第2回ROBO-ONE GATE&ROBO-ONE GP第2戦レポート

~新型グレートキングカイザーや新型Cavalierなどが登場


ROBO-ONE GATEおよびROBO-ONE GP参加ロボットによる記念撮影

 7月20日(月)、二足歩行ロボット格闘競技大会の「第2回ROBO-ONE GATE in パナソニックセンター東京」並びに「ROBO-ONE GP 2009 2ND IN パナソニックセンター東京」が開催された。会場のパナソニックセンター東京とは、お台場にあるパナソニックセンターの展示施設だ。まずは「第2回ROBO-ONE GATE in パナソニックセンター東京」での熱戦の模様をお届けする。

第17回ROBO-ONE決勝出場権をかけたROBO-ONE GATE第2回

 入門者でもROBO-ONEに参加できるように、というコンセプトのもとで開催されているROBO-ONE GATE。2009シーズンの第2回は、第17回ROBO-ONE決勝出場権がかかっていることから、関東の強豪選手も参加し、レベルの高いトーナメントとなった。参加出場ロボットは、以下の通り。カッコ内はチーム名もしくは選手名だ。トーナメントは、韓国でも有数の強豪選手であるstormwave light、日本トップクラスのCavalierとガルー、九州からはるばるやってきた130cmクラスというもはやASIMOサイズに成長を遂げたドカはるみがシードとなった。

・Emilio(電気通信大学ロボメカ工房チーム薯蕷)
・ガルー(くまま)
・Cavalier(えまのん)
・stormwave light(robotfactory)
・tinywave(robotfactory)
・Titi(桐蔭横浜大学 チームPenguin)
・で・か~る(ROBO道楽、)
・デシュミット(GR2)
・ドカはるみ(DOKA プロジェクト)
・ファントム(ブラック)
・ブルー(ロボット技道部)
・竜鬼II(AZM LAB)

 Robot Watch初掲載の機体は、Titi、ブルーの2体。ブルーは実況を務めたMANOI Producerとして知られる岡本正行氏が開発に携わった機体ということである。それから名称は変わらないが、機体が新しくなったのが、Cavalierとドカはるみだ。中でも、ドカはるみはインパクト絶大。以前に、ROBO-ONEお手伝いロボットプロジェクトや、ロボットのいる暮らしコンテスト「第5回 ロボLDK」に出場した際は90cm台だったそうだが、今回は全高(というより身長という感じ)が一気に30cm以上高くなり、前述のとおり130cmサイズに急成長。もはや小学校中学年ぐらいの高さである。

 もともと、オペレーターのドカさんは建設現場に従事している関係で、以前から危険な現場での建設機械の操縦を人に代わってロボットが担当できるようにしたいということで、大型のドカシリーズを開発している(しかも個人で)。ドカはるみはレバーなどを握れるようにと5指も握ったり開いたりができ、また頭部にはバンダイのネットタンサーを搭載している点も特徴だった。

Titi。味のあるかわいい顔とシンプルな構成が特徴。初戦の相手が厳しかったかブルー。主人公メカ系のデザインだ。腹部や下半身にも装甲をぜひ取り付けてよりかっこよくしてもらいたい新型Cavalier。肩の赤い部分が目立つ。パーツ交換などではなく、完全に新設計となっている
ドカはるみ。一気に30cm以上全高がアップし、遠目に一瞬見た時は、女の子と間違えた【動画】ドカはるみのモーション。5指も握って開いてができる【動画】ドカはるみのモーションその2。ジャンケンもできてしまう

1~2回戦ハイライト

トーナメント

 ルールは、3ダウンを相手から奪った方が勝ちという一般的なもので、スリップダウンのカウントはなし。ただし、今回からはあまりにもスリップする場合は、歩行テストを行なうという点が追加された。前進後退などをしっかりとこなせない場合は、失格処分となり、対戦相手が無条件で勝利するというルールである。そのほかは、リングアウトで1ダウン、スリップ中のタイム申請も1ダウンという、一般的な内容だ。

 トーナメントの1回戦は、第1試合がデシュミット対ファントム、第2試合がTiti対tinywave、第3試合がEmilio対で・か~る、第4試合がブルー対竜鬼II。デシュミット、tinywave、Emilio、竜鬼IIが2回戦にコマを進めた。

