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第3回「わんだほーろぼっとか~にばる」開催
~ROBO-ONEタイトルホルダーから4軸ロボットまでが楽しめる空間


 2007年7月15日、東京都・文京シビックセンターにて「第3回わんだほーろぼっとか~にばる」が開催された。前回に続き、今回も優勝者にはROBO-ONE本選への出場権が付与された“ゆるゆるな大会”に、39名のエントリーが集まった。


台風でも参加者39名+観戦者も!

 前回と同様、今回の「わんだほーろぼっとか~にばる(以下「わんだほー」)」は「第12回ROBO-ONE決勝出場権認定大会」となっており、優勝者は9月15日、16日に香川県高松市で行なわれる同大会の予選が免除される。となると、バリバリの格闘大会が想像されるかもしれないが、その想像は間違いだ。「わんだほー」は開催時間のほとんどを予選に費やし、その予選も「ダッシュ! 2000」「ボトルトラクション」「サイコロシュート」「キューブ」という、「ゆるゆる~っ(主催者談)」とした格闘以外の競技で行なわれる。格闘を行なうのは、その予選を勝ち抜いた上位4機だけという、異色の二足歩行ロボット競技会なのである。

 だからといって出場権を得たロボットまで「ゆるゆる~」かというと、そんなこともない。前回の「わんだほー」における出場権獲得者・くぱぱ氏の「クロムキッド」は第11回ROBO-ONEで軽量級優勝を果たしている。

 今回は運営の都合上「約40人」と参加枠が決められていたが、エントリー開始から9時間弱で埋まってしまうほどの大人気イベントとなった「わんだほー」。当日は全国に大きな被害をもたらした台風4号が関東を直撃するかもというあいにくの天気だったが、棄権者はわずか。それどころか「当日入りは台風でダメだと思ったんで」と、前日入りした遠方からのエントリー者や、開場時間に訪れた観戦者がいたほどだ。

 筆者もいったいどんなロボットが出場権を取るのか、いったいいくつの“笑える”場面に出会えるのか、そんな興味を持って取材に伺った。


力のダッシュと度胸のボトル

 まず最初に行なわれる予選競技は「ダッシュ! 2000」と名づけられた徒競走だ。前回まではタイトルのとおり2,000mm(=2m)の直線コースだったが、今回は1m地点にパイロンを立て、Uターンしてスタートラインまで戻ってくるタイムを計測することになった。

 直線だけなら、しっかりロボットを調整すれば“ボタン押しっぱなし”でもゴールできるが、ターンが入れば(多少は)操縦のウデが必要になる。正常進化と言えるだろう。

 この「ダッシュ! 2000」は2機が同時にチャレンジするのだが、この組み合わせは、ロボットやビルダーの実績に応じて主催者が決めたものになっている。というのも、この2機での勝ち負けがポイントに反映されるので、あまりにも実力がかけ離れた対戦にならないように考えられているのだ。

 ということで予選最初の対戦は、前回出場権を獲得した「クロムキッド(くぱぱ)」vs ROBO-ONE常連のスミイファミリー新造機「ありまろ7(スミイ・ママ)」というスピードスター対決。クロムキッドは横向き、ありまろ7は正面向きでスタートしたが、アナログコントローラーの能力をフルに生かしてスムーズな旋回を見せたありまろ7が、7秒で先着(セブンが7秒なんて出来すぎ?)。クロムキッドも11秒でゴールし、最終的には全体の1位と4位になるタイムの争いになった。

 そうかと思えば「ローリング・ピラニ(法政大学電気研究会・A)」vs「で・か~る(道楽、)」のように、勝者のローリングピラニが2分05秒、敗者ので・か~るが2分33秒という長期戦もある。同じ競技とは思えないほどタイム差があるが、前者は素早さにどよめきが起きていたし、後者では競技中ずっと笑いが起きていた。どちらも会場が盛り上がっていたことは太鼓判である。


【動画】クロムキッド(左)vsありまろ7(右)。走りながら旋回するモーションで、ありまろ7があっという間にゴール ローリングピラニ(左)vsで・か~る(右)。ローリング・ピラニは有線操縦だ

