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考えただけで電動車椅子が動く

〜理研BSI-トヨタ連携センター、脳波による電動車いすのリアルタイム制御に成功


脳波で動かせる電動車いすシステム。ノートPC一つで信号を解析している

 独立行政法人理化学研究所、トヨタ自動車株式会社、株式会社豊田中央研究所、株式会社コンポン研究所が2007年に共同で設立した「理研BSI-トヨタ連携センター(BTCC)」は、6月29日、脳波を使って電動車いすをリアルタイム制御することに成功したと発表し、共同記者会見を行なった。記者会見は文部科学省情報広場1階ラウンジで行なわれ、実際に電動車いすに脳波計を搭載し、研究者によるデモンストレーションが行われた。

 今回発表されたのはBTCCの「非侵襲BMI連携ユニット」のアンジェイ・チホツキ(Andrzej Cichocki)ユニットリーダーと、キュワン・チェ(Kyuwan Choi)研究員らによる成果。同研究グループは、運動しようとしたときに発生する脳波の変動である「事象関連脱同期」と呼ばれる現象に着目。脳の主に運動野の活動を計測し、それを0.125秒で解析してコマンドとし、電動車椅子を動かすことに成功したというもの。ほぼリアルタイムで高速に意思を抽出できることが最大の特徴だ。

 操作者は頭部に電極を着用する。脳波を測定する信号電極は5チャンネル。電動車椅子にはノートPCベースの脳波解析システムが搭載されている。操作者は事前にシステムを使って、1日3時間、1週間程度の訓練を行なっておき、その間にシステムの認識結果と自分のイメージとを一致させると同時に、システム側もパラメーター調整を進める。具体的には前進・左右旋回の3方向にあたる「歩行」や「左右の腕の運動」を思い浮かべる。腕の運動に関しては実際には握るような動作をイメージするのだそうだ。そのときに発生する脳波の変動を信頼度95%以上、125ミリ秒で高速解析してコマンドとし、電動車椅子が動く。また緊急停止用に、操作者は頬に筋電位を測定する電極を着用しているため、頬を一瞬膨らませることで緊急停止させることができる。

 デモでは実際にBTCC非侵襲BMI連携ユニット研究員のキュワン・チェ氏が実際に頭部に電極を付け電動車いすに乗車し、身体を動かすことなく電動車いすを走行させた。

【動画】脳波で電動車椅子を動かす模様 【動画】デモは数回、報道陣が満足するまで何度も繰り返し行なわれた 【動画】頬を膨らませると緊急停止する
脳波計測用の電極を装着したBTCC研究員のキュワン・チェ氏 右頬に張られているのが緊急停止時のみ使われる筋電位測定用電極 解説するトヨタの山田整氏(右端)と理研BSIのアンジェイ・チホツキ氏(中央)

 チェ氏は電動車いすでの移動中に両手を上げてリモコン操作などを一切行なっていないことも示した。通常、脳波を使ったデバイスコントロールシステムでは、筋肉の動きによる余計なノイズが入らないように、無用な動きは制限されることが多い。かなりロバストに信号を抽出できていることがデモからも伺えた。

 高速に信号処理が行なえるようになったところが大きなポイント。従来の信号解析法では数秒必要だったが、従来からの信号解析法である「空間−周波数フィルター法」と「線形分離器」に加えて、理研BSIで独自に開発した「ブラインド信号分離法」の3種類を組み合わせ、高速で信頼度も高い抽出が可能になった。各手法は既知だが、その組み合わせ方に特徴があるという。

 またシステム全体がノートPCで動作するなど非常に軽く作られている点、0.125秒と高速で脳波の処理結果が出るため、機械と人間の双方が簡単に学習を行なえることもまたポイントだという。詳細は特許取得中とのことで明らかにされなかったが「電極を5つに減らしたことで計算量を下げて、信頼性を上げるための数学的手法を用いた」とのことだ。なお処理時間である「0.125秒」は、車椅子のようにゆっくりと動くものであれば十分な処理速度だそうだ。

 今回のシステムでは進み続けるためには絶えず運動をイメージし続けなければならない。また、うまく動かせる人と、不得手な人との個人差もあるそうだ。また電極は髪の毛の上からジェル状のもので貼るため、数時間はそのまま使うことができるが、ジェルが乾燥してしまうと使えなくなる。将来は、できればメガネや帽子をかぶるように簡便に着脱でき、安定して長時間使える電極システムを開発していきたいという。

トヨタ自動車株式会社パートナーロボット部 センサ・認識開発グループ グループ長 山田整氏

 今後は電極の改良やキャリブレーション手法の改良を進めていくが、最終的には、運動関連の脳活動だけではなく感情の動きなども捉えていきたいという。「そのための1ステップとして今回発表した」とBTCC脳リズムモデル連携ユニット客員研究員でトヨタ自動車株式会社パートナーロボット部 センサ・認識開発グループ グループ長の山田整氏は述べた。今回、脳波からデコードしたコマンドで動かした対象は電動車椅子だったが、ポイントはそこではなく、あくまでリアルタイムに脳波を解析してコマンドを抽出できたことだと山田氏は強調した。なお、車のように高速で動く重いものに対する応用は現段階では全く考えていないとのことだ。

BTCC非侵襲BMI連携ユニット ユニットリーダー アンジェイ・チホツキ氏 理研BSI-トヨタ連携センターセンター長 木村英紀氏 質問に答えるトヨタの山田整氏(右)とBTCC戦略ユニット客員研究員で株式会社豊田中央研究所 先端研究センター 脳・生体機能領域PMの塚田敏彦氏(左)

 「理研BSI-トヨタ連携センター(BTCC)」は前述のとおり、2007年に理化学研究所とトヨタ自動車による包括的な連携で設立された組織。「ニューロドライビング」「ニューロロボティクス」「脳と健康」などの研究テーマに取り組んでいる。BTCCセンター長の木村英紀氏は「脳科学と技術の統合によってイノベーションを作り出す」ことを目標として掲げていると語った。


〜理研一般公開でのロボット

(森山 和道)

2009/6/30 00:00

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