ロボットフォース、「第2回ROBO STAR in ATC」を開催
~中学生からシニアまで、自慢のロボットを披露
第2回ROBO STAR in ATC |
12月6日(日)、大阪南港のATC2階セントラルアトリウム特設会場において、第2回ROBO STAR in ATCが開催された。主催は、ロボットフォース。
ロボスターは、ごく普通のホビーユーザーが作ったロボットをお披露目する場だ。ほんの10年前まで、二足歩行ロボットはSFや、アニメの中だけに存在していた。ホンダがP2やASIMOを世に出して、リアルな最先端技術となった。それが、2006年にKONDOからKHRが発売されて以来、二足歩行ロボットは一般にも手が届くホビーとなった。以来、続々と市販キットが発売されて価格も下がり、今では中学生や高校生も二足歩行ロボットを自分で組み立て、プログラミングして動かしている。
全国各地で、二足歩行ロボット競技会も盛んに行なわれている。二足歩行ロボットブームの火付け役となった「ROBO-ONE」には、人が搭乗できるロボットも登場した。バトル競技だけでなく、障害物競争やサッカー大会、自律のビーチフラッグなど種目も難易度もさまざまだ。
ロボスターは、そうした競技会とは一線を画したイベントだ。そもそも競技会ではない。単に「こんなロボット作ったよ~」とステージで披露して、多くの人に見てもらおう! という場である。
だから、ロボスターは大勢の親子連れが行き来するショッピングモールの一角にステージを設けて実施している。ホビー用二足歩行ロボットは、まだまだ一般的には認知度が低いから、動かしているだけで「へえ~~」と驚いてもらえる。主催者の岩気氏の「今のホビーロボットが、どんなカタチをしていて、どんなことができるのか。どんな人が作っているのか、多くの人に知ってほしい」という思いで始まったイベントだ。
本稿では、ロボスターに出場したユニークなロボットと製作者達を写真と動画で紹介しよう。
「第2回ロボスター in ATC」出場ロボット達 | ROBOSTAR in ATC。ロボットをキャラクタ化した看板で来場者をお出迎え | 親子連れやコスプレプレイヤーが行き来する通路の一角にステージ |
ステージの合間には、来場者による体験操縦が行なわれた | 来場者にプレゼントされた出場ロボット達のキャラクタカード | 岩気裕司氏(ロボットフォース代表) |
●個性豊かなオリジナル・キャラクタが動き出す
前述の趣旨で開催されているので、ロボスターは非常にゆる~い雰囲気の中で実施されている。今回は、10名のホビーストが出場した。みんなエントリー以外のロボットも持参しているので、ステージに立ったロボットはもっと多い。
【ロボスター エントリーリスト】※公式サイト発表順
ブラッティ マリー(かんけん氏) | ARUMAKAN(ナッキィー氏) | タミやん(場坂氏) |
みりん(マサ吉氏) | イカです・ウィング(イカロス氏) | SDかりんろぼ(まさゆき氏) |
うさぎ(ヴィー氏) | テルル(A4氏/大阪産業大学テクノフリーク部) | ごえん(のむむ氏/こそこそ団) |
兎角(桃色兎氏) |
初登場のブラッティー マリーは、音楽に合わせて上半身を揺らしながらダンスを踊った。オペレータのかんけん氏もブラッティー マリーと一緒にステップを踏み、敬礼しながら楽しそうだった。
ブラッティーマリーは、KONDOのKHR-2HVに手製の衣装と顔をつけて、キャラクタ化したもの。ブラッティー マリーという名前(トマトジュースをベースにしたカクテル)から想像されるように、擬人化されたトマトだ。なぜ、トマトがロボットになったのか? というと、オペレータのかんけん氏が和歌山県でトマト農家を営んでいるからだという。
和歌山には、特産の梅やミカンをキャラクタ化した双子の「うめっぴ」「みかっぴ」や、柿キャラクタの「かき音(ね)ちゃん」など、農産物系キャラが多い。かんけん氏も、自分の作ったトマトをアピールする存在としてブラッティ マリーを作ったそうだ。
