● 人の役に立つ、独創的で多彩なロボットの競演
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【写真1】東京工業大学で開催されたメカノウィーク。普段見ることができない機械やロボットが一堂に展示されていた
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8月7日から12日までの6日間、東京工業大学の大岡山および石川台キャンパスで、東工大メカノウィーク特別展示「進化する機械・ロボット」が開催された【写真1】。主催は21世紀COEプログラム「先端ロボット開発を核とした創造技術の革新」および東京工業大学工学部機械工学系。
本イベントは、「社会に役立つ機械・ロボット作りを目指して」をテーマに、同大学で研究している独創的な機械・ロボットの紹介から、日替わりの講演会、ものづくり体験企画まで、多数の催しが用意されていた。夏休み期間中であり、親子づれなど多くの来場者が訪れた。
大岡山キャンパスの百年記念館では、30台以上もの機械・ロボットが一挙に公開、実機によるデモンストレーションも行なわれた【動画1】。広瀬・福島研究室では、動物や昆虫などの生態をベースに、レスキューロボット、地雷探査ロボット、惑星探査ロボットを展示。同研究室で特に有名なヘビ型ロボット「ACM-R3n」は、左右と上下方向に屈曲する関節を交互につなげた節体幹型構造【写真2】。先頭部分から後ろに蛇行する波の伝播によって、前方へ向かってほふく前進するユニークな仕組み。体を斜めに曲げ、さらに地面の上で寝返りを打って転がることも可能だ。
昆虫のような4脚ロボットとしては、歩行とローラースケートによる運動ができる脚車輪複合型ロボット「Roller-Walker」や、歩行に加えてクローラ(キャタピラ)での推進運動も可能なクローラ可変型ロボット「TITAN X」のデモも実施【写真3】【動画2】。いずれも荒地と平坦地での特性にあわせて、移動手段を選択できるようになっている。
荒地では馬力のあるクローラ型の走行が有効だ。災害時には、家屋の倒壊などにより瓦礫が散在していることも多い。このような場合に利用されるレスキューロボットは、狭くて曲がりくねった瓦礫の隙間から入り込んで進める構造が必要になる。ヘビ型ロボットの技術を集大成してつくられた人命探査ロボット「蒼龍IV号機」は、3つのクローラを装備した節を能動的に屈曲することで、瓦礫内で凹凸のある場所を自身の体でブリッジして移動できる【写真4】。
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【動画1】百年記念館では、同大学が開発した有名なヘビ型ロボットから、レスキューロボット、惑星探査ロボットなど、30台以上もの機械・ロボットの展示とデモが行なわれた
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【写真2】広瀬・福島研で開発されたヘビ型ロボット「ACM-R3n」。先頭部分から後ろに蛇行する波の伝播によって、前方へ向かってほふく前進する
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【写真3】クローラ可変型4脚歩行ロボット「TITAN X」(写真左)と脚車輪複合型ロボット「Roller-Walker」(写真右)
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【動画2】複合型ロボット「Roller-Walker」のデモ。脚車輪複合型なので、車輪の向きが変わり、ローラスケータのようにスイスイと滑りながら走行する
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【写真4】人命探査ロボットが「蒼龍IV号機」。ヘビ型ロボットの技術を集大成。3つのクローラ装備した節を屈曲。凹凸のある場所でも自身の体でブリッジさせながら移動できる
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このほか、レスキュー用の遠隔操作ロボット「ヘリオス8号機」も展示されていた。こちらは一対のクローラを装備しているが、クローラの中心部に強力なロボットアームを備えている点が大きな特徴【写真5】【動画3】。このアームによって、物資のハンドリングを行なえ、同時にアームをテコにして階段昇降や障害物を踏破できる性能も備える。
一方、障害物が大きい場合には、ロボット本体の跳躍によって飛び越えてしまう方法も考えられる。その1例として開発されたのが脚車輪型ジャンプロボット「AirHopper」だ【写真6】。こちらは、空気駆動の脚と電動モータを組み合わせたハイブリッド構造の4脚移動タイプ。平地では通常の車輪走行を行なうが、大きな障害物がある場合には、ボトルに溜めた高圧エアによって跳躍する。このロボットでは、最大で垂直方向に80cmまで飛べるそうだ。
また、惑星などで岩石の採取をする親子型惑星探査ローバもあった。レスキューロボットと同様に荒地での作業になるため、この種のロボットもクローラが用いられることが多いが、展示されていた「SMC Rover」はクローラタイプではなく、4輪駆動タイプのユニークな構造を採用【写真7】【写真8】。岩石の採取を効率よく行なうために、本体ローバの車輪が分離して、子ローバとして独立で作業できるアイデアが盛り込まれている点が面白い。
