福岡市の麻生工科自動車大学校でYOKAロボまつり10開催

~第1回JSRC大会の九州地区代表3台が決定


 10月11日(日)、福岡市博多区東比恵にある工業系の専門学校・麻生工科自動車大学校で、二足歩行ロボットバトル大会「YOKAロボまつり10」が行なわれた。この大会は11月22日(日)に名古屋で開催される第1回JSRC大会の九州地区代表の選考会も兼ねていて、震電・スーパーディガーOld-Type・拓歩の3台が九州地区代表として選ばれた。

博多区東比恵にある麻生工科自動車大学校自動車の専門学校だけあって、正面入り口にはレースカーなどのディスプレイが会場となったものづくりスクエアは、普段はロボット実習などに使われている場所だ

今回初めて麻生工科自動車大学校で行なわれたYOKAロボまつり

 YOKAロボまつりは九州ロボット練習会が主催する、小型二足歩行ロボットの競技大会である。福岡県の各地で大会が実施され、今回は10回目の開催となった。

 今回は初めて福岡市博多区の麻生工科自動車大学校でYOKAロボまつりが実施された。これは九州ロボット練習会のメンバーである湯前氏が、麻生工科自動車大学校でロボット関連授業の非常勤講師を務めている関係で実現したものだ。

 麻生工科自動車大学校には自動車関連学科だけでなく、電子機械の制御などを習得する機械設計エンジニア科がある(現在の自動車は電子部品の塊であるため)。機械設計エンジニア科では授業の一環としてロボットを使った実習も行なわれている。

 そういうこともあり、麻生工科自動車大学校の学生は、ロボスクエアで開催されたYOKAロボまつりや火星ローバーコンテストにも積極的に参加している。

8台の参加したSRCクラス

 今回のメインは、第1回JSRC大会の九州地区代表を決めるSRCクラスのリーグ戦だ。このリーグ戦は8台が、くじ引きにより2つのブロックに分かれて戦った。

【Aリーグ】
・ASO
・ムーン
・マノイ・マノン
・スーパーディガーOld-Type

【Bリーグ】
・ジャッキー・チャン
・ASOII
・震電
・拓歩

 リーグごとに総当り戦を行ない、勝ち点(勝ち=3点、引き分け=1点、負け=0点)によって順位を決定する。そして両リーグの1位同士が総合優勝をかけて戦い、両リーグの2位が総合3位をかけて戦う。

 第1回JSRC大会には九州地区から3台が出場できることが決まっており、今回の大会で1位から3位までの機体が出場権を得ることとなる。

 なお、YOKAロボまつり10の直前に「第1回JSRC大会は参加機体の重量が1.8kg以下の大会になる」との情報が流れたため、今回のSRCクラスに参加した機体は、すべて1.8kg以下だった。従ってJSRC暫定大会で優勝したスーパーディガーIIforJSRCやメリッサなどの参加はなかった。

 ルールは基本的にロボットフォースのルールに準じ、スリップすると1ポイント、ダウンを奪われると2ポイントを失う6ポイント制の3分間の試合で行なわれた。ただし、スリップの取り方など異なる部分もある。

YOKAロボ10の会場。リングはクラフトハウス所有のもの対戦表YOKAロボ10の参加者と参加ロボット

Aリーグ1位はスーパーディガーOld-Type

 Aリーグを制したのは、ひろのっち氏のスーパーディガーOld-Type。第5回KHRアニバーサリーで優勝した機体をベースにしたもので、実績から言えば当然ともいえる。

 しかし、スーパーディガーOld-Typeは試合中に時々機体の動きが悪くなることがあり、万全とは言えなかった。そこを経験でカバーし、3戦とも勝利しAリーグ1位となった。

 Aリーグ2位には、2勝1敗(1敗は対スーパーディガーOld-Type)のマノイマノンが入った。

Aリーグ2位のマノイマノン(左)と1位のスーパーディガーOld-Typeマノイマノンは先にダウンを奪ったものの、スーパーディガーOld-Typeに逆転されてAリーグ1位はならなかった

Bリーグは伏兵・震電が制す

 Bリーグには福岡県立八幡高校(北九州市八幡東区)科学部から2台が参加していた。1台はJSRC暫定大会にも九州地区代表として参加した拓歩。もう1台はKHR-3HVをベースとした震電だ。

 両者はBリーグの第2試合で対戦。実績から判断して拓歩の勝利は固いと思われた。最初のダウンは拓歩が取ったが、震電がダウンを取り返して攻め続け、何と震電が拓歩に勝利するサプライズが起きた。