第1試合デシュミット(左)対ファントム。メタル対決といった赴きの勝負を制したのはデシュミット第2試合Titi対tinywave。初参加選手に、stormwave lightと同じ韓国robotfactory所属のtinywaveは酷だったか
第3試合Emilio対で・か~る。ROBO道楽、さんは腕を骨折して完治しておらず、強行出場だったが勝利は叶わず第4試合ブルー対竜鬼II。竜鬼IIはかなり仕上がってきており、初参戦のブルーを寄せつけなかった

 2回戦は、第1試合stormwave light(シード)対デシュミットはstormwave light。第2試合tinywave対ガルー(シード)はガルー。第3試合ドカはるみ(シード)対Emilioはドカはるみ。第4試合竜鬼II対Cavalier(シード)はCavalierが勝ち進んだ、準決勝はシード勢の対決となった。なお、1~2回戦の中では、第3試合が非常に見ているだけで面白い記録的なカードだったので、この後にレポート。

第1試合stormwave light対デシュミット。stormwave lightの圧勝第2試合tinywave対ガルー。tinywaveも善戦したが、ガルーが強すぎたという感じ第4試合竜鬼II対Cavalier。竜鬼IIが行けそうな雰囲気もあったが、さすがはCavalierだった

 おそらく、二足歩行ロボット格闘技史上、最も身長差のある最大最小対決と思われるのが、2回戦第3試合のEmilio対ドカはるみだ。Emilioが十数cm、ドカはるみは130cm台という、身長差が120cmはあるという対決である。ガンダム的に例えるなら、ボールでビグザムに戦いを挑んでいるような感じだろうか? 実際のところ、試合そのものは全高差がありすぎて闘いようがないという事態に。

 かろうじて、ドカはるみは足踏みでEmilioを倒すという作戦を採れないでもないという程度で、Emilioに至っては攻撃がどうやっても直接届かないという状況。あえて踏ませてバランスを崩させてリングアウトさせるといった、捨て身の攻撃しか考えられないほどである。もちろん、そのことはわかっているので、ドカはるみも踏んでしまわないようにしている。

 このサイズになると、背の低い相手をいかに攻撃するか、ということにも重点を置かないとならないのが改めて浮き彫りとなったといえよう。例えば、あまりいいイメージのない攻撃なのだが、サッカーボールキック(トーキック)を繰り出せるようにするといいのではないだろうか。ただし、片足立ちになる瞬間があるので、当たり前だが、安定感をいかに持たせられるかがポイントとなるだろう。結局、3分を闘い抜いた両者だったが、惜しいことにEmilioはスリップした際に不調のために起き上がれず、タイム申請をしたためにワンダウンとなり、それが勝敗を決することとなった。

2回戦第3試合のドカはるみ対Emilio。差がありすぎ接近戦を仕掛けたEmilioだったが、足板を踏まれて万事休す。まったく攻撃が届かない【動画】試合の様子。ここまで身長差のある対決は、ほかにないのではないだろうか?

GATE準々決勝+ランブル

 準々決勝第1試合は、stormwave light対ガルー。stormwave lightは5月に見た際は、全身黒ずくめだったが、今回は黒と青のツートン。オペレーターの全昌勳さんに話を聞いたところでは、色違いのフレームをいくつも用意しているそうで、今回は青で組み上げたということである。

 試合では、そのstormwave lightが最初にダウンしてしまう。リング際での操作ミスで、リング外方向にパンチを出してしまい、自爆リングアウトしてしまったのだ。しかし、気を取り直して打ち合い、すぐさまガルーを倒してイーブンに持ち込む。そのあとも打ち合いが続き、パンチが交錯する中、ガルーはstormwave lightの腕を引っかけるとそのまま倒してダウンを奪う。当て身技とでもいうのだろうか? これで、ガルーがリード。このあとも両者そろって打ち合うが防御もしっかり取っており、なかなかクリーンヒットが出ない。stormwave lightは、横パンチから後方への裏拳につなぐという強力なコンボ技があるのだが、これを次々と繰り出していく。並のロボットならダウンを奪われていたであろうが、ガルーは防御力が高く、なかなか崩せない。そうこうしているうちにガルーがベストポジションを奪うことに成功し、すかさず横パンチをクリーンヒット。これでstormwave lightは3ダウンとなり、ガルーが決勝戦に進出となった。

stormwave light。今回は青いフレームで組み上げられているガルー。長い前腕は攻撃だけでなく、防御面でもかなり有効だ
試合巧者同士の対戦だっただけに、攻撃が行き交い、なおかつ攻防一体の激戦となった【動画】準々決勝第1試合の様子

