「'09画像センシング展」レポート

~最新のマシンビジョン技術がロボットを変える!


【写真1】「'09画像センシング展」の模様。ホットな画像処理技術を肌で感じられる国内最大級のイベントだ

 6月10日(水)から12日(金)までの3日間、パシフィコ横浜において、マシンビジョン技術が目白押しの「'09画像センシング展」が開催された【写真1】。今年で通算24回目を迎える本展示会は、画像センシング技術研究会を開催母体とする「第15回画像センシングシンポジウム:SSII09」に併設された国内最大級の画像処理関連イベントだ。

 マシンビジョンを中心としたFA分野をはじめ、生活に関わる自動車・交通(ITS)、セキュリティ、教育・娯楽・サービス分野や、バイオ・メディカル、宇宙・地球、スポーツなどの研究開発をターゲットに、多岐にわたる画像処理アプリケーションが展示された。ここでは、本誌に関連の深いマシンビジョンを中心にユニークな製品を紹介しよう。

産業用ロボットとマシンビジョンの最適な連動

 ロボットの目となるマシンビジョンに関しては、産業用ロボットと結びつけたソリューションが数多く見られた。たとえば、さまざまな画像処理ツールと開発環境をサポートするコグネックスのブースでは、三菱電機のFA機器と親和性の高い最小画像処理システム「In-Sight EZ」を利用したロボットソリューションのデモが行なわれていた【動画1】。In-Sight EZは、プロセッサとカメラが一体構造になっており、小型・軽量で設置がしやすく、CC-LinkやMCプロトコルで三菱電機のFA機器に接続できる。運用面でもプログラミングが不要で、4ステップで設定ができるというメリットもある【写真2】。デモは三菱電機の産業用ロボットのアーム先端に小型カメラを搭載し、それを自在に移動させながら、1つのワークに対して複数の部位を検査するもので、文字の読み取り、二次元バーコード、端子ピッチ計測、電源のIDバーコード、ネジ、ラベルなどを読み取っていた。

【動画1】最小画像処理システム「In-Sight EZ」を利用したロボットソリューションのデモ。産業用ロボットのアーム先端に搭載した小型カメラを移動させ、1つのワークに対して複数の部位を検査【写真2】In-Sight Explorerの画面。「開始」「ツール設定」「結果の設定」「終了」の4ステップで設定できる

 メカトロ商社の芳賀電機は、安川電機の産業用ロボット「MOTOMANシリーズ」に視覚センサー(ギガイーサネット対応カメラ)を持たせ、ワークの位置を三次元で認識して、位置ズレの補正を行ないながらハンドリングできるビジョンピッキングシステム「VISION POINT」を紹介していた【写真3】。「VP-R1000シリーズ」は、安川電機のパネル一体型マシンコントローラー「MP2500」をベースにしており、オプションで「MECHATROLINK2」によるモーションコントロールも可能だ。芳賀電機が開発した画像認識アプリケーションを利用することで、欠陥検査や3次元計測なども行なえる。さらに同社ではワークを柔軟に把持できる高精度トルクセンサー内蔵ハンド【動画2】や二指ハンドも開発しており、合わせて提供するという。

【写真3】芳賀電機のビジョンピッキングシステム「VISION POINT」。安川電機の産業用ロボット「MOTOMANシリーズ」に視覚センサー機能を持たせ、欠陥検査や三次元計測などが可能【動画2】芳賀電機の高精度トルクセンサー内蔵ハンドシステムにこのハンドを組み込むことで、より複雑な組み立て作業にも対応できる。奥は二指ハンド。いずれも微妙な負荷変動に対応しながらホールドする

 今回の展示では、リンクス、丸由製作所、ミツテック、ソフトサービスなど、デンソーウェーブの産業用ロボットを利用しているブースが多かった。これらはリンクスを中心とした共同出展コーナーのHALCONパートナー企業だ。HALCONは、1,300を超える汎用画像処理ライブラリーがあり、これらを組み合わせることで、寸法計測、三次元計測、パターンマッチング、文字認識、カメラキャリブレーション、バリエーションモデル(良品/不良品判定)など、さまざまな画像処理システムを構築できる。

【写真4】リンクスのブース。デンソーウェーブの産業用ロボットを利用。HALCON9.0の新機能を組み合わせ、ロボットアームに取り付けられた単眼カメラのみで三次元認識を実現

