ロボスクエアでYOKAロボまつり開催

~7月20日はサッカー大会、8月23日にはバトル大会を実施


ロボスクエアの入っているTNC放送会館パヴェリア

 福岡市早良区百道浜にあるロボスクエアで、九州ロボット練習会主催の二足歩行ロボット競技会「YOKAロボまつり」が開催された。7月20日(月・祝)にはサッカー大会、8月23日(日)はバトル大会が行なわれ、九州地区の二足歩行ロボットが戦いを繰り広げた。

ヒューマノイドカップを継ぐ形で開催された今夏のYOKAロボ

 以前のロボスクエアでは、夏休みのイベントとして二足歩行ロボットによる競技大会「ヒューマノイドカップ」が実施されるのが恒例だった。しかし、ロボスクエアの方針の転換で、基本的にヒューマノイドカップはROBO-ONE認定権獲得大会以外は開催されないことになった。

 9月に富山で行なわれる第16回ROBO-ONEでは認定権大会はないため、今年の夏休みにヒューマノイドカップは実施されなかった。

 その代わりに、九州ロボット練習会が主催するYOKAロボ祭りが、ロボスクエアの夏休みイベント「サマーチャレンジ」のイベントの一つとして、夏休み初めの7月20日にはサッカー大会、夏休み終盤の8月23日にはバトル大会が実施された。

伝統を継ぐ形を目指したYOKAロボまつり8サッカー大会

 二足歩行ロボットによるサッカーの試合は、ロボスクエアのヒューマノイドカップサッカーが最初だとされる(2003年7月19日~21日に当時は博多リバレインにあったロボスクエアで実施。ただし、その当時の名称は「2足歩行ロボットサッカー大会・ロボスクエア杯」)。

 その伝統あるヒューマノイドカップ・サッカー大会だが、今後は基本的に実施されないことになってしまった(ヒューマノイドカップはROBO-ONE認定権獲得のバトル大会のみになったため)。

 福岡で始まった二足歩行ロボットサッカー大会の歴史が途絶えてしまうことを、九州ロボット練習会からも惜しむ声が上がり、今回、ロボスクエアの夏休みイベントとしてサッカー大会を実施することになったものだ。

 もちろんYOKAロボまつりでサッカー大会を実施するのは初めてとなる。

サッカー大会の会場サッカーコートのアップ。赤いラインと白いラインのつながるラインからゴールにかけてが「特別オフサイドエリア」。
サッカー大会予選・リーグ表開会式の様子。青い髪の成龍は、あそうロボット研究部の予備機

 1チーム3名(3台)で参加を募集し(補欠としてもう1台がチームにエントリーできる)、3チームの応募があり、それとは別に6名が個人としてエントリー。参加した6名をくじで2チームに分け、合計5チームで優勝を争った。

 今回のYOKAロボまつり8サッカー大会では、アスリート競技(名称は「予選」となっていたが、この結果がサッカー試合に影響を与えるわけではなかった)とサッカー試合の2つの競技が行なわれた。それぞれの競技の順位にポイント(1位が3点、2位が2点、3位が1点)を与え、それぞれの合計点で総合優勝が決まる。

 参加した5チームは以下の通り。

・麻生ロボット研究部
・FCロボット工房(ZERO・紫電・隼)
・九州三銃士(メリッサ-ヘカトンケイル・Automo03・スーパーディガーII)

【個人参加チーム】
・カタロン(拓歩・マノイノアール・プロトデヤンスK)
・ただのAチーム(IGNIS .02v2・Black Rabbit・ムーン(改))

 東京からBlack RabbitのK氏の参加があった他は、全員九州のロボットビルダーによる大会になった(K氏も元は九州ロボット練習会で活躍していた)。

2つのアスリート競技

 アスリート競技は、チームから1台が出てスタートラインからコーンを回って戻ってくるタイムを競う「トップスピード」、残りの2台が5つのボールを制限時間2分以内に入れていくタイムを競う「5ボール」の2競技が行なわれ、その2つの合計タイムの少ない方(つまりタイムの早い方)が上位となる。

 アスリート競技で強さを見せたのは、やはり九州三銃士だった。「トップスピード」では九州三銃士のメリッサ-ヘカトンケイルが9秒88で1位を取り、「5ボール」でもスーパーディガーとAutomo03が48秒でクリアして1位となり、文句なくアスリート競技の1位を取った。