 予選2競技目は「ボトルトラクション」。2mのコースで500mlのペットボトルを何本運べるかを競う。制限時間は1分で、「本数×到達距離」が最終的な成績になる。つまり、1本積んで2mと、2本積んで1mは成績としては同じだ。また、“押す”よりも“引く”ほうが難しいので、“引く”機体の記録には+20cmのボーナスがある。短時間で2mに到達しても成績には反映されないので、制限時間一杯までかけて運べる限界の重さをチョイスする作戦能力が必要になるのだ。

 さらに、他の記録を見て自分の積載量を調節できないため、この競技は先に行なうほうが不利になる。一般的な競技会なら抽選などで平等にするところだが、前の「ダッシュ! 2000」と同じように、主催者が過去の実績などを見て決めた競技順で行なわれるあたりが「わんだほー」の特徴だろう。

 ということで先陣をきったのは、ROBO-ONE軽量級優勝を果たしたクロムキッド。前回は4本を2m引いて820cmという成績だったが、今回は6本を引いて「1,220cm」という、前回の優勝記録1,020cmをはるかに越える記録を打ち立てる。その後兄弟機の「ガルー(くまま)」が同点の記録を作るが、なかなかこれを越える記録は出ない。

 そんな中で中盤に登場したのが、前回「ボトルトラクション」でトップだった「フロスティ(FrostyDesign)」。なんと10本を引くチャレンジを行ない、1分キッチリかけて2mに到達。「2,020cm」を記録した。その後もこの記録を越える機体は現れず、今回もダントツのトップを獲得した。記録の背景には「滑らないグリップ足」や「かごをまっすぐではなく、ジグザグに引く」といった工夫が見えたが、見えにくいところでは「姿勢をアナログで制御していた」点がある。効率よく引けるように、機体の姿勢を見ながら前傾具合をアナログ的に操作していたというのだ。ここまでくると、次回は何本引くのかを楽しみにしたくなる。


【動画】かご一杯のペットボトル10本×2mを引ききった「フロスティ」。絶え間なく足踏みを続けるモーションもこの競技に向いていたのだろう ほぼノーマルのKHR-2HVながら、市販機ベースの参加者の中では最高の540cm(4本×130cm+20cm)を記録した「いちろー(あまね)」(写真右)。機体のひざに引っ張る紐を結びつける工夫が生きた 1/60のガンダムのプラモデルにサーボを組み込んだ「ガンダム(まこ)」。自重が軽すぎてペットボトルが引けないため、かごだけを引っ張って競技参加。この場合の記録はその場で「距離×0.6」と決められた

運のサイコロと作戦のキューブ

 最初の2競技は主催者の判断で対戦相手が決められていたが、ここで“実際に”同じくらいの能力の機体同士が対戦するように、今日の成績をベースに対戦相手が組み替えられた。つまり、直接対戦する相手が現在のポイントで自分のライバルにあたるわけで、勝てば上位に、負ければ下位に落とされてしまうのだ。しかも、スピード(ダッシュ! 2000)とパワー(ボトルトラクション)が同じくらいの機体同士ということだから、勝負はどっちに転ぶかわからない、というわけである。

 組み替えて最初の競技は、“わんだほーオブわんだほー(勝手に決定)”といえる「サイコロシュート」。旧ROBO-ONEリング(1辺180cmの正方形)の向かい合う辺をゴールラインとして、ぬいぐるみのサイコロを相手ゴールラインの向こうに落とすと得点。3分間で多く得点したほうが勝ち、というゲームだ。ただ、この得点はゴールに入った数ではなく、ゴールラインの向こうでの“サイコロの目”。つまり6回相手のゴールに叩き込んでも、すべて出目が「1」だったら、相手が「6」を1回入れるだけで同点にされてしまうのである。

 ここで高得点をたたき出したのは、「AEROKID2(いすぜん)」と「ビリジアン(ブラスト)」の2機(13-0での勝利)。また、得点上位同士だったありまろ7 vs フロスティの戦いは12-10の接戦となり、見ている人も大盛り上がりだった。

 ちなみにこの競技、“サッカー”と言いつつ手でサイコロを持つこともOK。何機か挑戦して成功していたが、印象的だったのは木製ロボット(に見えた)「Kinopy(小田利延)」。サイコロを持つ姿はそのまま絵本から抜け出てきたようだ。対戦は惜しくも敗れてしまったが、各所から「かわいいですねぇ」と声をかけられていた。


