関東ロボット連合、第13回 いたばし産業見本市でロボットコンテストを実施

~予選は操縦テクニックが要求されるジムカーナ方式を採用


参加選手21名とロボット21機で記念撮影

 11月19日から21日まで行なわれた、東京都板橋区のものづくり・ビジネス系展示会の「第13回 いたばし産業見本市」で、関東ロボット連合主催のロボットコンテストが行なわれた。同コンテストの前には、小学生とその保護者による「ものづくり体験教室 小学生親子対象ロボコン」も実施された。そちらも併せてレポートする。

 大会の主催である関東ロボット連合は、関東近郊のロボット関連企業が、それぞれの得意分野を活かしてロボットの新しい可能性に挑戦し、開発・製品化および市場活性化を進めていくことを目指して結成した団体だ。KORKS浅草ギ研テクノロードピルクスの4社によって昨年10月に結成され、現在はMANOI企画も参加している。会長は二足歩行ロボット格闘技のレフリーとしてもお馴染みのKORKS代表の浅野克久氏だ。

予選はジムカーナ方式で決勝は上位8選手によるバトル

 今回のルールは、まずジムカーナ方式の予選を実施してベスト8に絞り、そこから決勝としてバトルを行なうというもの。ジムカーナとはモータースポーツのひとつで、舗装路上にパイロンなどを複数立ててその間をスラロームなどで走り抜け、いかに速いタイムを出せるかを競う精密なドライビングが要求される競技だ。今回の予選もモータースポーツのそれを連想させる内容で、3本のポールの周囲をそれぞれ回るような少し複雑なルートで1周し、制限時間の2分以内にそれを何周できたかを競うというものである(2分が経過した時点で走行中の周はカウントされる)。

予選ジムカーナのリング。3本ロープなのでプロレス仕様ジムカーナのルート。ポールを回り込むので、腕が引っかかりやすい点は注意する必要がある予選中の様子。サアガを操る真剣な表情のイガアさん

 ただし、歩行モーションができていればいいわけではなく、オペレータにも正確な操作が求められる。しかも、ほぼ前進歩行のみだからなおさらだ。倒れにくくするための重心を下げるしゃがみ歩行(ヒザが90度以上曲がっている状態)は全面的に禁止だし、直線部分ではロボットが得意とする横歩行も禁止だ(倒れても問題はないのだが)。つまるところ、小回りの利く中型機以下に有利で、大型機は少々不利な感じなのが特徴といえる。

 参加ロボットは以下の通りで、21台。カッコ内はチーム名、またはオペレータ名。

【参加ロボット】
ALDIA(電気通信大学ロボメカ工房チームA)
BLACK TIGER NEO(IKETOMU)
Direstrada III(Team c4)
GAT(クボ)
Hercules(電気通信大学ロボメカ工房チームC)
Klog(鯛・春風製作所)
ガーゴイル ミニ(吉田ファミリア)
暁丸(WAO)
エイヴン(電気通信大学ロボメカ工房チームE)
鏑(mota)
ガルー(くまま)
クロムキッド(くぱぱ)
豪鬼(電気通信大学ロボメカ工房チームB)
虎太朗(軍曹さ~ん)
サアガ(イガア)
ストライカー(ひろき)
スラル(電気通信大学ロボメカ工房チームD)
デシュミット(GR2)
で・か~る(道楽、)
デュミナス(ビスコ)
ファントム(ブラック)
ラムダ・マーキュリー(シマケン)
竜鬼II(AZM LAB)

 予選で面白かったのは、ベテランオペレータの道楽、さんの「で・か~る」のジムカーナ用に作成してきたスペシャルモーションの「ガウォーク」。ロボット好きの方なら説明するまでもないだろうが、アニメ「超時空要塞マクロス」シリーズの主役メカ「バルキリー」シリーズの形態のひとつに着想を得た体勢である。バルキリーは、ファイター(戦闘機)形態からバトロイド(人型)形態へ3段変形するわけだが、その両者の中間の状態がガウォーク形態。それにヒントを得て、重心を下げるために考え出した体勢というわけだ。ただし、実際のアニメのガウォーク形態とは違っており、で・か~るの場合は人でいえばリンボーダンスをしている状態になる。さらに面白かったのが、180度方向転換をしたい時の方法。今度は前にのけぞって背中を上面にする裏ガウォークといえる体勢になるのだ。道楽、さんは切り替えつつジムカーナに挑んでいた。この日一番の面白いモーションだったので、ぜひ動画でもご覧いただきたい。しかし、残念なことに予選は突破できなかった。

