剤を散布して撹拌しながら進み、浮いているゴミを回収する 校歌を演奏するために、ロボットにポケコンを搭載している

「HAL-9000」(愛知工業高校 エコロボ班)。排ガスが公害の問題となるクルマを敢えてテーマにした。マフラーから水を吸い込み、竹炭でろ過した後、バケツの遠心力で噴水のように撒き空気を含ませて川に戻す エコがテーマなので、動力はソーラーパネルとバッテリを併用している 水面にいれるときは4人かかりで運んでいた

「気泡排出型水力船(船長若林)」(AUT千葉研究室)。水中に空気を送り、プランクトンの動きを活発にして水質改善をする 「ファイティングホエール」(愛知県立一宮工業高等学校機械科)灯油の給油ポンプで吸い上げた水を、ロボット内部のプランターで3段階でろ過する。一番上に、竹炭・木炭、2段目に活性炭、3段目にはキムコが入っている 「パスルーズ改二乗」(ももも!!!)。足元のパネルを踏むと、天秤ふいごで水槽の中に空気を送り、水中の微生物を活性化させる人力浄化装置。チームメンバーの体力だけでは、動力として不足しているため、見学者参加型の展示となった

「シジミ型水質浄化ロボット(堀川に魚を棲まわせ隊)」。プランクトンネットを装着した洗濯機の脱水層で水をろ過している
 ロボットの水質浄化効果を数値で示すロボットもあった。

 「シジミ型水質浄化ロボット」(堀川に魚を棲まわせ隊)は、プランクトンネットを装着した洗濯機の脱水層を用いて、川から汲み上げた水の中からゴミやプランクトンをろ過する仕組み。浄化前と浄化後の結果を計測器で表示していた。

 今回の結果については、「プランクトンネットの目が粗いため、ろ過の精度がいまひとつ出ていないが、目が詰まってくればもっと精度があがる」とコメントがあった。

 「ヘドロ水浄化ロボットウォーターエコ2号」(大同工大 CEED-DAITO)は、沈殿しているヘドロが水質悪化や悪臭の原因であると考え、ヘドロの回収によって水質浄化を行なうロボットを製作した。簡易汚泥ポンプでヘドロを含む河川水を吸い上げ、凝集剤を混ぜてヘドロを沈殿させた後に、上澄みの水を溶存酸素(DO)を増やすためにスーパーバブル装置にかけてから堀川に戻す仕組み。同チームは、当日までに2回の現場実験を行なったという。

 大同工業大学工学部都市環境デザイン学科大東研究室の大東憲二教授によると、このロボットでヘドロ除去した結果、ポンプで吸い上げた水のDOは3mg/lだが、ヘドロを除去した上澄みのDOは6.17mg/lになり、スーパーバブル装置にかけることで、DOは7.61mg/lにまで改善されたという。環境基本法の環境基準値は、7.5mg/l以上なので、このロボットで基準値をクリアできたことになる。


「ヘドロ水浄化ロボットウォーターエコ2号」(大同工大 CEED-DAITO)。左側の水槽に、川底からヘドロを含む水を吸い上げる 凝集剤によってヘドロと河川水が分離したことが見た目にもわかる。筒状のバブル装置で空気を含ませた後、水面に散水して川に戻す

水面のゴミ回収ロボット

 「新型水上移動ロボット」(名工大エコロボットプロジェクト)は、水の上を人が歩くことができれば、陸上と同じようにゴミを拾いに行くことができるという発想から生まれた。ジャイロセンサーで傾きを検知し、船体を倒した方向に船が進む。傾けるほどスピードが出るようで、搭乗者がなれてくるとスピードが増した。

「マイちゃん1号」(毎日新聞なごや支局チーム)は、ゴミを回収しながら水中を観察するロボット。108個のペットボトルで製作した筏に搭乗し、防水加工した筒にいれたデジタルカメラで水中を撮影する。筏の後部には、網がとりつけてあり水面のゴミを回収しながら運航する。小学校のプールでテストした時には、デジカメの防水があまく濡れてしまったために乾かすのが大変だったという。電動工具に取りつけたスクリューで、多少前進したり方向転換することもできる。


「新型水上移動ロボット」(名工大エコロボットプロジェクト)。一寸法師のようにお椀型の船に乗った搭乗者の重心移動で、水上を移動するロボット 「マイちゃん1号」(毎日新聞なごや支局チーム)。堀川の水面のごみを回収しながら、水中の撮影する 筏の中央に、デジカメを入れた潜水レンズを入れて水中を撮影する。餌を撒いておくと魚の姿が撮影できるという

「拾い鯛(ひろいたい)」(助光中学校技術部)。船前方に取り付けたモーターで羽を回し水面のゴミを、網に拾い集める。搭乗した先生は、「落ちても水遊びができるような、綺麗な堀川になってほしいです」とコメントした 「コロコロウォーカー」(チーム三兄弟)。開発当初は、直径2mの球体に子どもが入り、水上を移動しながらゴミ拾いするロボットを考えていたという。今回は、ラジコンカーを遠隔操縦して水面移動するロボットになった

環境アピールロボット

 堀川を観光面からアピールすることを提案するロボットもあった。


「KAME・タートル」(碧南工業高校電子研究部)。甲羅から水を噴き上げながら、LEDを光らせてパフォーマンスをする。カメのボディは浮き輪で、中央部に吊したアミでゴミを取っている 「しあわせまんじゅう船 BUNKA GO~!」(名古屋文化幼稚園)。幼稚園児が考えた、堀川にお客さんをいっぱい乗せて走る観光船。煙突から出ているのは、お饅頭のあんこだという

「観光案内ロボット」(愛知産業大学工高WAチーム)。風力とソーラーパネルを動力とする観光案内ロボット。スピーカで宮の渡しの観光案内をする 「パトカメ」(県立豊橋工業高校課題研究班)。体内に取り込んだ水の重みを利用して、浮き沈みしながら川を監視する。水が溜まると、パトランプが点滅し小亀が水を噴射する

 最後に、名古屋工業大ものづくりテクノセンターの藤本英雄センター長は、「自然環境の中で動作するロボットの製作は難しい。参加者のレベルがアップし、計測機能を持つロボットが登場したのが嬉しい。一般の方が見て、堀川の環境を考えるきっかけになるロボット作りをしてほしい」と講評した。


URL
  堀川エコロボコンテスト2007
  http://www.qitc.nitech.ac.jp/ecorobocon07/index.html
  堀川を清流に 名古屋堀川ライオンズクラブ
  http://www.horikawa-lions.com/


( 三月兎 )
2007/08/30 13:42

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