 準々決勝第2試合は、ドカはるみ対Cavalier。前戦でドカはるみは必ずしも安定感があるわけではないことがわかり、Cavalierクラスの体格で体当たりをすれば、何とかなりそうな雰囲気である。しかし、試合が始まってみると、そうでもないことが判明する。Cavalierのパンチですら弾いてしまうのだ。しかも、弾き返されてスリップした時、起きあがりの操作をミスして、Cavalierリングアウト。優勝経験が幾つもあるえまのんさんらしからぬミスで、本人もドカはるみの鉄壁ぶりというよりは、自分の操作に納得していない様子だ。

 この試合でもこれまでのところは、ドカはるみ自らが繰り出した攻撃はないに等しく、移動や足踏みで突き出したヒザがヒザ蹴り的に接触するのが、攻撃と取れなくもない。このまま、Emilio同様に相手の自爆で得られた1ダウンでドカはるみが決勝進出する可能性が出始めた時、Cavalierは打撃技を封印し、体当たり作戦を開始する。一度真後ろに回り込もうとしたようだが、それが難しいと判断すると、まずは正面から体当たり。この作戦はドンピシャリだったようで、まさかと周囲が驚く間に、あっけなくドカはるみが後方にバッタンと倒れてしまう。

 有効な攻撃ではないので、1ダウンではなかったのだが、そのまま倒れるとあまりにもダメージが大きすぎると判断したオペレーターのドカさんが、手を出して受け止めてしまったため、1ダウン扱いに。これでイーブンと思いきや、なんとドカさんの口から出たのはギブアップ宣言! なんと起きあがりモーションが入っていないことが判明し、倒れたら即アウトという状態だったのだ。TKOでCavalierの勝利となった。これにより、決勝戦はガルー対Cavalierの因縁の対決、3位決定戦はstormwave light対ドカはるみとなった。

ドカはるみ。小学生の女の子が演じているのでは、と見間違えるサイズである対するCavalierはこのサイズ。Emilioに比べればずっと大型なわけだが……
向かい合ってみるとこの差。クラス分けがないので、相撲やプロレスのような感覚だ【動画】準決勝第2試合の様子

1~2回戦の敗者によるランブルにstormwave lightも混じって!?

 続いて行なわれたのが、1~2回戦の敗者によるランブル。しかし、3位決定戦に出るstormwave lightまでが混じっている。「ランブルはいい練習」ということで、どうもオペレーターの全昌勳さんがランブル好きということらしい。ランブルがスタートすると、その言葉通りにstormwave lightが猛然と活躍。もしかしたら「ランブルはいい練習」ではなくて、決勝戦に出られなかったことに対する憂さ晴らしかと思ってしまうほどである(笑)。ちぎっては投げ、ちぎっては投げという暴れぶりで、最後もみんなの死角に隠れて(?)生き残ったEmilioを場外に押し出し、完全優勝を成し遂げた。

1~2回戦の敗者の中に、優勝してもおかしくなかった実力のstormwave lightが混ざってランブルスタート【動画】最後は数体によるポジション争いになるのが普通だが、stormwave lightが見事なまでに全員を蹴散らした

 また、この日は、芝浦工業大学工学部長で、工学部電気工学科教授の水川真氏による、「芝浦工業大学 少年少女ロボットセミナー 10年の歩美と今後の展望~大学独自のものづくり教室プログラム~」と題した講演も行なわれた。水川氏は、日本の人型ロボット研究の元祖といわれる早稲田大学の故・加藤一郎氏の直系の弟子のひとり。こちらは、東京ベイエリア ロボフェスタでも行なわれた講演とほぼ同じ内容のため、詳細はそちらを読んでほしい。

