映画「ターミネーター4」ジャパンプレミアレポート

~マックG監督の「T5」構想や、アントン・イェルチン氏のインタビューも収録


日本人ゲスト・清原和博氏も加わった来日キャスト&スタッフによるステージの様子

 13日から始まる全国ロードショーを控え、映画「ターミネーター4」のイベントが立て続けに行なわれた。4日(木)には、東京湾に面する江東区豊洲地区の大型複合施設ららぽーと豊洲にて、主演のクリスチャン・ベイル氏を始めとする来日キャスト&スタッフが登壇した「ターミネーター4 ジャパンプレミア」を実施。翌5日には、コスプレイベント「なりきりターミネーター」が新宿ピカデリーにて、さらに6日には同じく新宿ピカデリーで来日キャスト&スタッフによる先行上映会での舞台挨拶が行なわれた。そして来日した主要キャストの1人であるアントン・イェルチン(カイル・リース役)の合同インタビューを行なう機会も得られたので、その模様もお届けする。ターミネーターイベントを堪能していただきたい。

ジャパンプレミアで展示されたリモコン可動式T-600型エンドスケルトン&T-600型原寸大オブジェ

 まずは4日夕刻に行なわれたジャパンプレミアのレポートから。2,000名が来場し、マスコミはスチール(カメラ)が90名、ムービーが30台という具合で、さすがはT4という大所帯となった。来日したキャストとスタッフ、日本人ゲストなどを紹介するのが普通だが、それは映画誌&サイトなどの常識。やはりここはRobot Watchらしく、まずは脇を飾っていたロボットたちから紹介したい。

 今回展示されていたのは2体。まずステージ上にいたのが、撮影でも使用されたというリモコン可動式のT-600型エンドスケルトンだ。おそらく、今年初めの日本マスコミ向けのフッテージ映像公開時のステージ上や、マックG監督&サイバーダイン・山海嘉之教授インタビューで2人の背後に立っていたT-600型と同じものと思われる。日本で一般公開されるのは今回が初めてらしく、主演したクリスチャン・ベイル氏やマックG監督、司会のクリス・ペプラー氏らの後ろで、赤く目を光らせ、首を振り、口を開閉して、来場者を威圧していた(?)。可動式といっても、さすがに歩いたりはできない模様だ。操作はリモコン式で、プロポを持った外国人スタッフ(おそらく映画撮影時も操作していたと思われる)の姿を見ることもできた。イベント終了後も少し残って撮影させてもらっていたのだが、分解しているところも少しだけ拝見。頭を外された、マニアックな意味で(笑)貴重な、抵抗軍に仕留められたかのようなショットもお見せしよう。

【動画】T-600型が稼動する様子。ライティングがいい雰囲気を出しているリモコン可動式のT-600型エンドスケルトン。左は司会のクリス・ペプラー氏T-600型のバストアップ
T-600型のお腹の辺りT-600型の脚部T-600型を分解中。頭部がない様子は、まるで抵抗軍の攻撃で吹っ飛ばされたみたい

 そしてもう1体が、ゴールデンウィークを挟んで23日間に渡って「全国縦断5000kmキャンペーン」で全国行脚したT-600型原寸大オブジェだ。レッドカーペットの最後のフォトセッション用スペースに立ち、来日キャストおよびスタッフ、日本人ゲストらに腕を組まれるなどして一緒にフラッシュの砲列を浴びていた。

 このオブジェは、劇中の壊滅したロサンゼルスの街でパトロールしていた1体を模したもの。街にたどり着いたハイブリッド・ターミネーターのマーカス・ライト(サム・ワーシントン)が、人と間違えて声をかけてしまい、執拗に攻撃を仕掛けてくる1体である。右手に折りたたみ式のグレネードランチャー付き6連ガトリングガンを構え、頭部にボロボロだが皮膚に見せかけるためのゴムマスクを被り、同じくボロボロのアーミールックのような服装をしているという外見だ。こちらは稼動するような機構は備えていないようだが(おそらくポーズも固定)、原寸大の精巧なフィギアという雰囲気で、かなりリアルに作られている。台座を除くと、劇中の設定である2m19cmはないかもしれないが、それでも190cmから2mはあり、子供が間近で観たら泣き出す可能性大だ。