 リンクスのブースでは、最新バージョンのHALCON9.0から実装された新機能を組み合わせ、1台の単眼カメラのみで三次元認識を実現するデモを披露していた【写真4】。これは 「特徴点サーチ透視歪マッチング」と「可変形状サーチ透視歪マッチング」という技術を組み合わせて認識するもの。平面上にある対象物のエッジをモデルとして登録しておき、どのように傾いたら同じ形状になるか計算によって求めて、モデルマッチングさせるという。さらにロボットアームを駆動させ、三次元形状の方向に合うようにエンドエフェクターの傾きを変化させて作業ができるようになるという。

 ミツテックは、モーション技術とビジョン技術を融合した総合的なFAソリューションを提案。デモでは、固定カメラ(ラインセンサー)を設置し、デンソーウェーブの産業用ロボットでコーヒー缶をハンドリング。缶の側面にあるバーコードや底面のインクジェット印刷文字を読み取っていた。ロボットによって缶を回転させて姿勢を変え、さらに缶底が直線を描くように、うまくアームを制御していた【動画3】。一方、ソフトサービスは、デンソーウェーブのロボットアーム先端にカメラを搭載させ、穴の開いた積み木を複数のポールにはめ込むデモを実施【動画4】。

【動画3】ミツテックもデンソーウェーブの産業用ロボットを利用してデモを実施。ロボットでコーヒー缶をハンドリングし、缶の側面にあるバーコードや底面のインクジェット印刷文字を固定カメラ(ラインセンサー)で読み取っていた【動画4】ソフトサービスのブース。デンソーウェーブのロボットアーム先端にカメラを搭載させ、穴の開いた積み木をポールにシーケンシャルにはめ込む作業を実施

 丸由製作所は、さまざまな画像検査装置の設計から製作、施工までをトータルでサポートできるノウハウを強調していた。同社では社内のテクニカルセンターで、サンプル画像テストやロボット・シミュレーションテストなどを随時受け付けているという。デモでは、同様にデンソーウェーブの産業用ロボットを利用し、無停止・高速での外観検査が可能なトータルソリューションを紹介。通常の検査システムの場合、検査ポイントでカメラを一時停止して、シャッター速度などの条件を決めてから撮影・検査する必要がある。しかし、こちらのシステムでは、ロボットのサーボコントローラーと画像処理部を1つにまとめ、検査エリアの撮像条件を先読みしている。そのため撮像エリアに入ったら、すぐシャッターチャンスを逃がさず撮像でき、検査効率が大変よくなるという【写真5】【動画5】。

【写真5】丸由製作所のブース。さまざまな画像検査装置の設計から製作、施工までを、ロボットとの組み合わせでトータルサポート。写真はタバコの銘柄を読み取ってピッキングしているところ【動画5】撮像ポイントにきても、あらかじめ撮影条件を先読みしているため、カメラの付いたアームを止めることなく、瞬時に撮影が可能だ

表面検査、外観検査などで活躍する高精度な画像処理システム

 以下、産業用ロボットに対象を絞らず、表面検査や外観検査などで活躍する高精度な画像処理システムについて紹介していこう。

 まず目を引いたのはハイテックスが出展していた「デジタル屋台システム」というユニークな名称のピッキング棚だ【写真6】。通常のピッキング棚のように、取り出したい部品棚をLEDで点灯させ、必要な部品を手動でピッキングするものだが、大きな特徴はその後の処理にある。グラフィカルな組み立て図がプロセスごとにPCに表示され、指示に従って間違いなくパーツを組み立てられる。さらに完成品を検査台に置き、カメラで撮影した画像から外観検査と良否判定も可能。誤品/欠品、色/柄、成形不良、キズ、汚れの検査などが行なえる【動画6】。こちらも画像処理ライブラリーにHALCONが用いられていた。デモではプラモデルのクルマのパーツを棚に入れ、シャーシにシャフトや車輪を組み付けて、測定・検査をする工程を見せていた。

【写真6】ハイテックスの「デジタル屋台システム」。通常のピッキング棚の機能に加え、パーツ組み立て指示や、画像処理による完成品の良/不良検査も行なえる【動画6】作業棚から取り出したパーツを組み立て、検査台に置いてカメラで撮影。その画像を基に良品判定を行なう。デモでは左右のタイヤの正確な組み付けと軸間距離を検査。アプリケーションの開発にはHALCONが利用されている

