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山中俊治ディレクション「骨」展、六本木「21_21 DESIGN SIGHT」にて開催

〜過去の骨格に学び未来の骨格をデザインする−アート的なロボットやからくり人形の展示も


「21_21 DESIGN SIGHT」。設計は安藤忠雄氏

 六本木ミッドタウン内「21_21 DESIGN SIGHT」にて、プロダクトデザイナー・山中俊治氏ディレクションの「骨」展が開催される。会期は5月29日(金)〜8月30日(日)。27日にはプレス向け内覧会が行なわれた。

 山中氏はJR東日本「Suica」の改札機など工業製品デザインを手がけるいっぽうで、ウィルコムのW-SIMカードなど技術の根幹から関わる活動を行なっているプロダクトデザイナー。ロボット関連では千葉工大fuRoの「morph」や「Hallucigenia」のデザインで知られている。現在は慶応義塾大学教授も務める。

 会見ではまず「21_21 DESIGN SIGHT」の川上典李子氏が「21_21 DESIGN SIGHT」における企画展のコンセプトについて述べた。企画展で題材として取り上げるのは今回の骨のほか、水、人、自然と敢えて抽象的な言葉で、しかも身近な題材を掲げているという。「骨」展については、最初は「からだ」というキーワードで「21_21 DESIGN SIGHT」内で話を始めたそうだ。身体は私たちそのものを含むもっとも身近な存在である。その身体に目を向けてデザインを考えるということで、山中俊治氏にディレクションを依頼し、2年間の準備期間を費やして今回の展覧会に至った。もっとも身近なところから社会に目を向けて行きたいということがテーマだという。出展作家への依頼や細かいやりとりもすべて山中氏がこなしている。

 山中氏は、「僕がものを考えるときはものの仕組み、構造、骨格から考えていく。外見の形だけ考えることはない」と述べ、いわゆる「デザイナー」と「エンジニア」という枠組みに捉われない仕事をしていきたいなと思っていると語った。このような考え方はまだ世間には広がっていない。山中氏も仕事を依頼されるときに「こちらが構造を提案します」と言われることが多く、それに対して「まずは中からデザインすることが、本当に美しいもの、使いやすいものを作るためには必要なんですよ」とクライアントを説得することから始めることが少なくないそうだ。

 工業製品にとって骨格というのは、外層をはぎ取った内部の構造のことだ。山中氏は「デザインとは表面上のことではなく、根本的から考えていくこと。そのためにはデザインとエンジニアリングの枠を超えていくことが重要だ」と強調した。

山中俊治氏 出展作家たち

「標本室」

 展示は「標本室」と「実験室」というコンセプトの2種類に分けられている。「標本室」は展示会場入り口から地下へと続くスペース。入り口にドーンと展示されている日産フェアレディZの「骨」や、まずは手本にすべき自然界の骨、書籍「BONES」からの写真展示や、出展者たちのこれまで作品展示、時計の分解展示や義足の展示からなる。「実験室」には新しい展示物が並べられている。それぞれ順に、ざっとだがご紹介する。

 入り口には前述のように日産自動車の「フェアレディZ CBA-Z34」のホワイトボディと呼ばれる基本骨格が置かれている。まず普通は見ることができないものだ。ボディ全体にスポット溶接のあとがあり、テールには「Z」の文字が見える。

 「21_21 DESIGN SIGHT」のメイン会場は地下にあるので、中庭に何かあるなあと思いながらも、そのまま地下に降りる。するとまずは『BONES 動物の骨格と機能美』(湯沢英治/写真 東野晃典/文・構成、早川書房)からの写真パネルとダチョウの骨が展示されている。

 闇のなかに白い骨が浮かび上がる写真が展示された暗い通路を抜けると、明るい中庭スペースがガラス越しに見える。そこには前田幸太郎氏の作品「骨蜘蛛」が展示されている。もちろん実際の蜘蛛には骨はないが、骨の意匠で蜘蛛を表現したものだ。不思議と違和感がなく、なんとなく説得力がある。頭上を見上げると、壁には有名な椅子の「骨」が展示されている。どこからどこまでが「骨」だか「皮」だか分からないが、工業製品において骨とは何、皮とは何、というのも1つの問いの投げかけであり、そんなことも考えてもらうことが展示の意図の1つだという。

「21_21 DESIGN SIGHT」に入り口すぐに置かれている「フェアレディZ CBA-Z34」のホワイトボディ 重量300kg リア
スポット溶接のあとが随所にある。テイルには「Z」の文字
コクピット内部
『BONES』で知られる湯沢英治氏による動物の骨格写真 ダチョウの骨も 前田幸太郎氏の「骨蜘蛛」が中庭に
アーロンチェアの「骨」