主催者側から出た“助っ人”の「ファイマン(AIR)」と対戦したAEROKID2。お互いにKONDO CUPを経験しているだけに、素晴らしい熱戦だった 【動画】見た目がカワイイkinopy。歩いている姿に「ポクポクポク…」と擬音をつけたくなる。しかしサイコロを持ち上げて素早く運ぶ実力はかなりのものだった

 予選の最後は、新競技の「キューブ」。3機1チームで対戦し、中央にあるキューブをより多く自分たちの陣地に引き込んだほうが勝ち、というゲームである。写真で言えば、オレンジの風船が付いたチームは今整列している手前側90cmの範囲(写真では見難いが、フィールドの継ぎ目がある)に引き込むことになる。制限時間は3分で、相手陣地にあるキューブは奪うこともできるし、フィールドの外に落とせば中央のグレーゾーンに戻される、というルールになっていた。

 チーム分けは、ここまでの予選3競技の成績に応じた「上位」「中位」「下位」の機体が自動的に振り分けられて、その場で発表になる。そのため、チームとしての作戦もその場で考えなくてはならない。しかし、競技自体が新しく、作戦の立てようがなかったせいか、第一試合をほとんどの参加者が覗きに来るという事態になった。

 その第一試合は「ありまろ7」「fighting-γ(石井英男)」「ばけーしょん(やなか6丁目)」のオレンジチーム対「クロムキッド」「KRAFTWERK(酉旦那)」「かじろう(ナベ☆ケン)」の青チーム。

 スタート直後からクロムキッドがパワーとスピードを活かしてキューブを自陣に押し込んでいく。ありまろ7が何とか押し返そうともがいているうちに、操作を間違えてしまったのかリングアウト。一番機動力のあった「上位」の機体を失ったオレンジチームは苦しくなり、競り合いの中でfighting-γもリングアウト。その後青チームも2機が落下し、残ったのはクロムキッドとばけーしょんという状態に。ROBO-ONE軽量級優勝のクロムキッドを相手にして旧KHR-1ベースのばけーしょんがキューブを取り返せるはずもなく、青チームの5-0圧勝となった。

 その後の試合でも、「上位」としてチームに入ったエース格が試合を支配する場面が多く、エースが落下してしまったチームが一気に逆転されてしまうようなケースもあった。かといってゲームはエースだけのものではなく、有線操縦の4軸ロボットが、あまりにスピードが遅いために周囲から放って置かれるのをいいことに敵陣深くまで侵入。相手陣地に合ったキューブを体ごと押し出してチームに貢献した、という場面は感動を呼んだ(少なくとも筆者は感動したのだ)。


「キューブ」のフィールド 【動画】第一試合。キューブは1つ120gと、けっこう重い。ボールのように転がることもないので、「蹴る」より「運ぶ」能力が活きていた フロスティ(中央のオレンジの風船)は自陣にキューブを運んでいる。一方kinopy(左の青い風船)は相手陣地のキューブを落としにかかっている

決勝は“奥様決戦”

 予選が終わって、最後は予選上位の4機によるトーナメントと、“それ以外全機”によるランブルが行なわれる。

 らんぶるはもう無法状態で、制限時間の5分がたっても5機が残ったため、延長戦を開催。最後はARIUS(ARINA)が生き残って優勝した。

 決勝トーナメントに進出したのは、「クロムキッド」「フロスティ」が同点1位、3位「ありまろ7」、4位「ガルー」という4機。まず「クロムキッド」と「ありまろ7」が戦い、3分戦ってお互いに決定打が出せず、クロムキッドが2ダウン(4スリップ)で敗退。もう一方の「フロスティ」vs「ガルー」は3分間で決着が付かず、延長戦のサドンデスマッチに。空振りが目立っていたガルーは、延長戦では操縦者のくまま氏が感覚を掴み、最後は左パンチでダウンを奪って決勝に上がった。