 センサーメーカー大手のキーエンスはセンサーだけでなく、システムを構成するプログラマブルコントローラー、ACサーボモータ/ドライバー、タッチパネルディスプレイなど、トータルなソリューションを紹介。デモでは、ランダムに変形するワークの外観検査として、うねったケーブルにできた欠けやバリなどの欠陥を検出するシステムを展示していた【動画7】。曲線の輪郭部分のエッジを多点で細かく抽出し、それをつなげてモデル線を生成する。検査時は、そのモデル線から外れるような点を探し出す仕組みだ。このほかにも毎回背景が変化するような悪条件でも安定した文字検査ができるシステムなども実演していた【動画8】。

【動画7】キーエンスのブース。ランダムに変形するケーブルにできた欠けやバリなどの欠陥を検出するシステム。うねる曲線の輪郭部分のエッジを多点でプロファイリングし、そのモデル線から外れる点を探し出すという仕組みだ【動画8】透明なケースの中に色彩が強い内容物が入っている。そのためケース上の文字を読み取ることが困難なのだが、このような悪条件でも安定した画像認識を実現できていた

 前述のリンクスのブースでは、ミクロンオーダーの精度が求められるような高精度な三次元計測の事例として、基板検査のデモが行なわれていた【写真7】。こちらもHALCON 9.0の新機能 「可変形状サーチ透視歪マッチング」を利用。ステレオビジョン手法を組み合わせ、ICチップの足の高さを高精度に計測する。紙の厚み程度の微細な高さ変動にも対応する点がウリだ。同様に、高精度な欠陥検査を実現するHALCONのバリエーションモデル手法をデモ機で紹介【写真8】。良品との微小な違いを過検出してしまう問題を解決しながら、ラインセンサーと高精密レンズを組み合わせることで、数十ミクロンの欠陥を高精度に検出できる。

【写真7】リンクスのブースでは、ステレオビジョン手法による高精度な基板検査システムのデモが行なわれていた。HALCON 9.0の「可変形状サーチ透視歪マッチング」を利用し、ICチップの微細な足の高さを計測【写真8】こちらもリンクスのブース。高精度な欠陥検査を実現するHALCONのバリエーションモデル手法を紹介。ラインセンサーと高精密レンズを組み合わせ、分解能15μmの微細な欠陥でも高速検出できるという
【写真9】東芝テリーの高精細・高速モノクロカメラを利用した基板検査システム。動きの早い被写体でも鮮明な画像が得られる。モニターには、WOI機能で切り出された画像が表示されている

 東芝テリーは、カメラリンク出力のモノクロカメラ「CSC12M25BMP19」を利用した基板検査システムを紹介していた【写真9】。このカメラは12万画素、25fpsの高精細・高速タイプで、同一タイミングで全画素露光が行なえ、動きの早い被写体でもブレの少ない鮮明画像が得られる。また、WOI(Windows Of Interest)機能を備えている点も特徴の1つ。水平・垂直アドレスを指定することで、最大28個までウィンドウを任意に切り出すことが可能だ。同社では、このほかにもギガビットイーサネット対応のGigE Visionカメラなど数多くのカメラを出展していた。

 ソニーは、同社のインテリジェントカメラ「XCIシリーズ」によるデモを行なっていた。このカメラは筐体内部にx86系CPUを内蔵し、USB、ギガビットイーサ、DIOなど、汎用PCと同一のインターフェイスを備えている。用途に合わせて既存の画像ライブラリーを組み込むことが可能。たとえば、画像入力・処理・表示の処理関数を多彩にサポートする「Matrox Imaging Library9.0」(MIL9.0)や、アプリケーション開発が容易な「COGNEX VISION PRO」などに対応する。

 デモではカメラにXCI-V100を利用し、回転する電車の模型に付いているナンバーを読み取って、その回数をカウントしていた【写真10】。また同社のブースでは、1粒1粒のお米の色を検出して不良をカウントする検査システムも目を引いた【動画9】。これは、カメラリンク対応のカラーカメラ「XCL-5005CR」と、リンクスの画像処理ボード「GINGAシリーズ」を組み合わせたもので、HALCONによってアプリケーションを開発したものだ。

