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ロボット+IT=IRTは10年後の新産業を目指す

〜東大と7社が協働

情報ロボット融合技術=IRT

 8月4日、「東京大学IRT拠点」発足会が開催された。「IRT」とは通信や一般的なコンピュータ技術を意味する「Information Techonolgy:IT」と、実世界で形や動きを伴うロボット技術「Robot Technology:RT」を融合させた言葉。

 今回発足した「IRT基盤創出プロジェクト」とは、国立大学法人東京大学とほか7企業が、文部科学省が公募した科学技術振興調整費による「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」事業に参画。その1つとして「少子高齢社会を支える産業基盤の創出を目指して」と掲げて始めるプロジェクト。

 ロボット技術のみならず、ユビキタス技術をはじめとしたITやインターフェイス研究、生物学的知見などを融合。東京大学の持つ先端技術シーズと企業の持つ開発力とを合わせて、基礎研究の発展と、社会のニーズにこたえたアプリケーションを開発していくことまでを一貫して目指すという。

 10年の長期計画で、最終的にはヒューマノイド、社会・生活支援システム、パーソナルモビリティの3つのプラットフォームを実現する。「社会と人を支援する産業」を新たに創出することが目標。

 7社の内訳は、トヨタ自動車株式会社、オリンパス株式会社、株式会社セガ、凸版印刷株式会社、株式会社富士通研究所、松下電器産業株式会社、三菱重工業株式会社。それぞれ違う技術と開発力を持つ企業が共同し、なおかつ研究室単位ではなく東京大学全体と共同研究を行なうことは極めて珍しく、チャレンジングな取り組みとなる。研究員は、東大と企業合わせて100名程度。

 なお、科学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」は、10〜15年後の将来に産業化を目指す産学協同の先端的な研究開発推進を目的としたもの。今年度は15件(うち6件はフィジビリティ・スタディ)が採択された。「IRT基盤創出プロジェクト」はそのうちの1つだ。

 実際に採択された9件は、3年後に再審査が実施され3件にまで絞り込まれる。「IRT基盤創出プロジェクト」が3年後に再審査を通過できるかどうかは分からないが、継続課題となった場合は他のプロジェクト同様、7年目に中間評価を受けたあと、10年後にプロジェクト終了となる。

 予算はIRT基盤創出プロジェクトの場合は年間5億円程度。同時に、協働する企業からも同等規模の予算を獲得する。


発足会レポート

 発足会では東京大学総長の小宮山宏氏をはじめ東大の各研究室の教員ほか、三菱重工業を除いた各企業人が一堂に会した。現時点では未決定の部分も多いようだったが、発足会の模様をレポートする。

 司会進行は、ヴァーチャルリアリティ研究ほかで知られる東京大学教授の廣瀬通孝氏。廣瀬氏は、このプロジェクトでは「インターフェイスとしてのロボット」、「メディアとしてのロボット」の実現を目指す「サイバーインターフェイス研究開発」の研究責任者をつとめる。

 まず最初に文部科学省 科学技術・学術総括官の吉川晃氏が挨拶を述べた。3年後に3プロジェクトへと選別することになっている点について「IRT拠点がいち早くキックオフしたことは有利に立つ」とコメントした。そして「企業の技術力と大学の頭脳が合わさって少子高齢化社会を支えてもらいたい。ますます東京大学がイノベーション分野でも力を発揮することを期待したい」と述べた。

 続けて、東京大学総長の小宮山宏氏が「IRT基盤創出プロジェクトは、生活の質を本質的に上げてくれるようなプロジェクトとしてスタートした」と、プロジェクト全体について述べた。

 小宮山氏は「日本は課題先進国だ」と語った。少子高齢化、エネルギー、環境などの各種課題が日本では他国に先駆けて先進的に現れるという意味だ。また、「日本には課題の答えを作り出す能力があり、課題の答えを発していくことが日本の責任だ」という。

