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ホンダ「ASIMO」9歳のバースデーパーティーレポート

〜開発総括責任者・広瀬真人氏によるトークショーも


が〜まるちょばのふたりと、200名ほどの来場者に囲まれて、9歳の誕生日を祝ってもらうASIMO

 10月31日に青山の本田技研工業(ホンダ)本社1階のショールーム・ウェルカムプラザ青山で、ASIMOの9歳の誕生日を祝うパーティが開催された。

 実は、ASIMOが広報発表されたのが、2000年の11月20日。それだと11月20日が誕生日のような気がするが、なぜ半月以上前の10月31日なのかは、ASIMO開発の総括責任者を務める本田技術研究所(ホンダの子会社の研究開発部門)の上席研究員である広瀬真人氏が、後ほど語ってくれた。

 また、イベントの前半は、ゲストとして国際的な活躍をするサレントコメディー・デュオの「が〜まるちょば」(グルジア語で「こんにちは」という意味)のふたりが登場し、ASIMOとのトリオを結成してパフォーマンスを披露。その模様をお届けする。

が〜まるちょばのサイレントコメディーで200人来場者が盛り上がる

 パーティがスタートしてすぐにはこの日の主役は登場せず、まずは場を暖めるべく、が〜まるちょばのふたりがウェルカムプラザ青山からホンダ本社の受付のある2階へと続く階段を降りてくる。サングラスをかけて黒ずくめでモヒカン刈りで体型も似ているので初見の人には見分けがつきにくいかも知れないが、モヒカンの色が赤い方がケッチ!氏で、黄色い方がHIRO-PON氏だ。

 1999年に結成して以来、ふたりはこれまで25カ国で200回以上に及ぶパフォーマンスを演じており、ニューズウィーク誌日本版の「世界が尊敬する日本人100」に選出されたほど国際的に評価されている。現在も年の半分は海外公演ツアーという具合だそうだ。

 ふたりとも日本語どころか言葉は一切話さず、せいぜいうなったりする程度で、あとは全身を使った身振り手振りで笑わせていく。修練を積んだことを伺わせる見事なパントマイムやマジック、記者の感じたところではドリフターズっぽい香りのするパフォーマンス(全員集合の前半のライブのような雰囲気をところどころで感じた)などが特徴の模様。言葉を話さずとも客席とやり取りをし、時にはお客さんをステージにまで上げて進め、あっという間にウェルカムプラザ青山内が暖まるのであった。

左のモヒカンが黄色い方がHIRO-PON氏で、右がケッチ!氏 「空中で動かないキャリングケース」のパントマイム。HIRO-PON氏は動いているのにケースがブレてないがわかる ドリフテイストも香るパフォーマンスであった

 しかし、ふたりのライブが終わってからASIMOが登場すると思っていたのに、ライブはなかなか終了しない。ASIMOはどうなっちゃうのかと心配していたら、ライブの途中で登場。が〜まるちょばのふたりとASIMOがトリオを結成するというダンドリだったのだ。

 しかも、得意のダンスを単独で披露するだけでなく、HIRO-PON氏との競演も披露。HIRO-PON氏は、ケッチ!氏の持つプロポでコントロールされるヒューマノイド型ロボットというパフォーマンスを行ない、ASIMO以上にロボットっぽい動作でダンスを披露していた。なかなか楽しい誕生パーティといえ、ASIMOもきっと喜んだのではないだろうか。

 パフォーマンスの後は、トリオと来場者で記念撮影。ちなみに、が〜まるちょばのふたりは、ロボットっぽく表情まで固めて撮影に応じていたので、結構大変だったのではないだろうか。ちなみに、バースデーケーキは食べられないが、大きなものが作られ、黄色い9の字が目立っていた。

