「つくばチャレンジ2009試走会」レポート
~3回目となる今年はコースの難易度がさらにアップ
つくばチャレンジは、自律型ロボットが、実際に人が生活する街の中で「安全かつ確実に動く」ことを目指す技術チャレンジだ。まだ比較的歴史が浅く、2007年11月に第1回が、2008年11月に第2回が開催され、今年で3回目の開催となる。
つくばチャレンジでは、毎回、ロボットが実環境の中で実現するべき動作を「課題」として定義し、その課題の達成を目的とする。第1回目の課題は、つくば市内の約1kmの遊歩道を、外部からのサポートを受けずに自律でゴールまで走行することであり、33台のエントリー中(実際に走行したのは27台)3台が、見事に課題を達成した。第2回目の課題も距離は約1kmだが、ほぼ直線コースだった第1回とは異なり、スタートから500m地点でUターンして折り返すマラソン方式になった。
第2回目は、つくばエキスポセンター前やつくば美術館前を通る、より人通りや障害物が多い場所で行なわれたため、難易度は格段に高くなり、50台のエントリー中(実際に走行したのは47台)、課題を完全に達成したのはわずか1台という結果になった。
3回目となる今回は、コースがさらに複雑になり、路面状況が異なるさまざまな場所をクリアすることが要求されている。つくばチャレンジの本来の目的からいえば、あらかじめ発表したコースを走らせるのではなく、当日コースが発表され、ぶっつけ本番で臨むというのが理想なのであろうが、現在のロボット技術では非常に難しい。そのため、実際には、本番の前に何度か現地で試走会が開催され、GPSやLRFなどを利用したコースマップのデータ取りや、ロボットの足回りや自己位置推定、経路探索アルゴリズムの検証などが行なわれている。今回も、すでに8月1日(土)、8月23日(日)、9月11日(金)、10月4日(日)、10月23日(金)、11月7日(土)と6回の試走会が行なわれている。そこで、11月7日に行なわれた試走会の様子をレポートしたい。
●つくばエキスポセンターを出発して公園を回って戻ってくるコース
つくばチャレンジ2009のエントリーはすでに締め切られており、大学や研究機関、企業、有志、個人など、合計72チームがエントリーしている。11月7日に行なわれた試走会では、40を超えるチームが参加し、試走や調整を繰り返していた。
まず、今回のつくばチャレンジ2009のコースを紹介しよう。つくばチャレンジ2009のコースは、つくばエキスポセンターの敷地内からスタートし、つくば公園通りを右折し、道なり進んでいく。つくば公園通りは、人や自転車がそれなりに通る道であり、つくばチャレンジでは進行方向に対して道の左側を利用する。突き当たりを左に曲がると、ちょっとした広場に出るが、11月20日(金)に行なわれるトライアル走行のゴールがこの広場内に設定される。
ちなみに、昨年までのトライアル走行の距離は約100mであったが、今年は約140mと長くなっている。そのまま道なりに進んでいき、横断歩道の手前を左折する。さらに直進して、レストハウス南の入り口を左折し、中央公園内に再び入る。レストハウス手前の道を右折して進むと、木々が茂った道になる。その道をさらに進むと、左手に芝生広場が見えてくる。芝生広場を左手に見ながらぐるりとターンし、つくば美術館の前に出る。そのまま、池の横の遊歩道を進んで、つくばエキスポセンター方面に向かう。
前回のゴールはスタート地点と同じであったが、今回は、つくばエキスポセンター内ではなく、左折して池の上の橋を渡り、レストハウスを右に曲がり、坂を下って池の横の広場に出る。ゴールのゲートはこの広場の中に設置されており、ゲートをくぐって自動的に静止することで、課題達成となる。
文章で書くとややこしいが、要するに中央公園をぐるっと一周して戻ってくるコースだと考えればよいだろう。距離は1km強とのことだが、前回に比べてカーブが多く、路面も石畳あり舗装道路ありとバラエティに富み、アップダウンも頻繁にある。コースの難易度はさらにアップしたといえるだろう。
●各チームの状況は千差万別
まず最初に、つくばチャレンジ委員会委員長の油田教授が挨拶と説明を行ない、次に、各チームの安全管理責任者(緑色ベストを着用)を集め、安全管理についてのミーティングが行なわれた。つくばチャレンジは、公道を利用した屋外での技術チャレンジであるため、安全管理には特に注意が払われている。コースの主要箇所には、つくばチャレンジ2009実施中を示す立て看板とスタッフが配置され、通行人に注意を促すようになっている。
また、各チームには必ず安全管理責任者が必要であり、ロボットの10m程度前方を常に安全管理責任者が歩いて、安全を確保することが要求されている。また、ロボットの安全性に対するチェックも厳しくなり、金属フレームが露出していたり、配線が剥き出しになっているようなロボットは、そうした部分が改善されるまで、試走が許可されていなかった。
今回は6回目の試走会であり、本番まで約2週間しかないということもあり、以前からつくばチャレンジに参加しているチームは、かなり完成度の高いロボットを持ち込んでいた。筆者も、全てのロボットをチェックしたわけではないが、宇都宮プロジェクトチームの「アロマックス2」や防衛大学校情報工学科ロボット工学研究室チームの「Smart Dump 3」、Scuderia Frola AISTチームの「Marcus」などは、ゴールまでの自律走行をほぼ成功させていた。
以前に比べて、難易度が上がったためか、ロボットの大型化が進み、駆動力が足りず段差などで立ち往生しているロボットはあまり見掛けなくなった。もちろん、現時点でほぼ課題を達成できていたチームはそれほど多くはなく、自律ではなくリモート操作でデータ取りを行なっているチームや、ロボットを台車に乗せて手で動かしてデータ取りを行なったり、ロボットの実機を持ち込まず、完全に人力でデータ取りを行なっているチームも見られた。本番の11月20日、21日までに、あと3回試走会が行なわれるのだが、その最後の追い込みが明暗を分けることになりそうだ。
昨年は、100mのトライアル走行を達成したロボットが22台で、そのうちわずか1台のみが本走行をクリアしたのだが、今年の課題をクリアするロボットは何台出るのだろうか。本番が楽しみだ。
2009/11/13 18:00