T-600型原寸大オブジェ。T-600型はもっとゴツそうな感じだが、ややスマートに作られている?顔のアップ。左側は、エンドスケルトンがかなりむき出しになっている顔の右側のアップ。こちらはそれほどでもない
バストアップ腹部脚部
ガトリングガン左肩左ヒジ
手先右側面から。背後にガトリングガンの弾丸を詰めたバックパックを背負っているのがわかる

クリスチャン・ベイル氏やマックG監督も登壇したジャパンプレミアレポート

 続いては、ジャパンプレミアの模様をレポート。会場となったのは、ららぽーと豊洲の中庭ウッドデッキ。東京湾に面しており、船着き場もあるという具合だ。来日キャストおよびスタッフ、および日本人ゲストによるレッドカーペットが行なわれる前に、まずは景気づけとばかりにオープニングアクションショーが行なわれた。ショーは、会場がターミネーターに占拠されているという設定でスタート。来場者全員にあらかじめ記念品も兼ねたターミネーター(T-600型)マスクが配布されており、それを被って来場者がT-600型になるという筋書きだ。そして抵抗軍(日本支部?)のメンバーが、隅田川水上バスなどで知られる東京都観光汽船の観光船ヒミコ(マンガ家松本零士氏がデザインした宇宙船チックなデザインが特徴)で船着き場に乗り付けて、上陸戦を開始。スタントマンが鉄塔などから海に落ちたり、火薬が炸裂したり、炎が吹き上がったりと、なかなかハデである。

 しかし、抵抗軍の中にはどうもレジスタンスの戦士らしくない格好の人たちも混じっている。それが日本人ゲストの一員の、吉本T4メンバーであった。ザ・パンチ(パンチ浜崎氏、ノーパンチ松尾氏)、くまだまさし氏、しずる(村上淳氏、池田一真氏)、紅一点の渡辺直美さんの吉本の若手お笑い芸人4組で結成されたメンバーで、Tはターミネーターと映画を観て感動でこぼれるティアー(涙)をかけたのだそうだ。なお、ターミネーターマスクは報道陣には配られないのだが、たまたま余った分をいただくことができた。結構できがいいので、ちびっ子を驚かすのには持って来い。記者もちょうど夕飯時に帰宅できたので、家族の前に被って「ただいまー」と出ていったのだが(笑)、まぁ、高校生の息子たちと中学生の娘とカミさんにはかるーく流されたが、小5の次女は超びびりまくり。本当に記者が機械になったと思ったらしく(小5とは思えないほどピュアな子なのである)、涙目になっていた。長男と次男が小学校低学年より下だったら、大喜びしてくれただろうなとは思うのだが、このように泣かれるケースもあるので、通販などで購入した際は使用するタイミングに注意しよう(笑)。

観光船ヒミコ。きっと抵抗軍は本当に使えるものならなんでも使うに違いない会場は2,000体(ゴムの臭いや暑いせいで被らない人も多かったけど)のT-600型に占拠されたどう見ても、レジスタンスの戦士には見えない格好の人もいる吉本T4のフォトセッション

 続いては、日本人ゲストのレッドカーペットがスタート。メンバーは、ファッションモデルの冨永愛さん、タレント・女優の上原さくらさん、タレントの中鉢明子さん、タレントのもりちえみさん、クラブ・ラジオDJのDJ TARO氏、そしてメインゲストの元オリックス・バッファローズの清原和博氏というラインナップだ。清原氏は長渕剛氏の「とんぼ」のBGMに乗って登場。「日本の誇るターミネーター」ということで呼ばれたのだが、映画関連のイベントは初出演だそうである。さすがにその名前が発表されると、会場からも歓声が上がっていた。T-600型オブジェとのフォトセッションでは、現役を退いたとはいえ、さすがに体格はまだまだガッチリしており、ターミネーターと呼ばれても差し支えない。シリーズはすべて観ているそうで、「今回は激しいアクションはもちろん、主人公ジョン・コナーがとても魅力的な人間になっていました。ジョンとは何回もうちのめされるという環境が似ているかもしれないですね」とコメント。確かに、清原氏といえば現役時代は泣いたり怒ったりヤンチャしたり(笑)と、感情が剥きだしという人だったと思うので、無表情の極致といえるターミネーターという感じではない。身体はターミネーター並みなので、ジョンよりも、心は人間のハイブリッド・ターミネーターのマーカス・ライトといったところではないだろうか。