 「標本室」の展示はさらに続く。次に迎えてくれるのは工業製品をレントゲン写真で撮り続けている写真家ニック・ヴィーシー氏の作品だ。その通路を抜けると、そこには工業製品の骨、「人工物の骨」と、医療用に用いられる「人工の骨」の2種類が並んでいる。人工骨は意図して美しくデザインされたものではない。そこにあるのはあくまで生体適合性を考えた機能美だ。だが間違いなく美しい。「デザイナーが意図しない美しさを発見してもらいたい」というのが展示の趣旨だという。「人工物の骨」としては、ケータイや時計も分解された状態で展示されている。部品はどれも非常に細かいが、ルーペもおいてあるので、じっくり堪能することができる。ソニーの「Rolly」のスケルトンモデルと分解パーツ展示もある。また、慶応義塾大学 山中俊治研究室で研究中のスポーツ用の義足も展示されている。2012年のロンドンパラリンピックで活躍できるような義足を目指すという。

写真家ニック・ヴィーシー氏の作品で飾られた通路を抜ける 人工膝関節
人工股関節 時計各種の分解展示
ソニーエリクソン「G9」 自転車用義足と短距離走用の義足の提案。アスリート用下腿義足の研究 ソニー「Rolly」の分解展示
【動画】スケルトンの「Rolly」

「実験室」

「実験室」の展示

 その向こうを抜けたところが「実験室」だ。こちらの会場では参加作家たちの各種新作展示が置かれている。まず目を引くのがイソギンチャクのような5本の触手を動かしている物体だ。慶応義塾大学 山中俊治研究室のロボット「Flagella(フラゲラ)」である。「Flagella」とは鞭毛のこと。

 アームは一見、ものすごく柔らかな物質でできていて、くにゃくにゃ変形しているように見える。だが実際には硬い物質でできており、回転運動することで柔らかい物質でできているように見えるのだ。手先と指先部分には能動的なアクチュエーターも入っていない。中にウェイトが入っていて回転することで動いている。それぞれのアームは互いに衝突しないように、関節ごとに仮想的な球体を想定し、それがぶつかると反発する方向に運動するようになっている。硬い物質でできていると聞いても、見ると柔らかな物質が変形しているかのように錯覚してしまう。見飽きない不思議なロボットだ。

 クリエイティブ集団MONGOOSE STUDIOによる「Galvanic Frame」は、骨のしなやかさを椅子で表現した展示作品。椅子にはひずみセンサーがつけられていて、椅子は自分にかかっている力を光で表現する。会場には3タイプの椅子が置かれている。それぞれ骨格の形が違う。椅子にかかっている力を意識することができる。

慶応義塾大学 山中俊治研究室「Flagella」 【動画】「Flagella」の動き 【動画】腕の先には能動アクチュエーターは入っていない
【動画】それぞれのアームは互いに衝突しないように接近しすぎると反発しあう 制作したのは山中研の学生2人。現在、山中研には21名の学生が在籍 MONGOOSE STUDIO「Galvanic Frame」

 会場中央にあるテント状の物体はエルネスト・ネト氏による展示作品「Mientras que estamos aqui (while we are here)」。ストッキング素材のような伸縮性のある布とスパイスや小麦粉を使って人を包み込み、嗅覚や触覚に訴える。足下に目を転じると「骨蜘蛛」が中庭から這い出して来ているのが見える。よく見ると蜘蛛は柱や天井からもぶらさがっている。

 また会場の展示解説にはリーディング・エッジ・デザインによる技術作品が用いられている。テーブル上の紙を動かすと、その紙が向いている方向の作品の解説が紙の上にプロジェクションされる。再帰性反射材を使ったテーブルと、赤外線によって紙のエッジを検出してそこに投影する技術が使われている。

エルネスト・ネト氏「Mientras que estamos aqui (while we are here)」 内部に入ることもできる 【動画】会場内の展示解説システム。
中庭から這い出して来ている「骨蜘蛛」。中庭と屋内は厚いガラスで仕切られているが、それをすり抜けているような演出になっている 天井からぶら下がる「骨蜘蛛」
柱にも「骨蜘蛛」

 「デザインエンジニアリングファーム」と自ら位置づけるtakram design engineeringからは畑中元秀氏が中心となって作成した6足ロボット「Phasma」が出展されている。昆虫の筋骨格系に刺激を受けて制作したものだそうで、動物のように足全体をバネのように使い、細い足を高速で繰り出して走る。昆虫の構造ではなく、力学に学んだ表現だという。直動する脚の機構はクランク機構で3本ずつ(片方の前脚と後脚、別側の中脚)まとめて動かされており、安定してボディを保つことができる。今回の展示では「捕獲された」状態で展示・デモを行なっている。

