「国際フロンティア産業メッセ2009」ロボットブースレポート
~テーマは「HYOGO・KOBEが未来をかえていく!」
神戸国際展示場 |
9月3日(木)、4日(金)の2日間、神戸国際展示場において、国際フロンティア産業メッセ2009が開催された。主催は、国際フロンティアメッセ2009実行委員会。
今回のテーマは「HYOGO・KOBEが未来をかえていく!」。厳しい経済状況の中だからこそ、次世代を担う成長産業の育成やものづくり産業のさらなる活性化が期待されている。ものづくり企業や研究機関が集積する地域の強みを活かし、幅広い分野の新技術・新製品を展示、産学官連携による研究成果・開発技術の紹介を通じて、兵庫・神戸の技術力を発信した。本稿ではロボットに焦点をあててレポートする。
●水圧で動く新設計の移動機構
サンポート設計有限会社は、配管内や壁面を柔軟に動く水圧移動機を展示した。樹脂製の水圧駆動装置とバネを組み合わせて伸縮を繰り返し滑らかに動きまわる。モーターを使用していないため、パワーがかかった状態でも柔軟性があり機械的な微調整が可能。そのため曲がった配管内でもスムースに移動できる。研削や研磨機などの工具を搭載し、作業を行なう。
●神戸RT研究会のロボット
神戸市はロボット開発により、地域経済の活性化とロボット技術に伴う“夢”の創出を目指す「神戸RT(ロボットテクノロジー)構想」を推進している。神戸RT研究会のブースには、会員企業のロボットが展示されていた。
アイデアフォレストのノラネコセンサーは、庭の形状に合わせて簡単に設置できるのが特長。静電容量センサーを用い、猫がアンテナの周囲に近づくと犬の唸り声をスピーカーで再生し追い払う。乾電池で1年間作動する。予定価格5,000円。
センサーの応用事例として、コーンにシステムを搭載した製品も展示した。イベント会場や工事現場など、立ち入り禁止区域に設営し、音声やブザーで注意を促すことができる。
【動画】アイデアフォレストのノラネコセンサー。猫に見立てた球体がセンサーのアンテナに近づくと犬の鳴き声で威嚇する | ノラネコセンサーの構造 | コーンにセンサーを搭載し、対人センサーとした応用例 |
株式会社システムワット自動外観検査システム「iMvision」を展示した。iMvisionは、自己学習技術を有しているのが特徴で、良品をカメラに示すだけでPC内のプログラムが、形状や特徴を継続的に記憶し、高速に判断する。従来のビジョンシステムで必須であったオペレータによるプログラミングや複雑なメニューが不要なため、大幅なコスト削減と時間短縮が可能となった。毎分3,600回スピードでパーツ検査を行なうため、高速な製造ラインで不良品をチェックできる。
株式会社システムワットの学習型画像検査装置 | 【動画】良品をカメラに示し自動学習させるだけで、品質管理 |
川崎重工業株式会社は、3次元CADデータを活用したロボット用CAMソフトウェア「KCONG」を使った切削加工の実演を行なっていた。設計データをそのまま生産工程に生かし、切断・溶接・面取りなど多様な分野に適用可能。ロボットへの教示時間を大幅に短縮できるため、生産コストの削減に効果があるという。
【動画】3次元CADデータを活用したロボット用CAMソフトウェアの実演 | 【動画】株式会社エスケイパンの教材用二足歩行ロボット「Gogic Five」 | 明興産業株式会社のレール起動型移動ロボット。住宅の床下・天井裏などの閉鎖空間を監視する |
●安全な救助活動を実現するための情報収集ロボット
独立行政法人 情報通信研究機構のケナフ |
NPO法人国際レスキューシステム研究機構(IRS)が、昨年度「今年のロボット」大賞で優秀賞を受賞した能動スコープカメラや、先日発表した「UMRS-2009」、レスキューロボット「Kenaf」を紹介した。