 それから、特別ゲストとして参加していた、ロボットアニメの製作で知られるサンライズの井上幸一氏の口から、6月20日付けで発表されている、「サンライズ・ヒーロー・ロボット・バトル」に関しての説明も成された。略してS.H.R.B.と呼ばれる、新しい二足歩行ロボット格闘技のカテゴリーで、サンライズが版権を持つ作品に登場するロボットをモチーフにした機体のみが参加できるというもの。要するに、ガンダムやスコープドッグや勇者シリーズでもなんでも堂々と正式名称を名乗って闘えるというわけである(サンライズが製作に関わっていても、版権のない作品のロボットはダメ)。8月15日に福島県郡山市のホテルハマツで開催される第3回ROBO-ONE GATEの併催イベントとして実施される予定だ。

芝浦工業大学の水川真氏による講演の様子試合の寸評を述べていたサンライズの井上幸一氏からは、S.H.R.B.の説明も行なわれた

3位決定戦&決勝戦

 続いて、3位決定戦。stormwave light対ドカはるみだ。試合は、真っ向勝負でstormwave lightが果敢に攻めていく。時に股下に潜り込んで片足を抱え込んで投げを試みたり、真っ正面からパンチでドカはるみの向きを変えたり。この3位決定戦は、機体の性能差というよりは、オペレーターの経験値の差が出た感じだろうか。ドカはるみは、準備体操の屈伸の足を曲げた状態に似たしゃがみモーションがあるのだが、これまたかなり時間がかかり、なおかつしゃがむ途中も立ち上がる最中もバランスが悪くなるという、危険なモーション。しかし手が届かず攻撃ができないため、しゃがんで攻撃をしたかったのか(すぐにレフリーに立つよう指示されてしまうのだが)、2度もしゃがんでしまう。1回目は立ち上がろうとしてバランスを崩して自らスリップで転倒、タイム申請で1ダウン。2回目は、立ち上がりの最中にstormwave lightの攻撃を食らって、完全にダウン。10カウントで決着となった。

stormwave light対ドカはるみ。3位決定戦の体格差はこのぐらいドカはるみの踏ん張りモーション。起きあがりモーションはないが、いくつかはモーションがある
こちらはしゃがみモーション。かなり時間がかかり、このモーションはピンチを招く危険性大【動画】3位決定戦の様子

 いよいよ決勝戦。このカードは、過去何度も行なわれている闘いだが、前回の対決でガルーに負けたことで、オペレーターのえまのんさんが新型Cavalierを製作することを決意したという経緯がある。ガルーを倒したいがために生まれた新型なわけで、まさに因縁の対決といえよう。ちなみに、前日、前々日に行なわれたROBO-ONE SOCCERでは、両選手は、チームメイトだったりするので、チームメイトこそが最大のライバルということに違いない。なお、決勝戦のみ3ラウンド勝負の2ラウンド先取した方が勝ちという特別ルールで行なわれた。

 試合は、始まって10秒ほど、ガルーの1発目のパンチでCavalierがまさかのダウン。先代のあの抜群の安定感はどうしたのか? しかも、操縦ミスでまさかの自爆リングアウトで2ダウン。その後、Cavalierも1ダウンを奪い返すが、先代のような暴風雨のような攻撃力がどうも感じられない。3分直前に、ガルーがCavalierの背後を取ると、リング外へ押し出して3ダウン。ガルーのパワーもあるだろうが、新型Cavalierは重心が高いのか、軽い感じがしてならない。

 そして2ラウンド目。こちらも1ダウンを先に奪ったのはガルーだ。リング中央で闘っていたのに、Cavalierがなんとリング外まで吹っ飛ばされるという強烈な一撃である。さらにガルーはラッシュをかけ、2ダウン目もリング外に落として奪う。完全にガルーペースである。3ダウン目もそれから間を置かず、2ラウンド目はガルーのストレート勝ちとなった。Cavalierに対して一方的ともいえる勝利だったので、少々驚きである。しかし、それは試合後のインタビューで理由が判明。実はこの新型、先代とは設計が大きく変わっており、モーションも作り直しているため、まだ完璧でなかったということがひとつ。もうひとつはコントローラー。実はROBO-ONE SOCCERで使用していたコントローラーとはキーアサインが異なるようで、ROBO-ONE SOCCERのクセが抜け切っておらず、コントロールに苦労してしまったというわけだ。

 なお、えまのんさんは、先代Cavalierも、関西ナンバー1のレグホーンに勝ちたくて製作したのだが、「僕は追う方が好きですから(笑)」と、次回は桁違いに強くなっていそうなコメントを残している。打倒ガルーということで、次の試合では恐ろしく強くなってCavalierが返ってくるのではないだろうか。優勝したくままさんは、3連休がロボット三昧だったので、ちょっとお疲れモードだったような感じも(笑)。最後に優勝できてよかったとしている。