 明治以来、日本は産業を振興させて生活を豊かにするという「途上国型のモデル」で成長してきた。だが、今やそれを逆転させて、まず自分たちの生活を考え、そこから産業を考える必要があるという。

 「IRTは結果が分かりやすく、この分野は東大の人材も厚い。高齢化社会のQOL(Quality of Life)を支える新しい産業をつくれるだろう」とプロジェクトの成功に自信を見せた。同時に「新しい産業を作ることは既存の制度だけではできない。新しい産業を作るためには規制を撤廃していかないと難しい。イノベーションが革新的であればばあるほど、さまざまな既存の社会の仕組みと抵触することが出てくる。逆にそれを社会に訴えて、修正していくことが重要だ」と述べた。


東京大学教授・廣瀬通孝氏 文部科学省 科学技術・学術総括官 吉川晃氏 東京大学総長・小宮山宏氏

IT+RTが「IRT」 IRTは10〜15年後に多様な産業を出口として目指す

プロジェクト実施体制 IRT基盤構想の要点

トヨタ自動車株式会社 代表取締役副社長 内山田竹志氏
 続けて、「IRTを通して引き起こすイノベーション」と題して、各企業がこの産学協働プロジェクトにおける自社のロードマップを示した。

 はじめにトヨタ自動車株式会社 代表取締役副社長 内山田竹志氏が登壇した。「労働人口が減少するなか、幸せな長寿社会を実現するための多様化・高度化したニーズにこたえるのがロボットだ。アシスタント、福祉、製造、モビリティの4分野で、人の役に立つパートナーロボットを開発していく」と述べた。

 基本的にトヨタは愛知万博(愛・地球博)でも活躍した「パートナーロボット」や「i-foot」、また現在開発中の「介助犬の役割を果たせるロボット」を発展させることを検討しているようだ。特に、自律的に判断認識ができ、動けるロボットを目標とするという。

 内山田氏は「ものづくりが得意なトヨタと、先端技術に秀でた東京大学とがIRT分野で融合することで、快適でゆとりある社会を目指して開発をすすめていきたい」と述べた。

 具体的にはヒューマノイドロボットは、まず小型で硬いものを扱う技術を確立して大まかに後かたづけができるレベルの実現を目指し、数年後には大きく柔らかいものを扱う必要があるベッドメイキング作業、最終的には抱きかかえ介助ができることを目指すという。

 またパーソナルモビリティは、人が行けるところはどこでも行ける技術を目指す。まずはタグ埋め込みなどによって環境知能を利用できる東大構内などからはじめ、最終的には横断歩道など、人の意図推定そのほか高度な環境認識が必要な屋外でも活動できるモビリティ技術を目標とする。


トヨタのヒューマノイドパートナーの開発ロードマップ パーソナルモビリティのチャレンジテーマは「東大から秋葉原までの自律移動」

オリンパス株式会社 執行役員・研究開発センターMEMS開発本部長・唐木幸一氏
 オリンパス株式会社 執行役員・研究開発センターMEMS開発本部長・唐木幸一氏は、「20年後には全ての先進国が高齢化社会に突入する」、そこでオリンパスは「医療、科学技術、バイオから参加したい」と述べた。

 オリンパスは基盤になる技術として、画像工学と光学技術、精密機械、MEMS技術を持っている。科学機器を通じて「人間のほうの技術開発」を行なうことでIRTのなかで役割を果たしていきたいという。

 具体的には、現状のバイオとメディカル技術から「人体のモニター技術」の開発を行なっていく。同社ではカプセル型内視鏡やプローブ顕微鏡などを開発しているが、現状ではまだ、細胞レベル・分子レベルで人体がどうなっているのかを精密にモニターするまでには達していない。

 そこでIRTプロジェクトにおいて、人体を詳細にモニターし「分子レベルにさかのぼった機能情報」を情報ネットワークに繋げる技術を開発していくという。


細胞レベルでの体内センシング/イメージング技術を開発、早期・微小疾患の診断治療システムを作る 細胞診断治療用プローブ開発のロードマップ 分子レベルの生態情報とロボット技術の融合を目指す