【写真10】ソニーのブースで行なわれていたインテリジェントカメラ「XCIシリーズ」のデモ。回転する電車の模型に付いているナンバーを読み取って、その回数をカウント【動画9】カラーカメラ「XCL-5005CR」と、リンクスの画像処理ボード「GINGAシリーズ」を組み合わせたデモ。お米1粒ずつの変色を認識し事故米を見つけているところ
【写真11】東海ソフトのブース。CDの外周に印字されたシリアル番号を高速に読み取れるシステムを紹介。抽出されたエッジ情報をベースに極座標変換を行なって、文字の印字領域を判断。これもHALCONで開発

 東海ソフトは、CDにプリントされたシリアル番号を高速に読み取れるシステムのデモを行なっていた【写真11】。CDの内接円から円の中心座標を取得し、エッジのサブピクセル情報を正確に抽出するもので、抽出されたエッジ情報をベースに極座標変換を行なって、文字の印字領域を判断するという。こちらもHALCONを利用しており、開発にかかる期間やコストを削減できるそうだ。

 日本FAシステムは、回転中立製品の高速・連続読み取り処理が可能な「Bottle Scanner」の実演を行なっていた【写真12】。ビンの口にあるネジ部の三次元計測を行なうもので、毎秒200コマでのリアルタイム検査が可能だ。エクスビジョンは、東京大学発のベンチャー企業で、この春に設立したばかりの企業だ。同社では、高速ビジョンの応用例として、回転する缶の表面を高速カメラで連続撮影しながら、約50枚ほどの画像を張り合わせて、1枚の平面画像として展開するアプリケーションを紹介【動画10】。展開後の画像を利用し、さまざまな検査を行なえるという。ロボットの高速ビジョンとしての利用も可能だ。

【写真12】日本FAシステムによる「Bottle Scanner」の実演。回転中立製品の高速・連続読み取り処理が可能な実例として、ビン口にあるネジ部の三次元計測を行なっていた【動画10】エクスビジョンは、高速ビジョン技術の応用例を紹介。回転する缶の表面を高速カメラで連続撮影しながら、約50枚ほどの画像を張り合わせて、1枚の平面画像としてほぼリアルタイムに展開するという

 アドサイエンスは、145万画素のPoCL(Power over Camera Link)対応モノクロカメラ「VCC-G22S21APCL」を利用し、ベルトコンベアによって高速に流れるワークの表面・キズ検査を行なっていた【動画11】。このほかマシンビジョン用高速画像処理ソフト「Open eVision」や、各社の多彩なギガビットイーサネットカメラなども展示。Open eVisionは、イメージ、カラー分析、オブジェクト認識、マッチング、計測、OCR、マトリックスコード、バーコードなど10個のライブラリーで構成され、低価格でランタイムライセンスを単体購入できる。また、MMXテクノロジーのサポートなど高速性にも優れている。

 エーディーエステックは、デュアルラインスキャンカラーカメラ「DALSA Spyder3 Color CL」を利用し、毎分100回転する輪転機の印刷物を4,096画素、18,000lpsでスキャニングするデモを行なっていた【動画12】。

 ケーアイテクノロジーは、ユーザー仕様に合わせたFPGA搭載の画像処理カスタムボードなどを受託開発している。たとえば、アルテラやザイリンクスのFPGAを利用し、パターンマッチングやラベリングの処理をハード化して高速処理を実現するという。2枚の画像処理ボードを使用し、絵本からウォーリーを探し出すデモを行なっていた【写真13】。

【動画11】アドサイエンスのブース。ベルトコンベアによって高速に流れている各種部品の認識に加え、その部品の表面・キズ検査を行なうシステム【動画12】エーディーエステックのブース。デュアルラインスキャンカラーカメラにより、高速回転する輪転機の印刷物を、4,096画素、18,000lpsでスキャニング【写真13】ケーアイテクノロジーのブース。アルテラやザイリンクスのFPGAを利用した高速画像処理ボードを紹介。2枚の画像処理ボードを使用し、絵本からウォーリーを探し出すデモを実施

 浜松・東三河オプトロニクスクラスターのブースでは、光・映像関連の研究成果を紹介していた。文部科学省の知的クラスター創成事業の一環として、現在、浜松・東三河地域の大学(静岡大学、豊橋技術科学大学、中部大学など)や企業が中心となって、オプトロニクス関連の先端的な技術研究を推進しているところだ。

