「東京国際航空宇宙産業展」が初開催

~宇宙関連の展示をピックアップ


「東京国際航空宇宙産業展2009」が11月4日、東京ビッグサイトにて開幕した。航空宇宙産業の振興を狙ったイベントで、今回が初開催。会期は6日までの3日間だ。どちらかというと航空機関連の展示の方が多いのだが、本レポートでは、ロケットや人工衛星など、宇宙開発に関するものをピックアップしてお伝えしたい。

今回が初開催の「東京国際航空宇宙産業展2009」。主催は東京都と東京ビッグサイト会場は東京ビッグサイトの東6ホールのみを使用。次回開催は2年後の予定フロア中央のカーペットには、実物大のH-IIBロケットが描かれている

大手の展示ブース

 こういった展示会イベントでは、マスコミや一般来場者にアピールする広報的な側面と、商談に結びつけるビジネス的な側面があるものだが、この展示会はほぼ後者のみ、といった印象。コンパニオンのお姉さんなどほとんど立っていないし、会期も金曜日までだ。

 プライムコントラクタ(主契約社)となるような大手企業の展示も、模型がどーんと置いてあるくらいの地味なもので、どちらかというと、「ウチにはこんな技術があります」という中小企業からの売り込みを受ける立場に専念している。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は展示を航空分野に絞っていた三菱重工業(MHI)のブース。MRJの模型も展示されている宇宙関連では、H-IIA/BロケットとHTVの模型が展示されていた
このパネルを見ても分かるように、現在のH-IIAのラインナップは202型と204型のみに整理されている。SSBを使う2022/2024型を使う予定はないIHIの展示は航空機用ターボエンジンの模型がメイン川崎重工業のブース。ヘリコプターや飛行機の模型を展示
九州航空宇宙開発推進協議会のブースには、三菱重工業長崎造船所が開発したスラスタが展示。金星探査機「あかつき」で使われるものだこのスラスタが面白いのは、ノズルの部分がセラミックでできていること。もちろん、簡単に壊れないようにはなっており、耐熱性も上がった

 主催者側は「日本の中小企業は高度な加工技術や独創的な開発力を持ちながら、営業・情報不足などにより、航空宇宙関連市場への参入が難しくなっているのが現状」とし、この展示会の目的を「大手企業と中小企業とのマッチングの機会を提供することで、優れた技術を持つ企業の業界参入を促進すること」と説明している。

中小・ベンチャー

 というわけで、会場の大半を占めているのは、部品加工メーカーなど中小企業のブースだ。一見、何の部品か良く分からないようなものも並んでいるが、なかなか外側から見る機会がないものだけに、結構興味深い。写真撮影がNGのものもあったのだが、許可をいただけたものをいくつか紹介したい。

東大発ベンチャーであるアクセルスペースは、ウェザーニューズから受注した超小型衛星の模型を展示。打上げは2011年の予定で、ロケットは検討中底面にミッション用のカメラを搭載。赤外線と可視光のカメラにより、北極海の海氷を観測する。またレーザー光を地表で受けて、温室効果ガスを観測することにも挑む同社はキューブサット用の分離機構も販売している。全体を覆わないシンプルな構造により、低価格化を実現した。すでに九州工業大学に納入した実績がある
新立川航空機のブースにあったのはこれ。SRB-Aの分離時に動作する導爆線を保護するためのカバーだとかこれもSRB-Aで使われているもので、ケーブルのハーネス用カバーらしい。高い精度が求められるが、ベテラン職人による手作業で溶接されている原田精機工業は、独自開発のローバーを出展。昨年、こちらの記事で紹介したときからは、太陽電池パネルが追加されている。今後はインターネットによる遠隔制御も試す予定
小野電機製作所のブースには、JAXAの探査ローバー(地上テスト用)で使われたクローラの車輪があった同社はソーラーセイル展開装置も開発した。こちらはパネル展示のみ加治金属工業は塗装技術をアピール。H-IIAロケットでの実績があるとか

学校関連の展示

 東京都立産業技術高等専門学校は、超小型衛星プロジェクト「CIT-1」を紹介していた。同校は、今年1月のH-IIAロケット15号機において、キューブサット「輝汐(KKS-1)」を打上げた経験があり、新しい衛星では50cmクラスへと大型化する。2013年の打上げを目指すそうだ。

1月に打上げられたキューブサット「輝汐(KKS-1)」。残念ながら地上からのコマンドを受け付けなくなり、ミッションは完遂できなかった「CIT-1」のイメージ。レーザー光で地上とのデータ通信を行なう予定。なかなかチャレンジングだ

 CIT-1では、ハイビジョンカメラを搭載し、レーザー光で地上にデータを送る計画。KKS-1の無線では1kbpsだったが、レーザーの光通信で100kbps程度を狙いたいそうだ。

 東海大学チャレンジセンター学生ロケットプロジェクトは、学生の手で開発を進めているハイブリッドロケットを展示。来年3月に、全長が2mになった新型ロケット「H-XL」を打上げるとのことで、ブースにはこの新型が置かれていた。

東海大学のハイブリッドロケット「H-XL」。機体はGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製筒の中身は空っぽ。本来は、ここにアビオニクス、酸化剤(亜酸化窒素)タンク、燃焼室などが入るエンジンも新型の1kN級を使用する。従来型からは推力が一挙に2倍になる

 これまでは、北海道・大樹町で打上げ実験を行なってきたが、3月は秋田県・能代市の海岸において、日本海に向けて発射する。同大学のロケットはすでに高度1.3kmに達する能力があり、これ以上になると、地上の安全区域の確保が難しくなるためだ。とりあえず最初は1.7km程度でテストするが、計算上は高度10kmも狙えるそうだ。

 そのほか、早稲田大学・長谷部研究室のブースには、JAXAの月周回衛星「かぐや(SELENE)」に搭載された「ガンマ線分光計」が展示されていた。月面の物質組成を調べることができるセンサーで、現在、データを解析中。

「かぐや(SELENE)」に搭載された「ガンマ線分光計」右手前のコンプレッサを使ってセンサーを機械冷却する

(大塚 実)

2009/11/6 16:55