マリーというキャラクタは、以前からイラストにするなどかんけん氏のイメージとしてあったという。それが、ロボットとして実体化したのは、ネットで珈琲を淹れるロボット「雛」の動画を見たのがきっかけだった。夏に開催された「第1回ロボスター in ATC」にも、かんけん氏は見学に来ている。実物の雛を見たり、ロボット研究者ではない普通の人達が趣味で作っているロボットを見て「自分にもできる!」と思ったそうだ。完成したブラッティー マリーは、普段は地元のフリーマーケットなどに参加して、ダンスを踊ったりしているらしい。「今年は、ロボット作りに忙しかったので、肝心のトマトが出荷できませんでした」とかんけん氏は笑っていた。
かんけん氏。赤のブラッティ マリーと、レモンティー エリー | 【動画】音楽に合わせて踊るブラッティ マリーとかんけん氏 | トマトとレモンを擬人化したマスコットキャラクタ |
ロボットコンテンツを模索しているイカロス氏は、ロボットユニット「ちゃっふる」をステージにあげて、オリジナル曲に合わせて歌とダンスを披露した。ちゃっふるは、静岡のミカンとお茶をイメージしたロボットだ。イカロス氏は、ロボットのどんなコンテンツが一般的に受け入れられるかテストするために活動しているという。友人に曲を作ってもらい、キャラクタデザインやロボットにアテレコして歌う歌手はインターネットで、公募したそうだ。全国から2~30人の応募があり、ロボットユニット「ちゃっふる」が誕生した。ちゃっふるのCDは、500円で好評販売中。
イカロス氏は、もう1体、プラレス三四郎のTV版キャラクタ「イカロス・ウィング」をイメージしたロボット「イカです・ウィング」も出していた。ベースになっているJOーZEROは、プラレス三四郎の原作者・神谷氏がヘッドデザインをしている。
【動画】ロボットユニットの「ちゃっふる」(イカロス氏) | ちゃっふるのCD。好評発売中!! | 「茶とフルーツの造語で“ちゃっふる”です」と説明するイカロス氏 |
外装がかっこいい「イカです・ウィング」(イカロス氏) | イカです・ウィング。拘りのヘッドデザイン |
中学2年生のヴィーさんは、テレビでロボットを見て自分でも作ってみたくてロボットを始めたそうだ。今回は自律ロボットのうさぎと、ラジコン操縦のねこを使って、自律ロボット VS ラジコン操縦ロボットのバトルのデモンストレーションをした。うさぎがリング中央でぐるぐると旋回しているのは、センサーで周囲にいる対象物をサーチしているためだ。近くにいるねこを発見すると、すかさずパンチを放ってくる。全身のバランスをとって歩かせるだけでも難しい二足歩行ロボットで、自律バトルをするというのはかなり難易度が高い。それをさらりとやっていた。とはいうものの、ロボットを自律で動かす難しさを知らない人には、どれだけすごいことを中学2年生のヴィーさんがしているのか、なかなか伝わらなかっただろう。ロボットの面白さや魅力を見せるというのは、難しいと感じた場面だった。
【動画】自律ロボット「うさぎ 」とラジコン操縦ロボット「ねこ」のバトル | 中学生のヴィーさんのロボットは、ぬいぐるみの外装で眼帯をしているのが特徴 | ヴィーさんは、休憩時間も熱心にロボットのモーション調整をしていた |
子ども達に人気だったのは、A4氏(大阪産業大学テクノフリーク部)のテルルだ。テルルは、子ども達に親しんでもらえるように、小型ロボットにかわいい外装をつけている。自慢気な口調で「なーんてね!」と、愛嬌たっぷりにしゃべったり、サイコロを蹴ったり投げたりしてみせた。最後に子ども達とサイコロを投げて出目が大きい方が勝ちというゲームを行なっていた。テルルに勝った子には、オリジナルのテルルキーホルダーをプレゼントという嬉しいオマケ付だ。キーホルダーはもちろん、A4氏が作ったもの。自作でロボットを製作する時、フレームを機械で切り出す。学校にある機械を使って、テルルのシルエットにアルミ板を切り抜いたものだ。
テルル(A4氏/大阪産業大学テクノフリーク部) | 【動画】テルル(A4氏/大阪産業大学テクノフリーク部) | ゲームに参加した子ども達への賞品となったテルルのキーホルダー |