 アスリート競技で会場を沸かせたのは、カタロンの拓歩だった。「5ボール」に出場し、ボールを次々とゴールにシュートしていき、48秒でクリア。総合でもアスリート競技で2位となった。

 なお、3位にはIGNIS .02v2の走りが効果を挙げて、ただのAチームが入ってポイントを稼いだ。

とにかく速かったメリッサ-ヘカトンケイル13秒10の記録で、ただのAチームのアスリート競技3位に貢献したIGNIS .02v2。サッカーキックもできるリンク脚のロボットだ13秒58で走ったカタロンのマノイノアール
アスリート競技の「5ボール」に挑む麻生ロボット研究部。この位置に置かれたボールを2分以内にゴールに入れていく(制限時間内に全部入らなかった場合はゴール数が記録)次々とボールをゴールにシュートしていくカタロンの拓歩カタロンチームがボールを全部に入れた瞬間(最初の1個はレフェリーが外に出していた)
スローインでボールを投げるスーパーディガーII。5ボールでは、ボールを投げてもよいことになっていた(ボールを持って運ぶのは禁止)アスリート競技結果。それぞれ競技は2回行ない、いい方の記録が結果となる

総当りリーグ戦となったサッカー試合

 本番のサッカー試合は、5チームによる総当りリーグ戦となった。

 1試合は前半5分、後半5分。基本的にルールはサッカーに順ずるが、実際のサッカーよりルールはゆるくなっている(キーパー以外の腕にボールが当たっても、意図して腕でボールを動かしたと認められない限り、ハンドは取らず試合を続行するなど)。

 YOKAロボサッカー独自のルールとして、今回は「特別オフサイドエリア」が設けられた。これはゴール近くの部分を特別オフサイドエリアとして設定し、その中にはキーパーの他には、敵味方1台ずつしか立ち入れない(このエリアには最大で3台までしか立ち入ることができない)。これはゴール前でロボットが密集して動きが取れなくなることを防ぐ狙いがあり、それなりに有効に機能していたように思われる。

 またロボットがボールを囲んで動きが取れなくなった場合は「試合停止状態」とみなして、レフェリーの手によるドロップボールで試合を再開する特別ルールも採用された(ロボットが一箇所に固まるのを防ぐため)。

 総当りのリーグ戦は勝ち点(勝ち=3点、引き分け=1点、負け=0点)によるポイントで順位が決定する。

 今回の大会が始まる前は今までの実績から見て、九州三銃士が本命で、FCロボット工房(九州共立大学のチーム)が対抗だろうと言われていた。

 だが、今大会で台風の目となったのは個人参加チームのカタロンだった。アスリート競技で2位につけたカタロンは、第2試合で九州三銃士と激突。

 機体の性能差、サッカー試合の経験の違いと九州三銃士の方が遥かに有利と思われたが、カタロンのキーパー・プロトデヤンスKが故障でコートの外に出るアクシデントにも関わらず、カタロンの残りの2台は奮戦し、九州三銃士相手に前半は0-0のイーブンで折り返した。

 しかし、後半開始早々に九州三銃士のメリッサ-ヘカトンケイルにゴールを決められた。もう1点追加され、0-2でカタロンは敗北した。

 これで勢いに乗った九州三銃士は勝ち続け、全試合1点も奪われることもなく、全勝で優勝を決めた。

 2位争いは、対抗と目されたFCロボット工房と今回台風の目のカタロンとの戦いとなった。両者が直接対決した第6試合は、前半はカタロンが2点を取ってリードしたが、後半にFCロボット工房が2点を取り返し、結局ドロー。

 全試合が終わった段階で両者とも2勝1敗1分けの勝ち点7となって同率の2位。アスリート競技での獲得ポイントにより、カタロンが総合で準優勝を勝ち取った。

 なお、総合3位にはサッカー同率2位となったFCロボット工房が入った。

 また優勝チームの中からと優勝チーム以外からそれぞれ1台のMVPが1台選出され、優勝チームのMVPは九州三銃士のメリッサ-ヘカトンケイル、優勝チーム以外からのMVPにはカタロンの拓歩が選ばれた。

