近藤科学、新二足歩行ロボットキット「KHR-3HV」を発表

~すべてが一新された、革新の第3世代ロボットキット


3年待たされた甲斐はあった!

KHR-3HVの発表会は、浅草ROX3スーパーマルチコートで開催された「KHR 5th アニバーサリー」にあわせて行なわれた

 6月13日(土)~14日(日)、東京浅草のROX3スーパーマルチコートで、今年で5回目となる「KHR 5th アニバーサリー」が開催された。KHRアニバーサリーは、その名の通り、KHR誕生を記念するイベントで、KHRシリーズや近藤科学のサーボモーターを利用したロボットを対象にしたバトル大会やサッカー大会などが行なわれる、ユーザーが楽しみにしている年に1度のお祭りのようなものだ。今年はそのイベントにあわせて、近藤科学が新製品を発表するという噂が流れ(Webサイトでティザー告知されていた)、何が出るのか注目されていたのだ。

 KHRシリーズはいわずとしれた、近藤科学の二足歩行ロボットキットであり、初代KHR-1は、今から5年前の2004年6月に登場した。KHR-1の当時の価格は12万6,000円であり、これまで一般の人には手が届かない存在であった本格的な二足歩行ロボットを、専門知識のない人でも自分のモノにできるということで、大きな話題となった。KHR-1の登場から2年後、サーボモーターをHV化し、コントロールボードやフレームも一新した後継のKHR-2HVが登場した。KHR-2HVは、KHR-1に比べて、部品点数が減り、組み立てやすくなっただけでなく、HV化によって運動性能が大きく向上。さらに価格も約9万円へと値下げされ、より手が届きやすい製品になった。KHR-2HVの上位モデルとして、軸が2つ増えた19軸のKHR-1HVが2006年12月に登場したが、こちらは中上級者向けという位置づけであった。その後、KHR-2HVの運動性能を向上させるストライカーコンバージョンキットや、ヨー軸を追加するピボットターンユニットなど、さまざまなオプションが追加されてきたが、KHR-2HVの後継はなかなか登場しなかった。KHR-1からKHR-2HVまではちょうど2年だったので、KHR-2HV登場から2年後になる昨年6月には後継機が出るのではと期待していたのだが、残念ながらそのアナウンスはなかった。

 しかし、ついに3年間の沈黙を破って、KHRシリーズの最新モデル、3代目となる「KHR-3HV」が発表されたのだ。KHR-3HVの特徴については順に紹介していくが、筆者が発表会でまず感じたことは、「3年待たされた甲斐はあったな」ということだ。

 KHR-3HVは、近藤科学社長の近藤博俊氏によって、そのベールを脱ぐことになった。発表会には、筆者たち報道陣だけでなく、アニバーサリーに参加しているKHRユーザーやロボットビルダーも集まり、熱い視線が向けられていた。

ベールに覆われた何かを手にして、挨拶を始める近藤博俊社長【動画】社長の手によってベールがはぎ取られて、KHR-3HVが姿を現す瞬間
KHR-3HVを手にして、KHR-3HVの紹介を行なう近藤博俊社長近藤社長の右に並んでいるのがKHR-3HVの開発スタッフだ

KHRシリーズのこれまでを振り返るデモンストレーション

 社長のプレゼンに続いて、開発スタッフによる質疑応答が行なわれ、いよいよKHR-3HVのデモンストレーションが始まった。デモは、これまでのKHRシリーズを振り返る構成になっており、まずは初代KHR-1が登場。ゆっくりとした歩行など見せた後、今度はKHR-2HVが登場。より高速な歩行や側転などのダイナミックなモーションを披露した。そして最後に、KHR-1とKHR-2HVを左右に従える形で、KHR-3HVが登場。そのすらっとしたプロポーションで、キックや兎跳び、頭をつけない二点倒立などのモーションを見せ、大きな拍手が巻き起こった。