冨永愛さん上原さくらさん中鉢明子さん
もりちえみさんDJ TARO氏清原和博氏

 そして、いよいよ本日の主賓である、来日キャストおよびスタッフの登場。この頃からもう大騒ぎで、さすがはハリウッドのスーパースターたち、という具合。ロールスロイスでレッドカーペットスタート地点まで乗り付けての登場だ。まずはマックG監督。常にハイテンションで、ファンサービスを非常に大事にする人のため、来場者全員にサインを書いて回るのではないかという状況に突入である。一時は、レッドカーペット終了までに日付が変わってしまうのではないかと報道陣を心配させたほどだ(笑)。そして、キャストの登場。ジョンの奥方でその後に夫とともに抵抗軍を支える副司令官となるケイト役のブライス・ダラス・ハワードさん、攻撃機A-10サンダーボルトIIのパイロットのブレア・ウィリアムズ役のムーン・ブラッドグッドさん、少年のカイル・リース役のアントン・イェルチン氏、最後は真打ちということで、ジョン役のクリスチャン・ベイル氏が姿を現した。登場するだけでこの盛り上がりようなのは、脱帽ものである。

ブライス・ダラス・ハワードさんムーン・ブラッドグッドさんアントン・イェルチン氏
クリスチャン・ベイル氏やっとマックG監督が合流して、全員でフォトセッション

 T-600フィギアの前で全員揃ってのフォトセッションを行なった後、各人はステージへ移動。ベイル氏は、「ミナサンコンバンハ。キョウハキテクレテアリガトウ」と日本語でまずは挨拶。そして、「映画を楽しんで!」と結んだ。ハワードさんも、「コンニチハ」と第一声は日本語。すでに暗くなっていたが、そこら辺はOK。「凄く興奮しています。皆さん今日は来てくれてありがとう」とした。イェルチン氏は、「今日はありがとう。楽しんでくれるとうれしいです」とコメント。ブラッドさんも、第一声はちょっと時制の違う「コンニチハ」から。「来てくれてありがとう」と結んでいる。そして大トリは、マックG監督。「ミナサンハジメマシテ! 日本の皆さん本当にありがとう。日本の映画や文化を観て育ちました。この映画の中には、日本のスピリットが入っています」と、日本文化好きであることを改めてアピールし、T4にはそれらが注がれていることを述べた。

 その後、清原氏も登場しベイル氏と簡単な会話を。「間近に見られて興奮しています。カッコイイですね。ジョン・コナーの倒れても倒れても立ち向かう精神、そして強いリーダーシップに共感しました。1つクリスチャンに質問したいのですが、ジョン・コナーを演じるにあたって大切にしたことは?」と質問。ベイル氏はそれに対し、「ジョン・コナーは人類を助けるという運命を背負って生きている人間。狂っているように思われていた母親の言葉が、後で正しいと分かって、その言葉を糧に戦い続ける軍人のような人です。映画とスポーツは共通していると思うんです。スポーツを見ている人も、映画を観ている人もアドレナリンがでて興奮しますよね。それが共通点なんじゃないかなと思うんです」と答え、それに対して清原氏も納得、謝意を述べていた。そして最後に、「日本のみなさん、ぜひこの『ターミネーター4』を観てください。I'LL BE BACK!!」と決めた。さらに最後は、マックG監督が、「東京のみなさま、日本の皆様とこの映画を共有したいです。新しい神話を感じながらこの映画を楽しんでください。本当にありがとう!!」として、ステージイベントは終了、2,000名の来場者とともに試写会のために映画館へと移動した。