ガルーのこの下からのアッパーのようなパンチが強烈であるCavalierも奮戦したが、2ラウンドでガルーから奪えたのは1ダウンのみ【動画】決勝戦1ラウンド目の様子
【動画】決勝戦2ラウンド目の様子優勝したガルーのオペレーターのくままさん準優勝のえまのんさん
3位はstormwave lightのrobotfactoryの全昌勳さん惜しくも4位だったドカさんは、ドカはるみをまるで実の娘さんをねぎらうようにしていたトーナメント結果

選ばれし4チームによるROBO-ONE GP第2戦

 引き続き「ROBO-ONE GP 2009 2ND IN パナソニックセンター東京」の模様をレポートしよう。ROBO-ONE参加選手・チームの中でもトップ選手・チームのみが参加するのがROBO-ONE GPで、年間を通して6戦が開催される。その6大会の優勝者と事務局推薦枠2チームの計8チームが、11月28日(土)に2009国際ロボット展の中で開催されるファイナルステージで年間王者をかけて激突する形だ。5月2日(土)にイーアスつくばで行なわれた第1戦では、今回も参戦するアリモプレナ(スミイファミリー)が優勝、ファイナルへの出場権を獲得している。

 今回参戦したのは、グレートキングカイザー(マルファミリー)、ダイナマイザー(スギウラファミリー)、アリモプレナ、モンスター(BOSO)の4チーム。第1試合は、グレートキングカイザー対ダイナマイザー、第2試合はアリモプレナ対モンスターだ。両試合の勝者による決勝戦が行なわれ、優勝者がファイナルへの出場権を獲得するというわけである。オープニングは、ROBO-ONEエンターテイメントガールズ4名の内、青山莉奈さんと竹内綾香さんに先導され、4チーム+ROBO-ONE GATE決勝戦を闘うガルーのくままさんとCavalierのえまのんさんが入場(ROBO-ONE GATEの決勝戦のみ、ROBO-ONE GPのオープニングの後に行なわれた)。

 オープニングでは、各選手それぞれコメントを述べた。中でも、一際インパクトがあったのが、謎に包まれたチームであるBOSOのふたりだろう。マッドサイエンティストのマッド・ナグさん(房総方面在住)と女性オペレーターの夕妃さんという、黒ずくめのチームだ。モンスターで参戦するわけだが、この機体、どこかで見たような……などとはいってはいけない。記者も、かつてマッド・ナグさんに非常に似た方に関西方面の競技会でインタビューしたことがあるような気がしてならないのだが、他人のそら似、他ロボットのそら似ということらしい。あまりプロフィールを詮索しようとすると、夕妃さんがヒットマンとしてシバキにやって来そうな気がするので、記者も怖いので、これ以上はやめておく。読者の皆さんも、危険なのでヘタな詮索はしないようにしよう(笑)。

 ちなみに、ほかの選手がスポーツマンシップなコメントを出した中、夕妃さんは「負ける気しねぇっす!」とBOSOらしく暴走気味(笑)なコメントで会場を沸かせていた。ちなみにマッド・ナグさんは、普通に「今日もモンスターで勝ちます!」というコメントだったので、マッドという割には意外と礼儀正しい常識人らしい(笑)。

ROBO-ONEエンターテイメントガールズ4名構成で、その内、青山莉奈さん(左)と竹内綾香さんが登場ROBO-ONE GP+ROBO-ONE GATE決勝戦の2名が集結したオープニング房総方面在住のマッド・ナグさん率いるBOSO。右がオペレーターの夕妃さん

第1試合・第2試合

 第1試合は、グレートキングカイザー対ダイナマイザー。グレートキングカイザーは大幅に改造された様子。マルファミリーのお父さんの直樹さんに丁寧に説明してもらったのだが、今回は第15回ROBO-ONEに出場した際の3kg級の機体をベースに改造しており、身長で3cm、重量で1.5kgほどアップし、4.4kgの重量級となっているのが特徴だそうだ。サーボも新型に交換したのでパワーが上がっており、かなり攻撃力がアップしているようだ。オペレーターはいつもの通りに息子さんのKenくんが担当である。一方のダイナマイザーも発表されている資料では5kgとなっているが、実際には現在は7kgほどまでウェートアップしているという。重量差があるので、この点ではダイナマイザー有利といえよう。ただし、いつもはオペレーターを務めている息子さんが今回は来られなかったようで、そこが最大の弱点かも知れない。

