ロボットビジネス推進協議会、ロボ検を開始

~メカトロニクス・ロボット技術者の人材育成指標確立を目指す


 4月21日、ロボットビジネス推進協議会は、メカトロニクス分野、ロボット分野の技術スキルを体系化した「メカトロニクス/ロボット検定(ロボ検)」を実施すると発表し、記者会見を開催した。

 「メカトロニクス/ロボット検定(ロボ検)」は、ロボットテクノロジー(RT)関連の技術領域・知識領域を横断的に評価する指標となる検定を目指したもの。主な対象者は大学生、高等専門学校生、企業若手エンジニア・研究者で、この検定により、教育現場および採用現場での分かりやすく適切なスキル評価指標を確立することを目指すという。

 年間2回(6月と11月)実施する予定で、第一回となる2009年度第一回本試験は、個人会場受験は6月20日(土)に大手町野村ビル17Fにて、学校や企業での団体受験は6月15日(月)~26日(金)で行なう。検定方式は選択問題マークシート解等で、出題数は45~50題。解答時間は90分。7月下旬には領域別評価等のスコアレポートや正答率・偏差値、順位などが提供される。受験料は一般が8,800円、アカデミックプライス(学生)は4,900円。21日から電話・Webサイトで受付を開始している。

 「ロボ検」の問題冊子・解答シート作成、会場手配、受験者募集、システム開発、プロモーションなどの実施運営は株式会社ロボテストが行なう。またロボットビジネス推進協議会は、諮問・監査を行なうためのロボット技術検定管理委員会を協議会内に設ける予定だ。

出題範囲出題例。これ以上の問題の公開は行なわれなかった試験実施要領
ロボットビジネス推進協議会事務局長 飯倉督夫氏

 会見ではまずロボットビジネス推進協議会事務局長でロボット工業会専務理事の飯倉督夫氏が経緯を述べた。「ロボットビジネス推進協議会」は、経済産業省の肝いりで平成18年末にロボット関連会社80社余りと学会・官公庁関係者によって設立された任意団体。ロボット技術をビジネス化し、新産業を興すことが目的だ。そしてロボットを使うビジネスをするときに必要な人材を育成すること、人材の励みとすることが、「ロボ検」の目的だという。今年の3月に「ロボットビジネス推進協議会」で行なわれた総会で、検定をやろうということが議論された。それ以前に株式会社ロボテストは既に事業として検定を実施しようとしていたが、それを取り込む形でいこう、となったのだという。

ロボットビジネス推進協議会の立ち上げ経緯評価指標確立が「ロボ検」の目的

 続けて、株式会社FRI代表取締役で富士重工業株式会社相談役の竹中恭二氏は、3年間つとめた「ロボットビジネス推進協議会」の会長時代に考えていたこととして、「ロボットには広範囲の技術・知識が必要であり、それをものづくりのなかで縦横に駆使できる人材があってはじめて社会に役立つロボットができる。根底には人材育成が非常に重要だと感じていた」と述べた。日本は少子高齢化社会に向かっている。それに対するロボットへの期待は高い。また日本のものづくりは高度な付加価値が求められている。製造業だけではなくあらゆる産業のなかで日本の国際競争力を持続し発展させていくポイントが人材育成だという。

 昨年立ち上がった経済産業省の「ロボット産業政策研究会」でも議論には、サービスプロバイダーや政策立案関係者など広範囲の人材が関わっている。提案のなかでは骨子が4つあり、そのうちの1つが、「体系化された産業人材育成」となっている。単なる先端技術開発だけではなく、マーケット側、現場から見た人材育成、実際にどのように使っていくか環境や構造のシステム化、安全性などを見ることができる人材が重要だとされている。「ロボ検」はこの人材育成の一環として位置づけられる。竹中氏は「これまでの工学は縦割りだった。だがロボットにおいては広い範囲の知識が要求される『横の体系づくり』が重要だと考えられる」と強調した。「ロボ検」を受けることで自己評価ができ、何を勉強するべきかが分かり、さらにモチベーションを高めていくことができるという。

 最後に状況を俯瞰した。ロボットは多くの子供たちを惹き付けることができるが、現実を見ると工場内でしか実用化されておらず、サービスロボット市場は未熟な状態にある。ロボットの要素技術を既存の製品やサービスに積極的に組み入れていくことで、新たな付加価値・サービスを生み出す、それが国際競争力を高めることに繋がるし、喫緊の課題でもあると述べた。たとえば富士重工業の製品でいえば、「EyeSight」のようなビジョン技術の車への導入を、もっと積極的にやっていくべきではないかと語った。将来はロボ検を技術だけではなく、社会システムに関わるようなところにも拡大させていくことが自分の夢だと述べた。

株式会社FRI代表取締役 竹中恭二氏体系化された産業人材育成を目指す
株式会社ロボテスト代表取締役社長 谷口恒氏

 「ロボ検」を実施運営する株式会社ロボテスト代表取締役社長で、株式会社ゼットエムピーの社長でもある谷口恒氏は、経済産業省の「ロボット産業政策研究会」の報告書からロボットの定義を引いて紹介し、実務面を解説した。ロボ検は、アクチュエーション、システム、センシングに分類された技術領域と、数学、力学・物理学・化学、エレクトロニクス、メカニズム、ソフトウェアに分類された知識領域とをマトリックスにして体系化し、そこから出題される。自分の知識や力量が不足している領域を客観視でき、全国平均が出ることによって、どの程度の力なのかも知ることができるという。

 これまでにα版、β版を12大学、延べ17回、458名に実施し、難易度の調整などを行なってきた。β版では全体正答率は43%だった。β版の問題集を見ることができたが、かなりの分量があり、一題あたり2分以内に解くことが要求される。ただし問題の難易度はさまざまで、基本的に5択であった。主として大学3年生や高専生を対象にしているようだが、企業の研修や、内定を受けた学生に事前にこのロボ検を受けさせることで適正を計るといったことも今後考えられるという。

 年間受験者想定数は5千人~1万人を目標とする。同社によれば工学部を出て機械・電機の専門職についている人数は年間3万人弱。社会人1年~3年の若手エンジニアは10万人くらいと見込まれている。そのうち数パーセント程度の需要を見込んでいるという。

 なお最近、「検定」と聞くと財団法人日本漢字能力検定協会による一連の漢字検定問題を連想するが、このロボ検は規模そのものも大きく異なり、また株式会社が運営することから同様の問題は起きないとした。ロボテストとしては、検定受験者が増えることでロボット教育の市場が増大し、講習会などの需要が起き、自社だけではなくロボット教育全体のマーケットが広がることを希望していると述べた。

スコアレポートα版、β版の実施状況


(森山和道)

2009/4/21 21:13