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ロボラボトークセッションレポート

~産業用ロボットのなりたちと近未来の新世代ロボットについて

 大阪のロボットラボラトリーは8月29日、「産業用ロボットのなりたちと近未来の新世代ロボットについて」をテーマに、株式会社 安川電機 新規事業推進室 事業推進担当課長の林田直人氏を講師に招き、トークセッションを開催した。

 ロボットラボラトリーは、2004年に大阪市が次世代ロボットテクノロジー(RT)産業創出のために開設した拠点である。大阪の産業競争力を高め、経済を活性化するため、大阪のもつ都市基盤や技術力などの潜在力をいかし、内外からの活発な投資の促進を図るとともに、次代を担う成長産業分野の育成・振興に取り組むことを目的に、ロボット関連分野の市場の創出をめざしている。

 また、ロボットビジネスの最新情報発信基地として、毎月一度、ロボラボトークセッション開催している。


産業用ロボットのなりたちと現状の市場

 '80年代に普及が始まった産業ロボットは、ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)により、安全性や法規制の問題が規定されており、その規約にのっとった性能やパフォーマンス、ルールを守っていれば保険や安全性がクリアしているという社会的認識がある。現在、サービスロボットについても、同様な規定を定めようという動きがヨーロッパで生まれており、日本からは安川電機がメンバーとして参画しているという。

 林田氏は、「日本が今後、ロボット経済のトップという地位をどう維持していくかという問題は、業界全体でもりあがっていかないとうまくいかない。」という。


産業用ロボットの生い立ち(1920-1962) 産業用ロボットの生い立ち(1968-1985)

産業用ロボットの特性。人件費の安い発展途上国でなぜロボット化が進のか? '90~'99年のグラフ
 日本が今まで世界のロボット産業をリードしてきた理由としては、欧米では宗教的な背景がありヒューマノイドロボットを作ることに、文化的に否定されてきたことをあげた。特にサービスロボット系のヒューマノイドロボットは、欧米では、「やらない/できない」という風潮にあり、日本が牽引していくしかないのが現実であるという。

 そうした文化性があり、日本がリーダーシップを取りロボット産業は発展してきた。

 「サービスロボットに関しては、ますますこの傾向が強くなるということを、いい意味で認識してほしい」と林田氏はいう。

 また、今後のロボット産業の動向を予測する上で、中国をはじめとする人件費が安い発展途上国の存在が問題としてよくあげられるが、それについては'90年~'99年までの資料を提示した。グラフを見ると、ロボットの単価が下がってくる中で、発展途上国の人件費が上昇してきているということがわかる。

 林田氏は、「業界は少し自信を持って、ロボット産業を考えてもいい。これは、産業ロボットに関わらずサービスロボットについても同じことがいえる。一般に言われるほど、人件費とロボットのコスト差はなくなってきている。」という。


安川電機のロボット事業戦略

 林田氏は、安川電機のロボット事業の戦略を次のように語った。

 「当社は、大きなマーケットに対して最適なロボットを提供するというのが基本的な考え方。現状は大きく6つの製造業分野に、それぞれ最適なロボットを提供している。この考えの延長に「新世代ロボット」がある。製造業から新世代ロボットを生み出し、それをサービス業に転換するという戦略だ」


安川電機ロボット事業の戦略。6つ製造業分野に、最適なロボットを提供している ロボット市場と安川電機のシェア推移

 産業用ロボットとは、上記グラフで示したとおり5万台で成熟産業と言われてきた。ところが2004年から、また産業が成長を始めている。これは、少子高齢化社会の影響で、従来のロボットマーケットが広がり始めたということだと考えられる。産業用とサービス用という区別をつけるのもいいが、従来のロボットマーケットも広がりつつあるのが現状だという。


サービスロボットの取り組み

21世紀のロボット予測。生活分野をはじめとする新分野での市場規模拡大が期待される
 次に紹介されたのは、日本ロボット工業会、経済産業省が発表しているデータである。

 今後、日本では15歳未満の人口比率が下がっていき、65歳以上の人口比率が上がってくる。その中で、現在、6,000億の市場を持つロボット産業が、2025年には8兆円になるという予測が立てられている。

 林田氏は、この数字の根拠について、「減少した労働人口のうちの4%を労務費に換算し、それをロボットに適用できないか、という単純計算をしている」と説明した。


 安川電機の基本戦略である産業用ロボットは、「人間の労働の代行をする」と言っても、溶接作業や重量物を運ぶための専用機であった。だが、「新世代ロボットは、人間とそっくり同じことをさせよう」というのが、安川電機の考え方であるという。

 その考えに基づき双腕ロボットを実用化した。人間の腕の関節は、機械に換算すると7軸相当になる。このロボットの腕にも7軸を搭載した。7軸あれば、人間の動きが再現できるということは、医療工学から判っているという。

 安川電機では、10年前から関節に相応する箇所をモーターと制御装置、アンプで代替するロボットを開発してきた。そして、3年前に実用化した。

 このアームユニットには、関節に制御装置とモーター、減速機が一体となった、関節コンポーネントが入っている。あとは電源系とそれぞれケーブルが入っているだけである。それを7つ組み合わせて、人間と同様かそれ以上の動きを再現することができた。

