「ソニー・エクスプローラサイエンス」がリニューアルオープン

~ソニーの技術を活用した音と光とエンターテイメントの科学技術系ミュージアム


無料で入場できるスタジオSES。有料施設の入口はこの反対側

 ソニーがお台場で運営している科学・技術系ミュージアム「ソニー・エクスプローラサイエンス」が、今月1日(月)にリニューアルオープンした。入場料は大人500円(16歳以上)、子供300円(3歳~15歳)、幼児(2歳以下)は無料。

ソニーの各種技術を気軽に楽しめるミュージアム

 ソニー・エクスプローラサイエンスは、お台場のフジテレビ社屋前、ソニーが運営する複合施設メディアージュ(アクアシティお台場に隣接)の5階にある。レインボーブリッジが見えるお台場海浜公園がすぐ間近にあり、かなり景観がいい立地だ。内容としては体験型の科学技術系ミュージアムとなっており、ソニーグループの最新技術を利用した、光と音とエンターテイメントを楽しめる。館内は、スタジオSES、インフォメーション&エンターテイメントゾーン、シアター&ワークショップゾーン、サウンドゾーン、ライト(イメージング)ゾーンの5つで構成。知覚、想像、記憶、加工、伝達、再生、感動・共感の7つが展示のキーワードで、光と音の認識から再生(感動・共感)までのストーリーとして体験できるようになっている。

メディアージュ外観(お台場海浜公園側から見て)お台場海浜公園と東京湾とレインボーブリッジ

 今回、人気のあったプラネタリウムは残念ながらなくなってしまったが、代わりに目玉として、シアター&ワークショップゾーンに「3D ソニーアクアリウム」を新設。またスタジオSESでは現在、リニューアルオープン記念で企画展「“PATTERN RECOGNITION”-ものを捉えるサイエンス-」と題した体験型展示が入場無料で開放されている(企画展以外への入場は有料)。続いては、そのスタジオSESから順番に各ゾーンを紹介していこう。

「アハ!体験」などを入場無料で楽しめるスタジオSES

 リニューアルオープン記念として、9月15日まで入場無料で開催されるのが、スタジオSESの展示「“PATTERN RECOGNITION”-ものを捉えるサイエンス-」だ。ゲームソフトなどにもなっているので知っている人も多いと思うが、「アハ!体験」とは、ソニーコンピュータサイエンス研究所所属で、東京工業大学大学院連携教授の茂木健一郎氏の研究からわかってきた、脳の不思議な能力を表すキーワードだ。英語でも「The Aha! Experience」として広く使われており、ひらめきや創造性といった脳の働きを示している。何かわかりそうでわからなくて、もやもやとしていたものが瞬間的に「わかった!」となってピンと来る体験のことを表しており、その瞬間、脳は非常に活性化しているのだそうだ。

 スタジオSESでは、メインコンテンツとしてこの「アハ!体験」を扱っており、モニタに映される映像を見て、みんなで楽しむことが可能だ。映像は、最初はモノクロのなんだかよくわからないパターンとして表示され、それが何を写した画像なのかを考えるというもの。しばらくして回答のカラー画像が表示され、「あぁ、なるほど!」となる。何パターンもの画像が収録されているので、つい立ち止まって次の画像が何なのか当ててみたくなり、ハマってしまうという具合だ。

スタジオSESのメインコンテンツのアハ!体験コーナー何だかわかる? 比較的簡単なモノクロのパターン。隣にあると興ざめだろうから、答えの画像は記事の最後に

 また、ここでは、サイバーショットやハンディカムなど、ソニーのデジタルカメラやデジタルビデオカメラに利用されている、人の顔および笑顔を認識する技術(実際にはそれらをもっと簡略化したもの)を利用した体験コンテンツも用意されている。誰がカメラの前に座ってもちゃんと顔を認識するし、複数の人の顔も識別可能だ。さらには、2人での笑顔対決を楽しめる「スマイルファイト」もある。どっちがいい笑顔を見せられるかという勝負をするのだが、何でもスマイル度を上げるコツは歯を見せて笑うことだそうだ。さらに、「今日の笑顔ランキング」では、自分のスマイルがポイント化され、登録した人の中で何位か順位付けしてくれる。

 ちなみに、ここで撮影された笑顔(仏頂面の人もいるが)は研究用途として使用されるので、許諾しないとランキングには挑戦できないようになっている。ちなみに記者の笑顔は大したことがなく、46.58点。20人ほど(リニューアルオープン初日の開館と同時に取材したので、まだスタッフや関係者、そのほか何人かのお客さんだけだった)の中でたったの16位だった。もっと女性をしびれさせるようなさわやかスマイルを身につけたいものである(笑)。