が〜まるちょばのふたりがエレキギターなどを弾いていると、そこに本日の主役が登場 【動画】ASIMOとHIRO-PON氏のシンクロダンスの様子 写真撮影中の1機と2人。が〜まるちょばのふたりはASIMO並みに不動の姿勢を取っていた
ASIMO 9歳を祝うバースデーケーキ。来年はぜひ来場者全員にケーキを振る舞ってください(笑) こちらはスクリーンに表示されていたハッピーバースデーを祝うイラスト。かわいい

後半はASIMO生みの親の広瀬真人氏による開発者トークショー

 ASIMOの生みの親のひとりである広瀬真人氏の登壇の前に、まずはASIMOが単独で再び登場して挨拶。「こんにちは! 今日は、ワタシのバースデーパーティに来てくれて、ありがとうございます」と挨拶。広瀬氏がASIMOと来場者のかけ声を受けて登場すると、ASIMOは「ASIMO開発者トークショーを楽しんでいってください」と挨拶をして一端退場した。

ASIMOと開発の統括責任者の広瀬真人氏 広瀬氏は、ASIMOの生みの親として貴重な話を披露
トークショーの様子 【動画】広瀬氏を呼び込むASIMOと会場のやり取りの様子

 トークショーは、ウェルカムプラザ青山の受付やASIMOのデモの紹介などを担当している専門の女性スタッフHondaスマイルの方が司会を務めスタート。まずは、広瀬氏のプロフィールの紹介からだ。

 有名な方なのでご存じの方も多いかと思うが、簡単に紹介すると、1956年栃木県生まれで、宇都宮大学大学院で精密工学専攻の修士課程を修了し、工作機械メーカーを経て1986年にホンダに中途入社。最初の仕事からロボット開発で、2001年からはホンダの研究開発部門である本田技術研究所の上席研究員として、ASIMO開発の統括責任者を務めている。

 続いて子ども時代の話となり、宇都宮で育ったそうだが、川での魚釣りや野原での鬼ごっこなど、毎日が子どもらしいアウトドア派だった話を披露した。ちなみに、3度ほど釣りの最中に川に落ちて、危ない目に遭ったそうである。

 幼少時は特にロボットが好きだったという記憶はないそうだが、ブリキのロボットのオモチャでよく遊んでいた写真は残っているという(さび付いているけど、そのロボットはまだ実家に残っているとか)。また幼少時の将来の夢は、親戚の方の影響で石原裕次郎主演の映画などによく連れて行ってもらっていたこともあり、船乗りになりたかったそうである。そのため、「なぜ今、ロボットをやっているのか不思議なぐらいですよね(笑)」としていた。

 次は、ホンダに入社してからの話題。入社して最初の仕事がロボット作りだったわけだが、自動車メーカーなのになぜロボット開発なのか疑問に思わなかったかどうか、というもの。それに対して広瀬氏は、ホンダは技術者・研究者を非常に大切にしてくれる企業ということで入社したそうだが、「一番驚いたのは、入って3日目に『鉄腕アトム』を作れという指示だったんですね。まさか鉄腕アトムをホンダがやるなんていうのは全然思っていなくて、『なんて会社だろう。こんなのできるわけないな』と内心は思いました(笑)。でも、お金をもらってこんなに楽しい仕事をできるんだと思ってやりました(笑)」だそうである。

 ちなみに、これもさまざまなメディアで紹介されているかと思うが、ホンダがなぜ鉄腕アトム(のような小型ロボット)を作ろうとしたかというのは、複数の目的があったという。広瀬氏は、中でも、ホンダが移動する機械にものすごく興味を持っている企業であり、動く物に対しては技術で常にトップになろうという志があることが大きかったとする。

 クルマやバイクなどタイヤを備えた乗り物は、あくまでも人工環境の中(オフロードでも、道というだけで人工環境)でしか動けない。しかし、広瀬氏が当時調べた時、地球の陸地の70%がほとんど荒れ地だったという。しかし、人間は手と足を使って、ジャングルを進んだり、エベレストなどに登ったり、いろいろなところに行く。車やバイクでは行けないような場所にも人はいけるわけで、人と同じような移動能力を持った機械ができれば、人が行ける場所が広がるのではないか。そういう思いがあって、ロボットの開発を始めたというわけだ。