アスリート競技とサッカー試合の間に行なわれた、ロボスクエアのAIBOショー第2試合にして、事実上の決勝戦となっていた九州三銃士(左) VS カタロンスローイン(キックインでもよい)を行なうメリッサ-ヘカトンケイル。背後では戦線離脱したプロトデヤンスKが……
カタロンの反撃を壁を作って防ぐ九州三銃士。なお、開脚ポーズによる防御は3秒までと決められていた後半戦開始直後、九州三銃士のシュート。ボールはこの後、予備機のキーパー・Phalanxの横を抜けてゴールしたカタロンも反撃したが、九州三銃士の堅い守りの前にゴールを奪うことはできなかった
結果的に2位をかけた戦いとなったカタロン(左) VS FCロボット工房。カタロンは、プロトデヤンスKがキーパーとして復帰していた特別オフサイドエリアの例。エリア内に最大3台(キーパー+敵味方1台ずつ)が入っているため、他のロボットは外で待機しているマノイノアールによるキックイン
Automo03によるスローイン。九州三銃士は、対抗と言われたFCロボット工房との戦いも1-0で制して全勝で優勝したFCロボット工房 VS ただのAチーム。ただのAチームのゴールに向かってシュートする拓歩。個人チーム同士の戦いは、カタロンが制した
最終試合の麻生ロボット研究部(左) VS ただのAチーム。Black Rabbitが2ゴールをあげる活躍で、ただのAチームが勝利した閉会式の記念撮影

 今回のYOKAロボまつり8サッカー大会は、ロボスクエアで久しぶりに開催された二足歩行ロボットによるサッカー大会である。運営も含めて九州のメンバーでサッカー大会を実施できたことは、九州地区における二足歩行ロボットのレベルアップを物語るものだろう。

 その一方で、YOKAロボまつり初のサッカー大会ということもあり、時間が長引いたことなど(前半5分後半5分の間にハーフタイムが5分あり、1試合あたり15分必要だった)、改善すべき点も見受けられた。

22台が参加したYOKAロボまつり9バトル大会

 8月23日は同じロボスクエアでYOKAロボまつり9バトル大会が開催された。

 今大会には、パワーの強いサーボモーターを5つまで使用可能なSRCクラス(ノーマルクラス)に8台、サーボーモーターに制限のないORCクラス(アスリートクラス)に11台の参加があった。

 また身長が60cmを越えるロボットを今回ジャイアントクラスとして認定。このジャイアントクラスには3台の参加があり、エキシビジョンを行なった。

 試合時間は3分で、ダウンで2ポイント、スリップで1ポイントを失う、6ポイント制で行なわれた。体の一部がリング面につくような大技(投げ技を含む)に関しては、「積極的に技を仕掛けている」とみなしてスリップを取らないこととしている(ただし、試合前にどのような技なのか見せる必要があった)。

 今回のトーナメントは「できるだけ1試合以上試合を経験する」ことを目標として、敗者復活戦ありの変則トーナメント戦となっている。またトーナメントの組み合わせは、くじ引きで決められた。

YOKAロボまつり9バトル大会の開会式SRCクラストーナメント表ORCクラストーナメント表。SRC・ORC共に組み合わせはくじ引きで決まった

SRCクラスには8台が参加

 SRCクラスには次の8台が参加した。

・拓歩(中村)
・スーパーディガーII For JARC(しゅん)
・ムーン(柚木)
・Rbv-X LinkVer(伊藤)
・メリッサ-トライブ(しゅうせい)
・AS01(麻生ロボット研究部)
・AS02(麻生ロボット研究部)
・KHR-3(八幡高校科学部)

 決勝戦に駒を進めたのは、JSRC暫定大会で優勝したスーパーディガーII For JSRCとメリッサ-トライブ。

 試合が始まると、メリッサ-トライブは積極的に攻撃を仕掛けるが、スーパーディガーII For JSRCはなかなか倒れない上に攻撃のリーチが長い。スーパーディガーII For JSRCが試合を有利に進めていき、ついにスーパーディガーII For JSRCが勝利した。

 3位決定戦は、敗者復活戦を勝ち上がってきた拓歩と、Rbv-X LinkVerの戦い。YOKAロボまつりSRCクラスでも優勝したことのある拓歩が勝利し、3位を決めた。