 デモで面白かったのは、中部大学藤吉研究室の「動画像理解ビジョンセンサー」だ。人の検出に有効なHOGやSIFT特徴という手法を用い、映像データとメタデータを出力するビジョンセンサーをLSI化してカメラに組み込んだ。具体的には、特徴点の抽出や追跡のアルゴリズムをソフトウェアでなく、アルテラのFPGA「Cyclone III」によって回路として組んで、高速なハードウェア処理を実現。

 特徴点の追跡機能を利用したアプリケーションとして、鉄道模型にカメラを取り付け、画像中に映る道路標識を自動認識し、その標識の指示に従って車輌を停止したり、速度を制御する実験が行なわれた【写真14】【写真15】。また店舗内の動きなど、マーケティングへの応用として、特徴点の追跡結果から長期間にわたる移動体の流れの累積を1枚の画像で色表現する例もあった【写真16】。

【写真14】浜松・東三河オプトロニクスクラスターのブース。中部大学藤吉研究室の「動画像理解ビジョンセンサー」によって特徴点を追跡するアプリケーション。鉄道模型にカメラを取り付け、自動認識した道路標識の指示に従って車輌を停止したり速度を制御する【写真15】画像中に映る道路標識を自動認識しているところ。止まれを認識すれば車輌は停車。速度40kmの標識を認識すると速さが遅くなる【写真16】特徴点の追跡結果を長期間にわたって集計し、移動体の流れを1枚の画像で色表現するユニークな手法。店舗内の動きなど、マーケティングへの応用に期待がかかる

光切断法による三次元計測や、TOF方式の距離計測ソリューションも

 計測物にレーザーを当て、そのレーザー形状の変化を画像処理で高速に検知することで三次元形状を復元する「光切断法」のデモも多かった。

 たとえば浜松ホトニクスは、スポット光を対象物に当てながらリニアステージを移動させ、同社のインテリジェントビジョンシステムから2,000fpsで対象物の高さを連続計測するシステムを展示。そのデータをベースにして、コンピュータで三次元データを作成し、基本となる値からはみ出した差分を調べて、リアルタイムに不良品を検査するデモを実施していた【動画13】。

 同様にリンクスも、HALCON9.0の新機能を利用して、タイヤ表面の三次元形状を高速に復元し、微細な欠陥を検出する光切断法のデモを行なっていた。具体的には、カメラに「BASLER A504k」、画像入力ボードに「Ginga-DG/CL2e-F-EX4」を利用し、2,500fpsで画像を取り込みながら、検出が難しいとされる黒色タイヤの表面にある線キズやバリなどを調べていた【動画14】。

 キヤノンITソリューションズは、Matrox Imaging Library(MIL)9.0を利用した一例として、光切断法の三次元計測を取り上げていた【写真17】。Matrox Imaging Library9.0は、マシンビジョンはもとより、医療、セキュリティなどの幅広い分野で画像アプリケーションを開発するために用いられるライブラリーだ。Visual C++(DLL形式)、Visual C(OCX形式)で利用でき、カラー分析、エッジ抽出、パターンマッチング、二次元計測、文字認識、OCR、キャリブレーションなどの機能をサポートする。

【動画13】浜松ホトニクスのブース。インテリジェントビジョンシステムを用いて、光切断法による三次元計測のデモを実施。計測結果は色で表現され、リアルタイムに不良品を検査【動画14】リンクスのブース。こちらでも光切断法による三次元計測のデモを実施。HALCON9.0の新機能を利用し、検出が難しい黒色タイヤ表面の3次元形状を高速に復元。微細な欠陥を調べていた【写真17】キヤノンITソリューションズのブースで行なわれていた光切断法のデモ。これはMatrox Imaging Library9.0で開発したアプリケーションだ

 また日本FAシステムは、LMIテクノロジー社のコンポーネントを利用し、一度に二次元/三次元の画像を取り込める認識システムを紹介【動画15】。コンポーネントは、専用レーザーライン照明から、高速スキャンセンサー(カメラ)、三次元データ展開用DSP処理ユニット、2次元同時解析ユニットなどがあり、すべてのシステムと完全同期しながら、三次元データを構築できるという。一方、超高速三次元形状認識センサーカメラ「Ranger-3D」を利用したデモも行なっていた。こちらは単色・透明色ワークの形状や文字を認識するものだが、もちろん光切断法も利用できる。表面に模様があるタイルや木材の節、薬剤タブレットの有無のほか、タイヤのパターンなどもレーザー拡散光で対応【写真18】。