 この関節の組み合わせてロボットを作り、ロボットを走らせるときには移動ユニットに乗せる、場合によっては小型のものでハンドを形成したりする。


次世代ロボット構築の進め方。コンポーネント/ユニットによる多用なニーズへの対応 サービスロボットの事例。SmartPallの概要

 林田氏は、アームユニットの活用例として、いくつかの例を紹介した。九州電力と共同で開発した活線作業用ロボットは、商用化された世界初のロボットである。アームユニットの技術は、医療機関や介護用の現場でも実用化されている。こうしたロボットは、マーケットニーズに応えて生まれてきたという。


九州電力と共同で開発した活線作業用ロボット。自走式AI走行台車「ヘルプメイト」の紹介 下肢機能回復用リハビリ機器にロボット技術を展開している 次世代ロボットは、産業用とサービス用に分割されるわけではない。技術とサービスのスパイラルが生まれる

 安川電機は製造業から始まって、いろいろなロボットを生み出してきた。

 林田氏は「新世代ロボットとは、製造業とサービス業が2つに分かれるのではなく、このループをまわしていくという考え方をしている。当社が培ったロボットや共通のコンポーネントが、コンビニエンスストア、自動車メーカーといったさまざまな業種の中で、全く違ったアプリケーションを搭載して使われていくというのが、基本的な考え方である。」という。


新世代ロボットの紹介

 安川電機では、現在次世代ロボットとして3機種を持っている。いずれも7軸のアームがベースになっているが、「開発していく中で、我々も初めて双腕であることのメリットに気づいた。」という。

 例えば、双腕にすることで、物を持ち上げるときに、バランスを保つことが容易になる。ロボットが部品同士の接着を行なう際も、ビジョンセンサー等に頼ることなくロボット自身の双方の腕の位置を微調整するだけで、位置あわせが可能となる。

 また、人間は、体の脇にあるものを、腕の角度を調整して掴むことができる。今の機械はこの動作が再現できていない。ロボットで本体の脇にあるものを掴もうとすると、体をずらして位置を調整して取らなくてはならない。7軸双腕ロボットは、腕の自由度がありボディが回転するために、人間が立っている領域に置いた時、同じ範囲内で人と同じ動作ができる。それが大きな特長となっている。

 このような機構のロボットを用いて、今、人間がやっている作業をロボットに置き換えようというのが、ひとつの発想であるという。

 この技術は、さまざまなアプリケーションに転換できると林田氏は自負している。安川電機は、まずはもっとも早く採用されそうな自動車メーカーに対して、技術の提供を始めている。現在、数百台が市場に出て24時間稼動しているという。


新世代ロボット 片腕7軸による人と同等な自在性を実現 自動車製造工程を例に、新世代ロボットの狙いを示す

 林田氏は、新世代ロボットの具体的な使用例として、自動化率の低い工程を「人手をロボットに」と、「人手を人+ロボット」に置き換えるという2通りの方法で作業効率をアップした事例を示した。

 林田氏は、「サービスロボットは、サービスを受ける人間のマインドと法環境が揃うのがいつになるのか、判らない。だが、マーケットがあるのは確実なので、当社としてはそこから始まると思っている。」と語った。


双腕ロボット MOTOMAN-DA30。双腕による人と同等な自在性を実現 MOTOMAN-IA20

ロボットラボラトリーリーダー/ビジネスプロデューサー 石黒周氏
 林田氏の講演を終え、ロボットラボラトリーリーダー/ビジネスプロデューサーの石黒周氏がコメントをした。

 「安全の問題は、数多くの事例をこなしていくしかないところがある。誰かが決めるというわけにはいかない。ひとつのアプローチとして、実証実験的なものも果たしていく必要がある。大阪でも実証実験を数多く企画していきたいと考えているが、その事例が次の法制化の刺激になり、産業化しやすくなると思う」

 石黒氏は、「パートナーロボット、人間とロボットの共存などと言われているように、これからのビジネス的な視点でもそれが正しいと思っている。

 製造業の会社である安川電機が、人間をきちんと全体のシステムの中にいれている。人間ができることをわざわざ人間を外して、ビジョンセンサーに置き換えることに意味はない。そうなるとコストも莫大になり、性能的な制約もうまれる。

 人間がシステムの中にいることを前提としたシステムやサービス、プロセスをつくりあげることを考えることが重要だ」という。

 また、同氏はロボットを開発するためには、大きな資本力が必要だが、サービスを展開するビジネスプランがあれば、大企業が開発した技術を利用して、ビジネスを設計することが可能であるとも語り、「サービス業の方が、自分で新しいサービスを展開する場合、市販のロボットに若干の改良を施す程度で事業に導入し、ロボットにできない部分は人間を配置して、いかに効率よく技術を使うか、というサービスプロセスを開発していくことができる。それが、ベンチャーや、中小企業がロボット産業に参入する場合のひとつの考え方になるであろう」などと述べた。


URL
  ロボットラボラトリー
  http://www.robo-labo.jp/
  ロボラボトークセッション
  http://www.robo-labo.jp/modules/rt_business07/
  安川電機
  http://www.yaskawa.co.jp/


( 三月兎 )
2006/09/08 00:34

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