 ただ、デモを見ただけだと、運動性能はKHR-1からKHR-2HVへの進歩のほうが、KHR-2HVからKHR-3HVへの進歩よりも大きいように見えたが、ポテンシャルはKHR-3HVのほうが遙かに上であり、モーションの作り込みが不足によるものだろう(あと、こういうデモで転ぶと印象が悪くなるので、安定側に振ったモーションだったとも思われる)。それでも、兎跳びのジャンプは、KHR-2HVよりも明らかに高く跳んでおり、KHR-3HVの高いポテンシャルの片鱗を感じさせてくれた。

【動画】デモはこれまでのKHRシリーズを振り返る構成になっており、まずは初代KHR-1が登場【動画】KHR-1の歩行はかなりゆっくりだが、5年前の当時は衝撃的な製品であった
【動画】KHR-1の次に登場したのが、2006年6月に発表されたKHR-2HV。サーボモーターがHV化され、運動性能が大きく向上した。特に歩行がかなり高速化されている【動画】KHR-2HVから3年の月日が流れ、ついに第3世代のKHR-3HVが登場。ジャンプもできるなど、運動性能がさらに向上

身長が48mm強高くなり、重量は約1,500gに

 KHR-3HVは、KHR-2HVに比べて、見た目の印象もかなり変わった。身長がKHR-2HVよりも48.56mm(KHR-1との比較では61.98mm)高くなっており、401.05mmとなった。最大幅は194.4mmで、KHR-2HVの183mmと比べて11.4mmほど大きくなったが、全体としてはかなりスリムなプロポーションになったわけだ。脚ロール軸の構造は、KHR-2HVよりもKHR-1HVに似ている。また、重量は約1,500gで、KHR-2HVの約1,270gよりも多少重くなっている。

KHR3兄弟が勢揃い。左からKHR-1、KHR-3HV、KHR-2HVの順。KHR-3HVは脚が長くなり、背も高くなった左が新型のKHR-3HV、右がKHR-2HV。身長がかなり大きくなっていることがわかる背面を比べたところ。左がKHR-3HVで、右がKHR-2HV。バックパックの材質や形状も変わっている

標準では17軸だが、外形を変えずに22軸まで拡張可能

 KHR-3HVには、KHR-2HVや他の二足歩行ロボットキットではこれまで実現されていなかった数々の利点があるが、その中でも大きいのが、ダミーサーボの採用である。KHR-3HVは、標準で17軸(17自由度)であり、KHR-1やKHR-2HVと軸数は変わらない。17軸という軸数は、本格的な二足歩行ロボットを実現するには必要最小限のものであり、より表現力や運動性能を高めるためには、軸を追加したくなる。KHR-2HVでも、ピボットターンユニットで旋回軸(ヨー軸)を追加したり、腕にヨー軸を追加することなどが可能だが、その場合、外形のプロポーションやサイズが変わってしまう。そのため、バランスが変わってしまい、同じモーションが使えなくなることがある。また、オリジナルの外装を付けていた場合は、プロポーションの変更にあわせて外装を作り直す必要があった。

 しかし、KHR-3HVでは、あらかじめ軸拡張が可能な場所に、サーボモーターと同じ形状、サイズのダミーサーボが使われている。そのため軸を増やす場合は、ダミーサーボをサーボモーターと交換するだけでよく、ロボット全体の身長や外見が全く変わらないことが特徴だ。重量は多少重くなるが、プロポーションは変わらないため、多くの場合モーションをそのまま利用でき、外装を作り直す必要もない。キットからはじめて段階的に拡張していきたいという人にとって、非常にありがたい設計だ。なお、拡張可能な軸数は5で、両腕ヨー軸、両脚ヨー軸、腰ヨー軸となる。

KHR-3HVは、あらかじめ軸拡張が可能な場所にダミーサーボが使用されており、全体のサイズや外形を変えることなく、ヨー軸などを追加できることが特徴だ。この写真の中央にあるのがダミーサーボであり、ここをサーボモーターに交換することで、脚ヨー軸と腰ヨー軸が追加される左がノーマルのKHR-3HV。右がサーボモーターを5個追加して22軸にアップグレードしたもの。軸数が増えても身長や外見は変わらない。なお、目にもLEDが追加されているこちらがノーマルのKHR-3HV。ほぼ横一直線に並んでいる穴の空いたパーツがダミーサーボだ
ダミーサーボを全てサーボモーターに交換した機体。もちろん、重量は若干増すが、外見は変わらない腕ヨー軸を追加すると、腕をひねることができるようになる脚ヨー軸と腰ヨー軸を追加すると、脚をハの字に開いて立つことや、腰で回転しながら打つパンチなどが可能になる