 震電は勢いに乗り他の2試合も勝利し、全勝でBリーグを制した。

 Bリーグ2位には、震電に敗れた拓歩が2勝1敗で入り、JSRC暫定大会九州地区代表の意地を見せた。

ムーン(左) VS ASO八幡高校科学部同士の対決となった震電 VS 拓歩この試合は後輩の震電が制した
KHR-3HVベース同士の戦いとなった、震電 VS ジャッキーチャンリーグ戦ラストの試合で、ASOIIに投げ技を仕掛ける拓歩拓歩は見事にフロントスープレックスでASOIIを投げ、勝利した。
エキシビジョンで行なわれたハウザー VS ファランクス(右)。ファランクスは、ハウザーを「あと1スリップで勝利」まで追い詰めたが、逆転のダウンを喰らって勝利を逃がした

優勝は驚きの震電、第1回JSRCの九州地区代表3台も決定

 優勝決定戦は、スーパーディガーOld-Type VS 震電。数々の優勝経験のあるひろのっち氏に比べて、震電のオーナーであるジョゾ君が二足歩行ロボットを始めたのは、KHR-3HV(これが震電)を購入した2カ月前のことである。経験の違いは大きくスーパーディガーOld-Typeの勝利は動かないように見えた。

 試合が始まると、2台は動き回り、なかなかダウンが決まらない。だが、スーパーディガーOld-Typeがどことなく不調で、震電がポイントで有利に立つ。

 そんな試合展開の中、突然、スーパーディガーOld-Typeの足の付け根のサーボが故障して動けなくなり、リタイア。震電がバトル大会で初の優勝を決めた。

 3位決定戦は、マノイマノン VS 拓歩。第1回JSRC大会の九州地区代表がかかった大事な試合だ。マノイマノンが、ダウンを取られることなく拓歩に勝利して、3位を決めた。

 こうして第1回JSRCの出場権は、震電・スーパーディガーOld-Type・マノイマノンの3台が獲得したが、マノイマノンのオーナーが出場権を辞退し、4位の拓歩が出場権を得ることになった。

 従って11月22日に名古屋で開催される第1回JSRCには、震電、スーパーディガーOld-Type、拓歩の3台が、九州地区代表として参加することになった。

優勝決定戦、震電(左) VS スーパーディガーOld-Type。震電の頭は付いたり付いていなかったりしたスーパーディガーOld-Typeはサーボの故障により、無念のリタイヤ。震電の優勝が決まった3位決定戦はマノイマノンが勝利
YOKAロボまつり10の試合結果優勝した震電。KHR-3HVをベースとして腕を長くしている2人とも第1回JSRCの代表に決まった八幡高校科学部コンビ

麻生工科自動車大学校製作の多脚歩行ロボットも披露

 今回のYOKAロボまつりでは試合の合間に、麻生工科自動車大学校が製作した多脚歩行ロボットも披露された。

 この多脚歩行ロボットは湯前氏の指導の下に製作されたもので、左右4つずつの足を動かして移動するものだ。

 これはオランダのTheo Jansen氏が製作した風で歩行するアート作品に影響を受けて作られたもので、当然ながら動力は風ではなく、左右の牽引用モーターを駆動させ、脚を動かして移動する。

 100kgまでの荷重を載せて動くことができ、人間が搭乗して移動することができる。

 操縦はHotproceedのREV-1とヴイストンのロボット用コントローラーを使って行なう。基本的に左右のモーターの回転を逆にして前進・後退することしかできないが、戦車のクローラーと同じく左右の回転数を違えることにより、左右への方向転換および旋回が可能となっている。

 現在、外部への公開予定はないようだが、麻生工科自動車大学校のアピールのために公開する可能性もあるようだった。

麻生工科自動車大学校製作の多脚歩行ロボット人を乗せて動くこともできる多脚歩行ロボットの心臓部。パイプをつなぐ金属ブロックの作成に苦労したとのこと
オマケ。多脚歩行ロボットに乗る震電【動画】前進する多脚ロボット。デモ用に音声ボードも入れているようだ【動画】方向転換する多脚ロボット
【動画】人を乗せて動くこともできる

サプライズのYOKAロボ10

 麻生工科自動車大学校の多脚歩行ロボットが動いたこともサプライズだったが、やはり今回最大のサプライズは震電の優勝だろう。

 ただ、影では苦労もあったようで、前日に震電のサーボが燃えてしまい、オーナーのジョゾ君は「棄権も考えた」そうだ。しかし、「封筒の底からお金が見つかった」(お年玉の残りが発見されたらしい)ので、急遽クラフトハウスにサーボモーターを注文。当日、サーボモーターを交換し、試合開始直前までモーション作成に励んでいた。

 このような修羅場を乗り越えて優勝したわけで、誠に価値のある優勝と言えよう。



(大林憲司)

2009/10/19 17:07