 アートユニット明和電機の土佐信道氏は、ただ笑うだけのロボット「WAHHA GO GO」を出展している。人工声帯を持ち、胴体正面の円盤を回転させると、肺にあたる部分をふくらませ上体をそらし、そして、なんとも言えない、まるで妖怪のような笑い声をたてる。思わずつり込まれて笑ってしまうロボットだ。

 「Another Shadow」は、壁に映った影が勝手に踊りだすインタラクティブな映像作品。東京大学 准教授の五十嵐健夫氏とリーディング・エッジ・デザインのデザインエンジニア 緒方壽人氏による作品。プロジェクターの前に立つと影だけが取り残され、その影に骨組みが現れ、動き出す。幾何計算のみで動きは実現しているという。

takram design engineering6足ロボット「Phasma」 アップ 正面から。
【動画】「Phasma」の動き 【動画】クランク機構で3本ずつ動く
明和電機「WAHHA GO GO」 背面から。重たい上体を起こすためにはこれだけの減速機構が必要になるのだそうだ 頭部側面
後頭部の歯車はピッチその他の調整に用いられる 中には人工声帯がある 回転させるとゆっくり上体が起き上がる
【動画】「WAHHA GO GO」の動き。みんな思わずつられて笑ってしまう 【動画】記者も自分でまわしてみた
東京大学の五十嵐健夫氏とL.E.D.の緒方壽人氏による「Another Shadow」 【動画】「Another Shadow」の動作デモ

 続くもう1つの部屋には2つの展示がある。1つ目はからくり人形師の九代目 玉屋庄兵衛氏と山中俊治氏による作品、骨からくり「弓曳き小早舟」。取っ手を回すと、人形の足元のカム機構が動き、的に向かって矢を1本づつ番えて放つ。「弓曳き童子」をベースに、山中氏が骨を見せることを前提にしてパーツデザインを見直し、それを玉屋氏が形にした。船に乗せるのは玉屋氏のアイデアだそうだが、船の製作にもっとも苦労したという。黄楊、檜、桜、黒檀など、各種木材を機能によって使い分けている。弓はステンレスに金メッキが施されている。弓曳き小早舟の実演デモは、毎週土日に各2回ずつ行なわれるそうだ。

 ウェブデザイナーのTHA/中村勇吾氏の作品は「CRASH」。骨の骨らしさを感じるのは壊れるときだと考え、上からトラス構造の文字が落下してきて、それが砕ける様子を表示し続ける時計作品だ。

 デザインプロジェクト「参」は、「失われた弦のためのパヴァーヌ」を展示。ピアノも音楽も存在しない世界の人がグランドピアノの打弦機構を「発掘」したという設定で考えだした作品だという。

 そして最後に1つの頭蓋骨が置かれている。この頭蓋骨は実は山中俊治氏本人の頭蓋骨。CTスキャンしたデータをもとに3Dプリンタで作成したものだ。自然の動物は骨になっても美しい。それは外側と中身が緊密に、巧みに連携していること、そして躍動感も骨に現れているからだと山中氏は解説した。

 また会期中には展示会関連イベントとしてトークが行なわれる。第一回は「からくりミックス」として5月30日、14時〜16時.山中俊治氏、玉屋庄兵衛氏、明和電機の土佐信道氏が出演する。その後もトークイベントが予定されており、それぞれのアーティストがおおむね1回は出演する。詳細・最新情報は「21_21 DESIGN SIGHT」のWebサイトでチェックできる。

 なお求龍堂から「骨」展の図録も刊行される。6月以降には一般書店でも1,800円にて販売されるとのことだ。

九代目 玉屋庄兵衛氏と山中俊治氏による「弓曳き小早舟」 船の製作にもっとも苦労したという
人形正面 人形背面。取っ手をまわして動かす 船の後ろから
斜め後ろから 【動画】解説する九代目 玉屋庄兵衛氏 【動画】一本ずつ矢をつがえて放つ。
【動画】つがえる様子をアップで 【動画】何度か動かしてくれた
【動画】THA/中村勇吾氏の作品「CRASH」 参「失われた弦のためのパヴァーヌ」 【動画】ピアノの打弦機構のみを活かした光の音楽作品
最後に1つの頭蓋骨が置かれている 実は山中俊治氏本人の頭蓋骨 図録は、6月以降には一般書店でも販売される。B5変形、124ページ

会期:2009年5月29日(金)〜8月30日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT
時間:11:00〜20:00(入場は19:30まで)
休日:火曜日
入場料:一般1,000円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料(15名以上は各料金から200円割引)
主催:21_21 DESIGN SIGHT、財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、経済産業省、港区
特別協賛:三井不動産株式会社



森山 和道

2009/5/28 05:11

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