SRC第1試合。サッカーで大活躍した拓歩(左)も、JSRC暫定王者のスーパーディガーII For JARCの壁は厚かったようだRbv-X LinkVer(左) VS ムーン。Rbv-X LinkVerは独自のリンク脚を装着したものだASO2を場外に追いやるメリッサ-トライブ
今回、KHR-3もバトルに登場。AS01から1勝を挙げたSRCクラス準決勝第1試合、スーパーディガーII For JARC VS Rbv-X LinkVerSRCクラス準決勝第2試合。敗者復活戦を勝ち上がってきた拓歩だったが、メリッサ-トライブの前に敗れた
SRCクラス3位決定戦。拓歩(右)がRbv-X LinkVerを破り、3位の座を獲得SRCクラス決勝戦、メリッサ-トライブ VS スーパーディガーII For JARC。操縦者はどちらも小学生だメリッサ-トライブの方が技を出していたが、勝利はスーパーディガーII For JARCの上に

ORCクラスには11台が参加

 ORCクラスには次の11台が参加した。

・メリッサ-ヘカトンケイル(せな)
・automo05(Gohwan)(holypong)
・ZERO(九共大)
・IGNIS.02v3(伊藤)
・朱鵬(九産大)
・隼(九共大)
・KHR-1-改(九産大)
・紫電(九共大)
・葵(和田)
・スーパーディガーII(ひろのっち)
・Phalanx(マグネット)

 ORCクラスの優勝決定戦は、スーパーディガーII VS メリッサ-ヘカトンケイルという、SRCと同じく「スーパーディガー VS メリッサ」の対決となった。

 メリッサ-ヘカトンケイルは高い運動性能を生かしてスーパーディガーIIを多彩な技で崩しにかかる。しかし、スーパーディガーIIはリンク脚ゆえの安定性でそう簡単には倒れない。逆に長いリーチでメリッサ-ヘカトンケイルを攻撃していき、ORCクラスでもスーパーディガーIIが勝利を収めた。

ORCクラス第1試合では、第15回ROBO-ONE準優勝のAutomo05が、メリッサ-ヘカトンケイルに敗れるという波乱が起きたZERO(左) VS IGNIS.02v3の戦いは、IGNIS.02v3の勝利隼(右)からダウンを奪う九産大の朱鵬
KHR-1改(左)を退けた紫電試合前から不調だった葵(左)。スーパーディガーIIの一撃を食らってKOとなったバトル大会初めての試合でAutomo05とぶつかったPhalanx。パンチの打ち合いでは負けていなかったが、やはりROBO-ONE準優勝機体の壁は厚かった
準決勝第1試合、敗者復活戦を勝ち上がってきた隼 VS Automo05を激しいドツキ合いで倒したスーパーディガーIIの戦い準決勝第2試合、朱鵬(手前) VS メリッサ-ヘカトンケイル朱鵬は故障によりタイムを申請し、ダウンを取られる。それが響いて敗退となった
3位決定戦では朱鵬は立ち直り、1回戦でも戦った隼を倒して3位となったORCクラス決勝戦、スーパーディガーII VS メリッサ-ヘカトンケイル。スーパーディガーIIが勝利し、「スーパーディガーは親子で優勝、メリッサは兄弟で準優勝」という珍しい結果になったSRCクラス結果
ORCクラス結果

巨大なロボットが集まったジャイアントクラス

 今回のYOKAロボまつり9バトル大会から、身長60cmを越えるロボットに関してはジャイアントクラスでの参加が義務付けられた(ORCクラスのバトルに参加した場合、危険が想定されるため)。

 ジャイアントクラスには、サラマンダー、Automo06、ドカはるみの3台が参加。

 このうち、サラマンダーとAutomo06はエキシビジョンマッチを行ない、サラマンダーが勝利した。

 今回のYOKAロボまつり9バトル大会で一番大きかったのが、身長130cmを越えるドカはるみだ。ドカはるみはハンドを利用して、子供たちとじゃんけんをするパフォーマンスを行ない、観客たちを驚かせていた。

まさに巨大ロボット同士の戦いとなったサラマンダー VS Automo06じゃんけんパフォーマンスを行なうドカはるみ閉会式の記念撮影

 この夏のYOKAロボまつりは、ロボスクエアの夏休みのイベントとしての意味あいもあった大会だが、観客からのウケもよく、十分にその任を果たせたのではないかと思う。



(大林憲司)

2009/9/9 16:24