来日キャスト&スタッフがステージ上に集合。T-600型エンドスケルトンも地道にがんばっている清原氏が登場し、ベイル氏との会話の後、握手

グラドル森下悠里率いるエーロネーター軍団悩殺イベント

 翌5日の夜に新宿ピカデリーで行なわれたのが、「なりきりターミネーター」イベント。一般ファンがターミネーターコスプレで参加できるという内容だが、メインは、ターミネーターが大好きというグラビアアイドルの森下悠里さん。森下さんがセクシー衣装で登場し、エーロネーター軍団(笑)のリーダーとして、セクシー戦士たちを引き連れて、会場を悩殺した。森下さんはターミネーターの第1作(T1)が放映された翌年に生まれ、現在24歳。テレビで放映されるたびに大ファンの2人のお兄さんたちと観ているそうで、「家族みんなで楽しめる点もいいですね」とコメント。ちなみにターミネーターの(?)コスプレは初めてだそうだが、もしターミネーターになったとして倒したい人はという質問には、「10代のグラビアアイドルたちですかね」と、かなり本音の(?)過激な発言も。「ほしのあきさんみたいにがんばりたいです!」と、いくつになってもグラビアアイドルでいたいと結んだ。ちなみに、好みの男性のタイプは、「草食系ではなく、断然クリスチャン・ベイルのような肉食系男子!」だそうである。

エーロネーター軍団エーロネーター軍団を率いていたのは、ライバルの10代のグラドルを抹殺したい(笑)という森下悠里さんT-600型オブジェとツーショット

先行上映での舞台挨拶でマックG監督が早くもT5の構想を!?

 5~7日と先行上映が行なわれたのだが、6日の新宿ピカデリーでは、出演者とマックG監督による舞台挨拶が行なわれた。多忙なベイル氏は帰国した模様で、この日はキャストがハワードさん、ブラッドグッドさん、イェルチン氏の3人。そして、マックG監督の4人が登壇した。しかし、マックG監督はかなり気分がよかったらしく、衝撃の発言。次回作の構想について触れたのだ。「2作目はぜひ渋谷でオープニングシーンを撮りたい。東京のスクランブル交差点に突然ブルーエナジーボールが出現し、ジョン・コナーが現れる。そして、ジョン・コナーは回りの人間に未来に起こることを伝えるが、皆頭がおかしいと相手にしないんだ。皆さんにお伝えできるのはここまで。ロケは、渋谷かここ新宿。または秋葉原もいいかも」ということである。ターミネーターの世界でのタイムスリップは、空間的な移動はできないとされている。ということは、ジャッジメント・デイ後の壊滅した東京に装置を持ち込み、ジョン・コナーは時空を超えるのだろうか? でも、いきなりスクランブル交差点に全裸で現れたら、逮捕されてしまうので、もう少し裏道の方がオススメ(笑)。

 歴史的な名作の「7人の侍」から、ツッコミを入れたくなる(笑)「セーラームーン」まで、さまざまな日本作品に影響を受け、今の自分があるといいきるマックG監督。それだけに、次回作は趣味丸出し(?)で、日本が重要なポイントとなるのか? やはりサイバーダイン・山海嘉之氏とのトークで、ターミネーター開発には日本のロボット技術が悪用されていると考えているのだろうか? ターミネーター4作すべてに関わっているたった2人の内の1人、レガシー・エフェクト(旧スタン・ウィンストンスタジオ)のキー・メカニカル・デザイナーのリチャード・J・ランドン氏も、「ASIMOはT-800のおじいさんだよね」「次回作に、(fuRoの)Halluc IIなんか偵察用ターミネーターとして使えるかも」などとインタビュー時にコメントしているので、T5では日本が重要なキーになるのかもしれない。日本ではT4のロードショーもまだだが、早くもT5の妄想がふくらむ舞台挨拶であった。

舞台挨拶のフォトセッションマックG監督。次回は、日本が舞台か?

