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【 2008/12/19 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission11-
「最終回 さあ、ロボットと歩き出そう!」
[19:00]
【 2008/12/12 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission10-
「オリジナルモーションを作る&Tipsみたいなもの、その2」
[18:14]
【 2008/12/08 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission09-
「KHR-2HVをどんどん動かす&Tipsみたいなもの、その1」
[16:45]
【 2008/12/01 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission08-
「加速度センサーの設定と、サンプルモーションの活用」
[16:02]
【 2008/11/26 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission07-
「ジャイロセンサーで無敵の歩行をゲットしよう」
[00:02]
【 2008/11/14 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission06-
「KHR-2HVの基本姿勢、ホームポジションを設定する」
[19:10]
【 2008/11/07 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission05-
「KHR-2HV、怒濤の組み立て編、パート3」
[23:13]
【 2008/11/04 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission04-
「KHR-2HV、怒濤の組み立て編、パート2」
[18:39]
【 2008/10/24 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission03-
「KHR-2HV、怒濤の組み立て編、パート1」
[20:00]
【 2008/10/17 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission02-
「買ったぞロボット、さあ組み立てよう! でもその前に……」
[14:27]
【 2008/10/10 】
高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission01-
「ホビーロボット、二足歩行ロボットとは何ぞや?」
[16:33]

高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」
-Mission01-
「ホビーロボット、二足歩行ロボットとは何ぞや?」

Reported by 高橋敏也

 ある日のこと、何気なくテレビを見ていたら興味深いコマーシャルが流れた。異国の小さな広場で子供たちが愉しげにロボットと走り回っているのだ。そう、言うまでもなく科学の最先端を行くロボット、ホンダのASIMOをモデルに使ったコマーシャルだ。

 「ロボットもここまで進化したのか……」

 子供の頃、憧れだったヒト型ロボットが、アニメやマンガの世界を飛び出した。そんな事実に感心するやら、感動するやら。だが、多くの人がその事実を知った後でも、ヒト型ロボットを個人で楽しめる時代になったということはあまり知られていない。そう、今や2本の脚で人間のように歩き、走り、ダンスをするロボットが誰でも簡単に入手できるのだ。

 しかもそのロボットは自分の手で組み立て、モーションと呼ばれる動きをオリジナルで作成し、設定することもできる。さらに外装をカスタマイズしたり、機能を追加したり、パワーアップすることまで可能なのだ。ここでは「ホビーロボット」という言葉を使っているが、実際には「ホビー以上」と言っても過言ではない本格さなのである。

 だが、「ロボットを組み立てるなんて難しいんじゃないか?」「組み立てたはいいけどどうやって楽しめばいいの?」など、そういった心配をしている人も多いと思う。そこで本連載ではロボットに関する知識がゼロ、機械の組み立て経験ゼロといった人のために「ロボットキットの組み立て方法」を紹介していく。

 恐らく本連載をお読みいただけば、二足歩行ロボットキットの組み立てと操作に必要なのは「飽くなき興味」だけということが分かって頂けると思う。ロボット工学の知識や、プログラミング技術などは、また別の話なのである。そんな訳で記念すべき連載第1回目のテーマは「ホビーロボット、二足歩行ロボットとは何ぞや?」である。


「二足歩行」の「歩行」って何?

筆者のロボットコレクションの一部。全て二足歩行ロボットのキットを購入し、自分で組み立てた。ほかにも分解した状態のものが数体ある
 最初に宣言しておくが、本連載に難しい話はほとんど登場しない。単に面倒な話とか、「こいつは何を言っているんだ?」というおふざけ話は出てきても、難しい話には決してしないつもりだ。しかも筆者の私も、数年前はロボットの素人だった。勢いで二足歩行ロボットのキットを購入し、組み立てて楽しんでいるただの「おっさん」である。

 しかし読者の皆さんには面倒な話だったり、説明不足なことが生じるかも知れない。そんな時は遠慮無くご質問いただければ、積極的にお答えしていくつもりだ。もちろんホビーロボット、二足歩行ロボットに関する質問限定でお願いしたいところで、逆に「あんまり難しいことは聞かないで」ではあるのだが(笑)。