二足歩行ロボット=人型というわけではない。のむむ氏(こそこそ団)が製作した「ごえん」は賽銭箱に手足が生えた妖怪ロボットだ。「もうかりまっかー」「ぼちぼちでんなー」などと関西弁をしゃべりながら、小銭をねだる。お金を入れてもらうと、喜んで踊り出すというユニークなキャラクタ。ロボットフォースが主催するロボゴングや、ロボファイトのイベントでは、朝一番に巫女ロボットのアマテラスが、全ロボットの前で安全祈願をする習わしがある。実は、この賽銭箱妖怪のごえんはアマテラスと一緒に寸劇に出て鬼退治をしたりと活躍しているのだ。今回は、一人でステージに立って愛嬌を振りまいていた。
ごえん(のむむ氏/こそこそ団) | 【動画】賽銭箱ロボットのごえん(のむむ氏/こそこそ団) | ごえんは妖怪なので、ちょっと目つきが悪い |
市販キットの人型ロボットが多い中で、手作り感たっぷりにオリジナリティを発揮しているのがタミやんだ。6個のサーボとタミヤの工作キットを組み合わせた自作ロボット。「キットと比べると、安価に作って気軽に楽しめるのがポイント」と場坂氏はいう。音楽を奏でながら楽しく踊り、転ぶと「だ、いじょ~↑ぶ」と独特のイントネーションで言いながら、起き上がるようすが可愛かった。新型のタミやん2は、前日に機体が完成したばかりで演技のお披露目は次回のお楽しみとなった。
●【次回予告】1月3日「第3回ROBO STAR in ATC」、大阪の初笑いはロボットで!!
ロボスターは、本誌でROBO-ONEの派手なバトルや高度な予選演技のレポートを見慣れている読者には、かなりゆるゆるに感じられるイベントだろう。事実、目を見張るような新しい技や派手な演技は出てこない。これが競技会だと、上位を狙ったり仲間内でウケるために、すごいことや新しいことをやらなくては! と思ってしまうだろう。それをモチベーションとして、常に新しいことにチャレンジするのが面白いという面はある。けれど、人前で新技を披露する時に、作り込みが不足して思うように動かずグダグダになってしまうこともままある。そして、せっかくの新技は半完成のまま、また新しいことへチャレンジ。結局、ロボットはいつまでも中途半端に動いている状態になりかねない。
「それじゃ、つまらないんですよ」と岩気氏はいう。実際、ロボスターを見ていると、特別にすごいことでなくても一般にはウケることが分かる。ただロボットが歩いたり、転んで起き上がったりするだけで「おぉぉ~~っ」と驚いてくれる観客が多いのだ。シャキシャキ動くロボットや、ガンバって動いてます感を与えるロボット、キャラクタが立っているロボットは感情移入がしやすいようだ。
そして、そういうロボットは、作っている方も楽しいのだ。誰かと優劣を競うためではなく、自分の中にいるキャラクタを具現化し、動かす喜び。そして、多くの人に見てもらい、驚き楽しんでもらえるのだから。
ホビーロボットは、一部マニアの特別な趣味ではなくて、絵を描く・音楽を作る・物語を書くといった自分を表現する楽しさの延長線上にある。イラストを描く人や作曲する人が、自分の作品を人に見て欲しいのと同じように、ロボットを作る人達も自分のロボットを誰かに見せたい。競技で優劣をつけるのではなく、ただ自分の作品を見てもらいたいのだ。それを見て、笑ってくれる人がいたり、すごーいと驚いてくれる人がいれば嬉しい。モノを作る楽しさは、出来上がった作品を見た誰かに共感してもらうことで完結する。
自分が描いたキャラクタをベースにロボットを製作し、そのキャラクタが歌い踊り、物語の主人公として動きだす。そんな芽が、ロボスターの中で生まれつつある。
「第3回ROBO STAR in ATC」は、2010年1月3日に同会場で開催される。見学するだけでも面白いし、参加者に話しかけてロボット製作のエピソードを聞くのも楽しい。
そして、2010年1月16日(土)には、大阪産業創造館4Fイベントホールで「ロボゴング大阪11」が開催される。こちらは、バトルとユーザー交流をメインとした練習会だ。初心者を対象としていて、1回戦で負けても1日中たっぷりとロボットで遊べるようになっている。2010年にロボットバトルを始めたい人にはお勧めだ。エントリー締め切りは、2009年12月28日(月)。
2009/12/21 17:27