子ローバは、本体から分離する1輪駆動ユニットだが、アームが装備されており、地面にアームを押し付けて駆動時の推進力が得られる。またアーム先端にある受動車輪の角度を制御して、自由に操舵することも可能だ。さらに車輪を土台にすれば、岩石採取時の作業ロボットに早変わりする。
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【写真5】クローラの中心部に強力なロボットアームを備えたレスキュー用遠隔操作ロボット「ヘリオス8号機」。アームをテコにして、階段昇降や障害物も踏破できる
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【動画3】ヘリオス8号機のアーム先端部。ナイフのようなハンドで対象物を把持する。動画後半には登場するのは、親子型惑星探査ローバの子機だ
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【写真6】脚車輪型ジャンプロボット「AirHopper」。エアの力で最大80cmまでジャンプできる。こちらもデモが行なわれた
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【写真7】親子型惑星探査ローバ(親機)。4つの車輪が分離して1輪駆動の子機になるユニークな仕組み
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【写真8】親子型惑星探査ローバ(子機)。子機が分離したところ。自由に動き回れるだけでなく、写真のように車輪を土台にすれば、岩石採取時の作業ロボットに早変わりする
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ユニークな形状とネーミングが印象的だったのは「VUTON-1」【写真9】だ。VUTONは「座布団」のような薄い形状から付けられた名前。本体には、複数の円筒形ローラを一対のチェーンで動かす駆動系が4つ配置されている。前後左右や回転など全方向に自由に移動したり、方向転換が瞬時に行なえる点が大きな特徴だ。まさに「動く座布団」として機能する【動画4】。また走行車輪の設置面積が大きく、耐荷重性能も高い。搭載重量は約1,000kgのため、人が乗ることはもちろん、重い物資を倉庫内で搬送することも可能だ。
このVUTON-1をベースにした製品として、小野電機が「VmaxCarrier」を展示していた【写真10】。こちらは、複数の小型キャスタが常に同じ方向を向くように取り付けた円盤型回転装置「Omni-Disc」【写真11】×4つを組み合わせた構造で、VUTONよりも軽量だ。回転運動で動き回れるため速度も出しやすい。また、空気圧を利用して、Omni-Discの傾きを調整することで、ある程度の段差も越えられるという。
広瀬・福島研では、屋外でのロボット展示も行なっていた。人道的な見地から地雷探知と除去を行なうバギーロボット「Gryphon-V」がそれだ【写真12】。Gryphon-Vは、同シリーズの5次プロトタイプとなるもので、市販のバギー車を改造し、その車両に遠隔操作できるロボットアームを搭載している【写真13】。バギー車で危険地帯の近くまで運転し、現地で遠隔操作によって地雷を探査・撤去する。
アームの先端には金属探知機と地中レーダを組み合わせたデュアルセンサユニットが付いており、ステレオビジョンによって作成された地形マップをベースに、地面の凹凸に沿って地雷源を自動探査することが可能だ【動画5】。砂漠のような過酷な環境で使用するため、防塵・防水、振動・衝撃といった耐環境対策も考慮し、MIL規格などの軍用規格にも適合するように設計されている。このロボットは、カンボジアやクロアチアなど、海外での試験も実施済みだ。
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【写真9】座布団のような「VUTON-1」。前後左右や回転など、全方向に自由に移動したり、方向転換が瞬時に行なえる
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【動画4】VUTON-1の動き。まさに「動く座布団」だ。複数の円筒形ローラを一対のチェーンで動かす駆動系を4つ装備している
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【写真10】小野電機の「VmaxCarrier」も展示。こちらは、前述のVUTON-1をベースにした製品だ
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【写真11】VmaxCarrierでは、円盤型回転装置「Omni-Disc」を駆動系に採用している
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【写真12】5次プロトタイプとなる地雷探知・除去ロボット「Gryphon-V」。市販のバギー車を改造したロボットだ
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【写真13】Gryphon-Vの遠隔コントローラ。トランクに収納されている