【動画】顔を認識する様子。技術的な説明もしてくれているので、ちょっと長めの48秒スマイルランキング。かなり下位で16位。笑顔というより、引きつっているだけだと(笑)すぐ見抜かれる

 そのほかにも画像関係の体験型のコンテンツがあり、1つはゲーム機プレイステーション 3(PS3)を利用した、フォトギャラリー機能。実は、あまり知られていないのだが、PS3には画像認識技術を用いた分類機能を有するフォトギャラリー機能が搭載されている。分類方法は「顔の数」(写っている人数)、「子供っぽさ」、「スマイル」、「カラー」が用意されており、1人のポートレイトか複数または大勢か、画像の色調(どの色が一番多いか)などで分類可能というわけだ。PS3をお持ちの方で、子供のデジカメ写真の画像分類で苦労している人は、ぜひ利用してみよう。また、モーション認識を利用したピンボールもあり、特定のゲートを上から下へボールが通過すると得点が加算されるという仕組み。施設の出入り口などのセキュリティシステムで使用されている技術の応用だそうだ。

フォトギャラリーの画面の1つ。日付順でまとめた画面【動画】モーション認識を利用したピンボール

 それから、音ゲー系の「12TONEバンドに挑戦」というコンテンツも。音楽解析技術「12 TONE ANALYSIS」という、楽曲を解析して、ビート、コード進行、楽曲構造、ジャンル、含まれる楽器音、ムードなどの多彩なメタデータを自動的に抽出する要素技術を応用している。しかも、その曲に合わせてPS3のコントローラを振ると、ギターやドラムといった1つの楽器を演奏できるモードも用意されており、リズムがいいと、ちゃんと曲になるという具合。記者はリズム感があまりある方ではないので、ダメだった(笑)。

ソニー・ミュージック所属のミュージシャンが楽曲を提供The Gospellersの「ミモザ」を解析したところ。イントロ、Aパート、Bパート、サビなどに分類される【動画】スタッフの方にプレーしてもらった。楽器を弾けなくてもリズム感さえあえば、曲を弾いた気になれる

新設された3Dシアターがあるシアター&ワークショップゾーン

 本来、有料展示施設の入口すぐのゾーンは、インフォメーション&エンターテイメントゾーンなのだが、ここは大型モニタに、光・音・エンターテイメントをイメージした映像が流されているほか、複数台のPCが設置されたネットワークラボでは、ソニーで研究開発された最新のアプリケーションを体験可能。現在は、アハ!体験の画像を自分で作れるようになっている。

インフォメーション&エンターテイメントゾーンの入口すぐのイメージ映像ネットワークラボのPC。アハ!体験の画像を作れる

 続いてが、メインの「シアター&ワークショップゾーン」。ここは、160インチ大型モニタが設置されたサイエンスシアターとなっている。現在放映中のメインコンテンツは、昨年夏に銀座ソニービルで開催して好評を博した「41st Sony Aquarium 2008 -ハイビジョン沖縄美ら海水族館-」の中の、水槽の内側から収録した3D映像。偏光式(赤青じゃなくて、黒いサングラスのようなタイプ)のメガネを利用することで立体ハイビジョン映像を観られる方式で、その美しさは真面目な話、思わず涙が出そうになったほど(トシを取って涙もろくなってきたのもあるけど、とても美しかった)。マンタやジンベイザメなど、黒潮の海に棲む生物たちは必見である。珊瑚が改めて地球の、特に海洋の生態系にとって非常に重要な存在であることがわかるし、自然を守らねばいけない! という気分にもなれるので、特に親子で観てほしいところ。

 そのほか、立体映像版のFIFA公認ビーチサッカーワールドカップ・試合ハイライト集や、オリジナルサイエンス番組「謎解き科学捜査官」も放映されている。謎解き科学捜査官は現在、Vol.1から3までが放映されており、Vol.1「モルフォチョウの不思議」、Vol.2「音の力」、Vol.3「絵画から聞こえる謎の音」となっている。さらに、番組の合間には、スタジオSESでも観られるアハ!体験の映像なども流されており、ちょっと疲れた時はイスに座って一休みしながら頭を使うことも可能だ。