 また、もうひとつの理由としては、ホンダという企業には、世の中にない面白いものを作ることに挑戦するという風土があり、「できるかどうかわからないけどやってみようと。やってみたら面白いんじゃないかと。実は、それが一番だったんじゃないかと思いますね」と語った。

「E0」時代からの開発秘話

 続いては、ASIMOの開発までの話。最初に開発された足だけの小型ロボット「E0」から、初代ASIMOの1つ前の「P3」まで10体の開発試験機がズラリと並んで画面に登場。こちらは、現在は栃木県にあるホンダのサーキットの1つであるツインリンクもてぎの敷地内にあるファンファンラボと呼ばれる子ども向け施設で、実機を見ることが可能だ(過去の記事はこちらこちら)。

 ロボット開発に入って、広瀬氏はかなり悩んだそうだが、当時の社長にしかられて、「なんで平の社員が社長に直接怒られるんだと思いましたが(笑)、『ホンダは頭で考えてはダメだ。身体で考えろ』といわれまして、それで我に返って、何を作れるかと考えて作ったのがE0でした。

 実は、E0の脚部の寸法は、全部私の脚部の寸法なんです。どの大きさで作っていいかわからなかったので、私の脚部をトレースして作ったんです。新入社員がたまに『このロボット、なんか足が短いな』なんていうんですけど、この寸法は僕の脚部の寸法だよっていうと、みんな黙りますね(笑)」のだそうだ。お手本がないなか、0から1を生み出すのに非常に苦労したことが伺えるエピソードである。ホンダに就職したい学生、とりわけASIMO開発に携わりたい理工系の学生は、このことを忘れないように注意しておこう(笑)。

ASIMOのお兄さん(お姉さんてこともある?)たち。これだけの実験機の上にASIMOがいる E0(以後、「P3」まですべて2008年1月にリニューアル前のファンファンラボにて撮影)

 次は、「E1」から「E3」までの足だけ試験機の初期の3機について。これらの開発中にどんな点で苦労したか、というものだ。この時のロボットたちは、いわゆる接地している足の裏に重心を置く「静歩行」を行なっていたわけだが、これまた当時の社長を初め上役の人たちに「こんなの使い物にならないじゃないか」とダメ出しをされたという。

 「その時に、『人間はもっと速く歩くだろう』といわれてヒントをもらいまして、人間がどうやって歩いているんだろうと考えるようになりました」そうで、自分が歩いているのだから、自分と同じサイズのロボットなので、自分の動きをプログラムとして入れてあげれば、「ひょっとしたら歩くかもしれない」と思ったそうである。

 そこで人の歩行の研究を開始。人の歩行は、まず床に対してかかとが着地して、それから足の裏全体が接地して、小指の先から重心(全体の力)が抜けていくという動作を、非常になめらかに行なっていることを確認。さらに股関節は上半身を支え、ヒザは地面に対する距離を調節し、足部は地面の形状に対して柔らかく接するという、人の歩き方の巧みさがわかったそうである。「よく『たまごが転がるような』なめらかな動きと例えます。非常に美しい動きですね」と人間の歩行動作を広瀬氏は評した。

 そうして歩き方の研究をしてプログラミングしていったわけだが、「そんなに簡単には歩いてくれなかったんですよ」と広瀬氏はいう。今のASIMOのあれだけ滑らかな歩行や走行の様子を見ていると信じられないほどだが、開発初期はまともに歩けなかったという話は有名。E0など、一歩踏み出すのに30秒かかったという(しかも、すぐ倒れてしまう)。