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【動画5】アーム先端には金属探知機と地中レーダを組み合わせたデュアルセンサユニットを装備。動画のデモでは、地面の凹凸に沿って地雷源を自動探査する動作をしている
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● 医療福祉に役立つリハビリ機器や手術ロボットの研究
北川研および塚越研では、狭い隙間から瓦礫を引き上げて進むレスキューロボットや、人の力をサポートするウェアラブル機器を紹介していた。「Bari-bari-II」(バリバリツー)は、階段構造の先端部を重い瓦礫の隙間に挿入し、瓦礫を一段ずつアップさせながらこじ開けて移動できるロボットだ【写真14】【動画6】。ジャッキが付いた人命救助ロボットをイメージすると分かりやすい。5mmという僅かな隙間からでも瓦礫をこじ開け、油圧によって600kgまでジャッキアップしながら進む。マイク付きカメラも搭載しており、遠隔での人命救助に役立つ。また、災害時に活躍する跳躍-回転移動体「Leg-in-rotor-V」【写真15】など、小型サイズのレスキューロボットも展示されていた。
ウェアラブル機器としては、ドライアイスパワーセル【写真16】を駆動源に利用した空圧式歩行アシスト装置や、独自のアクチュエータを使った筋肉拘縮防止装置【写真17】などが紹介されていた。
ドライアイスパワーセルは、密閉容器に入れたドライアイスの3重点(固体・液体・気体が共存する状態)を利用するもの。この状態では、外部から加熱しても、あるいは気体を外部に出しても、固液の比率が変化するだけで圧力は変化せず、安定した気体の放出が維持される。そこで、これをエアシリンダのエネルギー源に応用し、片側の足に疾患がある人たちの屋外歩行を長時間にわたりアシストする。エアシリンダによって約4割の体重を支えられ、1,000歩以上の歩行支援が可能だという。
筋肉拘縮防止装置は、同研究室で独自に開発した螺旋偏平形チューブを空気圧で変形させ、ワイヤを引っ張ることによって麻痺した手首の関節を動かす仕組み。健康な手でジョイスティックを操作し、麻痺側のリハビリ運動が可能だ。将来は、健康な手の動きをマスター側として、スレーブ側を同期させるような装置も考えているという。
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【写真14】災害時に狭い隙間から瓦礫を引き上げてバリバリと突き進むレスキューロボット「Bari-bari-II」(バリバリツー)。名前のとおり強力だ
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【動画6】瓦礫を一段ずつアップさせながらこじ開けて移動する。油圧によって600kgまでの重量をジャッキアップできる
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【写真15】跳躍-回転移動体「Leg-in-rotor-V」。災害時に障害物があったときに、それを乗り越えることが可能
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【写真16】ドライアイスパワーセルで、安定した気体を放出する。歩行アシストのエアシリンダのエネルギー源に応用
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【写真17】筋肉拘縮防止装置。独自の螺旋偏平形チューブを空気圧で変形させ、ワイヤを引っ張って麻痺した手首の関節を動かせる
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特にユニークに感じた機械は、流体の自励振動を利用したマッサージ器だ【写真18】。これは家庭用の水道を駆動源とした流体アクチュエータを利用したもの。弁が不要で構造が簡単な点や、電気を用いず電磁波が一切発生しない点が大きな特徴だ。ペースメーカー利用者や妊婦でも安心して利用できる。偏平チューブを曲げて内部を水で加圧すると、チューブの湾曲部で振動が起こる。これをマッサージに利用することで、血流促進効果が得られるという。
また小俣研でも、医療福祉機器を中心にした展示が行なわれていた。たとえば、高性能ロボットハンドや、手術に使う医療機器などがあった。通常のロボットハンドや電動義手に使われる指のモータは、大きさの制約があり、低トルクでパワーがあまり出ない。そこで、同研究室ではモータではなく、動力伝達機構を改良することで、従来よりも大きな力を出す仕組みを提案。指先に負荷がないときは高速に作動し、負荷が掛かると強力な指先力を発生する5リンク式の無段変速機構を考案した。これにより開発したロボットハンドは10kgのペットボトルを持ち上げられるようになった。また、指の開閉に加えて、強い力で握り込むための機構を備えた電動義手も開発している【写真19】。こちらは空き缶を握りつぶすぐらいの力を出せる。
一方、同じようにリンク機構を利用して、脚力をアシストする膝関節立ち上がり支援装置もあった【写真20】。こちらは、人がしゃがんだ姿勢から立ち上がる際に必要な力と、歩行時の動作の速さを両立させるもの。汎用ギアでなく、シンプルなリンク機構によって、膝関節の角度に応じた力を出せる。これを装着するとで、中腰での姿勢も楽に維持できるようになるという。
