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ベーダセンター、またがって乗る電動車椅子「RODEM」を発表

〜キーワードはノーマライゼーション


「ユニバーサルビークル Rodem」

 一般社団法人ベーダ国際ロボット開発センター(ベーダセンター)は、8月26日、「ユニバーサルビークル Rodem(ロデム)」を開発したと発表し、記者会見とデモを行なった。これまでの車椅子と違って、前から移乗するのではなく後ろから乗り込み、前傾姿勢をとって胸・膝・お尻で体重を支える。数年後に、電動車椅子程度の50万円〜70万円程度で実用化を目指す。国内ではなく海外先行での実用化もありえるという。

 「RODEM」は全長122cm、幅69cm、高さ117cm。重量は約100kg。座面の高さは38cmから70cmまで上下し、搭乗者の姿勢・視点を変化させることができる。バッテリは鉛蓄電池で、駆動時間は4時間程度。前輪二輪が独立駆動することで小さい旋回半径(850mm)での旋回が可能。速度は時速6km、3.5km、1kmと切り替えられる。操縦はジョイスティックで行なう。音声認識やGPSをつけた自己位置認識機能などもオプションとして今後は装備していく予定。

 最大の特徴は、ベッドなどからの移乗が比較的容易であることだ。まずはデモの様子をご覧頂きたい。

ベーダ国際ロボット開発センター「RODEM」 横から 斜め後方から。尻・膝・胸で体重を支える
操作は右手のジョイスティック 正面のボタンで座面の高さを調整する フロントカウルの隙間から中を覗き込むとサドルを上下させる機構が見える
人が乗っていない状態。斜め後ろから 正面 横から
通常の車いすとの比較 通常の車椅子では高いところに手が届きにくい ベッドへの移乗も介助者の手が必要
【動画】デモ全体。ベッドから移乗、高いところにも手が届くことや視点を変えられることを示す 【動画】ベッドからRODEMへ移乗する様子を正面側から撮影 【動画】ベッドからRODEMへ移乗する様子を背中側から撮影
【動画】高いところにも手が届く様子 【動画】車いすからベッドへの移乗 【動画】歩行者や座っている人と視点を合わせることができる
【動画】座面はボタンで上下する。 【動画】乗っているのは本誌ライターとしても活躍するfuRo研究員 瀬戸文美氏 【動画】ベッドから移乗する様子をもう一度
九州大学病院リハビリテーション部 高杉紳一郎氏

 九州大学病院リハビリテーション部 高杉紳一郎氏は、ロボットを製作した株式会社テムザックの高本社長の印象を「いきなり、介護現場で一番困っていることはなんですか、といってきた。乗り移り、トランスファーが一番困る、それによる転倒と骨折という問題があるというと、じゃあ乗り移りをいかに簡単にするかをやりたい! といってきた」と述べ、ロボットだろうがなんだろうが、現場で役に立てたいと語ったことを振り返った。そして「RODEM」は「乗り移りの革命」であり、キーワードは「ノーマライゼーション」、すなわち「共生」にあると述べた。

 ベッド等から車いす等への移乗には、7つのステップがあるという。特に問題となるのは、乗り移るときに体を回旋しなければならないことである。このときに転倒などの事故も起こりやすいのだという。これを半分に減らすことを目的として、RODEMでは体の向きを変えずにそのまま乗り込み、さらに移動できるものとした。これは移乗の革命だと高杉氏は語った。また、これまでの移動機器は健常者専用、あるいは疾病や高齢者専用だったが、このRODEMは共生するものだと位置づけられるとし、健常者と障害者が区別された社会から「電動車椅子を越えて誰もが使える『ユニーバーサルビークル』として育ってほしい」と述べた。今後、福岡県飯塚市にある総合せき損センターとも情報交換を行ない、開発を進めていく予定だという。

従来の移乗 RODEMによる移乗と移動 活動範囲が広がるとすれば自由に外出したり話をしたいとする人は多い
「ユニバーサルビークル」の提案 総合せき損センターとも情報交換を行なって行く 株式会社テムザック代表取締役社長 高本陽一氏
一般社団法人ベーダ国際ロボット開発センター 理事長 橋爪誠氏