株式会社セガ AM市場開発事業部・田副康夫氏
 株式会社セガ AM市場開発事業部の田副康夫氏は「当社はアミューズメントがCG全盛になるまえからさまざまな映像表現に取り組んできた」と語り、インターフェイスとしてのロボット技術の可能性を述べた。

 セガでは、'99年以降、東大の中村研究室と共同研究を行なってきたが、今回、これまでの枠を超え、全ての動きを伴ったヒト型キャラクターを「ロボット」と再定義し、コミュニケーションの仲介としての「ロボット」研究をすすめる。

 動作認知や感情認知そのほかの技術研究を活かし「究極の自動化」を実現。それを「日常に現れるあらゆるヒト型に適用」し、10年後には人間の生活を豊かにする「ヒト型」を、「あまたのモニターに登場させる」という。

 具体的には、人間の動きや行動のデータベースを構築し、最終的には「動画アイコンパネル」などを作ることを目指す。公共のさまざまな場面で使えるヒト型キャラクターによる動画表現を伴った案内技術だ。ヒト型の動作をともなった表現は直感的に分かりやすく、あらゆる場面に適応できる。


実体から解放された「ヒト型」はあらゆる場面に登場する データベースから自動的に動きを生成する「究極の自動化」を目指す

複雑な機器の説明をヒト型キャラクターに実際にやらせて情報伝達する ロードマップ

凸版印刷株式会社 常務取締役・増田俊朗氏
 凸版印刷株式会社 常務取締役の増田俊朗氏は、「なぜ当社が参加しているのか疑問に感じている方もいると思う」と話を初め、これまでトッパンはインターネットでのコンテンツ展開など情報技術にも力を入れてきたと述べた。

 情報技術分野において、現在もっとも力を入れているのは、バーチャル・リアリティとRFID技術だという。そして2010年以降は、人間とロボットが共存する「環境」に焦点を当てることを目指す。

 増田氏は「人間とロボットだけに注目していても駄目だ」と述べ、ロボットと人間が存在する「空間」、「環境」を重視する必要があると述べた。電子タグ技術などを使って、ロボットと情報技術を融合させたコミュニケーション環境構築を目指すという。

 当面はショウルームのレベルで実験をすすめていくが、次のステップでは文化施設でのアプリケーション、最終的にテーマパークや展示会など多くの人が行き来してロボットと共存する環境を実現していきたいという。

 「それぞれのステップで東大の力を借りたい。わくわくする、面白くて新しいアプリケーションができればビジネスの世界でも成功する」と述べた。


凸版印刷は電子ペーパーやVR、RFID技術にも力を入れてきた 画像処理技術やデジタルアーカイブ技術を使った「人に優しいIRT環境」の実現が目標 室内での移動支援から屋外での案内などを目指す

 株式会社富士通研究所 代表取締役社長の村野和雄氏は「ロボットは次世代のコンピュータの1つの形。大きな柱を1つ立てるつもりでいる」と述べた。詳細は同社の内山隆氏が発表した。

 高速三次元視覚処理、運動制御・学習技術、自律化制御技術を用いて、サービスロボット「enon」などを開発している同社だが、目指すのはIRTを使った新しい社会であり、ロボット技術とユビキタス社会の融合だという。


株式会社富士通研究所 代表取締役社長 村野和雄氏 株式会社富士通研究所 内山隆氏

富士通研究所におけるロボット開発の歴史 三次元視覚処理、運動制御・学習、安全技術を持つ

ネットワーク、タグ技術と移動ロボット技術の融合 屋内外問わず人混みのなかでも移動でき、買い物支援や陳列棚配列ができるロボットを目指す

松下電器産業株式会社理事 コーポレートR&D戦略室室長・宮部義幸氏
 松下電器産業株式会社 理事 コーポレートR&D戦略室室長の宮部義幸氏は、ロボット開発について「効率性追求から人間性追求へ、機械中心から人間中心へとパラダイムシフトが起きている」と述べた。また「人と協調しながら働けるロボットは究極のユニバーサルデザインだ」とし、生活支援ロボット「ライフアシストロボット」の開発を目指す。