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【写真18】流体の自励振動を利用したマッサージ器。水道圧を駆動源とした流体アクチュエータという発想がユニーク
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【写真19】指の開閉に加えて、強い力でグリップするための機構を備えた電動義手。空き缶をラクラクとつぶせる把握力がある
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【写真20】膝関節立ち上がり支援装置。リンク機構を利用して、立ち上がり力と歩行時の高速性を両立した
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一方、さまざまな手術用器具を腹腔内で組み立てるというアイデアも披露。最近の手術は、手術部を切り開くのではなく、小さな穴を開けて、その切開穴から内視鏡や器具を挿入して施術する方法が主流になってきている。こちらのほうが傷口が小さく、患者に掛かる負担が減り、治癒も早いというメリットがある。
しかし、その半面、外科医は高度な技術が求められる。小さな穴から細い棒状の器具を挿入して、患部を切除したり、縫合をしなければならないからだ。穴から入る手術器具の大きさも限られる。そこで、腹の中で器具を組み立てて使う新しい施術方法を考えたという。腹腔内で人の手のようなロボットハンドや縫合器を組み立て、手術が終了したら、それをバラして取り出せる仕組みだ【写真21】【動画7】。
また、ロボットで手術をする際には、直感的で安全な作業をするために、術者の「力の感覚」も重要な要素になる。そこで同研究室では、力覚フィードバック機構を備えた腹腔鏡手術用のロボットシステムも開発している。これは、鉗子先端に作用する外力を、力センサを使用せずに空気圧アクチュエータの内圧から検出し、マスター側のマニュピレータにフィードバックするもの。実際に対象物に鉗子が当たると、術者のマニュピレータに力が掛かるようになっていた【写真22】。
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【動画7】腹腔内で縫合器を組み立てるイメージ。通常T型をしているため、小さな穴から入らないが、分解して腹腔内で組み立てて施術する
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【写真21】人の手の形をした3指5自由度のロボットハンド。こちらも腹腔内で組み立てることが可能だ
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【写真22】力覚フィードバック機構を備えた腹腔鏡手術用のロボットシステム。実際に対象物に鉗子が当たるとマニュピレータに力が掛かるようになっている
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● 制御実験機、水上走行機、自作超小型衛星、エネルギー利用などの研究も
制御系の理解が深まる各種の実験機器を紹介していたのは藤田研の展示ブースだ。同研究室では、電磁石の吸引力で鉄球を宙空に浮上させる磁気浮上システム【写真23】や、東工大オリジナルの回転型倒立振子実験装置【写真24】のデモンストレーションを行なっていた。
前者は電磁石と鉄球の位置を変位センサで測定し、鉄球が一定位置になるように電圧や電流値をフィードバック制御するもの。PID(比例・積分・微分)制御の理解を深められる装置だ。一方、後者は従来の台車型の倒立振子を改良していることがポイント。この装置では自由に回転する振子と、振子下端を水平方向に動かすアーム、アーム駆動用モータで構成。振子の倒立を維持するために、振子の倒れ具合をロータリーエンコーダで取得し、その情報をフィードバックして、振子が立つように適切な速度でアームを水平方向に動かし続ける。
このほかにも同研究室は、視覚センサから得られる情報を用いてフィードバック制御する実験も披露。たとえば、移動ロボットに搭載されたカメラの画像情報をベースに、白線を検出し、その中心からラインに沿うように移動ロボットを制御する実験や、3脚にカメラを設置して得られた画像から、マスターとなるロボットの移動方向を検出して、スレーブ側が追従していくというデモを実施していた【写真25】【動画8】。鳥やイルカなどの生物の編隊をロボットに適用することで、複数のロボットでフォーメーションを組んだ制御が可能になるという。
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【写真23】制御系の理解を深められる磁気浮上システム。電磁石と鉄球の位置を変位センサで測定し、鉄球が一定位置になるように電圧や電流値をフィードバック制御する
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【写真24】東工大オリジナルの回転型倒立振子実験装置。振子の倒れ具合をエンコーダで取得し、その情報をフィードバックして、アームを水平方向に細かく動かす
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【写真25】カメラの画像情報をベースに、マスターとなるロボットの移動方向を検出して、スレーブ側が追従していく