 プログラムし直しては歩かせ、しかし倒れては壊れるので直す、というのを必死でスタッフ全員で繰り返してがんばったそうだ。ちなみにこの時期はなかなか進展がなかったために精神的に疲れることが多かったという。そこで気晴らしということで、人の歩き方以外の観察も兼ねてよく動物園に行っていたのだそうだ。そうやって癒しを得てはまた戻って何度もトライしたという。

 そんな苦しい中、ある時、スタッフのひとりが、本当かウソか広瀬さん自身は半信半疑なのだそうだが、あることを夢で見たという。それが「ベタ足でペタペタと歩く」スタイルだったそうで、それを実際に試してみたところ、なんとこれがブレークスルーとなり、ものの見事に歩いたというわけだ。それが今のASIMOの歩行や走行にもそのまま活かされており、人と同じ同歩行ではあるが、微妙にリズムが違う感じの理由というわけである。広瀬自身は、この時のブレークスルーが、最大のものだったのではないかと思っているそうだ。

E1。左右の動きが初めてつき、静歩行でもって時速0.25kmでの移動を達成した E2。同歩行を実現し、時速1.2kmで移動 E3。かかとにショックアブソーバーを備えるなどして、人と同程度の時速3kmでの歩行を達成

 続いては、足だけの「E6」(「E4」辺りからは随分と大きな上半身に近い箱形のパーツが載っているが)までと、腕や頭など上半身も装備した「P1」とのその差について。歩くという非常に難しい動作をターゲットにまずは足だけのロボットで開発してきて、それがだいぶできてきたのがE6。そこで初めて、本来のターゲットである人の形にするための次のステップに進み、頭や腕などを備えた上半身を載せたのが「P1」というわけだ。

 しかし、本来はアトムのサイズを目指していたにも関わらず、最初のE0が広瀬氏の脚部のサイズをトレースしていたため、上半身を載せたら身長191.5cm、重量175kgという外国人プロレスラー並みになってしまったという。

E4。ヒザ下を40cmに延長し、人の早足と同等の時速4.7kmを実現 E5。初めて、より自然でスムーズな動きの自在歩行を実現した機体
E6。脚部のみの機体の最終型。階段昇降、斜面歩行、またぎなどの自在歩行時のバランスを自立的に調整 初めて上半身を搭載したP1。改良は施されているが、脚部のフレームは基本的にE6のまま

 そして、ホンダのロボットとしては「P2」が最初に世界に披露されたのだが、当時の世の中の反響について問われると、大変なものがあったと広瀬氏はいう。

 また、ニューヨークの五番街の地下鉄の出口の階段からASIMOのひとつ前のプロトタイプ最終形の「P3」出てくる当時の企業PRのCMの制作秘話も語られた。ご存じの方もいるかも知れないが、実はP3とその動作のためのシステム関連一式をニューヨークまで持って行くのは不可能だったため、ロボット自体はスタジオで撮影して、合成したそうである。

開発開始から10年、人が入っているのではと思われるほどリアルな動きで、世界に衝撃を与えたP2 小型・軽量を重点に開発されたプロトタイプの最終型。新型(2代目)ASIMOより30cmほど高い160cm

ASIMOのデモと広瀬氏が感じる親心

 また、ASIMOを作ってよかったことはと聞かれると、最初に歩いたことも印象深いそうだが、「9年間皆さんに見てもらって、すごく楽しんでもらえる、喜んでもらえるということが、本当に嬉しいことだと感じています」とした。また、タイの国王やアニメーション作家の宮崎駿氏らを例に出し、普通は会えないような人たちにも会えたことが「ASIMOを作った役得」ということで、印象深い思い出だとも語る。そしてこの後、ASIMOがデモンストレーションを行なうために再登場。

 デモの内容は毎日ウェルカムプラザ青山で演じられているものと同じなのでここは割愛させて頂くが、見ていたちびっ子たちにもマイクが向けられ、「ASIMOの走る速さはもう少しでうちの犬と同じぐらい」とか「何回見てもすごい」といった感想が聞かれた。