道楽、さんので・か~る。これがどう変化するかはムービーで【動画】で・か~るの予選の様子。ガウォーク体勢でがんばったが……

 予選の上位8名は以下の通り。イガアさんのサアガが2位を2周も突き放す7周をカウントして1位通過を果たした。なお、周回数が同じ場合は、その周を走りきった時のタイムで早い方が上位となるルールだ。やはり大型機はポールに絡んでしまうなど(腕が絡んでしまったりするのは大型機だけではないのだが)、予選は厳しかったようで、強豪クロムキッドは突破できず。ガルーも苦戦していたが、タイム差で決勝進出していた。

イガアさんのサアガ。機動力はこの日ダントツの1番【動画】サアガの予選の様子。別次元の動きだ

【予選順位】
1位:サアガ(イガア)/7周(2分8秒98)
2位:デシュミット(GR2)/5周(2分15秒35)
3位:ファントム(ブラック)/5周(2分30秒42)
4位:ガーゴイル ミニ(吉田ファミリア)/4周(2分24秒01)
5位:ストライカー(ひろき)/4周(2分35秒96)
6位:ガルー(くまま)/2周(2分22秒90)
7位:竜鬼II(AZM LAB)/2周(2分23秒89)
8位:虎太朗(軍曹さ~ん)/2周(2分43秒81)

ベスト8による決勝戦リポート

 ベスト8が決定し、続いてはバトルでの決勝トーナメント。ルールは3分1ラウンド、3ダウン先取もしくは相手をノックアウト(10カウント以内に復帰不能)した方が勝者となる。タイムは2分のメンテナンスタイムを取れるが、1ダウン扱い。スリップカウントは採用されていない。

 ベスト8はまず予選順位の1位対5位、2位対6位、3位対7位、4位対8位という組み合わせで実施。第1試合はサアガ対ストライカー、第2試合はデシュミット対ガルー、第3試合はファントム対竜鬼II、第4試合はガーゴイル ミニ対虎太朗だ。サアガ、ガルー、竜鬼II、ガーゴイル ミニと名の知れたロボット(もしくはオペレータ)が勝ち名乗りを受け、準決勝進出となった。

決勝トーナメントの1回戦第1試合サアガ対ストライカーの小型機対決。サアガのバックドロップが炸裂第2試合デシュミット対ガルー。デシュミットも奮闘したが、ガルーの勝利
第3試合ファントム対竜鬼II。竜鬼IIの攻撃にファントムが吹っ飛ぶ第4試合のガーゴイル ミニ対虎太朗。この日の最も体格差のあった1番

 準決勝は第1試合がサアガ対ガルー。体格とパワーで勝っているため腰を据えて戦うガルーに対し、サアガは予選1位通過の機動力でもって投げを狙うという展開。これだけ体格差があっても、ガルーと同格で勝負できるというサアガの闘いっぷりをご覧いただきたい。しかし、勝負は1ダウン差でガルーの勝利となった。

 準決勝第2試合は、竜鬼II対ガーゴイル ミニ。ガーゴイル ミニは、その名の通り大型機ガーゴイルの小型版なのだが、この日の参加ロボットの中では最大の機体。そのため、きっと初めて見た人はどこら辺がミニなのか疑問に思ったに違いない。一方の竜鬼IIも決して小型ではないので、この日の大型対決のひとつとなった。しかし、ガーゴイル ミニの伸びるパンチと伸ばしてから振り回すぶん回しパンチの威力が炸裂する内容となった。ガーゴイル ミニが決勝進出。

準決勝からは、こちらの8角形リングも使用された【動画】準決勝第1試合のサアガ対ガルー。サアガが体格差を超えて奮戦【動画】準決勝第2試合の竜鬼II対ガーゴイル ミニ。ガーゴイル ミニのぶん回しパンチが炸裂