 ベーダセンター理事長の橋爪誠氏は同センターの概要について解説した。今年4月に設立、福岡県宗像市に拠点を置くベーダ国際ロボット開発センターは、ロボットベンチャーの株式会社テムザックのほか、日本、ドイツ、イタリアのロボット工学・医療・生命体工学等に携わる、大学、研究機関、企業による、医療・介護・生活支援分野のロボット開発を行なう組織。組織名の「ベーダ」はインド古典神話「リグベーダ」に由来し、「命」「知識」という意味があり、レオナルド・ダ・ビンチの描いた図から援用した四角と丸からなるロゴマークには人体と機械の統合理解と融合の意味がこめられているという。同センターは九州大学先端融合医療研究開発センターで臨床試験や実証実験を行なう予定で事業を進めており、今回のロボットはその第一号となる。

 日本は少子高齢化、労働者人口の減少、介護業界の人材不足などの問題を抱えている。「座る」というコンセプトから、胸や膝を支えるという新コンセプトによって、車椅子に介助者なしで乗れない人でも乗ることができ、身体の向きを変えることなくベッドや便座等の間で移乗が可能であり、また、立つ姿勢と座る姿勢を選べると利点を述べた。

ベーダセンターのロゴデザイン 九州大学先端融合医療研究開発センターで実証実験ほかを行なう RODEMの開発コンセプト
ベーダ国際ロボット開発センター理事 北野宏明氏

 特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構所長でベーダセンター理事の一人である北野宏明氏は基礎研究から応用研究、そしてその先へ行く実用化までの間にあるとされる「死の谷」について、「本当の『死の谷』は、基礎から応用へ行くところにある。多くの研究は研究者による勝手な思い込みのニーズによって進められていることが多い。それではいくら投資しても実用化できない」と述べた。そのため今回のロボットは本当に現場が何を必要としているのかリサーチして研究を進めたという。

 「RODEM」のデザインを手がけた西日本工業大学デザイン学部教授・木村幸二氏は「どうせ乗るならかっこいいもののほうがいいと考えた」と語り、名前の由来は「RObot De Enjoy Mobility」だと紹介。このうち特に大事なところは「Enjoy」であり、「つまり外に出て楽しもうということだ」と解説した。

西日本工業大学デザイン学部教授 木村幸二氏 デザイン 「RObot De Enjoy Mobility」の頭文字を取った
金沢工業大学教授 南戸秀仁氏

 このほか、ベーダ国際ロボット開発センター社員で金沢工業大学教授の南戸秀仁氏は、インテリジェントセンサーがロボットに新しい機能を付加できると述べた。特においセンサーや、人間の五感を超える放射線センサーなど、そしてセンサーフュージョンに注目して研究を行なっているという。南戸氏らのにおいセンサーはテムザックの留守番ロボット「番竜」にも搭載された。たばこのにおいなどを検知するためだ。ただセンサーの誤動作が多かったため、後に改良して同じくテムザックと共同開発した「火災早期発見ロボット」に搭載された。これらのセンサーによってロボットを高度化、ベーダセンターがロボット新世紀を築く、と述べた。

番竜に搭載されたセンサー 火災早期発見ロボット 人間には感知できない環境情報を得るセンサーも

 RODEMは実用化のパートナー企業も募集している。また、早稲田大学の高西淳夫教授は、二足歩行タイプや多脚タイプのRODEMも作ってみたいと将来の夢を語った。

 デモンストレーションを見ていると、まだまだ課題が多いことが見て取れる。たとえば前方にノーズが出ているため、自動ドアのボタンを自分で押す事ができない。胸当てに体をもたせかけて前傾するのは怖いという人もいたし、座面も動かないので、足がつかえるという人もいた。ジョイスティックでの操作は難しい人も多いだろう。車高も低いので、歩道の縁石程度であってもおそらく乗り越えは苦労するだろう。またそもそも今回のデモでは使用者の体重が50kgまでに制限されていた。今回製作されたコンセプトモデルから実用化モデルへの道のりはまだまだ遠そうだが、開発スタッフたちにも既にいろいろアイデアがあるようだ。今後に期待する。

早稲田大学 高西淳夫教授 【動画】デモが行なわれた部屋から記者会見室へ移動。自動ドアが開かなかった。このあたりは今後の課題


(森山和道)

2009/8/27 00:57

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