 とまあ、前振りが終わったところでさっそく具体的な内容に入ろう。本連載では近藤科学というメーカーの二足歩行ロボットキット「KHR-2HV」を実際に購入、製作、動作させるまでを紹介する。この過程ではKHR-2HV本体だけでなく、是非一緒に揃えたいオプションパーツや、あると便利なオプションなども順次紹介する予定だ。そして連載終了時には、KHR-2HVを自由に操るための基礎が出来上がっているという筋書きである。

 だが、ここでふと気になるのは「二足歩行ロボットの“二足歩行”って何?」という点だ。本連載では、KHR-2HVなども含めて「ホビーロボット」と表現していこうと思うのだが、ホビーロボットはピンからキリまで実にさまざまなものが市販されている。ここであえて二足歩行という言葉を使っているのには、ちょっとした理由があるのだ。


 そこで大前提を1つ。ここで言う二足歩行の「歩く」という動作は、「片方の足裏がいったん地面(床面)から離れ、宙に浮いた状態になる」歩行を言っている。いきなり最初から面倒な話になったが、とりあえず普通に人間が歩くところを想像して欲しい。片方の脚を上げ、足裏は地面から離れ、上げた脚を前方に降ろして、今度は軸となった脚を上げる……の連続だということが分かる。これが可能なロボットのことを二足歩行ロボットと呼んでいるのだ(実際にはもっと細かな定義や解釈があるのだが)。

 人間はこの二足歩行を、いとも簡単にこなしている。そして本連載で取り上げるKHR-2HVも、組み上げてしまうとこの二足歩行を簡単に行なう。だが、実はこの二足歩行、機械に行なわせようとすると、技術的に大変難しいものなのである。そのため安価なホビーロボットは、一部を除いて「すり足」で歩行を行なう。二足の足裏を地面(床面)から離さず、常にバランスの安定した状態で歩行を行なうのだ。

 簡単に言ってしまうと足裏をいったん宙に浮かせる歩行では、一時的に片足立ちをすることになる。その際、バランスをうまく取ることが技術的に難しい。2本の脚で直立した状態では、重心は高いところにあるのでさらに状況は悪くなる。それをいとも簡単にこなせるところが、KHR-2HVを代表とする二足歩行ロボットキットの「ホビーを超えた」ところなのである。

 ちなみに本連載ではKHR-2HVを使用するが、ショップではさまざまなメーカーのキットが市販されている。デザイン、サイズ、機能、パワー、そして価格。各社それぞれ特徴のあるロボットキット(中には完成品もある)を販売しているので、自分好みのものを選んでもらっても構わない。


最近のお気に入りは、本連載で扱うKHR-2HVの兄弟機であるKHR-1HV。腕にホビー用のレーザー銃を装備している KHR-1HVの脚部。2本の脚を使い、片方をしっかり持ち上げながら歩行動作を行なう。だからこそ「二足歩行ロボット」と呼ばれるのだ

二足歩行ロボットのキットには何が入っている?

 とあるアメリカのSFドラマに、大型犬ぐらいのサイズのロボットが登場した。驚きなのはそのロボットが、まるで生きているかのようにスムーズかつ、アクティブに動作していたのである。仮に人間が入る着ぐるみとして考えても、サイズ的には子供でも難しいぐらい。もちろんその当時の技術力では、本当にそんな動作が可能なロボットを作るのは不可能である。いったい、どうやって高度なロボットを作り上げたのだろうか……。

 種明かしをすると、なんのことはない、訓練されたチンパンジーが着ぐるみを着ただけだったのだ。言われてみるといつも前傾姿勢だったし、中身が生き物なら、生き物のように動くのも当たり前だ。若いチンパンジーなら、子供より小さなサイズというのも納得できる。まあ、今なら動物虐待ということで、大変な騒ぎになるネタなのだが(ギャラクティカ チンパンジーで検索してみよう!)。

 もちろん皆さんが購入する二足歩行ロボットのキットには、チンパンジーとか、ミーアキャットとか、そういった生き物は入っていないので安心して欲しい(笑)。キットに入っているパーツの主なものは以下の4種類に集約される。


