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【 2009/04/20 】
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【 2009/04/17 】
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フューチャー、東大 淺間 一教授によるセミナーを実施

~第2回サービスイノベーションワークショップ

東京大学人工物工学研究センター 淺間 一教授
 フューチャー イノベーション フォーラム(以下FIF)は7月28日、「第2回サービスイノベーションワークショップ」として、東京大学人工物工学研究センター 淺間 一教授による講演を実施した。

 本ワークショップはFIFが社会貢献事業として実施しているもので、参加費は無料。淺間教授は「顧客満足のサービスを創るRT(ロボットテクノロジー)とその適用例」と題した講演を行なった。

 RTはIT(Information Technology)に対する造語で、ITが情報社会(仮想世界)における情報処理、通信技術であるのに対し、RTは物質世界(実世界)における見地、計測認識、制御、動作、作業などの技術を含めた総合技術で、実世界において何らかの物理的インタラクションが可能なものを指す。経済産業省・ロボット政策研究会の定義ではセンサー、知能・制御系、駆動系の3要素技術があるものとして指定されている。

 淺間氏の講演はまず、元東京大学総長で現産総研理事長である吉川弘之氏の提唱した「現代の邪悪」を中心に展開した。


人工物工学センターの役割
 現代の邪悪とは、工学、技術の発達によりもたらされた、地球環境破壊や災害、病気、事故の大型化などを指す。こうした「工学、技術がなければ発生しない新しい問題」を解決する循環型社会を実現する方法論と、その体系化を目指すのが、淺間氏の研究対象である人工物工学であるという。

 問題の原因として同氏は「工学の学問体系は縦割り」であることを指摘。材料学、熱力学、制御工学、生産工学など、それぞれの学問分野がそれぞれ深い方向に行く傾向にあり、お互いの分野を見ることがあまりない。こうした現状を解決していくことで、現代の邪悪の解決に結びつくのではないかと考えているという。

 次に淺間氏は、RTによる新産業創造について言及。日本のロボット産業は現在5,000億~6,000億円で伸び悩んでいるが、産業用ロボットを含めた生産台数、保有台数ともに世界1位で、研究者の数や論文数も世界最高峰であるという。また、人材育成、教育にも積極的で、高専ロボコンやロボカップ、ROBO-ONEなど、日本発のロボット競技会も盛んなことを指摘した。

 ロボットの将来市場としては、これまで製造業を中心とした産業用ロボットは2010年に8,500億円、2025年には1.4兆円と、緩やかな伸びだが、公共、医療福祉分野、そして生活分野での利用が2010年頃から急速に伸びるという。

 レスキューロボットや原子力プラントで活動するロボットなど公共分野における市場は2010年に2,900億円、2025年に9,900億円。医療分野は2010年に2,600億円、2025年には1.1兆円に成長するとされ、特に癒し効果としてペットロボットに期待が高まっている反面、ヒューマノイドロボットについては、実際の介護に使用するには難しく、コストや安全性の面からも見直しが行なわれているという。

 生活分野のロボットは2010年に1.5兆円、2025年に4.1兆円市場に成長。警備用ロボットや掃除用ロボットなど、実際に仕事をするロボットから、ASIMOやwakamaruに代表されるコミュニケーション、エンターテイメントロボット市場が期待されているという。


公共分野のロボット 医療分野のロボット 生活分野のロボット

 また、サービスRT市場促進の阻害要因としては、運用には高度な知識が必要なこと、用途ごとに個別に開発され、流用が困難であること、アーキテクチャが複雑なこと、安全面の問題などを指摘。今後、RTアーキテクチャのオープン化や要素技術のモジュール化、共通・標準化などが必須であるとした。


脱物資化。ものからサービスへ
 このほか、サービス工学として、ロボットなど人工物によるサービス価値を提供することで、脱物質を図ることを提案。サービスはいくら消費しても廃棄物にはならず、人工物はサービス提供のためのデバイスとして利用される。同氏は、「物質面に価値を持っていくと、物を沢山作らなければならない」とし、価値は必ずしも物ではなく、サービスを付加価値として人工物を展開することで、経済活動を行なうことも可能であるとした。

 サービスとはユーザーを快適にしたり満足させたりできる行為のことで、将来の少子高齢化を前提とした社会では、すべてのサービスを人間が提供することは困難。ここにロボットを投入することで、人的リソースを解決するだけでなく、ユーザー側の心的負担も軽減できるという。

 同氏は例として介護問題について言及。現状の介護では一人のヘルパーが複数の被介護者の面倒を見るケースが多く、サービスが行き渡らないことがあるという。ここに機械を投入することで、もっと質の高いサービスを提供できるのではないかとした。また、ロボットを使うことで、被介護者側も気兼ねなく仕事を頼むことが可能で、効率的にサービスを享受することができるという。

 最後に淺間氏は、自らの研究室を紹介。同氏は、理化学研究所と共同開発した「レスキューコミュニケーター」などでも知られる。レスキューコミュニケータは、災害時にレスキュー隊が現場の状況を確認するために利用されるデバイスで、普段は家庭内の家電機器などに内蔵されるが、災害時にはバッテリで稼働し、音声による要救助者の確認などが外部から可能になるシステム。

 レスキューコミュニケータと小型飛行船を使った「ユビキタス被災者探索システム」の開発も行なっており、デバイスをあらかじめ広い領域に配置しておくことで環境を知能化し、被災者の探索をより効率よく行なうことができるようになるという。


ユビキタス被災者探索システムの概要 レスキューコミュニケータ(左)と情報収集用の小型飛行船

 また、「ユーザー適応可変環境システム」も紹介。ユーザーの状況に合わせて最適な動作をする機器を研究している。たとえばエレベータの利用では、ユーザーはあらかじめ何らかのIDを持ち、エレベーター側が健常者か障害者かを認識。健常者の場合は素早い開閉動作を、障害者の場合はゆっくりとした動作で開閉間隔を大きく、音声による案内もするなど、相手に合わせた動作が可能になる。

 淺間氏は、「ロボットビジネスはロボットを売るより、サービスを売るものにシフトしている。サービスプロバイダーがサービスをユーザーに提供するモデルになってきたことで、ユーザーの状態やニーズの自動把握、ユーザーに適応したサービスの自動提供などが必要になる」などとし、RTやユビキタスといった技術トレンド、モジュールの標準化などの実用化トレンド、規制緩和やロボット特区などの政策トレンドなどの融合が必要であるとして講演を終えた。


URL
  フューチャー イノベーション フォーラム
  http://fif.jp/
  【2006年4月24日】IRS、ロボット装備レスキュー部隊「IRS-U」の想定訓練を公開(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0424/irs.htm


( 清宮信志 )
2006/08/01 17:39

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