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【動画8】マスターとなるロボット(赤)にスレーブ側のロボット(黄と青)が少し遅れて追従。複数のロボットでフォーメーションを組んだ制御が可能だ
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杉本・武田研では、パラレルマニュピレータや、歩行および水上走行機械などを出展していた。パラレルマニュピレータは、エンドエフェクタ(ツール装着部)を複数の腕で支持する機構が採用されている。可動部にアクチュェータを付けないため、高速な位置決めが行なえるというメリットを持つ。その一方で、複数の腕を動かすため幾何学的な制約もあり、作業領域はあまり広くない。このパラレルマニュピレータは、並進または回転運動することにより、作業領域を拡大させる機構を備え、かつ高精度な位置決めも可能だ。すでに10nmオーダーという分解能での位置決めに成功したという【写真26】。
水上走行機械は2タイプの試作機が紹介されていた。1つはトカゲが水上を交互に蹴りながら素早く走行する原理をメカニズムとして取り入れたもの。足部が水から受ける力を解析したり、シミュレーションすることで、水上走行できる機械を開発した【写真27】。
この水上走行機械は、本体を軽くするためにアクチュエータ数を少なくした機構を考案している。リンク、ギア、タイミングベルトを組み合わせ、1つのモータですべての脚部の運動を実現。もう1つの試作機は、軽量で柔軟性に富む独自のエアシリンダによって脚を駆動させるもの。エアシリンダにはフレキシブルなナイロンチューブやロッドが使われている。水上での走行実験も済ませ、本体を水面上にうまく維持できたそうだ【写真28】。
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【写真26】一番手前が最初の試作機となるパラレルマニュピレータ。並進または回転運動することにより作業領域を拡大させる機構を備え、10nmオーダーという高精度な位置決めが可能
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【写真27】トカゲの水上走行の原理をメカニズムとして取り入れた水上走行機械。犬かきならぬトカゲかきで水面を動くロボット!?
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【写真28】こちらの水上走行機械は、軽量で柔軟性に富む独自エアシリンダによって、脚を駆動させて水上を走る仕組み
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ロボットではないが、松永研ではユニークな手作り超小型人工衛星の取リ組みを紹介していた。超小型人工衛星の技術はロボットと同様に、電気、機械、センシング、制御、無線通信など、高度な技術が求められる。同研究室では、人工衛星を低コストかつ短期間で開発するプロジェクトを通じて、人材育成を進めている。たとえば実践的な教育として、ジュース缶サイズの超小型衛星「CanSat」の製作を1999年から開始【写真29】【写真30】。これらの技術をベースに、さらに本格的に改良を加えた超小型人工衛星「CUTE-1」【写真31】や「Cute-1.7+APD」【写真32】を開発している。
CUTE-1は、10cmの立方体、1kgという重量の超小型衛星で、ロケットから衛星を放出する分離機構も装備。2003年にロシアから打ち上げられ、基礎的なミッションを終了したが、現在でも正常に稼動しているという。
一方、Cute-1.7+APDは、前者のCUTE-1より少し大きく、10×10×20cm、3.5kg。同大学の理学部と協力し、より発展的なミッションを行なうために開発されたものだ。1号機は2006年2月にJAXAのM-Vロケットにより宇宙に打ち上げられ、衛星の姿勢制御、低エネルギー荷電粒子の観測、高速パケット通信、地球画像の取得などを実施。2号機も現在開発中で、今秋にはインドのPSLVロケットにより打ち上げられる予定だ。こちらは姿勢決定制御系、カメラの解像度、放射線耐性などを向上し、太陽電池の発生エネルギーも増強されている。
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【写真29】350mlジュース缶サイズの超小型衛星「CanSat」。スタンフォード大学や、東京大学、東京工業大学などにおいて、実践的な教育として導入されているプロジェクト
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【写真30】CanSatを横から見たところ。手作り感にあふれている。ジュース缶の中に人工衛星のすべての機能が詰め込まれている。基板も円形になっている
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【写真31】CanSatの技術をベースに、本格的に改良を加えた「CUTE-1」。2003年にロシアから打ち上げられ、現在でも正常に稼動しているという
