● 夢の宇宙エレベータで宇宙ステーションを駆け上る
日本科学未来館は、同館6階のドームシアターガイアにおいて、全天周映画「宇宙エレベータ ~科学者の夢みる未来~」を8月11日より一般公開する【写真1】【写真2】。一般上映に先駆けて、プレス試写会が5日に開催された。
|
|
【写真1】科学者の未来の夢を描いた全天周映画「宇宙エレベータ ~科学者の夢みる未来~」。企画監修は日本科学未来館、制作は独立行政法人科学技術振興機構 、ウォーク、エッグボックス、シブヤテレビジョンが担当
|
【写真2】写真右より未来館館長の毛利衛氏、藤本七海さん(ミク担当)、津田健次郎氏(ミク父親担当)、手塚とおる氏(ロボット・エジソン担当)、監修を勤めたアニリール・セルカン氏、青木隆平氏、原島博氏
|
この作品は、「宇宙エレベータ」に関する物語をアニメーションで綴ったもの。企画監修は日本科学未来館、制作は独立行政法人科学技術振興機構、ウォーク、エッグボックス、シブヤテレビジョンが担当している。
宇宙エレベータとは、地球から約3万6千km離れた静止軌道上まで伸びた「新輸送システム」だ。静止軌道上に重心があるため、宙に浮いているよう見える。ロケットなどよりも安全で、低コストで宇宙ステーションまでの輸送・運搬が可能になるといわれている。現在のところ、この宇宙エレベータは、建設や運用面などのさまざまな問題から、まだ科学者たちの夢のレベルとして語られている。
とはいえ、このアニメーションの監修として、東京大学のアニリール・セルカン助教(建築学・トルコ人初宇宙飛行士候補)や、青木隆平教授(航空宇宙工学)、原島博教授(大学院情報学環)が参加しており、細かい部分で専門家の意見も取り入れられている。前述のアニリール・セルカン助教は、NASAにおいて3年間、宇宙エレベータのプロジェクトを担当していたという。
冒頭の挨拶で、セルカン助教は「宇宙エレベータについては、現実不可能なものと思われるかもしれない。しかし研究によって分かったことは、お金は掛かるけれど現実可能であるということ。もし世界の国々が1年間だけ戦争を止めて、そのお金を建設費用にまわせば、2018年には最初の宇宙エレベータが作れるかもしれない」と語った。
まだまだ解決しなければならない課題も多く、その実現は先の話になるだろうが、もし軌道上の宇宙ステーションと地球を宇宙エレベータで結べるようになれば、宇宙空間への観光や生活も「夢の夢」ではなくなるかもしれない。
● 科学者たちが研究を続けている未来の世界
さて、今回公開される新コンテンツについてだが、その時代設定は21世紀後半を想定している。主人公の女子中学生(朝永ミク)が手作り弁当を作り、地上4,000kmの宇宙ステーションで働く父親(朝永秀樹)に会うために、この宇宙エレベータに乗って宇宙へ初めて旅立つというストーリーだ。
物語では宇宙エレベータのほかに、科学者たちが研究を続けている未来の世界も表現されている。たとえば、1つの生命体のように機能する知能都市やインテリジェントハウス、家庭用万能ロボットの「エジソン」、未来型バイクの「インテリジェントツーホイール」、3Dホログラムを備えたマネキン人形「アクションドール」なども登場する【写真3】【写真4】【写真5】【写真6】【写真7】。
|
|
|
【画像1】1つの生命体のように機能する知能都市の風景。ミクの住むインテリジェントハウスの屋上には植物工場のような菜園がある
|
【画像2】未来型バイク「インテリジェントツーホイール」に乗る母親とミク。ピアニストである母親の声は、タレントの早見優が担当している
|
【画像3】宇宙エレベータを走るシャトルに乗って宇宙へ。ミクの隣の女性はへディ博士。実は彼女は宇宙エレベータの研究施設の所長だった。声の担当は戸田恵子氏
|
|
|
【画像4】宇宙エレベータその1。地球から約3万6千km離れた静止軌道上まで伸びた未来の新輸送システムだ
|
【画像5】宇宙エレベータその2。エレベータから地球を俯瞰したところ。シャトルに乗って宇宙に駆け上るところ
|
配給元となるウォークの小池裕志氏(映像事業部チーフプロデューサー)は、「2年ほど前から、このプロジェクトをスタートした。実際の製作は今年初めになってから。それまで科学的な検証などの前準備に時間が掛かった。技術的なブレークスルー後の世界を描くことで、子供たちに頑張ってもらいたいという思いを込めて作った」と語る。
とはいえ、このコンテンツはいわゆる解説調の難しい科学アニメーションではく、未来の夢の科学について親子で語れる楽しい内容になっている。半球スクリーンのドームシアターで繰り広げられる映像は、サウンドと相まってライド感にあふれ迫力満点だ。
本コンテンツの一般公開は8月11日から。平日は1回(12:30開始)、土日祝日は2回(12:30および15:00開始)ほど上映される。上映時間は約30分間。なお未来館で公開後、国内や世界の大型映像館、科学館、プラネタリウム館などにも配給し、順次、上映を開始する予定だ。
■URL
日本科学未来館
http://www.miraikan.jst.go.jp/
ニュースリリース(PDF)
http://www.miraikan.jst.go.jp/
( 井上猛雄 )
2007/08/07 16:13
- ページの先頭へ-
|