能動スコープカメラはがれきの奥深くまで探索可能なスコープカメラだ。挿入部がヘビのように自走し、従来のスコープカメラでは不可能だった狭路もや段差もスムースに侵入できる。「今年のロボット」大賞2008優秀賞のほか、自治体消防制度60周年事業・消防庁長官表彰最優秀賞などを受賞し高い評価を得ている。IRSでの実証実験のほか、米国FEMA訓練所ロボット評価会でも試験を行った数十種類のロボットの中で最も実用性が高い2つのロボットのうちの1つに選ばれた。また、米国のJacksonville建物倒壊事故の原因調査にも用いられ、がれき内に最大深さ7mまで侵入し、コンクリート構造物の割れ目の状況など、構造情報収集に役立ち実用性を示した。詳しい記事はコチラ。
右手の操縦機で先端のカメラを操縦。ロボットの方向転換はロボット本体を手でひねって行なう | 【動画】能動スコープカメラが稼働するようす | 【動画】能動スコープカメラからモニタに送られてくる映像 |
UMRS-2009は、災害後のビルや地下街などの閉鎖空間に侵入し、中の状況を探索するレスキューロボットだ。ファーストレスポンダーの事故防止、効率的な被災者の探索や災害現場の情報収集などを目的に開発が進められている。ユニット構造になっており、駆動ユニットを共通化し上部ユニットを各業務に応じて開発する。現在は、室内探索を目的としたドアノブを把持して開けるマニピュレータを開発中。年内には公開できる見込みだという。詳しい記事はコチラ。
【動画】UMRS-2009。サイズは幅500×高さ220×奥行き590mm(サブクローラー収納時)。重量21kg。最高時速5km | 【動画】UMRS-2009から送られてくる映像 | オプション搭載用の電源とLANケーブル接続口。赤いボタンで緊急停止 |
三菱電機特機システム株式会社のブースでも、消防用探査ロボット「FRIGO-M」の実演が行なわれた。
FRIGO-Mのベースになっているのは、2007年に同社から発売されたCWD(Crawler Wheel Drive)方式小型クローラーロボット。これに災害現場における情報収集活動に必要なパンチルトカメラ、ガスセンサー、放射線センサーなどオプションを搭載した。無線操縦による走行で、映像やセンサー計測情報をリアルタイムに操縦モニタへ転送する。
オプション機材は、他にも2軸リモート制御の雲台、5軸リモート制御のマニピュレータ、昇降台などが用意されている。トンネル・土管、共同溝などインフラ設備、ビルや住宅の床下点検や配線支援など幅広い用途が見込まれる。
【動画】三菱電機特機システム株式会社の消防用探査ロボット「FRIGO-M」。大きな前輪で段差を乗り越え移動することも可能 | 「FRIGO-M」の操縦卓 | 【動画】カメラを切り替えて周囲を探査する |
●その他のロボット
ロボットブース以外で見つけたロボット情報を2点紹介する。
株式会社トップのブースで、モバイル「寿司ロボット・天」が実演していた。1時間に1,200個の寿司玉を握り、連続8時間稼働する。好みに応じて寿司玉のサイズや握りの硬さを調整できる。本体サイズが幅17×奥行26×高さ33cmと非常にコンパクト。充電式コードレスなため、自由に持ち運びができるのが特徴。居酒屋・バイキング・ケータリングなど新しいシチュエーションで、寿司ロボットの活躍が期待できるという。
新長田まちづくり株式会社のブースでは、若松公園で建設中が進む鉄人28号モニュメントのパネルが展示されていた。7月に起工式が行なわれ、8月末の時点では両腕が付き巨大な姿をあらわにしている。9月末完成に向け建設は快調に進んでいるようだ。
【動画】モバイル「寿司ロボット・天」 | 新長田まちづくり株式会社のブース |
若松公園で鉄人28号モニュメントの建設が進む | 鉄人28号モニュメント製作過程のパネルを展示 |
2009/9/7 15:23