石井英男のロボットキットレビュー
姫路ソフトワークス「JO-ZERO」ハードウェア組み立て編(その2)

~ハードウェアの組み立て完了からサンプルモーションの実行まで
Reported by 石井英男

 姫路ソフトワークスから登場した「JO-ZERO」は、全長300mm、重量約860g(バッテリ込み)という、小型で軽い二足歩行ロボットキットだ。これまでの二足歩行ロボットキットとは一線を画す、ロボットとしての「かっこよさ」を追求していることが魅力だ。

 今回は、前回に引き続いて、組み立て作業の残りを行なう。

腕の組み立て

 JO-ZEROの組み立て作業は、「下半身組み立て」「胴体組み立て」「腕組み立て」「全体組み立て・配線」の4つのステップに分けられる。前回の記事では、ステップ2の胴体組み立てまでを紹介したので、今回は腕の組み立てから行なう。

 なお、初期ロットのCD-ROMに収録されている組み立て説明書には、写真や説明キャプションなどにいくつか細かい間違いがあるが、それらの間違いを修正した組み立て説明書の最新版が、姫路ソフトワークスのJO-ZEROサポートページで公開されている。

 また、同サポートページには、専用モーション作成ソフト「JOZコントローラ」の最新版やJOZコントローラのチュートリアル、サンプルモーションのデータ、モーションジェネレータ機能の使い方、赤外線リモコンやホビーロボット用送受信機の利用方法など、高機能なJO-ZEROを使いこなすために役立つ情報が多数公開されている。

 サポートページには、かなり頻繁に情報やデータなどが追加されているので、JO-ZEROユーザーはもちろん、JO-ZEROに興味がある人はチェックしておくことをお勧めする。ホビーロボットは、組み立てたら終わりというものではないので、JO-ZEROのようにサポートページが充実していることは高く評価できる。

 腕の組み立ては、まず上腕から行なう。右上腕と左上腕では、利用するサーボブラケットが異なるので間違えないようにしよう。前回の記事でも解説しているが、サーボブラケットBとサーボブラケットAは非常に似ている。右上腕にはサーボブラケットBを利用し、左上腕にはサーボブラケットAを利用する。上腕を組み立てたら、前腕を組み立てる。こちらも左右で利用するフレームと親指パーツが異なる。上腕と前腕ができたら、前腕と上腕を合体させれば、腕が完成する。なお、サーボホーンにブラケットを取り付ける際には、サーボホーンの切りかきの位置が説明書の指示通りになっているか、必ず確認すること。

右上腕(第1工程)の組み立てに必要なパーツ。サーボブラケットはBを利用するサーボモーターのケースビスをすべて取り外し、サーボブラケットBの穴にサーボモーターのケーブルを通すサーボブラケットBをサーボモーターに装着し、M1.7-23.0ネジ4本で固定する
右上腕(第2工程)の組み立てに必要なパーツ。先ほどのブラケットにさらにサーボモーターを取り付けるサーボモーターのケースビスを2本取り外し、サーボブラケットBにはめ込み、M1.7-25.0ネジ2本で固定する右上腕(第3工程)の組み立てに必要なパーツ
サーボホーンの切りかきが短辺の中央(銘板とは反対側)に位置するようにして、コの字ブラケットBをはめ込み、M2.0-3.0ネジ4本で固定するコの字ブラケットBを固定した状態を横から見たところ同様にして左上腕部も組み立てる
右上腕部と左上腕部は、このようにケーブルの出方も左右対称になる腕フレームは、左右でネジ穴の位置が違うので間違えないように気をつけよう。この写真で左側が右腕フレーム、右側が左腕フレームだ右前腕(第1工程)の組み立てに必要なパーツ
右腕フレームの内側に赤色の腕パーツAを取り付け、M1.7-3.0ネジ2本で固定する右手親指パーツを取り付け、M1.7-3.0ネジ2本で固定する腕パーツBをはめ込み、M1.7-3.0ネジ4本で固定する
腕パーツBを固定したところ右前腕フレームにケースビスを2本取り外したサーボモーターをはめ込み、M1.7-25.0ネジ2本で固定する同様にして左前腕部も組み立てる
右腕の組み立てに必要なパーツ。先ほど組み立てた右上腕部と右前腕部を合体させるサーボホーンの切りかきの位置に注意しながら、右上腕と右前腕部を合体させ、M2.0-3.0ネジ3本で固定するフリーホーン側もM2.0-3.0ネジ3本で固定する
同様にして左腕も組み立てる

