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Transducers 2007 前日レポート
「ミクロの決死圏」を具現化するマイクロマシン技術



会期:6月10日~15日(現地時間)
会場:フランス リヨン市
   リヨン国際会議場(Centre de congres de Lyon)


 マイクロマシン技術に関する世界最大規模の国際学会「Transducers 2007(The 14th International Conference on Solid State Sensors, Actuators and Microsystems)がフランス南部最大の都市リヨンで始まった。

 マイクロマシン(微小機械)とはマイクロメートル(100万分の1メートル)オーダーの寸法しかない微小な部品のことで、最近はメムス(MEMS:micro electro-mechanical systems)と呼ばれることが多い。材料にはマイクロプロセッサやメモリなどと同じシリコン基板を使い、プロセッサと類似の半導体微細加工技術によって製造する。

 半導体微細加工技術を流用していることはマイクロマシン(MEMS)の大きな利点で、大量生産によって製造コストを著しく下げられる。このため、微小で安価な部品を作れる。具体的にはセンサーやポンプ、バルブ、歯車、モーター、ミラー(鏡)などのさまざまな部品に応用されつつある。

 応用分野は民生や工業、医療、自動車など、非常に幅広い。特にアグレッシブなのは医療分野で、シリコンが人体に無害であることから、人体に埋め込むデバイスの研究が非常に盛ん。例えば、電池ごと人工内耳を埋め込んだり、目薬の投薬システムをまぶたの上に埋め込んだりといった研究がある。将来は映画「ミクロの決死圏」(潜航艇と医師を微小にして血管から人体に注入し、重篤患者を治療するフィクション)を具現化できそうな技術分野なのだ。

 こういった現況を反映し、Transducers 2007で発表される技術内容は多岐にわたる。ここでは6月11日~15日に開催されるカンファレンスから、概要を紹介しよう。


6月11日:チップサイズの原子時計が登場

 カンファレンス初日の午前は、3件のプレナリセッション(基調講演)が予定されている。初めにハンドヘルドやポータブル電子機器、自動車に向けたMEMS技術とナノ技術に関し、University of California、Berkeley校のA.P.Pisano氏が講演する。続いてカーボンナノチューブセンサーのコンセプトをETH ZurichのC.Hierold氏が解説する。最後に東京大学のT.Kitamori氏が微小な化学反応システムをチップ上に実現する技術について述べる。

 昼食休憩の後は、午後の最初のセッションが始まる。ここからは同時に4つのセッションが3部構成で進む。

 午後の最初のパートは、「高精度タイムキーパー」のセッションが興味深い。始めに、チップサイズの微小な原子時計に関するHoneywell Aerospace Research Labs.の招待講演がある。フランスとポーランドの大学からも、超小型原子時計に関する技術の共同発表が予定されている。

 午後の2番目のパートでは、「エネルギー収集」のセッションに注目しよう。まず、生体埋め込み用燃料電池セル技術を、ドイツのUniversity of FreiburgとHSG-IMTが共同で発表する。続いて振動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電技術についてベルギーのIMECなどが述べる。超小型の熱電発電技術をドイツのUniversity of FreiburgとTechnischen University of Munchが共同発表する。

 午後の最後のパートでは、「医療用マイクロシステム」のセッションが目を引く。生体内で組織を光学的に検査するシステムを米Advanced MEMS Inc.と米Beckman Laser Institute、米Case Western Reserve Universityが共同で発表する。生体から微量の血液を採取するデバイスの開発成果を米University of Michiganと米Pizer Corp.が共同で述べる。


6月12日:微小な発電機でデバイスを駆動

 カンファレンス2日目の午前も、4つのセッションが同時並行で開催される。前半と後半の2つのパートがある。

 前半のパートでは、「マイクロ発電機」のセッションが面白そうだ。放射性同位元素の放射エネルギーで動く静電アクチュエータや電子回路などに関し、米Cornell Universityが招待講演で解説する。続いて電磁力による微小な発電機をトルコのMiddle East Technical Universityが発表する。1cc当たり5mWを発電し、5年の寿命を備える微小なバッテリを米Cornell Universityが発表する。本田技術研究所は、MEMS技術による燃料電池セルの設計と製造について述べる。

 午前の後半のパートでは「医療用マイクロシステム」のセッションが再び開かれる。まず、家庭での診察に向けた健康管理チップを物質・材料研究機構などが共同で発表する。水で分解する微小な短針を使った皮下投薬技術について立命館大学らのグループが述べる。低消費電力のマイクロバルブを利用した投薬システムを米University of Michiganと米University of Wisconsin、米航空宇宙局Ames Research Centerが共同で述べる。

 12日の午後は、口頭講演は1パートだけで、その後はポスターセッションとなる。口頭講演では「健康モニタリング」のセッションが興味深い。人体にセンサーを装着して人体の動作を認識するシステムを、東京大学とオリンパスが共同開発中である。今回はシステムの基本アーキテクチャと動作予測手法が紹介される。


6月13日:微小電極アレイで神経を刺激

 3日目も午前に2パート、午後に1パートの口頭講演があり、その後はポスターセッションとなる。

 午前の最初のパートでは、「神経インターフェイス」のセッションが目を引く。網膜神経の信号を記録する微小なプローブ電極アレイを台湾のNational Tsing-Hua Universityが発表する。網膜やせき髄などの神経組織に電気刺激を与えることを狙った高密度電極アレイを米California Institute of Technologyなどが共同発表する。神経の3次元組織を研究するための、電気刺激および電気信号記録システムについて米Geogia Institute of Technologyらのグループが述べる。

 午前の後半のパートでは、「触覚センサー」のセッションに注目しよう。手袋型の触覚センサーを名古屋大学が、3軸の触覚センサーを台湾のNational Tsing-Hua Universityがそれぞれ発表する。


6月14日:ジャイロスコープに注目

 最終日である14日は、午前に2パート、午後に1パートの口頭講演が予定されている。

 午前の前半のパートでは、「光MEMS」のセッションがまず目を引いた。デンソーが超小型のレーザー走査モジュールを発表する。午前の後半では、「ジャイロスコープ」のセッションに注目しよう。ガス流体のジャイロスコープを立命館大学らのグループが、ラダー構造の高精度ジャイロスコープを村田製作所が発表する。

 午後はセンサーの講演が目白押しである。「ガスセンサー」、「磁気センサー」、「圧力・音響センサー」のセッションが予定されている。

 このほかにも注目すべき講演は少なくない。今後、現地レポートをお届けする予定なので期待されたい。


URL
  Transducers 2007のホームページ(英文)
  http://www.transducers07.org/


( 福田 昭 )
2007/06/12 00:01

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