【iREX2009】ROBOLINK FORUM 2009 基調講演レポート

~トヨタ自動車副社長 内山田竹志氏が講演


トヨタ自動車代表取締役副社長、ロボットビジネス推進協議会会長 内山田竹志氏

 11月25日に開幕した「2009国際ロボット展」ではシンポジウムやワークショップなども多数開催されている。初日には日本貿易振興機構(ジェトロ)、ロボットビジネス推進協議会の主催で「ROBOLINK FORUM 2009 サービスロボットビジネスフォーラム ~サービスロボット事業展開の戦略と課題」が行なわれた。本誌ではその基調講演をレポートする。基調講演はトヨタ自動車代表取締役副社長 内山田竹志氏が「人と共生するパートナーロボット -夢と希望-」と題して、トヨタ自動車のロボットの開発、ならびにその安全や社会とのかかわりについて行なった。

 近年、地球環境問題や少子高齢化への対応は必須となり、企業を取り巻く環境は変化している。トヨタ自動車では研究開発、モノづくり、社会貢献、3つのサステナビリティを掲げて活動を行なっており、ロボットもその一環に位置づけられている。トヨタでは製造用ロボットから開発をはじめ、近年では人協調ロボットも一部活用されはじめている。さらに今は人と共生するパートナーロボットの開発が進められている。2005年の「愛・地球博」では、ifootそのほかが人気を博した。

トヨタの取り組みトヨタのこれまでのロボット愛・地球博でのトヨタロボット
かしこさとやさしさ

 パートナーロボットは人と空間を共有する。そのためには「かしこさ」と「やさしさ」が必要だ。適用分野は4つ。まずは製造ものづくり分野でのスキルや力のアシスト、厳しい環境の作業代替。2番目が介護・医療支援分野での患者支援、看護士・介護士の支援。パーソナル移動支援分野では人がいけるところはどこでもいけることを目指している。そして家事支援分野だ。トヨタ自動車ではこれらを実現するために、あらゆる場所を移動する技術、難しい作業を容易にする人と協調する技術、全身運動能力、把持から高い技能を再現することができる道具を使う能力の技術開発を行なっている。

 人協調技術では、難しい作業を容易にするアシスト技術の開発を行なっている。人の動作意図を予測し、位置、力を制御して人を助ける。現在、インパネ搭載のアシスト装置、ウインドシーラ塗布アシスト装置、ウインドはめ込みアシストなどが工場現場の組み立て工程で使われている。これらをさらに開発を続けて人装着型アシスト装置とすることで、歩行支援や移乗技術にまで広げていく予定だ。

 移動技術はあらゆる面を移動することを目指している。アウトドアの不整地や段差でも乗り越えられる技術の開発を行なっている。内山田氏は「スイングアーム」と同社が呼ぶリンク式独立アクティブサスペンションを使った「Mobiro」、屋外や屋内にシームレスに移動でき、持ち運びが可能な立ち乗り型モビリティ「Winglet」、自律移動技術適用例として病院内で活躍するロボットのリアルタイム経路生成による障害物回避デモのビデオ、トヨタ会館の案内ロボット「ロビーナ」などを示した。ロビーナには安全性を考慮してバンパーや腕の脱力機能などが装備されている。

 全身運動能力では走るだけでなく全身でバランスをとって人を抱きかかえるような動作の実現を目指している。トヨタの二足歩行技術は車の制御技術を応用したもので、空中に想定した仮想バネ、仮層ダンパーを使って制御を行なっている。これまでに時速7kmで走行する二足歩行ロボットのビデオが公開されている。また着地位置補正により、姿勢が変化しても安定して運動を続けることができる。人が押して姿勢を崩しても安定を保つことができる。

 道具を使う能力については、多指ハンドによる工具の操りや、指の細やかな協調作業ができることを目指している。トランペットロボットや、両手両腕だけでなくビブラートを表現するため指の細かい操作が必要になるバイオリン演奏ロボットはこの一環だ。講演では人サイズの5本指のハンドのビデオが公開された。今後は動作レベルを上げて介護作業などに応用していくという。

人と協調する技術要介護者支援リハビリロボット移動技術
全身運動能力道具を使う技術
産官学の連携

 最後に内山田氏はトヨタの事例紹介から離れて、ロボット産業の創出には産官学の連携が不可欠だと述べた。産官連携のなかで重要なものとして安全規格の策定がある。安全性確保に向けた制度の確立が大きな課題の一つだ。現在、NEDOは「生活支援ロボット実用化プロジェクト」を進めて安全適合性評価手法や安全基準の確立、標準化提案を目指している。ロボットビジネス推進協議会とも連携している。公的機関で検証手法の研究開発を行ない認証体制を確立させ、メーカーはその安全基準を導入したロボット開発を行なって、市場にロボットを供給する。ロボットビジネス推進協議会は多様な会員企業からの声を吸い上げて橋渡しを行なう。

 内山田氏はトヨタグループの共同研究開発体制についても解説し、実際の産学連携の例として「東京大学IRT研究機構」での家事支援ロボットの取り組みや、理研との共同研究である脳波による電動車椅子の研究について紹介した。産学だけではなく、産業界の連携も重要だ。多くのビジネスパートナーの参入を期待するという。

 トヨタでは4つの領域において、2008年から徐々に実証実験を行なっている。トヨタ記念病院での「Mobiro」を使った実証実験、Wingletを使った中部国際空港でのスタッフモニター運用を行ない、利用者の意見を反映させていく予定だという。内山田氏は最後に将来はロボット技術を使うことで、お年寄りでも気楽にパーソナルモビリティで移動したり、暮らしの世話役をロボットが行なうというビジョンを紹介した。「技術的には発展途上の部分が多く、トヨタだけで取り組める分野ではない。他社とも協力して、生活を支援するパートナーロボットを次世代の産業として発展させていきたい」と述べた。

トヨタの研究コラボレーション産学連携と産産連携の重要性を強調トヨタのロボット実用化予定
Mobiroの実用化トライ実験ロボットのいる暮らし

(森山和道)

2009/11/25 17:06