カイル・リース役のアントン・イェルチン氏にミニインタビュー

 最後は、T4時点ではまだ少年のカイル・リースを演じた、新進気鋭の若手俳優アントン・イェルチン氏へのインタビュー。今回は、Robot Watchも含めて、5媒体合同でインタビューを実施した。ほかの4媒体は映画情報を扱った媒体なのだが、Robot Watchだけ少々異色の取り合わせである。ほかのインタビュアーの方たちとは少々(?)毛色の違うというか、普通は聞かないだろうという質問を3問ほどだができたので、その他の媒体の質問も含めて、掲載させていただく。インタビューは、六本木ヒルズの一角にある高級ホテルグランド ハイアット東京にて行なわれた。

 その前に、簡単にイェルチン氏のプロフィールを紹介しておこう。1989年3月11日、ロシア生まれの20歳。アンソニー・ホプキンス主演の「アトランティスのこころ」(2001年)に出演し、ヤング・アーティスト・アワードの若手主演俳優賞(映画部門)を受賞しており、ハリウッドの注目の若手俳優となる。T4に先んじて公開された歴史ある作品の最新映画「スター・トレック」では、パーヴェル・チェコフ役を演じた。奇しくも、かつて別の俳優が演じたキャラクターの若き日(実際に「スター・トレック」は完全に過去のストーリーというわけでもないのだが)を演じる作品が連続して公開される形となった。

――まず、T4に出演が決まった時のお気持ちをお聞かせ下さい。

【イェルチン氏】非常に光栄に思いました。4歳の頃からシリーズの大ファンで、非常に影響を受けており、自分を形作った作品だったので、本当に光栄でした。

――小さい時にT1に出てくるカイル・リースを観て、どんなことを思ったか覚えていますか? また、今、ご自身で演じることをどう思いますか?

【イェルチン氏】4歳だったから、ターミネーターを観たら、「これ最高!」となるわけです(笑)。当然、カイルはみんながなりたいと思うようなヒーローだったわけですが、それをいま自分が演じることになって、不思議な感覚を伴いつつも感動しています。自分が4歳の時にかっこいいとインパクトを受けたことを、今の4歳の子供たち、あるいはその他の人たちに与えるかも知れないと思うと、不思議な感覚ですね。それと同時に、自分は今でも大ファンですので、非常に大きなチャレンジにも感じています。自分が演じるに当たって、「カイルはかっこいいな、特別だな」と自分が思ったことを取り込みたいと感じました。そういう意味で、非常にエキサイティングでした。

――T1でのカイルはマイケル・ビーン氏が演じて、もっと大人でした。そういう役を演じてどうだったかということと、またこれから大人のカイルに向けて成長していくという段階の少年を演じて、特に意識したこと、気をつけたことを教えていただけますか?

【イェルチン氏】自分がファンだったということで、元々のキャラクターにあるスピリットみたいなものをつかみたいと思ったのですが、それと同時に、T1から非常に時間が経っているので、このキャラクターに対するインフォメーションが非常にたくさんあるんですね。まるで泉のように湧いて出ているので、そこから自分でキャラクターを作り上げていくということをしました。マイケルが演じたカイルは、非常に深みと複雑さがあるのが特徴です。これは、監督のジェームズ・キャメロンの功績でもあるのですが、マイケルの功績だと思うのは、その複雑さや深みといったものが、映画に負担にならない形で現れている点で、そこが凄いなと思いました。ですから、そういった部分を出せるよう考えました。具体的には、これまでも何度観たかわからないぐらいなのですが、今回の出演に当たってまた何度もT1を観直しました。そして、カイルが一体どういうキャラクターなのかということを自分で分析していったんです。その中で、カイルは常に強烈な怒りを持っているんですね。それから妄想的でもあるし、さらに孤独さと弱さもあります。それと同時に強いし勇気もあるし、ヒーローでもあるし、非常に献身的な一面もありますよね。カイルには、そうしたある種の二項対立があるわけです。もちろん、僕が演じるのは、マイケルが演じた時よりずっと若い時のカイルなので、大人のカイルが持っているような軍事的な理由・目的というのはない。大人のカイルには、サラ・コナーを守るという明確な目的があるわけですが、僕が演じたカイルはそういうものがない。ですから、戦うための軍事的な理由がないわけです。では、そうした中でどんな部分を演じるかというと、怒り、それからある種の弱さだと思うんですね。ヒーローの部分は、まだそれほど出てきていないと思いますし。T4でのカイルは、とりあえず自分が生き延びるために戦っているので、怒りという部分を強く出した方がいいんじゃないかと思ったんです。それから、そうした感情的な面、知的な面に加えて、肉体的な面もとらえたいと思いました。大人のカイルはある種、獲物を捕らえるような動きをするんです。原始的な動きというか。特に最初のシーンがそうなのですが、彼の走り方とか。それから、ふとした時に口を開けているといった小さいことも自分なりにつかんで、それを全部のシーンに出したわけではありませんが、1つのシーンではこの部分をという具合で、自分がここを撮りたい、見せたいというものを求めて、何回も何回も観直していって、自分のキャラクターに取り込みました。