シアター&ワークショップゾーン。奥でワークショップが行なわれる160インチモニター。謎解き科学捜査官「Vol.1 モルフォチョウの不思議」を放映しているところ

 また、ここはゾーン名にあるとおり、月1回のペースでワークショップも実施中。6月は27(土)・28日(日)に「第15回分解ワークショップ」として、小学3~6年生とその保護者の2名1組で、各日24組を募集中。参加費は無料だ(入場料は別途必要)。そのソニー製品を開発した技術者が講師となって解説、分解を手伝ってくれる内容だ。我々30~40代から上は「技術力のソニー」として憧れのイメージがあるが、それらを開発した技術者が一緒になって分解させてくれるというのだから、たまらない人もいるだろう。子供たちよりも、お父さんの方が参加したいであろうというイベントである。

音を中心に遊べるサウンドゾーン

 続いてが、音を中心にしたさまざまな体験型のコンテンツが用意されているサウンドゾーンだ。ここはすべてのコンテンツが入れ替えられたわけではないが、新型のコンテンツも用意された。その1つが「オンバ」。漢字で書くと音場である。20個のスピーカーを空間内に均等に配置したシステムで、音の構造を要素に分解し、この空間内で再び集めて1つの音の場を造り出すという内容。いわゆる、5.1chサラウンドシステムなどがあるが、それをもっと豪華にした20chサラウンドシステムだ。音の場のシチュエーションは、家の中、オーケストラ、太陽系といったさまざまなものが用意されている。1つ1つのスピーカーに耳を近づけると、音の要素の1つずつとして、シャワーの音や何かの楽器など、それぞれ個別に聞き取ることも可能だ。

オンバ。立っている筒がスピーカー【動画】オンバの中を歩いてみたところ。音が独立して聞こえるような、一体となっているような感じ

 また、ライトゾーンにあってもおかしくない光がとてもきれいな「サウンド カオス」も注目。ソニーコンピュータサイエンス研究所で開発された特殊なセンサーの「スマートスキン」を利用したコンテンツだ。スマートスキンは人の身体が持っている電気を感じ取ることができ、スクリーンに組み込まれている。スクリーンを手で触るとスマートスキンが電気を感知し、手の動きに合わせて音ときれいな光が広がっていくというもの。同じスマートスキンを使って作られているイスが、「ハートビート チェア」。実際に腰掛けられる長いすの表面がサウンド カオスのスクリーン同様にスマートスキンを利用して作られている。表面に黄色い光の玉が複数描画されているのだが、触ろうとすると逃げていくようになっている。

サウンド カオス。非常にきれいで、自分の手の動きで自由に表現できる【動画】ハートビート チェアの様子

 そのほかのコンテンツとしては、録音した、自分の声を加工してロボット風や酔っぱらい風など8種類のパターンで再生できる「エモーショナル スピーチ」や、自分の声をビジュアル化する「ボイス ビジュアライザー」など、自分の声で楽しめる系統がまず1つ。もう1つは、ユーザーが移動しても携帯電話がつながる仕組みを体験できる「セルラー キューブ」や、メールが届く仕組みがわかる「ヴィジブル ネットワーク」などネットワークの仕組みを体験しながら学べる系統などがある。

エモーショナル スピーチボイス ビジュアライザーでは、スクリーンに自分の話した声がCGとなってリアルタイムに描画される携帯電話と基地局の電波の接続をビジュアル化して観られるセルラー キューブ
ヴィジブル ネットワークの端末。ここで文面を入力して送信ヴィジブル ネットワークのネットワーク空間をイメージした画面。ここをデータが移動していく

 なお、サウンドゾーンとライト(イメージング)ゾーンの各種コンテンツの遊び方の解説は、ソニーらしく、携帯ゲーム機PSPを利用。さすがに今秋発売予定のこれまでとはデザインが大きく変わる最新型「PSP go」は採用されていないが、現行機種では最新モデルのPSP-3000が、コンテンツごとに色を変えて備えられていた。

PSPがデジタルマニュアルとして利用できるPSPは各コンテンツの横に備え付けられている

映像系を中心に楽しめる最も人気の高いライト(イメージング)ゾーン

 ここは人気コンテンツが多かったため、ほとんど手つかずということで、リニューアル前とはあまり変更がないそうである。中でも一番人気は、モーションマジックミラー。モニタの正面に立つと自分が映るのだが、特殊効果を得られる仕組みになっている。「時間の流れ」を重ねた世界、炎や波紋の世界、光の世界の3種類がある。炎や波紋の世界では、自分の動きに合わせて炎が出たり、波紋で画面がゆらゆらしたりという具合。光の世界では、自分が動くと無数のハートマークや雪が舞う。女性がやるとかわいいが、記者のようなオッサンがやると自分でも引いてしまうので(笑)、彼女とか奥さんとか娘さんにやってもらおう。