 その後広瀬氏のトークショーが再開。改めてデモを見た感想を聞かれると、「作った者の立場として、中で機械がどう動いているかを想像してしまうので、何度見ても、がんばって最後まで倒れないで歩いてほしいなと心配してしまいますね(笑)」と子を思う親心を吐露。

 ちなみに面白かったのが、「チームのみんなで苦労して作ってきたというのもありますし、私もトシがいったのかなと思うのですが、デモが終わってASIMOが帰って来ますと、なんか背中に哀愁が漂っているなと感じますね(笑)」と、開発者ならではの少々変わったコメントもあった。

顔のデザインやASIMOの最高速などファンから公募したASIMOへの質問コーナー

 続いては、ウェルカムプラザ青山で1カ月間ほど募集し、その中から厳選したいくつかを選んでのASIMOへの質問コーナー。最初は、ASIMOは片足立ちは何秒できるのか、というものだ。ASIMO自身がその場で片足立ちをし、「結構長くできるんだよ」とパフォーマンス。広瀬氏の解説では、「いつまでもやっていられますね。ASIMOは、人と同じように足の裏で踏ん張っていまして、人間の三半規管や耳石に相当するセンサーでもってバランスを取っています」と解説していた。

 次は、ASIMOにはなぜ目や鼻や口がないのかというもの。ASIMOの実物を見たことがあるなら誰でも知っていると思うが、あの宇宙服のヘルメットのような黒いバイザーの奥に2つのカメラがあるし、口のようなデザインのラインも入っていたりする。口の辺りのデザインは、ホンダの車両のフロント部分にあるロゴ(エンブレム)でお馴染みのHマークをベースにしているそうだ(厳密には、ロゴのように完全なHではない模様)。

 「顔に関してはいろいろと検討しました。目がクリクリで鼻もあって口もある顔と、このように見えにくい顔と2つ並べて、2時間も3時間も見ていたのですが、結論から言いますと、目とか鼻とかあると個性が出てくるので、飽きてしまうんですね。人間は別だと思いますが、ロボットの場合は飽きてしまう。やはりこういう風に真っ黒で何もない方が、見ている側がどんどんイメージをふくらませていくということがわかりまして、それでできるだけ見えないようなデザインを採用したんです」ということである。

質問コーナーでの様子。ASIMOも合流して、パフォーマンスを披露しながらとなった ASIMOの顔のアップ。口らしきラインが見えるのがわかるだろうか

 続いてはASIMOの走行速度についての質問だが、これは時速6kmということは有名。広瀬氏は、なぜその速度なのかということを解説した。「人はゆっくりと歩いて、だんだんとスピードを上げていくと、ある速度の時点で走るようになるんですね。技術的な説はいくつかあるのですが、最大の理由は、精神的にも肉体的にも『楽になる』ということなんだと思います。ですから、競歩みたいに無理して歩くと、かなり身体に負担がかかるわけですが、人の場合、だいたい160〜170cmぐらいの大人ですと、時速8kmが歩行から走行へのモードが替わる分岐点があります。その分岐点を、私たちホンダとしては、ASIMOだけが歩いていましたから、機械で証明できないかというのもありました。それで、時速0kmからどんどんスピードを上げていって、エネルギー消費を測定していきますと、ASIMOのサイズだと、だいたい時速4kmに分岐点があるんですね。

 要するに、機械(ASIMO)も時速4kmを越えたら歩くより走った方が楽ということなんです。そういうことがわかりましたので、時速4kmよりもう少し速い時速6kmで走らせているというわけです。実験では、時速10km以上での移動を記録しています。これだけの速度を持っていますので、顔認識機能で人のあとからついていくということができますが、追い越していけるような機能も持てるんじゃないかと思っています。

