ジェームズ・キャメロン監督の新作大型SFアクション映画「アバター」、まもなく公開

~マスター・スレーブ方式を採用した軍用パワードスーツ「AMPスーツ」が活躍


サム・ワーシントン演じる主人公ジェイクと、水槽の中で育成(調整)中のアバターボディ

 ジェームズ・キャメロン監督が、1997年の「タイタニック」以来の新作としてメガホンを取った超大型SF映画「アバター」(配給:20世紀フォックス映画)。この23日から日本でもTOHOシネマズ日劇ほか全国超拡大ロードショーとなる。上映時間は2時間42分。同作品の中に、AMPスーツと呼ばれる軍用パワードスーツが登場するので、ストーリーとそれについて紹介したい。

22世紀地球から約5光年離れた恒星系にある衛星パンドラで物語は展開

 ストーリーは、植物学者が研究するような植物が残っていないというほど地球環境が荒廃した22世紀が舞台。戦争で負傷して下半身麻痺で車いすの生活を余儀なくされていた元海兵隊員のジェイク・サリー(演:サム・ワーシントン)が主人公だ。情熱はあるのに身体がついてこないという状況にやさぐれいていた彼に、突如「アバター・プロジェクト」への参加のオファーが届く。彼には一卵性双生児の兄がおり、そのプロジェクトに参加していたのだが、不慮の事故で死亡してしまったため、同じDNAを持つジェイクにスポットライトが当たったというわけだ。

 アバター・プロジェクトとは、地球から約5光年の距離にある他星系のとある巨大惑星の衛星「パンドラ」で進められている、資源開発企業「RDA」が進めている巨大な計画である。パンドラは大気を持ち、衛星全土がジャングルに覆われ、動物も数多く存在する豊かな生態系を持つ世界だ(サイズ的には地球に匹敵するのではないだろうか)。ただし、その大気は人類が直接呼吸すると20秒で意識を失い、4分で死亡するという有毒性を持つ。そのため、人類は酸素マスクなしには活動できない世界でもあった。

パンドラの衛星軌道には宇宙基地が建設され、恒星間の宇宙線から乗り換えてシャトルで惑星に降下する降下シャトルのセットの中、出演者に説明するキャメロン監督
降下シャトルからパンドラの地表に降りるシーンについて、ジェイク役のワーシントンと話すキャメロン監督ネイティリの大河の上を飛ぶ地球製のヘリ。鳥類などの飛行生物も多く棲息している

 棲息する動植物は地球のものと比較して全般的に体格が大きいのが特徴で、原住するヒューマノイド型の知的生命体「ナヴィ」も、平均して3mもの身長を持つ。ただし、尾があって肌の色も青いものの、収れん進化の法則が働いたのか、外見的には人と大きくは変わらない姿をしている(ただし骨格は炭素繊維をまとっているし、劇中で見る限り反射神経も人間以上と思われ、内部構造的にはかなり人類と異なる部分もある模様)。性別も男女の2性のみだ。文化的には、地球でもジャングルの奥地などの未開地で見られるような、自然崇拝の宗教観を中心とし、エコロジカルな生き方をしており、また男女関係なくハンター(戦士)が尊ばれるような雰囲気となっている。

 アバター・プロジェクトとは、地球には存在しない、常温での超伝導性を有する特殊な鉱物資源「アンオブタニウム」の採取に関するものだ(何もせずとも常温でマイスナー効果が働き、物質を空中に浮かせられる)。1kg当たり2,000万ドルもの価値があり、巨額の利益を上げようとRDAは目論んでいる。ただし問題なのが、最大の鉱床が、ナヴィたちの一部族が居住空間として利用している高さ約300mにもおよぶ「ホームツリー」の真下にあるということ。収益を上げることのみを考え、ナヴィたちのことを未開の異星人と見下しているロクでもないRDAの現場責任者のパーカー・セルブリッジ(演:ジョヴァンニ・リビシ)らは立ち退きを要求しているのだが、もちろんナヴィたちは一部を除く地球人たちのことを嫌悪しており、話なんかまったく聞かない。そのため、RDAが警備として同行させた軍はシビレを切らし始めており、ジェイクがパンドラに到着した時点で強硬手段に出たがっているという状況だ。

ルネ・マグリットのシュールレアリズム画のような空中巨岩。アンオブタニウム効果で浮いている空中巨岩の前を飛ぶ生物は、ナヴィのハンターが足として使う翼竜のバンシー

 ナヴィとのコミュニケーションに利用するため、科学者チームが開発したのが、人類とナヴィのDNAを掛け合わせた、ナヴィの外見を持つ「アバター」と呼ばれるボディ。リンクシステムを使用することで、利用者の意識をアバターに転送させることが可能で、ナヴィとして活動できるというわけだ。科学者チームはアバターを使ってナヴィたちとコミュニケーションを取っており、平和的に情報交換をしたり、お互いに英語やナヴィ語の学習をしたりしていた。そのアバターボディの製造には費用と時間が非常にかかり、またDNAを提供した人間しかリンクできないという短所がある。そのため、ジェイクの兄のボディが無駄になってしまうところだったのだが、一卵性双生児のジェイクならリンクが可能なことから、このプロジェクトへの参加要請がなされたというわけだ。

ジェイクが初めてリンクするシーン。彼の意識がアバターボディに移り、いよいよ起きあがるアバターボディの顔は、本人のイメージが残る形でデザインされたという(映画ポスターより)