全体の組み立て

 いよいよ、JO-ZEROの組み立て作業も佳境に入ってきた。次は、これまでに組み立てた下半身と胴体、両腕を合体させ、JO-ZEROの全身を組み立てる作業になる。まず、下半身に胴体を合体させて、次に両腕を胴体に合体させる。合体させる際には、サーボホーンの切りかきが正しい位置にあるか、必ず確認しよう。

 両腕を胴体に合体させたら、胸部パーツを取り付ける。胸部パーツには、赤いJのマークが別パーツとして用意されており、JO-ZEROのかっこよさを引き立てている。次に、頭部パーツを取り付ける。頭部パーツのデザインは神矢みのる氏によるもので、正統派ヒーローロボットらしい、精悍なデザインだ。また、頭の後ろにはスピーカーが内蔵されており、音声の再生が可能だ。

先に組み立てた胴体と下半身を合体させるのに必要なパーツサーボホーンの切りかきの位置に注意して、胴体と下半身を合体させ、M2.0-3.0ネジ6本で固定する胴体と下半身を合体させたところ(正面から)
胴体と下半身を合体させたところ(側面から)両腕を取り付けたところ胸部の組み立てに必要なパーツ
胸カバーに赤い胸マークを取り付け、M1.7-1.8ネジ3本で固定する胸フレームの出っ張りに胸カバーの穴を引っかけて、胸カバーをはめ込み、M1.7-3.0ネジ4本で固定するこれで頭部以外は完成。胸の赤いJマークがかっこいい
頭部の組み立てに必要なパーツ胴体フレームにヘッドパーツCを取り付け、M1.7-3.0ネジ2本で固定するスピーカーのケーブルをヘッドパーツCの穴に通して、スピーカーの裏に貼られている両面テープの保護紙を剥がして、貼りつける
ヘッドパーツAにヘッドパーツBを取り付け、M1.7-3.0ネジ1本で固定する頭部を胴体フレームにはめ込み、M1.7-3.0ネジ4本で固定する

コントロールボードの取り付けと配線

 残る作業は、コントロールボードの取り付けとサーボケーブルなどの配線だ。コントロールボードのHSWB-03Fを取り付ける前に、付属のマイクロSDカードをPCに接続して、FAT16形式でフォーマットし、付属CD-ROMのHSWB03FDATフォルダ内のすべてのファイルをマイクロSDカードにコピーし、HSWB-03FのマイクロSDカードスロットに挿入しておくようにすること。この作業については、組み立て説明書ではなく、付属CD-ROMの「始めにお読みください.TXT」に書かれているが、筆者はこのファイルを見落としてしまっていた。

 HSWB-03Fを背中に取り付けたら、サーボケーブルのコネクタをHSWB-03Fに接続する。コネクタの向きに気をつけよう。サーボケーブルの黒色の線が、HSWB-03Fの外側にくるように接続すればよい。また、サーボモーターの番号と接続するコネクタの対応もしっかり確認しておくこと。

 配線が完了したら、余ったサーボケーブルを結束バンドでまとめていく。ケーブルのまとめ方がいい加減だと、見た目もかっこ悪いだけでなく、ケーブルがひっかかってトラブルの原因になる。組み立て説明書では、まとめ方はあまり詳しく説明されていないが、サポートページに、追加説明書として「サーボケーブルのまとめ方ガイド」が公開されているので、それを参考にするとよいだろう。基本的に、腕や足の先端部分からケーブルをまとめていき、余ったケーブルは背面カバー内にまとめて押し込む感じになる。サーボモーターの可動範囲を制限しないように、余裕を持ってまとめるようにする。腕や脚を動かしながら、ケーブルをまとめていくとよいだろう。

 サーボケーブルの整理が終わったら、充電済みのバッテリを胸部に取り付け、バッテリのコネクタを電源コネクタに接続すれば、組み立て作業は一通り完了だ。

コントロールボード「HSWB-03F」の取り付けに必要なパーツ胴体のサーボケーブルを左右に2本ずつ逃がし、M2.0-12.0ネジ4本とM2.0-8.0スペーサを利用してHSWB-03Fを取り付ける結束バンドを利用してサーボケーブルをまとめる
サーボケーブルのコネクタをHSWB-03Fのコネクタに接続する。コネクタは、基板の外側が黒色になるように差し込むことすべてのサーボケーブルのコネクタをHSWB-03Fに接続する。差し込むコネクタを間違えないように注意することまずは、腕のサーボケーブルを結束バンドでまとめる。腕の先端部分から順にまとめていくのがコツ。各サーボモーターの可動範囲を制限しないように、余裕を持たせること
脚のサーボケーブルも結束バンドでまとめていく。サポートページで公開されている「サーボケーブルのまとめ方ガイド」を参考にするとよい膝からのケーブルと股関節ピッチ軸のケーブルは、股関節ピッチ軸フレームに空いている穴に結束バンドを通してまとめる余ったサーボケーブルは、背面部分にまとめて背面カバーを取り付ける
ケーブルをまとめたところ背面側の様子バッテリは胸部に搭載する
バッテリのコネクタを電源コネクタと接続すれば、動かす準備は完了だ