 そして、男女問わずちびっ子たちから、大人にも人気なのが「時間の流れ」を重ねた世界だ。身体の一部分が遅れて動くので、その場で回転すると身体がねじれてしまう「スパイラル」、腕などを動かすとまるで超高速で動いているかのように残像が残る「残像」、そして特撮ドラマばりに分身が可能となる「幻影」、ミュージシャンのビデオクリップなどでもよく使われる、早送り再生と巻き戻し再生を交互に行なう「シーソー」となっている。これは深く考えずに楽しめるものだから、本当に人気で、常にちびっ子たちが群がっている状態。中には、その場でどれだけねじれるかスパイラルで超高速回転している高校生ぐらいの大きなお兄ちゃんたちもいたりするほど(笑)。記者も、幻影では思わず、「おぉっ、バルタン星人!?」と感動。つい「フォフォフォフォ……」と、真面目に口を突いて出そうになったのは内緒である(意志の力で本気で抑えた)。なお、利用者が非常に多く、撮影が難しかったので、光の世界と炎や波紋の世界のみの撮影となったのでご了承いただきたい。

広報さんと男2人で光の世界のハートマーク。キラキラ(笑)【動画】炎と波紋の世界の炎。本当に焦げていそう

 その他のコンテンツは、影絵を認識させてリアルな動物のアニメを出現させる「ホロウォール テーブル」、ソニーコンピュータサイエンス研究所が開発した二次元コードの機能を楽しめる「サイバーコード」、タイムスケールの異なるさまざまな映像(月や地球の公転、東京の1年間の平均気温の変化、ミルクに一滴垂らしてできるミルク・クラウンの様子など)を扱ったタイルを好きな順に並べて大型スクリーンに表示させて好きなタイムスケールに調節して眺められる「データタイル」などなど。ライト(イメージング)ゾーンとサウンドゾーンは、体験型の中でも、身体を動かして楽しめることから特に子供たちに人気で、取材した日もちょうどこの時期は学校公開(授業参観)や春の運動会などが日曜日に行なわれて振替休日だったらしく、午前中から結構子供たちでにぎわっていた。

【動画】ホロウォール テーブル。上手に影絵を作ってスクリーンに映すと、その動物のアニメが始まる【動画】サイバーコード。2次元バーコードよりもずっと情報量が多いのが登場データタイルの画面。最大12の映像を映せる
データタイルの手元の操作システム【答え】冒頭のアハ!体験のモノクロパターンの答えは、手に持ったホチキス

 ソニー・エクスプローラサイエンスは、何フロアもあるような大規模な施設ではないのだが、ソニーファンはもちろんのこと、体験型コンテンツで遊びたいという子供たちにはもってこいのミュージアムである。スタジオSESは無料入場できる施設ということで普通の明るさだが、施設内は暗めに設定されている点がポイントなのか、夕方にはカップルが増えるという。穴場的なデートスポットにもなっているそうだ。しかも、ライト(イメージング)ゾーンのモーションマジックミラーのように、大人でもつい楽しんでしまうコンテンツもあるので、「なんか変わったデートスポットで恋人を楽しませたい!」という人にもってこいである。ぜひソニー・エクスプローラサイエンスも楽しんでみてほしい。

 なお、ソニー・エクスプローラサイエンスでは前述した今月27日、28日の親子で参加できる第15回分解ワークショップのほか、7月25日から8月30日まで(8月15日、16日を除く)の毎週末には小中学生向けの「ソニー・サイエンスプログラム」を開催。「科学教育を通じて将来を担う子どもたちを支援したい」という同社創業者の理念から始まった社会貢献活動で、今回は50周年。それを記念して、今年は各地で開催しているそうだが、本拠地のソニー・サイエンスプログラムでは夏休みのイベントとして開催される。今回は、社内公募で選ばれた新企画を含めた内容になるそうで、身近な素材を利用した手作りヘッドホン、ICレコーダづくりなど、技術のソニーらしいモノづくりが予定されている。お子さんにぜひモノづくり魂を持たせたいという保護者の方は、公式サイトから申し込めるので要チェックだ。



(デイビー日高)

2009/6/9 15:28