 女性操縦者同士、しかも奥様同士(スミイ・ママ氏はスミイファミリーのお母さん、くまま氏はくぱぱ氏の奥さん)という珍しい対戦となった決勝は、お互いに素早く動き回る、スピード自慢同士の戦いに。パンチを打ち合う激しい戦いになったが、両機ともに安定しており、なかなか倒れない。試合中盤でありまろ7がカウンター気味に入ったパンチで奪った1ダウンを守りきり、第3回わんだほーろぼっとか~にばるを制した。

 もともと先日行なわれたROBO-ONE Special CUP(つまりサッカー)用に開発された機体で、バトル向きではないというありまろ7だったが、スミイ・ママ氏は「アリキオン」とともにROBO-ONE GPを戦っていた経験のぶん、戦いを優位に進められたのかもしれない。一方のガルーを操縦したくまま氏は負けてもさばさばしたもの。手につけたパンチを当てるセンサーがうまく働いていなかったようで、それだけは残念そうだった。


【動画】36機が参加したランブル。フィールドから落ちたら負けだが、歩くだけで衝突して落ちる機体もいるロボ密度 ランブル優勝のARIUS。予選は5位同点で惜しくも決勝トーナメント進出ならず ありまろ7 vs クロムキッド。今日一番最初に対戦した2機が、再び準決勝で激突した

フロスティvsガルー。バトルモーションはほとんど入っていないというフロスティだったが、安定性で延長戦まで持ち込んでいた ありまろ7vsガルーの決勝

勝利の瞬間、とても嬉しそうなスミイ・ママ氏と、スミイファミリー。ロボットを楽しむファミリーの代表格だ 優勝したありまろ7と優勝カップ、第12回ROBO-ONEの決勝出場権認定証。手の先にある花形の部品はじつはボールを掴むためのもの

「みんな楽しんで帰る」競技会

 「二足歩行ロボットで、おおむね歩けばOK」という、非常に緩い規格で参加できるため、「わんだほー」の出場ロボットを見てみると、たった7軸しか可動軸のない小軸ロボットから市販機ノーマル、市販機ベース、ROBO-ONE GP選手まで、バリエーションが豊富だ。それもあって敷居が低いのか、今回も「コレがロボットのイベント初参加なんですよ」という人が何人もいたようだ。

 「わんだほー」は最後にバトルこそあるが、その開催時間のほとんどを予選競技に費やしている。予選の途中で対戦するロボットの能力を横並びにする配慮や、「運」で左右される競技内容を持ってくることで、参加者ができるだけ楽しめるように構成されていると言えるだろう。

 新競技は事前にスタッフでテストされて考えられており、4軸ロボットとROBO-ONE GP選手が一緒に競技して遊べるイベントとして作られているのである。ここが見ている人に「参加したい」と思わせ、参加している人に「また来よう」と思わせる理由だろう。派手な格闘やスピードに乗ったサッカーは楽しいが、二足歩行ロボットで楽しく遊ぶには、別に格闘やサッカーである必要はないのである。

 運営スタッフが基本的にボランティアでまかなわれている関係で、あまり参加人数を増やせないのが惜しい。せめて、二足歩行ロボットを買って(ないしは買おうと思っていて)、「でも競技会までは、ちょっとなー」と思っている人には、ぜひ見学に来ていただきたい。といっても、イベントが大きくなるとこのいい雰囲気がなくなってしまう可能性があるわけで、悩ましいところだ。

 次回はまた来年に行なわれる予定だが、掛け値なしに楽しみである。


今回は運営をスムーズにするために、各参加者に記録用紙が配られた。途中で発表される記録と異なっていた場合、これを元に自分で確認できる kinopyはJRサーボを全身に使用しており、アルミブラケットメインで作られている。木の模様のシールを貼って、“らしさ”を出しているのだ。デザインが決まった時点で「これは木の模様しかないだろう」と思ったそうだ kinopyのモーション製作画面の背景は、しっかりkinopyの絵に替えられていた。凝ってます

小学生の女の子もオペレーターとして参加。真剣な表情で楽しんでいたようです 【動画】有線操縦が許されているので、複数の機体が動く競技では大混乱になる。それも「わんだほー」

URL
  わんだほーろぼっとか~にばる
  http://www.page.sannet.ne.jp/y_ishikawa/wndrb/index.html

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第2回「わんだほーろぼっとか~にばる」開催(2007/01/10)


( 梓みきお )
2007/07/30 00:03

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