シリアル対応の新型サーボモーター「KRS-2552HV」を採用

 二足歩行ロボットの筋肉となるのが、サーボモーターである。運動性能はほぼサーボモーターの性能で決まるといってよい。KHR-3HVでは、サーボモーターもKHR-3HVのために新たに設計された、新型のKRS-2552HVが採用されている。KRS-2552HVのサイズは41×21×30.5mm(幅×奥行き×高さ)で、従来のKRS-788HV(41×21×39.4mm、同)よりも9mmほど背が低い。また、ギヤが全て金属製になり、耐久性が大幅に向上。ちなみに、初代KHR-1で使われていたKRS-784/786は、全てのギヤが樹脂製であり、強い衝撃がかかると容易にギヤが欠けてしまっていた。KHR-2HVで使われているKRS-788HVでは、一部のギヤが金属製になったが、最終段(出力軸)などは樹脂製であり、やはりギヤ欠けと無縁というわけにはいかなかった。

 また、KRS-788HVに比べて、最大動作角度が180度から270度に広がり、トルクも10kg・cmから14kg・cm(11.1V時)へと向上した。速度は0.14sec/60度で、KRS-788HVと同じだ。ちなみに、KRS-784/786のトルクは8.7kg・cmで、速度は0.17sec/であった。初代KHR-1に比べると、トルクは約1.6倍に向上したことになる。なお、KRS-2552HVは、もちろん単体でも発売されるが、価格は未定とのことだ(ただし、KRS-788HVより少し高くなる程度のようだ)。

 従来のKRS-788HVは、制御方式としてラジコン由来のPWM方式を採用していたが、KRS-2552HVではシリアル方式を採用したことも特筆できる。ハイパワーサーボのKRS-4013HV/14HVやKRS-6003HVでもシリアル方式をサポートしているが、ホビー向けの二足歩行ロボットキットで、シリアル方式を採用している製品はG-ROBOTS GR-001やG-Dogなどを除くと、まだ珍しい。シリアル方式は、双方向かつ高速にデータを通信できるというメリットがあり、ロボットのサーボモーターの制御方式として優れている部分が多い。なお、シリアル方式といっても各社でプロトコルが異なり、互換性はない。KRS-2552HVは、近藤科学の最新のシリアル通信方式であるICS 3.0に対応しており、最大1.25Mbpsの高速通信が可能だ。

 デイジーチェーン接続が可能なことも、シリアル方式のメリットだ。PWM方式では、サーボモーターとコントロールボードの出力端子を1対1で繋ぐ必要があり、配線が増えて煩雑になってしまい、断線などのトラブルも起きやすかった。それに対し、KRS-2552HVには、2つのコネクタが用意されており、サーボモーター同士をデイジーチェーンで数珠つなぎに繋いでいくことが可能だ。それぞれのサーボモーターには固有のIDが割り当てられており、どのサーボモーターに対するコマンドかがわかるようになっているのだ。古くからPCを使っている人だと、SCSIのデバイスを繋ぐのと同じように接続できるといえばイメージしやすいだろう。また、ケーブルがコネクタ式になったので、ケーブルが断線した場合でも、ケーブルだけの交換がよりしやすくなった。さらに、サーボケースに角度の目安を示すアングルゲージが用意されていたり、出力軸側にも取り付け用ネジ穴が開けられていることなど、細かな部分もいろいろ改良されている。