 5年9カ月22日の冷凍睡眠を経てパンドラに到着したジェイクは、パンドラで10年もの研究を続けている女性植物科学者グレース・オーガスティン博士(演:シガーニー・ウィーバー)率いるチームに配属され、リンクシステムを通じてパンドラの世界で冒険を繰り広げることになる。一方で、軍の司令官であるマイルズ・クオリッチ大佐(演:スティーヴン・ラング)に、成功報酬として新しい下半身を与えてやるからと軍側にも情報をよこすよう要請され、当初、ジェイクはそれを実践していく。

オーガスティン博士(右)とRDAのロクでもない現場責任者のセルブリッジホームツリーの3D映像の前で軍人たちに情報提供をするジェイク。ツリーの右にいるのがクォリッチ大佐科学者チームはジェイクを軍の犬と知りつつもナヴィとの交流に必要な人材として受け入れ続ける
初めてアバターボディでパンドラの探検に出たジェイク。この後、さんざんな目に遭うが……軍人だが科学者チームの一員で、移動時の戦闘ヘリを操るトルーディ・チャコン(演:ミシェル・ロドリゲス)

 侵略者の一員でしかなかった彼の心が変化するきっかけとなったのは、ホームツリーに住む一族の長の娘ネイティリ(演:ゾーイ・サルダナ)との出会いだ。トラブルで科学者チームからはぐれてしまい、ひとりでパンドラの夜をさまよっていたところ、彼女に命を助けられたのだ。そして彼を後押しするような運も重なり、彼は一族に「見習い」として認められ、渋々ながらのネイティリにハンターとしての特訓を受けていくことになる。そして、徐々にナヴィの生活や文化、何よりもネイティリに対して魅力を感じていくのだった。しかし、RDAがいよいよ強硬手段に出ることになり、ジェイクは地球人としての立場を取るのか、それともナヴィとしての立場を取るのか究極の選択に迫られる時が来る。ナヴィとしての生活に魅力を感じるが、リンクシステムがなければナヴィにはなれないジェイク。はたして彼はどの道を選ぶのか……!? というわけで、後は映画館で直接ご覧いただきたい。

ネイティリ。ジェイクと彼女は心を通わせていくが……遂に実力行使に出る地球人。航空機の大編隊が飛び立つ可動型ツインローター式の戦闘ヘリ。トルーディの機体も同型で、冗談で彼女は「パンドラ航空」と呼ぶ
戦闘ヘリは両脇が開け放たれており、固定式のマシンガンで掃射できるようになっている【動画】TV30秒スポットCM映像【動画】90秒TVCM3部作パート1「Recruitment(旅立ち)編」
【動画】90秒TVCM3部作パート2「Discovery(発見)編」【動画】90秒TVCM3部作パート3「Destiny(運命)編」【動画】トレーラー映像

マスター・スレーブ方式を取り入れた軍用パワードスーツのAMPスーツ

 それではお待ちかね、アバター・ワールドの地球製軍用パワードスーツのAMP(アンプ)スーツについて。身長は16フィート(5m弱)。動画中に映る設定画には13フィート(4m弱)とあるが、ナヴィとは2mぐらいの身長差がある感じから、16フィートで正解なのではないかと思われる。パワー的にもナヴィと1対1ならAMPスーツの方が上だ。

【動画】地球製のメカについてのスタッフによる解説。AMPスーツについては最後に語られる【動画】こちらもスタッフやキャストが映画について語る動画。AMPスーツのシーンもあり

 操縦に関しては、腕部はマスター・スレーブ方式を採用しており、操縦者の腕力を増幅(アンプリファイ=AMP)する機構だ。手にグローブをはめるよう装置を装着するので、指の操作も行なえる模様。ハプティック(力覚フィードバック)機構も備えているので、AMPスーツが構えるマシンガンや射撃時の反動、パンチをした際の感覚なども操縦者に伝わるようだ。

 一方、脚部の操作については劇中では描かれておらず、また解説用動画でも特に触れられていないため、詳細は不明。ただし、おそらくは乗り込んで手とは異なって装着している様子がほとんどないので、ペダルではないかと思われる。しかし、AMPスーツがジャンプするシーンなどもあるので、もしかしたら脚部もマスター・スレーブ方式で操縦者の足の動きを伝えられるようになっているのかも知れない。

 視界に関しては、HUD(ヘッドアップディスプレイ)などは備えられているが、基本はキャノピー越しの有視界方式を採用している。そのため、AMPスーツの上半身は戦闘ヘリのコックピットが乗っかっているような感じだ。マスター・スレーブ方式なので腕を振り回すこともあるから、コックピット内は結構広く作られている。またAMPスーツは頭部がないのも特徴で、腕部はコックピット上部の左右に取り付けられている。おそらく、AMPスーツはナイフも標準装備として備えられているから、白兵戦も考慮した設計となっているのだろう。

 なお、基本的なデザインはキャメロン監督が行なったそうで、詳細なデザインを行なったのは、タイルーベン・エリンソン(戦闘機デザイン)氏だ。

 また同映画には、地球製の兵器が複数登場し、大型航空戦艦やそれよりは小型になるが指揮官機、戦闘ヘリ、シャトル、宇宙ステーション、宇宙船、AMPスーツが子どもに見えるほどの巨大な建機なども登場する。それらのメカニック立ちも非常にリアルにデザインされているので、要チェックだ。

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(デイビー日高)

2009/12/22 14:49