――T4には、完成したT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー氏の外見を持ったモデル101)が登場しますが、映像を観られて、どんな印象を持たれましたか?

【イェルチン氏】完成した映像を観て、凄く感心しました。アーノルドは残念ながらすでにT1の時と同じ外見ではないわけで、それにも関わらず80年代の彼の姿を再生していたので、凄いと思いました。また、T1のアーノルドが演じたT-800のモンスター的な本質をしっかりつかんでいるなとも感じました。僕はファンなので、本当に単純に凄いと思っていまして、それを観て喜んでいましたね。でも、実際に演じている時には、キッキンガー氏が演じていて、彼が顔にモーションキャプチャー用の装置をつけていたので、映画を初めて見た時は驚きました。

――先ほどは、カイルのファンだったということですが、T-800になりたいとは思わなかったのでしょうか?

【イェルチン氏】常に思っています!

一同(笑)

【イェルチン氏】小さい時から一番やりたかったのが、T-800なんです。

――今回の映画の中で、カイルは捕まってしまうかと思いますが、ジョンが救出に来るまでの間に、実はマーカス・ライトみたいにターミネーター化されてしまっている、すくなくとも何か改造されてしまっているということはありませんか?

【イェルチン氏】僕が思うに、カイルはターミネーターにされてしまうぐらいだったら、死を選ぶと思います。でも、それがあったら、面白いストーリーのひねりだったかなと思うんですね。ただ、そうなってしまうと、やはり死を選んでしまうかなと思いますね。

――では、なぜスカイネットはカイルを捕まえた時に、抹殺しなかったのでしょうか?

【イェルチン氏】誰にも質問されたことがないのですが、非常にいい質問だと思います。いくつか考えられるのですが、1つはフィクションだということです。それから、もしかしたらスカイネットが、カイルのある種の資質みたいなものを取り出そうとしたのではないでしょうか。まぁ、でも、一番いいのは、観客の方のイマジネーションにゆだねることかなと思います。そうした理由を考えるのに、僕の想像力よりも、きっとあなた(記者のこと)の想像力の方が豊かだと思うので、本当に面白い答えが考えられると思います。

一同(笑)

――(記者の妄想好き(笑)を一発で見抜き、たたえてくれた(?)その眼力にも驚いたし、かなり嬉しかったから思わず)サンキュー!

【イェルチン氏】(笑顔で何度もうなずく)

――カイルを演じるに当たって、アクションシーンで最も苦労されたことはどんなことでしょう?

【イェルチン氏】トラックで走るシーンは、あまりCGIは使っていないんですね。来る日も来る日も走ってばっかりで、かなり大変でして、毎日のように傷だらけでした。ある時は、転んで逆さまになって宙づりになったこともありましたし、スネにいくつ傷を作ったかわかりません。非常に大変なシーンでした。それに加えて、砂漠なのでもの凄く暑かったんです。しかし、これが脚本だとただの2ページしかないんです。それが映画作りのトリックなところで、わずか2ページなのに、撮影には2週間半から3週間もかかったわけです。同じシーンの同じアクションを何度も何度も違うアングルから撮るので、段々と飽きてくるので、それに耐えるというのも大変でした。でも、シーンとしてすばらしいものになったので、がんばった甲斐があったなと思っています。

――劇中で、以前の作品につながるシーンがいくつかあって感動したのですが、ご自身でT4をご覧になって、こんなところが前3作を踏襲していて凄いというところはありますか?