KHR-3HVでは、新型のサーボモーター「KRS-2552HV」を採用。従来のKRS-788HVよりも背が低いが、トルクは1.4倍に向上している。電源電圧は9~12V左が新型のKRS-2552HV。右がKRS-788HV。KRS-2552HVでは、全てのギヤが金属になっているので、出力軸も金属だが、KRS-788HVは一部のギヤのみ金属であり、最終段(出力軸)は樹脂となっている。また、ケースの形状も変わり、出力軸側にもネジ穴が設けられている。出力軸の下には角度を示すアングルゲージが用意されている左がKRS-788HVで、右がKRS-2552HV。KRS-2552HVは、KRS-788HVに比べて背が9mmほど低くなっている。また、ケーブルもコネクタ式になっており、着脱が可能だ
サーボモーターの反対軸側。左がKRS-788HVで、右がKRS-2552HV。KRS-2552HVの反対軸側にはコネクタが2つ用意されており、デイジーチェーン接続が可能。こちらにもアングルゲージが用意されているKRS-2552HVはシリアル専用サーボモーターであり、ケーブルのデイジーチェーンが可能で、配線もすっきりする

コントロールボードも新型の「RCB-4HV」を搭載

 サーボモーターがシリアル方式なったことで、コントロールボードも従来のRCB-3J/HVから、新型のRCB-4HVに変更された。RCB-4HVは、サイズは従来のRCB-3J/HVと同じだが、ファームウェアが一新され、シリアル専用コントロールボードとして生まれ変わった。PWM方式の場合、接続できるサーボモーターの数だけ出力端子が必要になるが、シリアル方式では、デイジーチェーン接続が可能なので、出力端子の数を減らせる。RCB-4HVでは2系統×4で合計8つのシリアルポートが用意されており、サーボモーターをはじめとするICS 3.0対応デバイスを接続することになる。1系統につき最大18個のデバイスを接続できるので、2系統では最大36個のデバイスを制御できる。実際には、そのうちの1つは無線受信機が利用するので、接続できるサーボーモーターは最大35個になる。RCB-3J/HVは最大24個までのサーボモーターを制御できたが、超大型機を作る場合など、24個では不足する場合もあった。RCB-4HVなら、自作派にも十分なスペックであろう。

 RCB-4HVでは、出力端子の数が減ったため、基板上のスペースに余裕ができ、その分をアナログ入力端子やデジタルI/O端子に振り分けている。アナログ入力端子(AD端子)は10個備えており、ジャイロセンサーや加速度センサーなどのアナログ出力のセンサーを接続可能だ。RCB-3J/HVでは、アナログ入力端子が3つしかなく、ジャイロを2つ(ピッチ軸用とロール軸用)と加速度センサーを1つ繋ぐと、もう他にセンサー類を接続することができなかった。10個あれば、PSDセンサーなどを繋いで自律に挑戦するなど、いろいろなことができそうだ。さらに、デジタルI/O端子も10個用意されており、LEDを制御するなど、こちらも利用しがいがありそうだ。

 なお、RCB-4HVで、従来の無線受信機KRR-1を利用する場合は、低速シリアルをICS 3.0の高速シリアルに変換するKRI-3(別売り)が必要になる。

新型コントロールボード「RCB-4HV」。サイズは従来のRCB-3J/HVと同じだが、ファームウェアが一新され、シリアル専用ボードとして生まれ変わった。シリアル専用になったことで、ピン数に余裕が出たため、アナログ入力端子を10(従来は3)、PIO端子を10(従来はなし)備えるRCB-4HVに、従来の無線受信機KRR-1を接続するための変換基板。低速シリアルを高速シリアルへと変換する

バックパックやフロントボディパーツもモールドに

 KHR-2HVでは、背中や胸のカバーが、バキュームフォームによるポリカーボネート製で、余分な部分をハサミやカッターでカットして使う必要があった。この切断は、慣れた人ならそれほど大変な作業ではないが、素人がやると、結構時間がかかり、切断面も汚くなりがちであった。筆者も苦手な作業だったのだが、KHR-3HVではこうしたプラスチックパーツが射出成形で作られるABS樹脂製になり、カットなどの作業が一切不要になった。また、加工精度もよくなっており、バックパックがワンタッチで開閉できるようになるなど、メンテナンス性も向上している。PC通信コネクタも、バックパック上部に用意されており、使い勝手が向上した。バッテリは、KHR-1HVに付属していた大容量バッテリと同じものが使われており、ニッケル水素電池9セルで、10.8V/800mAhという仕様だ。バッテリ交換は、フロントボディパーツを外して行なう。バッテリが胴体の中心に入るようになり、重心バランスも改善されている。