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【写真32】Cute-1.7+APDの内部。基板の部品はSMD(表面実装電子部品)。これらも、すべて手作業でハンダ付けしたという
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災害救助、危険物処理の作業や、宇宙や極限環境での調査など特殊な環境で活躍する機械やロボットにとって、駆動源になる代替エネルギーの開発は大きなテーマの1つだろう。そこで、エネルギー活用の観点から、最新の研究が紹介されていた。たとえば、コンパクトな小型燃料電池(平井・津島研)や、低温放射の赤外線から電気を発生させる「ナノギャップ発電」(花村研)のほか、レーザーとマグネシウムを用いたエネルギー循環システム(矢部研)などもあった。
矢部研によるエネルギー循環システムは、マグネシウムを水と反応させ、水素と熱エネルギーを取り出すもの【写真33】。酸化したマグネシウムを還元するために、レーザー光を利用する。太陽光をレンズで集約して励起レーザーを発振させる仕組みだ【写真34】。このように自然エネルギーを利用して、エネルギーを取り出し、元に戻すという、地球に優しいサイクルを実現している。
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【写真33】地球に優しいエネルギーサイクル。まずマグネシウムを水と反応させ、水素と熱エネルギーを取り出す
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【写真34】酸化したマグネシウムを還元するために利用する太陽光集光追尾装置
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● ものづくりを体験できるイベントの楽しさを実感!
石川台キャンパスでは、子供たちのために「ものづくり体験ワールド」が開催されていた【写真35】。手作り体験ができるコーナーでは、風の力に逆らって走るウィンドカー【写真36】【写真37】【動画9】や、ぜんまい動力式の簡易ロボット【写真38】を熱心に組み立てる参加者の姿が印象的だった。また、実験コーナーでは、燃料電池や赤外線カメラ、ドライアイスによる瞬間氷結【写真39】【写真40】など、興味深くて楽しい催しが目白押しだった。
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【写真35】大岡山キャンパスから少し離れた石川台キャンパスでも、子供たちのために「ものづくり体験ワールド」が開催された
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【写真36】ウィンドカーの工作にいそしむ子供たち。材料は紙が中心であるため、夏休みの工作にも適している教材だ
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【写真37】ウィンドカーが完成したら、扇風機を利用した簡易風洞の中でレース開始! さて、うまく動くかな!?
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【動画9】風の力に逆らって走っていくウィンドカー。風の力で大きなプロペラを回転させ、そのトルクで半径の小さな糸車を引っ張る仕組み
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【写真38】ぜんまい動力式の簡易ロボットでレース競技も。脚に振動が伝わり、直線コースの枠に沿って移動する
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【写真39】太陽電池と燃料電池を組み合わせた循環システムのデモ。太陽電池で発電した電気エネルギーによって、水を酸素と水素に電気分解。夜は燃料電池を利用する
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【写真40】ドライアイスの中にいろいろな物を入れて、その様子を観察する。写真は風船を入れているところ。暑い日にはピッタリの実験だ
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その一方で、大学の授業の一環として学生らが製作した機械も紹介されていた。外周をスライドさせながら測定できる真円度測定器【写真41】や、射出成型用の型を削りだす3軸ハンコ作成機【写真42】、μmオーダーの物質をピッキングできるマシン【写真43】などの展示が面白かった。
展示されていた真円度測定器は、少し変わった機構。通常、この種の測定器はセンサ部が固定され、測定対象を載せるステージが回転することが多い。こちらの機器は逆に、センサ部がC字型の外周に沿って動く仕組み。このような機構にすることで、ステージに乗せられない固定された棒状の試料でも真円度を測定できるようになっていた。
3軸ハンコ作成機では、ハンコを作成するために、まずイラストやロボマークをカメラによって撮影。次にそのデータを白黒で2値化して輪郭を抽出し、工具が通る経路(ツールパス)を生成。エンドミルを使用して、パスに従って樹脂を削りだす、という手順で作業が進められる。このハンコの型を利用して、実際に完成した成型品も展示されていた。