・サーボモーター
・フレーム
・コントロールボード
・バッテリ


 これらのうち、一番分かりやすいのはバッテリだろう。要するに充電して繰り返し使える電池であり、これがロボットの動力源になっている。間違ってもモビルスーツのように、核融合エンジンは搭載していない。プラズマ炉とか、精霊機関とか、そういったものでもないので安心して欲しい。

 そのバッテリから電力の供給を受けるのが、サーボモーターである。二足歩行のホビーロボットは、サーボモーターの回転する力を使って、さまざまな動作を行なうのである。サーボモーターは人間の関節にあたる部分に入っていて、筋肉の力ではなく、そのモーターの回転力によって腕や脚を動かすのだ。このサーボモーターに関しては、ほかにも知って欲しいことがたくさんあるので、組み立て時に詳しく紹介したい。

 フレームはサーボモーター同士を接続したり、ロボットのボディを構成するために用意されている。一般的に軽くて加工しやすい樹脂、あるいはアルミを使って作られている。ベテランのロボットビルダーの中には、カーボンファイバーや真鍮を使っている人もいる。

 コントロールボードは言うなればロボットの頭脳であり、脊髄である。電子ブロックが懐かしいと思える世代の人には、マイコンボードと言った方が通りはいいだろうか? 16ビット、あるいは32ビットのCPU、メモリ、インターフェイスが搭載された小さなボードである。そしてこのボードにサーボモーターを接続し、回転などをコントロールしてロボットを動かすのである。

 もちろん上記以外にも、ロボットを構成するパーツは大量にある。例えばサーボモーターをフレームに固定するネジ、フレーム同士を固定するネジ、コントロールボードを固定するネジ、予備のネジ、何に使うか分からないネジ(笑)などなど。本当にビックリするぐらいネジの山が用意されている。

 冗談はさておき(ネジの山があるのは本当)、例えばパソコンと接続するためのアダプタやケーブル、サーボモーターに電源を供給するためのケーブル、スイッチ、足裏用の樹脂製パーツなど、KHR-2HVのようなキットにはロボット本体と、必要最低限の動作を可能にするパーツ、機器が含まれている。

 ここで重要なことを1つお伝えしたい。ごく一部のロボットキット、あるいは完成品ロボットを除いて、多くの二足歩行ロボットはキットだけでは動かすことができないのだ! 「話が違うぞ高橋!」「今さらそんなことを言われてもミナミコアリクイのタエちゃんだって困るぞ、高橋!」というご意見は当然である。

 何を隠そう、ロボットキットの多くは購入する人が「パソコンを持っている」ことを前提としているのだ。要するにロボットの設定をしたり、動作をいじるためにはロボットとパソコンを接続しなくてはならず、そういった意味でパソコンは必須なのである。

 さらにさらに。ロボット本体のキットだけでなく、先程も書いたが「是非一緒に揃えたいオプションパーツ」や「あると便利なオプション」が存在する。というか、どうせロボットキットを買うなら、一緒に揃えてもらいたいパーツが存在するのだ。このあたりに関しては次回詳しく紹介したいと思う。


近藤科学製KHR-2HVのパッケージ。このパッケージを見るだけでドキドキするのは私だけだろうか? キットパッケージの中身はこんな感じ。「本当にこんなパーツからヒト型のロボットが組み上がるのか?」と疑問を持つのも当然。でも組み立てると二足歩行ロボットになってしまうのだ

近藤科学製のロボット用サーボモーター2種類。KHR-2HVに使われるのは左のタイプ。サーボモーターに関してはいずれ詳しく紹介する ロボット用のコントロールボード各種。写真左端にあるのがKHR-2HV用のコントロールボード。ロボットに搭載するためコンパクトに作られている

KHR-2HVのフレームは、アルミと樹脂で構成されている このようにサーボモーターと組み合わせたり、フレーム同士を結合してロボットを形作る

KHR-2HVに標準付属するバッテリと充電器。これだけでもKHR-2HVを動かせるが、標準の充電器は必要最低限のものなので、充電に少々時間がかかる。また、バッテリが1本だけだと、使い切ってから充電が終わるまで待たなくてはならない。そこで予備のバッテリや充電器を用意するわけだ おまけ写真。KHR-2HVで使用するネジの袋。ずいぶん多いなあと思ったあなた、KHR-2HVが発売される前のロボットはもっと大量のネジを使っていたのだ。ネジ好きにはたまらないのだが、ネジ嫌いには悪夢の光景である

どこで買えばいいの?