【動画15】日本FAシステムのブース。二次元/三次元の両方を認識するシステム。LMIテクノロジー社のコンポーネントで構築【写真18】これも日本FAシステムのブースから。超高速三次元形状認識センサーカメラを利用し、検出が難しい単色・透明ワークの形状と文字を認識しているところ

 またTOF(Time Of Flight)方式の距離計測ソリューションも目立っていた。これは、変調された光の反射をセンサーで蓄積し、TOF方式で距離を測るもの。光を発して、視野内の対象物から、その光が反射して戻るまでの到達時間(位相のズレ)を、イメージセンサーで画素ごとに独立して検出し、リアルタイムに距離を算出する原理だ。TOF方式の距離計は、ロボットや無人搬送車(AVG)、ジェスチャー認識、室内セキュリティなどで応用できる。

 たとえば、日本クラビスは、スイスの研究所CSEMからスピンオフしたMESA社の三次元距離測定赤外線カメラ「SR-4000」を紹介していた【写真19】。この会社は、TOF式の距離測定装置の老舗だという。SR-4000は産業用の防塵・防滴一体構造で、リアルタイムセルフキャリブレーション機能や外部トリガー機能などを備える。デモでは、カメラで測定した対象物の距離を画素ごとに色分けして表現していた【写真20】。

【写真19】日本クラビスのブースで紹介されていたTOF方式の三次元距離測定赤外線カメラ「SR-4000」を紹介。産業用で防塵・防滴構造【写真20】カメラで測定した対象物の距離を画素ごとに色分けしてモニター上で表現。温度分布ではないので注意

 伊藤忠テクノソリューションズは、屋外でも利用できるOPTEX社のTOF方式距離画像カメラを紹介していた。この装置を利用したコンシューマー用アプリケーションのデモを実施。これは、人の指や手の動きをジェスチャーとして認識できる空間入力インターフェイスで、PC画面のオブジェクトをジェスチャーでドラッグ&ドロップして、さまざまなイベントを発生できる【動画16】。ロボットの遠隔操作などにも適用できるだろう。

 TOF方式の距離測定装置ではないが、個人的に大変興味を引いたものがクレッセントのイメージベースシーケンシャル三次元スキャニングシステム「4D VIEW SOLUTIONS」だ。フランスのリサーチセンター・INRIAが開発したもので、複数の方向から専用カメラで撮影された映像をベースに、リアルタイムで三次元イメージを出力でき、他の三次元映像と合成してインタラクティブ性に富んだ映像表現を実現する。三次元イメージスキャナーとして働くキャプチャー用カメラは最低8台ほど必要で、最高80台まで利用できる。カメラから抽出されたオブジェクトのシルエットとテクスチャを素早く取得し、三次元メッシュ構造にしたあと、最適化されたテクスチャとして出力する。

 実際のデモでは、ディスプレイ前方にかざした手を複数台の専用カメラでキャプチャーし、その手をリアルタイムで三次元イメージとして映像上で合成。さらに自分の手の位置情報も分かるため、三次元映像の中に入り込んで三次元のペットボトルや人を手で倒したりするイベントなども発生させていた。こちらもゲームやアミューズメント、ロボットのシミュレーションなどに応用できそうだ【動画17】。

【動画16】伊藤忠テクノソリューションズのブースで実演されたいたTOF方式距離画像カメラによるアプリケーション。人の指や手の動きをジェスチャーとして認識できる空間入力インターフェイスだ。ロボットにも応用できそうだ【動画17】クレッセントが紹介していた三次元スキャニングシステム「4D VIEW SOLUTIONS」。複数台の専用カメラで実物の手をキャプチャーし、それを三次元イメージとして映像上でリアルタイムに合成。三次元映像の中に入り込んでオブジェクトを操作できる

三次元カメラ、全方位カメラ、高速カメラなど特殊用途に用いられる製品

 ここからは特殊用途に使われる面白いカメラシステムについて見てみよう。ロボットの用途にも利用できるものもあるかもしれない。

 ブイシャープは、USBタイプの近赤外追尾型魚眼カメラシステム「DuoMABEL DMB-4000」のデモを実施していた。魚眼レンズ付きのメガピクセルカメラ2台をセットにしたシステム【写真21】で、1台のカメラには近赤外フィルタが装着され、近赤外の輝点を追尾。さらに追尾カメラが検出した方向で撮影した、もう1台の魚眼像をソフトウェアで切り出して歪補正をかけて表示させるというもの【写真22】。追尾ターゲットにLEDマーカーや反射テープを利用するが、近赤外光は通常のカラーカメラに映らないため、目に見えないマーカーを追尾するような映像が得られる。監視システムやロボットなどに利用できる。

