ヴイストン「Beauto Chaser」で学ぶプログラミング入門講座

【第5回】タミヤのボクシングファイターでライントレース!

Reported by imokenpi

 皆様はじめまして。今回から大阪工業大学ものづくりセンター(MONOLAB.)の近藤に代わり連載を担当いたします、大阪工業大学電子工学研究部のimokenpiと申します。

 近藤とはMONOLAB.に電子工学研究部の部員としてあいさつ回りに行ったところ目をつけられ、今ではまるで弟子のような感じで何かとお世話になっております。今回私が近藤と親しかった事と、Beauto Chaserに興味があった事から、このような場で記事を書く機会をいただきました。つたない文章ではありますが、学生兼マイコンプログラミング初心者の立場からBeauto Chaserの使い勝手をお伝えできればと思っております。どうぞよろしくお願いします。

 少し話は変わりますが、3月28日(土)と29日(日)にヴイストン社旧社屋において実施されたロボット競技会「第5回ロボプロステーションチャレンジカップ」のお話をしたいと思います。この大会は普段は二足歩行ロボットの競技会を行なっているのですが、今回初めての試みとしてBeautoで使用しているマイコンボードを使ってライントレースを行なう「Beautoロボコン」が29日に開催されました。

 実は私も参加してきたのですが、実際の競技では私は完走できず残念な結果に終わってしまいました。大学関係者として私の他に近藤を含め参加した2名は無事完走したので余計に残念です。しかし、参加者の方々こだわりの機体を見せてもらったり、二足歩行ロボットの試合を見ることができ、楽しい時間を過ごせました。Beautoロボコンの内容はロボットWatchの以下の記事で触れられていますので、まだの方はぜひ見ていただきたいと思います。

「第5回ロボプロステーションチャレンジカップ」レポート【後編】
http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/04/10/1713.html

 さて、それでは本題に戻りましょう。

 連載第5回の今回はBeauto Chaserの標準シャーシ以外のものを制御しようという趣旨で、タミヤから発売されている電子工作キット「ボクシングファイター」にBeauto ChaserのCPUボード「VS-WRC003」を載せ、ライントレースができるように改造していきます。ボクシングファイターは1つ入り(本体は青色)と2つ入り(黄色と赤色のセット)の商品があり、今回の製作では後者の赤色を使って製作しました。どちらでも制作方法は一緒です。

ボクシングファイターのパッケージボクシングファイター対戦セットのパッケージ

 ボクシングファイターについて詳しくは以下のタミヤ公式サイトに書かれています。

株式会社タミヤによるボクシングファイターの解説
http://www.tamiya.com/japan/products/71110boxing/index.htm

 ボクシングファイターは上記サイトに書かれているように、高速でパンチを繰り出すリモコン操作のロボットを工作するキットです。モーターを左右に1個ずつ、合計2個搭載しており、今回の記事ではこのモーターをリモコンボックスではなく、VS-WRC003で制御していきます。

 前回のようにBeauto Chaserのシャーシを元にしてもライントレーサーの機能としてはまったく問題ない、というよりそちらの方が実用的のですが、可愛さが足りません。そう、可愛さです! 21世紀の今、ロボットは機能だけで生き残ることはできません。ライントレーサーも同様です。ここでボクシングファイターの出番になります。この妙にずんぐりむっくりとしたボクサーが一生懸命ライントレースをしている姿は感動的ですらあります。この感動を皆さんにも味わっていただきたい。さあ、皆さんも今すぐボクシングファイターを買いに走ってVS-WRC003を載せましょう(笑)!

 なんだかおかしなテンションになってしまいましたが、一見、ライントレーサーには見えないボクシングファイターが遅いながらもライントレースする姿は見ていておもしろいです。

ヴイストン製作の「GEN」

 さて、ボクシングファイターにVS-WRC003を載せたマシンですが、先ほど書きましたBeautoロボコンにGENという機体名で出場しております。

 実はGENはヴイストンが直々に製作し、Beautoロボコンに送り込んだマシンです。Beauto Chaserと同じボードとは思えないような愉快な動きをするGENはBeautoロボコンでも大人気でした。チャレンジカップに参加された方で、自分でも作ってみたいと思った方も多いのではないでしょうか。なお、今回ヴイストン様には製作資料を提供していただいたきました。この場を借りてお礼申し上げます。

組み立ててみよう

 ここからは実際にボクシングファイターにVS-WRC003を組み込んでいきたいと思います。それでは実際に製作していきましょう。

【注意】ここではボクシングファイターを改造する方法を紹介しています。この記事を参考に製作を行なった結果、いかなる問題が生じたとしても筆者、あるいはメーカーは責任を負うことはできません。実際に製作を行なう場合、自己責任でお願いします。