 よし、ロボットに興味が湧いてきたぞ、さっそく買いに行こう。でも、どこで売ってるんだ? 値段はいくら? という方、はい注目。本連載の主役であるKHR-2HVは、オープン価格設定なのだが、税込で89,985円で販売されている(2008年10月時点)。

 「ええっ! 二足歩行ロボットキットって、そんなに高いの!?」と思ったあなた、だから私は「ホビー以上」って言ったじゃないですか。しかしあなた、ものは考えようですよ。科学技術の最先端をいく二足歩行ロボットが、少なくとも9万円以下で入手できるんですよ。それを高いと言いますか? 本当に嘘偽りのない本心から私は「安い」と思う。

 どう思うかは人それぞれとして、問題はどこで買えばいいかである。インターネットで検索してもらえば、KHR-2HVなどの二足歩行ロボットキットを販売しているネットショップが大量に見つかるだろう。そういったネットショップで購入するというのも、1つの手だと思う。しかし、実際に自分の目で見てから買いたい、疑問を解消してから購入したいのであれば、リアルショップへ行くしかない。

 例えばパソコンショップとして有名な九十九電機は、秋葉原のツクモパソコン本店に「ツクモロボット王国」というロボット専門店を構えている。もし秋葉原へ行くのが大変でなければ、買う買わないは別として、ぜひ一度足を運んでみて欲しい。ちなみに、ツクモロボット王国は札幌、名古屋、大阪にもあるので、関東近県以外にお住いの方もご安心を。KHR-2HVを含む二足歩行のロボットはもちろん、ペットタイプのロボットや低価格なホビーロボットなどなど、見るだけでも楽しいところなのである。

 しかもロボット王国は老舗のロボット専門店だけあって、スタッフの知識も充実しており、何か疑問があってもすぐに解決してくれる。基本的なことから専門的なことまで、ロボット王国で解決できないことは、ほとんど無いはずだ。

 当然、ロボット王国以外にもロボットの専門店が存在する。インターネットなどで情報を集め、近くにあるロボット専門店をまずは覗いてみるのがいいだろう。しかしまあ、実際に完成した二足歩行ロボットを見て、その動作を見せてもらった日には、どうしても欲しくなるのが人情というものですけどね!

 さて、今回はスタートということもあって、漠然とした話でほとんど終わってしまった。次回から組み立ての話を本格的に進めていきたいと思う。KHR-2HVを自由に操れるその日まで、どうかお付き合いいただきたい。


九十九電機、ツクモパソコン本店4階にあるツクモロボット王国。秋葉原におけるロボット専門店の老舗だ。ロボットに興味が無い人も、見るだけで楽しいのだから、ロボットに興味のある人は……どうなるでしょう? 完成した状態の二足歩行ロボット(写真のロボットのほとんどがキットで販売されている)。実際に動くところを見せてもらうこともできる

ロボットを動作させるスペース。自分で組み立てたロボットを持ち込んで、動かしながらアドバイスしてもらうことも可能 ペット型(これは恐竜タイプ)のロボット、低価格なオモチャに近いホビーロボットなども多数揃っている

オプションパーツ、補修パーツなどもズラリと揃っている。ロボット王国に行けばホビーロボットに関するものは全て揃うと思っていい ロボットに関する書籍、雑誌なども充実した品揃え。ホビーロボット、あるいは本格的なロボットに関する知識をこうした書籍から得るのもいいだろう

ツクモロボット王国の「王様」、もとい店長の荒井さん。ホビーロボットに関する知識はまさに王様級。どんな質問にも優しい口調で的確に答えてくれる

「ロボットが無機質な機械だって? 冗談じゃない! ロボットには技術者の思いが詰まってるんだ」

-あるロボット開発者の言葉-


URL
  近藤科学
  http://www.kondokagaku.jp/
  九十九電機
  http://shop.tsukumo.co.jp/
  ツクモロボット王国
  http://robot.tsukumo.co.jp/


2008/10/10 16:33

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