走行時に0.08秒間だけ両足が地面から離れるという 【動画】改めてASIMOの走行、走り終わった後の超信地旋回式(要するにその場での)ターンの様子

 そして、ASIMOの誕生日について。何年の10月31日に生まれたのか、という質問だったが、それは2000年でASIMO公式サイトなどを見ればすぐわかるのだが(イベントではASIMOが回答)、それよりもなぜ10月31日なのか、というところの方がファンとしては興味があるのではないだろうか。

 冒頭で述べたようにホンダの広報発表としては11月20日。ただし、ウェルカムプラザ青山での通常のASIMOのデモの冒頭で流れる解説映像「限りない夢への挑戦 ASIMOの進化」内では、確かにASIMOの誕生日として、2000年10月31日の映像が紹介されている。正確にはどういうことなのだろうか?

 「この年は、21世紀を翌年に控え、ロボットで何か面白いことをしようとチームのみんなで考えまして、なんとかその2000年の内にASIMOを作ろうとがんばっていたんですね。そんな中で、赤ちゃんがハイハイをするようになって、ようやく立ち上がった瞬間というものがあると思います。ASIMOは、10月31日に電源を入れて、そして自ら立ち上がって、2、3歩ほど歩いた日なんですね。これをみんなで、誕生日にしようということで、誕生日にしました」ということである。実は、このエピソードはASIMO開発の関係者しか知らないそうだ。

 さらに、「ASIMOはクルマに乗れるの?」という質問。ホンダのロボットなのだから、ホンダのクルマに乗ったCMとかありそうな気がするが、はたして? 司会のHondaスマイルのお姉さんもクルマに乗っているところを見たことがないということだが、広瀬氏も「クルマに乗り込むというのは非常に難しいことで、現在のASIMOではできません」ということである。

 もしかしたら自分で乗れないというだけであって、クルマの中で座っているような映像とか写真とかはあるのかもしれないが。続けて広瀬氏は、「将来、クルマがだんだんと賢くなって、クルマそのものがロボットに近くなっていくということになりますと、クルマそのものがASIMOの能力を持つことになるかも知れません。あるいはASIMOが助手席に座ることができるようになって、例えば道案内であるとか、話し相手になって一緒にドライブしてくれるとか、そんな将来もあるのではないかと考えています」と語る。

 クルマのロボット化、インテリジェント化は実際にかなり進んできているが、やはり助手席にASIMOが乗ってくれる方が面白いかも知れない。

 最後の質問は、どちらかというとメッセージで、キャッチボールをしたい、というもの。ASIMOが「いつか、キャッチボールをしよう!」と元気に答えていたとおりで、現在はもちろんできない。「将来できたらいいなと思っているのは、ユーザーのクセをいろいろと覚えてもらって、その通りに動くという機能です。たとえば、私のキャッチボールの仕方を覚えてもらって、子どもや孫と時間がない時にASIMOが私の代わりにキャッチボールをしてくれる。でも、私がキャッチボールをしてくれるような感じがあるので、私とキャッチボールをしているような気持ちを味わってもらえるんじゃないかと思います。ロボットの用途として、いろいろな人の仕種などを覚えてもらって、その場にその人がいなくても再現できるというのもありかなと考えています」とした。

 そして最後に広瀬氏は、「まだまだ9歳ということで、できないことも多いのですが、これからもがんばっていきたいと思います」とし、トークショーは終了となった。

親子で来ていた女の子の手作りの、ホンダのSUPER GTマシン「ARTA NSX」の上乗ったASIMO。お見事! その背面。ちゃんとASIMOのバックパックも再現されている。ちなみにARTA NSXはちゃんと09年型

 来年は10歳ということで、もしかしたら3代目(現行の新型は誕生5年目の2005年デビューなので)のデビューなんていうこともあるかもしれない。経済状況とかの影響も大きいかも知れないが、ASIMOはある意味、F1以上に大勢の人々、特に子どもたちに夢を与えている存在だと思うので、ぜひどんどん進化していってほしいと思う次第である。何はともあれ、ASIMO、誕生日おめでとう!



(デイビー日高)

2009/11/11 17:50

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