JOZコントローラの初期設定とホームポジションの設定

 JO-ZEROには、専用モーション作成ソフト「JOZコントローラ」が付属しており、モーション作成や高度なプログラミングを行なうことが可能だ。JOZコントローラは非常に高機能で、二足歩行ロボットの肝である歩行モーションを自動生成してくれるモーションジェネレータ機能も搭載されている。JOZコントローラの使い方については、次回詳しく紹介する予定なので、ここでは初期設定の仕方とホームポジションの設定方法のみ紹介する。

 JOZコントローラをインストールしたら、PCとHSWB-03Fの高速シリアル端子の間を付属のシリアルケーブルで接続する。最近のPC(特にノートPC)では、シリアルポートを搭載していない機種が多いが、その場合は、USB-シリアル変換アダプタを使えばよい。JOZコントローラを起動したら、まず、初期設定を行なう。初期設定では、JO-ZEROを接続するシリアルケーブルのポート番号を入力する。あらかじめデバイスマネージャで、ポート番号を確認しておくこと。次に、ポジションエディタ画面を開いて、JO-ZEROの電源スイッチを入れ、起動音が鳴り終わったことを確認して、「BOARD Link」にチェックをつければ、JO-ZEROがゆっくりとホームポジションへと移行する。JO-ZEROのサーボモーターは、あらかじめ原点調整済みなので、トリム調整は不要だ。初心者にとって、ホームポジションのトリム調整作業はややハードルが高い作業であり、トリム調整が不要なことは嬉しい。

付属のシリアルケーブルをHSWB-03Fの高速シリアル端子に接続する。赤色の線がスイッチ側にくるように差し込むことPCにシリアルケーブルを繋ぎ(シリアルポートがないPCの場合は、USB-シリアル変換アダプタ経由で接続する)、専用モーション作成ソフト「JOZコントローラ」を起動するJOZコントローラのメインメニュー。起動直後はこの画面となる
まず、「Set Up」をクリックして、シリアルポート番号を入力し、「SetupClose」ボタンをクリックして閉じる「POSITION EDITOR」をクリックして、ポジションエディタ画面を開く【動画】JO-ZEROの電源を入れると、スピーカーから起動音が流れる。ポジションエディタ画面の「BORAD Link」にチェックを入れると、ホームポジションへゆっくりと移行する
ホームポジション設定後の様子。サーボモーターの原点はあらかじ設定済みなので、ホームポジションの調整を行なう必要はない

歩行モーションやサンプルモーションの実行

 最後に、モーションジェネレータ機能を利用して生成した歩行モーションの例や、サポートページで公開されているサンプルモーションの実行例を紹介しよう。歩行モーションの作成は、二足歩行ロボットのモーション作成の中でも、特に難易度が高いが、モーションジェネレータ機能に対応したJO-ZEROなら、いくつかのパラメーターを入力するだけで、最適な歩行モーションが計算によって生成されるので、非常に楽だ。また、執筆時点で公開されているサンプルモーションは全部で5種類だが、これらはJO-ZEROの豊富な軸数を活かしたもので、動きがダイナミックでかっこいい。

【動画】モーションジェネレータを利用して生成した前進歩行モーションの例【動画】パラメーターを少し変えるだけで、ダッシュ歩行を生成できる【動画】こちらはモーションジェネレータで生成した大股すり足歩行の例
【動画】モーションジェネレータでは、横歩き(サイドステップ)の生成も可能【動画】旋回モーションにも対応しているので、モーションジェネレータだけで基本移動モーションをすべて生成できる【動画】付属CD-ROMに収録されている仰向けからの起き上がりモーション。両脚を開いて、見事に置きあがる
【動画】同じく付属CD-ROMに収録されているうつ伏せからの起き上がりモーション。こちらもユニークな起き上がり方でかっこいい【動画】サポートページで公開されているサンプルモーションの一つ「アッパー」モーション。腰軸を活かした、かっこいいモーションだ【動画】同じくサポートページで公開されているサンプルモーションの一つ「横パンチ」モーション
【動画】同じくサポートページで公開されているサンプルモーションの一つ「パンチ」モーション【動画】同じくサポートページで公開されているサンプルモーションの一つ「キック」モーション【動画】同じくサポートページで公開されているサンプルモーションの一つ「体操」モーション。足裏が小さいのに、見事な体操を見せてくれる


2009/10/2 18:24