ピッキングマシンのデモでは30μmの微小球体を拾い上げるデモが行なわれていた。これは触針を冷却し、空気中の水を結露させることで、微小物体を吸着する仕組み。逆に物体を離す場合には、針を温めて水を蒸発させればよい。
また、ものづくり体験ワールド以外にも、イベント期間中の前半(9日まで)には、同大学の「ものづくりセンター」も公開されていた。こちらでは、大会参加のために学生が製作した大道芸ロボットのデモ展示や、ソーラーカー、フレームカー、乾電池有人飛行機「オキシフライヤー」、木で製作したレトロなからくり機械なども展示されていた。
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【写真41】手作りの真円度測定器。通常の真円度測定器は対象物をテーブルに置いて回転させるが、こちらは外周をスライドさせながら測定できるように工夫を凝らしている
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【写真42】エンドミルを使用して、ツールパスに従ってABS樹脂を削りだす3軸ハンコ作成機。成型したハンコの完成品も展示
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【写真43】μmオーダーの物質を搬送できるピッキングマシン。触針を冷却し、水を結露させることで、微小物体を吸着する仕組み
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● ドイツの最新2足歩行ロボット「LOLA」の全貌
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【写真44】ミュンヘン工科大学のハインツ・ウルブリッヒ教授。日替わり講演会で特別に招聘された
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東工大メカノウィークでは、6日間のイベント期間中に「機械・ロボットの開発ものがたり」として、日替わりの講演会が催されていた。地雷探査ロボットから、高密度な燃料電池と太陽電池、医療福祉へのロボット応用、超小型人工衛星、生物の形態をベースにしたロボットなど、独創的な研究に携わる現場の面白い話が公開された。ここでは、ミュンヘン工科大学のハインツ・ウルブリッヒ教授の一般講演について報告する【写真44】。
今回の講演テーマ「ドイツのロボットの紹介」では、ウルブリッヒ教授が研究している2足歩行ロボットに注目が集まった。2足歩行ロボットの分野は、ホンダのASIMOに見られるように日本の研究が世界をリード。海外でも同様に研究が行なわれているが、文化や考え方の違いもあり、どちらかというと実用面ではまだ否定的な意見も多いようだ。
そんな中で、ウルブリッヒ教授はウォーキングマシンの研究から始まり、15年ほど前から2足歩行ロボットの研究も進めてきた。教授は、昆虫のような6脚歩行ロボット「MAX」【写真45】【動画10】や、配管内を移動する8脚ロボット「MORITZ」【写真46】【動画11】のほか、ヒューマノイド型の2足歩行ロボット「JOHNNIE」も既に完成させている【写真47】【動画12】。
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【写真45】ハインツ・ウルブリッヒ教授が開発した昆虫のような6脚歩行ロボット「MAX」
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【動画10】前後6本の脚部をうまく同調制御させながら、凹凸のある不整地を進んでいく
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【写真46】8脚ロボット「MORITZ」。複数の脚で力をうまく分散させながら這うように動く。曲がった配管にも対応できるようになっている
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【動画11】MORITZの動き。足がつくる平面力を考慮しながら、直線の配管内を移動する。関節に過大な負荷が掛からないように制御
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【写真47】ヒューマノイド型の2足歩行ロボット「JOHNNIE」。ウルブリッヒ教授は15年ほど前から2足歩行ロボットの研究を進めてきた
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【動画12】JOHNNIEのデモンストレーション。スムーズに階段を上っているところ。歩行速度は時速2.4kmぐらいで、まだ遅い
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【写真48】JOHNNIEを改良した2足歩行ロボット「LOLA」。高速で人間らしい歩行動作と、高い自律性を実現することを目的に開発中