 さらに、オプションのジャイロセンサーや加速度センサーの取り付けも、最初から考慮された設計になっている。KHR-2HVでは、ジャイロセンサーを両面テープでボディ内部の空きスペースに貼りつける必要があり、強い衝撃が何度も加わるとジャイロセンサーが外れてしまうこともあった。しかしKHR-3HVでは、新型ジャイロセンサーKRG-4に対応したネジ穴が用意されており、ネジで確実に固定できるようになっているのは嬉しい。

 また、デザイン面については頭部が専用のパーツになったこともポイントだ。これまでのKHRシリーズは、専用の頭パーツというものはなく、むき出しのサーボモーターそのものを頭として使っていたのだ(それはそれで味があって好きという人もいるようだが)。KHR-3HVでは、頭を左右に振るためのサーボモーターが首の下に配置され、頭部が専用パーツとなっている。頭部パーツは3つのパーツから構成されており、中にLEDを仕込むこともできるようだ。頭部をカスタマイズしたいという人にも、KHR-3HVの仕様のほうがありがたいだろう。脚のフレームの設計も一新され、直立時にも微妙な角度でサーボモーターが配置されるようになった。もちろん、膝も深く曲げることができる。

バックパックのデザインも変更され、ワンタッチで開閉できるようになり、メンテナンス性が向上バックパック上部には、電源スイッチとPC通信コネクタが用意されているバックパックを開けたところ。中央にコントロールボードのRCB-4HVが装着されており、左にはジャイロセンサーKRG-4が2つと加速度センサーRAS-2が、右には受信機のKRR-1と変換基板KRI-3が取り付けられている
ジャイロセンサーの取り付けも、専用のネジ穴が用意されており、簡単かつ確実に行なえるようになったこれまでのKHRシリーズはサーボモーターそのものを頭として使用していたが、KHR-3HVでは、サーボモーターが首の下に入り、頭が専用パーツになったバッテリの交換は、フロントボディパーツを外して行なう
フロントボディパーツを外したところ。バッテリが胴体中心に入るようになり、前後の重心バランスも向上フロントボディパーツも複数のパーツから構成されている。内側に見える穴の目印が気になるが、Blaserの搭載を意図しているのだろうフロントボディパーツを外したところの前面。フロント側には標準では何もパーツがないので、センサーなどを搭載しやすい
脚が長くなり、かなりスリムな印象を受ける。脚のサーボモーターは微妙な角度で配置されているこのように深く脚を曲げてしゃがむことができる

足裏は大型化された

 KHR-3HVでは、全長(主に脚)が長くなったため、安定性を高めるために、足裏に新設計のバスタブソールが装着されている。KHR-2HVでは、標準の足裏はアルミ板で、バスタブソールがオプションとして販売されていたが、KHR-3HVの新型バスタブソールは、従来のバスタブソールよりも大きく、形状も複雑になっている。取り付け穴がたくさん空いているのは、従来のKHR-2HVなどにもそのまま取り付けられるようにするためだ。

KHR-3HVの足裏は、新設計のバスタブソールが装着されている。従来のバスタブソールよりも、サイズが大きく、形状も複雑になっているKHR-2HV用オプションとして販売されているバスタブソール(KHR-1HVは標準装備)。シンプルな形状だ左がKHR-3HVの新バスタブソールで、右が旧バスタブソール。なお、新バスタブソールをKHR-2HV/1HVなどに装着することも可能

付属の充電器が急速充電/放電対応に

 KHRシリーズでは、小型のACアダプタタイプの充電器が付属しているが、これまでの充電器は急速充電に対応しておらず、フル充電に一晩近くかかってしまうことが不評であった。しかし、KHR-3HVでは、急速充電対応の充電器に変更され、約1時間でフル充電が可能になった。また、放電機能も備えており、バッテリのコンディションを保ちやすくなった。