初めに今回使用する工具を紹介します。写真左上から時計回りに仮止め用テープ、カッター、ドライバ、ハンマー、ポンチ、電動ドリル、(ハンドドリルなどでも可)、直径2.5mmと1.5mmのドリル刃、やすり、リューター(やすりで代用可)、ニッパー、油性ペンですまずボクシングファイターの顔の下(あごでしょうか……)のラインに合わせてVS-WRC003をテープで仮止めしますVS-WRC003の四方の取り付け穴の場所を油性マーカーでマーキングします
黒いマークに直接ドリルを押し付けてもドリルが横滑りして危ないので、ポンチで窪みを作っておきましょうポンチで開けた窪みに合わせて直径2.5mmの穴を開けます。ハンドドリルなどで簡単にあけることができます。写真では撮影のため省いていますが、実際の穴あけでは片手でパーツをしっかり支えましょうVS-WRC003を穴に合わせてBeauto Chaser付属の“ネジB”を4本使って固定します
次に赤外線センサーを取り付けるために、前足先の突起を削りましょう。突起をニッパーで切り落とします切り落とした後はカッターや、板やすりでなめらかにしておきます同様に電池ボックスを取り付けるため、背中のパーツについている突起を切り落とし、カッター等でなめらかにします
VS-WRC003の取り付けと同様に背中のパーツと電池ボックスを合わせ、テープで仮止めし、油性マーカーで印を付けます。ポンチでへこませた後、ドリルで直径1.5mmの穴を開け、Beauto Chaserに電池ボックスを固定していたネジ2本を使って固定します改造によってネジとギアボックスが干渉する箇所が出てくるので、ギアボックスの干渉部分を削っていきます。ギアボックスに“B”と書かれた部分の横と、ギアボックス中程の出っ張り部分を写真を参考に削ります。板やすりで削ることもできますが、細かい作業なのでリューターがあれば便利です削る部分を違う向きから示します。わかりにくいですが後ほど修正できるので、ある程度削ったら次に行きましょう
ギアボックスにBeauto Chaser付属のモータをとりつけ、ボクシングファイターの説明書に沿って胴体を組み立てましょう前足と本体との間にBeauto Chaserの赤外線センサーを取り付けます。赤外線センサーの感度をよくするために、写真を参考にして赤外線センサーにEと書かれた側がSと書かれた側よりも下になるように斜めに取り付けてください取り付けはボクシングファイターに付属のネジ“3×15mmタッピングビス”を使用してください。左右に赤外線センサーを取り付けたら次にいきましょう
ギアボックスを説明書に従ってボディーに取り付けます。先ほどギアボックスを削った部分が写真のようにVS-WRC003と赤外線センサーを取り付けた部分に干渉していないか確認してください。もし干渉しているようであればもう一度削り直しましょう組み立ても最終局面です。ボクシングファイターの説明書に従い、腕など残りの部品を取り付けた後、モーター、センサー、電源ボックスのケーブルコネクタをVS-WRC003に取り付けていきます。取り付け方ですが、ボクシングファイター後ろから見て(写真では前を向いています)、右側のモーターをVS-WRC003のCN1に、左側をCN2、同じく右側のセンサーをCN4、左側をCN5、最後に電源ボックスのコネクタをCN3につなげてください赤外線センサーのケーブルをまとめましょう。今回は写真のケーブルタイを使ってみました。ケーブルタイは写真上のようにケーブルをまとめることができます
ケーブルタイを使いケーブルを取り回し、胴体の前でまとめます。センサー以外のケーブルも、可動部分と干渉しないように必要であればテープなどで固定してください

 これで作業は終了です。お疲れ様でした。

制作上のワンポイント

ボクシングファイターは脚部の白いスポンジで歩行していますが、標準状態だと地面との接地面積が狭く、なかなか前に進んでくれません。今回ボクシングファイターの足先に取り付ける4つの白いパーツを取り外し、スポンジが地面に触れる面積を増やしています。こうすることで前に進みやすくなりますこちらが白いパーツを取り外した写真になります。センサーがマシンを支えるような形になっていますが、強度面でそれほど問題にはならないと思います完成したボクシングファイター・ライントレーサー

実際に走らせて見ました。

 長々と作ってきましたが、ボクシングファイターをライントレーサー化することができました。せっかくなので動いている様子をお見せしたいと思います。今回床に黒いビニールテープを貼り、ライントレースのコースとしました。実際にライントレースを行なっているのが以下の動画になります。

【動画】実際にライントレースを行なっている様子ライントレーサーのプログラムがこちらです。とりあえず走ればいいという物なのであまり参考にはなりません。連載第4回を参考に皆さん自身で作ることをお勧めします【おまけ動画】2台ボクシングファイターがあればこんなことも……(モータードライバが焼ける恐れがあるのでまねしないでください)

 速度は遅いですが実際にライントレースを行なうことができました。

 今回はボクシングファイターを制御しましたが、FA-130モーターを2つ搭載した物であれば、今回の記事を応用することで制御できると思います。皆さんもぜひ挑戦してみてください。

次回予告

 Beauto Chaserには赤外線センサーが標準で付属しますが、私たちの身の回りには赤外線センサーの他にも多くの種類のセンサーが使われています。

 次回はそのようなセンサーの中からいくつかを選び、VS-WRC003に接続する方法を解説していきます。それではまた次回お会いしましょう。



2009/4/22 15:45