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そして現在、このJOHNNIEを改良した2足歩行ロボット「LOLA」を開発中だ【写真48】。ウルブリッヒ教授は「現在では、ほとんどの2足歩行ロボットで信頼性の高い動歩行が可能になった。しかし、高速での歩行が課題」と指摘した。たとえば、同教授が開発したJOHNNIEは時速2.4kmほど。国内のロボットの例では、川田工業の「HRP-2」は時速2.5km、ホンダのASIMOは少し速く、時速6kmほどだ。現在、ウルブリッヒ教授が開発中のLOLAは、JOHNNIEの技術をベースに、さらなる高速歩行と人間のような歩行動作を実現しようとしている。
JOHNNIEと比べてLOLAが進化した点の1つとして、まず機構・駆動系が挙げられる。ウルブリッヒ教授は、設計上の目標として「総重量の最小化、十分な高剛性のほか、質量中心を可能な限り高くすること、脚の慣性モーメントの最小化」というポイントを挙げて説明した。LOLAは合計22個のアクチュエータを有している。脚は各7自由度、腕は各3自由度で、ひじ関節については並進方向の腕の振りと慣性モーメントを調整できる。また、腰関節は2自由度で、股関節は3自由度だ。歩幅の増減や一定重心位置で直立が可能な脚を持っている【写真49】。
駆動系の関節部はモジュール形式で設計されている。モジュール型関節ユニットは、ACサーボモータ、ボールねじとハーモニックドライブギアのほか、インクリメンタル型ロータリエンコーダや絶対角センサ、リミットスイッチを内蔵するセンサ部などで構成。これら異なる7つのユニットによって、全体の軽量化にも成功。JOHNNIEのギアユニットはギア比80、トルク32Nmであったが、LOLAに使われている新ユニットでは、ギア比50でトルクも125Nmにパワーアップ【写真50】。
ひざ関節の伝達部については、ハーモニックドライブギアからボールねじに変更を施し、低摩擦でスティック・スリップを生じない機構になった【写真51】。また、質量分布を改善し、すねの慣性と駆動部の質量も軽減できたという。
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【写真49】LOLAは合計で合計22個のアクチュエータを有している。脚部は各7自由度、腕は各3自由度、腰部は2自由度
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【写真50】モジュール型の関節ユニット。ACサーボモータ、ボールねじ、ハーモニックドライブギア、センサ部などで構成。新ユニットは、ギア比50で、トルクのパワーも125Nmに向上
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【写真51】低摩擦でスティック・スリップを生じない、ひざ関節の伝達部。ハーモニックドライブギアからボールねじに変更。すねの慣性が65%減少している
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足先部もいくつか改良が施されている。たとえば、各足のつま先で関節部の負荷を低減し、歩幅と歩行速度の調整が可能だ。JOHNNIEの足先は垂直方向のみに弾性をもつ4点接触方式だった(ちなみにASIMOは4枚の樹脂製板バネを利用した面接触方式)。LOLAでは、かかと部にある油圧ダンパと、衝撃を減衰させ小さな凹凸を補正できる弾性レイヤ部、高い静止摩擦係数と耐摩耗性を持つ接地レイヤで足先を構成し、テストを繰り返している【写真52】。
制御系に関しては、各関節の制御を分散化。改良した高性能センサによってデータを処理することが可能だ。センサ系は前述の関節センサのほか、力トルクセンサを足先部に統合、また光ファイバジャイロによる慣性計測ユニットも搭載している【写真53】。これは、ロボットの安定化には最重要な要素技術の1つであるため、高精度・低ノイズ・低バイアスに優れた特性を持つ商用デバイスを採用したという。
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【写真52】足先のデザイン。かかと部は油圧ダンパによって、受動的な自由度を持つ。また弾性レイヤで衝撃を吸収、接地レイヤにおいて高い静止摩擦による接触が保証されている
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【写真53】LOLAに搭載されている慣性計測ユニット。ロボットの安定性には欠かせない重要なファクターの1つだ
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LOLAは、JOHNNIEと比べて、より柔軟でロバスト的な歩行が可能で、高速歩行するための安定化制御も実現している。この年内の完成を目標に研究を進めているところだ。ドイツ発の新しい2足歩行ロボットの登場に期待が膨らむ。
最後にウルブリッヒ教授は、「ヒューマノイドロボットは人間と比べてまだ動作が遅い。しかし、技術システムに生物学上の原理を応用することで今後も発展していくだろう。その際にロボット工学だけでなく、生物学や医学、情報科学など、より横断的な技術が必要とされる」と述べ、講演を終えた。
■URL
東京工業大学
http://www.titech.ac.jp/home-j.html
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( 井上猛雄 )
2007/08/20 17:38
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