【イェルチン氏】映画を作るに際して、特に最初の2作を称えるというのがあって、それを表しているところがたくさんあるんですね。特に、サム(・ワーシントン)と僕で気をつけていました(注:カイルとマーカスは一時的にともに行動する)。ショットガンを撃った後に肩にかけるシーンがあるのですが、それは「ターミネーター2」のシーン。また、T4のカイルはナイキのシューズを履いているんですが、それはT1で大人のカイルが履いているものと同じです。それから、セリフで「I'LL BE BACK」はもちろんですし、「もしいきたいならば」などもあります。終盤の戦いの舞台になる工場も、T1やT2でも舞台になっていますよね。それから、カイルが片手でショットガンを撃つシーンもT1にあります。細かく挙げていくと、たくさんたくさんあります。昨日もT1を観直していて気がついたのですが、サラが最後に乗るジープは、T4で僕やサムが乗ったのと同じ型のジープだったんじゃないかと思います。ほかにも80年代っぽい音楽とかもそうだったような……。とにかく、ターミネーターファンのために、あちこちに前作へつながるシーンがあります。

――ファンの立場から、ターミネーターに実際に出演してみて、変わったことがあれば教えて下さい。

【イェルチン氏】撮影中に何度も最初の2作を観直してみて、「やっぱり好きなんだよね」と、思いは全然変わらなかったです。昨日、日本のテレビでターミネーターが放映されているのを観ていて、日本語で何をいっているのかさっぱりわからないのですが、セリフはだいたい頭に入っているので、こういうことをいっているんだろうというのがわかりますし。とにかく楽しめて、凄くいいんですよね。最初の2作はやはり凄いし、年を取れば取るほど、その凄さがわかってくるというか、このジャンルの中でも特別だし、サイファイ(SF)映画に凄く大きな意味を与えたんだな、と思います。

――今後、どんな役を演じたいかということと、日本で松山ケンイチさんと競演されたというお話をうかがいましたが、日本の役者で競演してみたい方、仕事をされたい方がいたら教えていただけますか?

【イェルチン氏】将来的にやりたいことは、面白いことなら何でも、自分が挑戦できるようなものなら何でもと思っています。それから、複雑な性格のキャラクターに興味があるので、そういうキャラクターを演じてみたいですね。役作りをしていく上で、自分が演じるキャラクターを分析して、その一部を自分の中に取り込むというプロセスが凄く好きなんです。それから、ケンイチとは一緒に仕事をして楽しめました。ただ、あまり一緒のシーンがなかったので、そんなに長い時間一緒だったわけではないのですが、彼はとても素晴らしかったので、また競演できればと思っています。あと、堀北真希さんとも競演したのですが、彼女も素晴らしかったですね。それから、すっごく一緒に仕事をしたかった日本の方たちですが、残念ながら亡くなってしまっている方がほとんどなんです。映画監督なら、黒澤明氏だったり、小津安二郎氏であったり、深作欣二氏であったり……。俳優も、三船敏郎氏。「七人の侍」とか「生きる」とか素晴らしかったですよね。北野武氏も面白いと思いますね。日本人に限らず、インターナショナルな俳優に監督、いろいろな人と仕事がしたいです。

少年のカイル・リースを演じた、アントン・イェルチン氏若干20歳だそうで、まだまだ少年という感じ「ターミネーター4」のポスターと

 以上、ターミネーター4関連のイベントレポートと主要キャストの1人であるアントン・イェルチン氏へのインタビュー、いかがだっただろうか。イェルチン氏に、一発で想像力がたくましいこと(というか、妄想野郎)を見抜かれたのにはまいったが(笑)、思わず嬉しかったりもした。ここのところインタビューをすると相手に喜んでもらえる質問をすることが多いので、もしかしてインタビュアーとして才能が開花したか? などと自画自賛のこれまた妄想が入ってしまったりもしたのだが、実に楽しかった。今回は、ロボット以外の情報が多かったが、たまにはこんな記事があっても楽しいかと思うのだが、いかがだっただろうか。今後も、ロボットが出てくるような映画で、チャンスがあれば監督やキャストにインタビューをして、他の方ではできない面白い質問をしてみたいと思うので、期待していてほしい。



(デイビー日高)

2009/6/11 16:28