 そして、両機がリング上に立つと、おもむろにダイナマイザーが空のペットボトルをつかんでのパフォーマンス。なんと、そのままグレートキングカイザーの方に向かって投げつける(当たってはいないけど)。なんと、挑発だ。そう、イーアスつくばでの第1戦の時は、記者は好意的に(?)事故と解釈したのだが、あれも挑発であったことが判明。ダイナマナイザーはグレートキングカイザーに負けが込んでいるので、スギウラお父さんはKenくんを精神的に揺さぶろうという作戦に出たのである(というか、対戦相手には必ずものを投げつけるというウワサ)。ちなみに投げつけられたペットボトルは、マルお父さん素早く回収すると投げ返し、試合前から早くもスパークしていた(といっても、両陣営とも楽しんでいるのだが)。

 試合が始まると、グレートキングカイザーの調子のよさがいきなり炸裂。軽快に近づくと、左の横パンチ1発を一閃、まさかのまさかでそのままダイナマイザーがダウン。ジャブのような1発でのダウン奪取なので、ウェートアップとパワーアップによってかなり攻撃力が上がっていることが実感できた。しかも、さらに10秒ほどで2ダウン目も奪い、いきなり勝利にリーチをかけてしまう。これには、さすがにダイナマイザーのスギウラお父さんも「もうちょっと手加減してくれ」と心理攻撃作戦(別のいい方をすれば「お願い」)に出ざるを得ない。もしかしたら、挑発行為が逆に火を着けてしまったのだろうか。最後も正面から抱えられての上手投げで横倒しにされ、3ダウン。新型グレートキングカイザーの圧勝だった。

グレートキングカイザー。3kg級の機体が大幅に改良され、軽量級の機動力を保持しつつ4.4kgの重量級にダイナマイザー。重量差を活かしたいところだったが……【動画】GP第1試合の様子

 次は第2試合。スミイファミリーの牛キャラクター・ロボットのアリモプレナと、ロボットよりもオペレーターとトレーナーがキャラクター色バリバリのBOSOのモンスターの対決だ。しかも、そのキャラクターは真逆。アリモプレナは、脱力系精神攻撃ともとれる「ルンルン♪」とか「左パンチ~」などとまったりボイスを繰り出す癒し系なのに対し、BOSOはオープニングでもお見せしたように黒で決めてサングラスまでかけたワル系である。どちらのキャラクターがお互いを浸食できるかが、この勝負のポイントとなりそうだ。そして、アリモプレナもスミイファミリーお母さんなので、女性オペレーター対決となるが、はたして夕妃さんの実力はいかに。

 試合は、15秒ほどでアリモプレナが1ダウンを先取。横パンチが多い中、アリモプレナは威力のある正面へのパンチも繰り出せ、無防備に正面に立ってしまったモンスターにクリーンヒットを決めた。しかし、この後モンスターは右サイドにアリモプレナをとらえる絶好の位置をキープし続け、横パンチを連打していく。もう少しでリング外に突き落とせるところまでいったが、突き落とせず、アリモプレナに逃げられてしまう。

 その後も両者は積極的にパンチの応酬を続けるが、ともにダウンを奪えない。しかし、残り40秒ほどになったところで、アリモプレナがダウンを奪うことに成功。この時間で2ダウン差は厳しいか。しかも不運なことに、ダウンした時にスイッチが切れてしまったらしく、まったく反応がない状態に。10カウントでKO、勝者アリモプレナ。これにより、決勝はグレートキングカイザー対アリモプレナとなった。

アリモプレナ。子供を中心に会場受けもよく、相手もつい油断しがちだが、実は非常に強力なロボットモンスター。こちらも優秀な1台。どこかで見たことがあるような気がするのだが、気のせい【動画】GP第2試合の様子