 同社では荷物を搬送できる移動ロボット、ポーターロボットを研究開発しているが、最初はそのような機能を絞り込んだ単機能型ロボットから始まるという。しかしやがてロボットは多機能複合型へと進歩し、さらにデジタルネットワーク技術によって家庭内機器と協働するようになる。将来的には街に出ても公共用ロボットが人間を助けてくれると述べた。

 宮部氏は「将来は各種センサーによって人の行動を認知できるようになる。家や世の中が、まるごとロボットになると言っても過言ではない。けっして簡単ではないが東大の力を借りてITとRTの融合をはかりたい」と語った。


効率性追求から人間性追求へのパラダイムシフトが起きているという 人間の「意のまま」をサポートするロボットの開発が目標

単機能型から多機能複合型へのロードマップ 将来はIRTによって町全体、家全体がロボットに

東京大学教授 下山勲氏
 最後に、「IRTイノベーションを引き起こす大学のコア技術」として、東京大学教授の下山勲氏が、東京大学における30年のロボット&IT研究の蓄積と、「IRT」の定義について述べた。下山氏はIRTプロジェクトでは、鋭敏な感覚を持つ自律的なロボットを実現するための「ロボットデバイス研究開発」の研究開発責任者をつとめる。

 下山氏は「ロボットは実世界と相互用する機能をもつ機械。ITはなかなか形が見えてこない。しかしキーボードをたたくとさまざまなことができる。両者を融合することで、今まで考えられなかった技術になる」と述べた。

 また、企業は独自の技術を持っている。いっぽう東京大学も30年の蓄積を持っている。これを融合することで新しい技術の可能性が生まれるという。

 ロボットデバイスの要素技術、制御技術、そしてRFIDのような環境知能化技術や、人間とコンピュータの間のインターフェイス技術を最終的にインテグレートするロボットシステム技術、それが東大IRT拠点構想の目標であるとし、IRTにおける各技術分野の基盤技術ロードマップを示した。


東大におけるITとRTの研究の変遷史 産学協働でイノベーションを起こす 視聴覚センサ技術ロードマップ

制御システム技術ロードマップ インフラ技術ロードマップ サイバーインターフェイス技術ロードマップ

ロボットシステム技術ロードマップ IRT全体のロードマップ。3つのプラットフォームをつくる

出席者一同
 最後に質疑応答が行なわれた。基盤技術の研究開発が目的なのか、具体的な応用開発が目的なのかという質問に対して下山教授は「IRTによって基盤的な科学技術の基盤を作り出し、『知の体系化』を行なうのが大学のミッション。しかし、企業と共働しているのだから、社会に出ていく製品開発も重要」、つまり両方が目的であると述べた。

 また小宮山総長は「エネルギーや少子化は重要な問題で、さまざまな学問が融合しないと答えが出ない。しかし、どうやって知を動員するのかが問題になる。そのためには、興味があって重要なものを取りあえず一緒にやっていくことが重要だ。それを具体的にしたものがIRTだ」と補足した。

 企業の力と大学の力を融合させるためには困難も多そうだが、1つのものをやってみることで新しいものが見えてくることを期待したい。


URL
  IRT
  http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/irt/
  産学官連携推進会議
  http://www8.cao.go.jp/cstp/sangakukan/suishin.html
  文部科学省 先端融合領域イノベーション創出拠点の形成(公募要領)
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/12/05122702/009.pdf
  文部科学省 平成18年度科学技術振興調整費の審査経緯及び結果概要について
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/05/06051814.htm


( 森山和道 )
2006/08/07 16:49

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