【写真21】ブイシャープの近赤外追尾型魚眼カメラシステム「DuoMABEL DMB-4000」。魚眼レンズ付きのメガピクセルカメラが2台セットになっている【写真22】写真右側は、DuoMABEL DMB-4000で撮影した魚眼像をソフトウェアで切り出し、歪補正をかけてから表示させたもの

 日立国際電気は、小型・軽量で、約100mの長距離伝送が可能なギガビットイーサネットカメラ「KP-Fシリーズ」などを紹介していた。このシリーズはモノクロ、近赤外、カラーの3タイプが用意されている。その中で、近赤外タイプの「F145GV」(145万画素、SXGAで30fps)を利用して、箱の中身を写し出すデモを実演【写真23】。

 レッドバロージャパンは、3次元カメラシステム「3D Camera Docking Station」とフルHDで鑑賞できる3次元ディスプレイ「True3Di」を展示していた。3D Camera Docking Stationは、3次元映像の撮影を容易にするシステムだ【写真24】。カメラ2台がセットで搭載されており、2つのカメラの光軸調整がラクに行なえる。

 一方、True3Diは、正面と上面に液晶パネルがあり、それぞれ左右の視覚情報に相当する映像をハーフミラーで重ね合わせることで「真のフルHD立体表示」を実現したという【写真25】。通常の3次元ディスプレイように、1つ液晶上で左右の視覚情報を表示させると、左右それぞれ半分ずつの解像度しか得られない。しかし、この方式であれば、左右両方とも解像度を落とさず鮮明な立体映像が得られるわけだ。フルHDに対応するサイズは24型と40型があり、ボタンで2次元ディスプレイに切り替えられる。3D Camera Docking Stationと組み合わせれば、現場でリアルタイムに3次元映像を確認できる。

【写真23】近赤外タイプのギガビットイーサネットカメラ「F145GV」を利用して、箱の中身を写し出すデモを実演していた日立国際電気【写真24】レッドバロージャパンの3次元カメラシステム。2つのカメラの光軸調整がラクに行なえる構造になっている【写真25】左右両方とも解像度を落とさずに鮮明な立体映像が得られるフルHD対応の3次元ディスプレイ「True3Di」

 被写体の瞬間を捉える高速カメラも数多く見受けられた。光電子倍増管などで有名な浜松ホトニクスは、毎秒10mで動く被写体を照明なしでも撮影できるシステムを展示【写真26】。これは高速電子シャッター内蔵のICCDカメラ「C10054シリーズ」を利用したもの。紫外域から近赤外域(波長185nm~1μm)までに対応し、光増幅機能によって通常のCCDカメラやCMOSカメラでは捕捉できない微弱な現象も捉えられるほか、最小5ns(10億分の5秒)という高速シャッター機能があり、まさに「決定的瞬間」の撮影も可能だ。光ファイバーの光パルス伝播や、小型燃焼室内の火炎の観察など特殊用途にも対応できる。

 ハイスピードエリアスキャンカメラ「CASBeeXYCM13」【写真27】による動画展示を行なっていたのは日本エレクトロセンサリデバイスだ。1,280×1,024ドットの画像を320コマ/秒で取り込める。最大4つの領域を指定し、映像データの部分的な切り出しも可能。必要な領域をVGA画像にすれば、さらに高速な毎秒1,200フレーム以上の読み出しにも対応する。目には見えない高速現象のスローダウン観察に活用できる。

【写真26】毎秒10mで動く被写体を照明なしで捉える浜松ホトニクスの高速撮影システム。最小5nsの高速電子シャッター機能を内蔵したICCDカメラを利用【写真27】日本エレクトロセンサリデバイスのハイスピードエリアスキャンカメラで撮影した映像。1,280×1,024ドット、320コマ/秒で取り込め、映像データの部分的な切り出しも可能だ