ROBO-ONE GP決勝戦

 決勝戦は、グレートキングカイザー対アリモプレナ。前回の対戦ではアリモプレナが勝っており、グレートキングカイザーにとっては雪辱の機会というわけだ。試合は、スタートと同時にグレーとキングカイザーがラッシュをかける。さらに接近戦を仕掛け、投げに持ち込むが、アリモプレナも抜群の安定感でそれを受け止める。しかし、その後の攻防で、アリモプレナがポジショニングをミスし、グレートキングカイザーに背中をさらしてしまうという、ピンチが訪れる。しかも、リング外に押し出される危険性もあったが、それもこらえる。が、この危地を脱して一安心してしまったのだろうか。打ち合いになり、グレートキングカイザーの左パンチがフック気味に側頭部をとらえると、アリモプレナが1ダウン。気を取り直したアリモプレナが攻めに出て、投げを狙うが不発。逆にグレーとキングカイザーに上手投げを決められ、2ダウン目を喫してしまう。

 さすがに2ダウンと追い込まれて、後のなくなったアリモプレナが、ここから猛チャージ。パンチのラッシュで、グレートキングカイザーから1ダウンを奪うことに成功する。アリモプレナのパンチはかなりパワーがあるということが見て取れた。クリーンヒットさせれば、逆転も狙えなくはない。しかも、打撃技で行くと見せかけておいて、グレートキングカイザーのパンチで伸びた腕を取って投げにいこうとするなど、アリモプレナは高レベルの闘いを見せる。その後は、パンチの打ち合いとなり、クリーンヒットかと思われるようないいパンチが両者ともに決まるが、グラっとは来ても倒れるまでには行かず。アリモプレナが体勢を崩して下がると、ここが勝負所と見たグレートキングカイザー、パンチの連打。さすがにアリモプレナ、防戦一方で、リング外に落ちないようにリング際を逃げるので精一杯という状態。しかし、グレートキングカイザー、アリモプレナに反撃するチャンスを与えないため、連打に次ぐ連打。抜群の安定感でこらえにこらえていたアリモプレナだったが、さすがにこのラッシュには叶わず、リング外に転落、3ダウン目を喫してしまった。優勝はグレートキングカイザー! これにより、ファイナルへの出場権をゲットした。すでにアリモプレナも決めているから、この雪辱戦はファイナルで、というところだろうか。今からまた好勝負を楽しみにしたい。

グレートキングカイザーが機動力と攻撃力なら、アリモプレナは安定感とパワーアリモプレナに上手投げを決めようとするグレートキングカイザーとそれをこらえるアリモプレナ【動画】GP決勝戦の様子
優勝トロフィーを受け取るマルファミリーのおふたりほしかったROBO-ONEイヤリングをゲットできたスミイファミリーのお母さんROBO-ONE GP参加ロボットそろい踏み
最後は一部ゲート参加選手も含めて記念撮影

 試合後のコメントでKenくんは、前回の対戦で負けたことがかなり悔しかった模様。「とても強い機体を作ってもらえたので、今回はどうしても勝ちたかったです。勝てて嬉しかったです」とコメント。きっと、練習で初めて今回の新型を触った時に、「これなら行ける!」という感触があったのだろう。一方、準優勝となったスミイファミリーのお母さんは、グレートキングカイザーと好勝負ができ、なおかつ勝てそうな雰囲気もあったのが非常に嬉しかったとコメント。しかし、「負け惜しみじゃないんですけど、優勝トロフィーよりも2位の景品のROBO-ONEのリングの方がほしかったので、もらえてよかったです」とも。もしかして、リングが優勝の景品だったら、優勝していた!?

 以上で、ROBO-ONE GP 2ND IN パナソニックセンター東京は終了。特にROBO-ONE GPの決勝戦は、かなりの好勝負をお楽しみいただけたことと思う。両選手のナイスファイトを称えたい。また、ROBO-ONE GATEとROBO-ONE GPの次回だが、8月15日(土)、16日(日)の2日連続開催となる。初日は「第3回 ROBO-ONE GATE IN 郡山」と、「ROBO-ONE GP 2009 第3戦」、そして新企画の「S.H.R.B -サンライズヒーローロボットバトル-」。2日目は「第4回 ROBO-ONE GATE IN 郡山」と、「ROBO-ONE GP 2009 エキシビジョントーナメント」だ。地元の人はもとより、お盆休みということで、ぜひ遠方の人も足を運んでみてはいかがだろうか。


(デイビー日高)

2009/8/6 15:29