KHR-3HVの構成パーツ一式。左上が急速充電器だ。従来のキットに付属する充電器は急速充電に対応しておらず、充電に一晩くらいかかっていたが、KHR-3HVの付属充電器は約1時間で充電が可能。放電機能も備えているKHR-3HV関連パーツ。ジャイロセンサーや加速度センサー、KRI-3、KRR-1などは別売りだ

モーション作成ソフト「Heart To Heart 4」の進化もすごい

 最後に紹介するのが、モーション作成ソフトだ。コントロールボードがRCB-4HVに変わったので、それに伴いモーション作成ソフトも従来の「Heart To Heart 3」から「Heart To Heart 4」へと進化した。Heart To Heart 4は、一から新たに書き起こされたソフトであり、Heart To Heart 3での不満点が改善された、より使いやすいものになっている。

 基本的には、Heart To Heart 3と同じく、ポジションデータを並べていき、フローチャートのように線で繋ぐことで、モーションを作成する。しかし、その自由度が大きく異なる。Heart To Heart 3では、分岐やループも可能であったが、ループカウンタは1つしかなく、多重ループなどはできなかった。しかし、Heart To Heart 4では、ループカウンタが10個になり、より複雑なループが可能なほか、分岐機能もより強化された。また、ボックスの外見(アイコン)が機能によって違うため、流れがわかりやすくなった。この機能ボックスは、DLL形式のライブラリになっているため、あとからプラグインで追加できるというのも面白い。また、モーションファイルの形式が、従来の独自形式(テキストファイルではあったが)からXML形式へと変更されている。XML形式になったことで、モーションファイルの可読性が大きく向上しており、他のソフトとの連携もしやすくなる。このあたりも、将来性を見据えた設計だといえる。

 Heart To Heart 4も、現在開発を進めている最中とのことで、詳細についてはまだまだわからないことが多いが、従来のHeart To Heart 3では作成が困難だった、高度な自律モーションなども作成できそうだ。アナログ入力が10個に増えたことと併せて、専門学校や高専などでの教育用プラットフォームとしても最適であろう。

モーション作成ソフトも「Heart To Heart 4」にバージョンアップ。従来のHeart To Heart 3とは画面デザインも全く異なるツールボックスを開いたところ。Heart To Heart 3と同様にフローチャート状にボックスを並べてモーションを作成するが、利用できるボックスの種類が増えている。また、ボックスをプラグインで追加することも可能だ分岐命令も大幅に強化。センサーのアナログ値との比較でジャンプが可能
ループ命令も強化。従来はループカウンタが1つしかなかったが、Heart To Heart 4ではループカウンタが10個用意されており、多重ループも実現可能ホームポジション調整画面。グラフィカルでわかりやすくなっているモーションファイルがXML形式になっており、可読性や汎用性が格段に向上した
ツールボックスのボックス(機能アイコン)は、それぞれがDLLとなっており、追加することが可能

価格は上がったが……それだけの価値はある製品だ

 さて、駆け足でKHR-3HVの特徴を紹介してきたが、KHR-1、KHR-2HV両方のユーザーである筆者からみてても、KHR-3HVは非常に魅力的なロボットキットであり、今後数年間の発展を見据えて設計された製品だと感じた。シリアル対応ということで、ICS 3.0対応デバイスがいろいろ出てくれば、さらに面白いことになりそうだ。

 価格はオープンプライスだが、実売価格は12万円前後になりそうで、KHR-2HVよりも3万円程度高い。できれば10万円を切って欲しかったところだが、サーボモーターやコントロールボードが一新され、運動性能や拡張性が格段に向上したこと、ボディパーツなどがモールド成型になったことなどを考えれば、納得できる価格だ。KHR-2HVはKHR-3HV発売後も併売されるとのことだが、これから購入するのであれば、やはりKHR-3HVがお勧めだ。発売日はまだ決まってないようだが、今年の夏(早ければ7月か?)に発売されるとのことなので、首を長くして待ちたい。



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2009/6/15 20:09