 ナックイメージテクノロジーも各種ハイスピードカメラを展示していた。中でも最高1億コマ/秒、8フレームの撮影が可能な超高速デジタルフレーミングカメラ「ULTRA8」が目を引いた【写真28】。材料破壊や燃焼、放電、衝撃波といった現象を捉える特殊用途に対応するという。ディテクトも290万画素の高精細なハイスピードモノクロカメラ「HAS-D3」などを出展【写真29】。こちらはQVGAで1万コマ/秒、VGAで3,300コマ/秒、SVGAで2,500コマ/秒で取り込め、内蔵メモリに2秒間の現象を録画。あまり照明を当てられないような被写体でもきれいに撮影できる。

 特殊用途がらみでは、FA用の特殊モニターもユニークであった。屋外などで活躍するロボットにモニターを搭載するには、防塵・防滴仕様の製品が求められる。東映通信工業の8.4型タッチパネル付き防水モニター「WPC-V8RD48」【動画18】は、防塵・防滴規格IP68に準拠したFA仕様で、水深1.2mで3時間ほど完全に水に浸しても正常に動作する。

【写真28】ナックイメージテクノロジーの超高速デジタルフレーミングカメラ「ULTRA8」は、最高1億コマ/秒、8フレームの撮影が可能。材料破壊や燃焼、放電、衝撃波といった現象を捉える【写真29】ディテクトの高精細ハイスピードモノクロカメラ「HAS-D3」。QVGAで1万コマ/秒で取り込め、内蔵メモリに2秒間の現象を録画できる【動画18】東映通信工業の8.4型タッチパネル付き防水モニター「WPC-V8RD48」。水にどっぷり長時間浸しても正常に動作する。防塵・防滴規格IP68に準拠したFA仕様

 サイバーな雰囲気を醸し出していた製品として面白かったのは、人がどこを見ているかを解析する視線追尾システムだ。熟練作業者の視点の動きを解析し、作業効率の改善に役立てることもできるという。ディテクトは、小さなヘッドマウント型の「View Tracker」を展示【写真30】。専用コントローラーにケーブルを接続し、簡単なキャリブレーションを行なうだけで手軽に利用できるシステムで、視線計測時のストレスも軽減している。視線の軌跡を描画したり、対象物への注視頻度や注視時間によって、画面を色分けできる。

 またナックイメージテクノロジーも同様に視線・眼球運動計測装置「アイマークレコーダ EMR-9」を出展していた【写真31】。こちらも小型・軽量タイプで、ヘッドユニットに帽子型とグラス型を用意。専用ソフトで、目の軌跡、停留点、輻輳(ふくそう)、注視、瞳孔反応、瞬目などを解析できる。完全非接触型でヘッドユニットを装着せずに眼球運動を計測できるタイプも紹介していた。

【写真30】ディテクトのブースで紹介されていた視線追尾システム「View Tracker」。簡単なキャリブレーションを行なうだけで手軽に利用できる【写真31】ナックイメージテクノロジーの視線・眼球運動計測装置「アイマークレコーダ EMR-9」。専用ソフトで、目の軌跡、停留点、輻輳、注視、瞳孔反応、瞬目などを解析できる

 そのほか、ロボットとは直接関係はないが、展示会場の一画につくられた「ホログラフィー&3Dゾーン」もユニークであった【写真32】。ホログラフィーの歴史、原理から、多摩美術大学、東海大学、東京工業大学、日本大学などを中心に面白い作品が展示されていた。ホログラフィ映画「少年のORGEL」(檜山研究チーム・石川光学造形共同制作)【写真33】、「秘密」(落合亜矢子作品、レインボーホログラム)【写真34】、「ゆうれい」(赤坂長義作品)【動画19】など、ナノ技術の微細な銀塩世界が織り成す不思議な光の世界が印象的だった。

【写真32】ホログラフィーの歴史、原理から、大学の研究成果や個人作品が展示されていた「ホログラフィー&3Dゾーン」も印象的だった【写真33】ホログラフィ映画「少年のORGEL」(檜山研究チーム・石川光学造形共同制作)。スイッチを押して、小窓からのぞくと、ホログラフィー映画が鑑賞できる
【写真34】カーテンの隙間から片目でのぞく人物が現れる「秘密」(落合亜矢子作品、レインボーホログラム)【動画19】回転しながら人物が幽霊に変化していく。けっこう恐い。「ゆうれい」(赤坂長義作品)


(井上猛雄)

2009/6/25 16:30