 決勝戦の前に、サアガ対竜鬼IIの3位決定戦が行なわれた。ここも体格では竜鬼IIが完全に上回っているが、サアガのアマレスばりの低い体勢からのタックルを彷彿とさせる、投げ狙いの懐への潜り込みは見事。運が悪かったのは竜鬼IIの足がそろっていてちょうどサアガがつかみやすかったこと。バックドロップ(本当は相手と向き合う状態で後方に投げているので、どちらかというとフロントスープレックス)などの投げ技を次々と炸裂させ、3ダウンをすべて投げで奪うという見せ場を作った。途中、右腕のパーツが外れてしまう不運もあったが、体格というハンデを超え、見事3位をゲットしていた。

 そして決勝戦。ガルー対ガーゴイル ミニだ。機体こそ異なるが、オペレータ同士はほかの大会でも何度も対戦しているというカードである。両機とも大型だが、ガルーがかわいく見えてしまうぐらい差がある。試合は、ガーゴイル ミニが一気に2本先取したため、会場はガルーに対する判官贔屓の雰囲気に。1本逆襲したら「小さいのやった!」的なひときわ大きな歓声が上がっていた。同展示会でロボット競技会が行なわれるのは初めてなので、初めて見る来場者も多かったようである。しかし、質量にものをいわせたぶん回しパンチはまともに当たるとガルーといえどもきつく、あっさり3ダウン。優勝はガーゴイル ミニとなった。

【動画】3位決定戦のサアガ対竜鬼II。サアガの投げが炸裂決勝戦に進んだ1機はガルー決勝戦に進んだもう1機はガーゴイル ミニ
【動画】決勝戦の様子。ガーゴイル ミニのぶん回しパンチの強力さがわかる1戦闘い終わってまずはロボットたちだけでフォトセッション

山崎教育システムの「ぜんまいプロカム」を使ったものづくり体験教室 小学生親子対象ロボコン

 第13回 いたばし産業見本市 ロボットコンテストの前に開催されたのが、「ものづくり体験教室 小学生親子対象ロボコン」。ここで使われたロボットが、東京の東村山市に社屋を構える山崎教育システムの「ぜんまいプロカム」という教材だ。電気もコンピュータも使わない完全アナログ機械制御式でありながら、自律制御を実現しているという実に創意工夫がなされた教材で、ロボットやプログラムの基礎を小学校低学年に遊びながら教えるのに持ってこいの内容となっている。動力源はゼンマイで、面白いのがプログラミングの仕方。プログラムカードホルダにステアリングの向きをコントロールするプログラムチップを取り付けて、ステアリングをどのタイミングでどの方向に切るかをコントロールしているのだ。ホルダを本体にセットすると、走っていくと同時にそれが本体内に飲み込まれていき、チップの形状に沿ってステアリングが右に左に切られるというわけである。

ものづくり体験教室 小学生親子対象ロボコンの様子ぜんまいプロカム。これを親子で作成して、競技に挑戦という内容だ
プログラムホルダとチップ。チップは簡単にセットしたり外したりできる【動画】ぜんまいプロカムが動作する様子

 今回のコースは逆Uの字型をしており、スタートしてしばらく進むと左に旋回する必要があり、続いて短いストレートの後に再び左に旋回、あとはまっすぐ走ってゴールというわけだ。ゼンマイの威力、本体の車輪の走行抵抗、完成度などで、1台1台クセが異なるので、どのタイミングで左に曲げるといいかは1回の試走やあとは作業用のテーブルの上などで確認するしかない。だから、結構難しいのだが、参加した子どもたちは夢中になってプログラムチップを並べ替えたり、ゼンマイの巻き方を調節したり、スタート位置を工夫したりして、ゴールへたどり着けるようがんばっていた。今回は26人がエントリーして、1位の子のタイムは11秒79。本戦は2回の走行で行われ、多くの子が2回目にはゴールしていた。

完成したぜんまいプロカムを練習走行で走らせる子どもたち最初の難関。ここでうまい角度に左曲がれないことが多い2番目の難関の2回目の左旋回をクリアしたところ。ここでまっすぐ向ければ、ゴールはほぼ確実

 「ぜんまいプロカム」の価格は1,950円。充電も不要で、パソコンも必要ないので、小学校の低~中学年にはロボットやプログラムの勉強には本当にいい教材だと思う。しかも、プログラム次第(ゼンマイなどの個体差もあるのだが)で個性を出しやすいという点もポイント。面白ければ、子どもたちはものすごく集中して取り組むし、工夫もするので、ぜひ小学校の先生にはこういう教材を使うことを検討していただきたいところである。



(デイビー日高)

2009/12/9 19:24