その心に刻まれた、熱き魂をロボットに注ぎ込め!

~「サンライズヒーローロボットバトル」開幕


 2009年8月15日(土)、お盆まっただ中の福島県郡山市・ホテルハマツ特設会場にて、キャラクターロボット限定のバトルイベント「サンライズヒーローロボットバトル」が行なわれた。『機動戦士ガンダム』シリーズを中心に、『勇者特急マイトガイン』『蒼き流星レイズナー』『BRIGADOON まりんとメラン』といったアニメをモチーフとしたロボットが次々と登場。“実写版スパロボ”ともいえる戦いが繰り広げられた。

サンライズヒーローロボットバトルとは?

 今回開催された「サンライズヒーローロボットバトル(略称、S.H.R.B)」は、タイトルに冠された「株式会社サンライズ」が著作権を持つキャラクターロボットに似せたロボット“だけ”が参加できる格闘競技会だ。おそらく、これほどはっきりと「見た目」で制限を加えた大会は史上初めてだろう。

 企画したROBO-ONE委員会公認審査員でもある、株式会社サンライズ企画室室長、井上幸一氏は開催に先立ち「サンライズもロボットアニメを作り続けて、はや30年経ちました。この間にテレビ、ビデオなどで生まれてきたロボットを『自分たちも作りたい』という声が、参加者の方からありまして」と、イベントのきっかけを紹介。今回「ROBO-ONE GATE in 郡山」にあわせて、何か面白いことはできないかと考え、まずはやってみよう、と開催したのだという。

 優勝賞品には、30周年を迎えた一昨年にサンライズが関係者向けに作成した、全312作品を網羅する総作品史「サンライズクロニクル 1977~2007」が用意された。非売品ということで、この日の参加者にとってはまさに垂涎の逸品である。

株式会社サンライズ企画室室長、井上幸一氏優勝賞品として用意された、「サンライズクロニクル 1977~2007」会場外のロビーには特設のサンライズブースもあり
【動画】サンライズ井上氏の詳細な解説付き。試合のほうは「ヴェーク ガンダム」が途中で故障。「百式」の勝利となった。

 当日参加したロボットは全部で10機。まず最初に『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の主題歌「THE WINNER」をバックに「ヴェーク ガンダム」(ユウ・ヒロヒト)が入場。続いて、『機動戦士Zガンダム』の主題歌『水の星へ愛をこめて』とともに、「百式 by ナガレイエロー」(フラワー戦隊ナガレンジャー)が入場した。それぞれ思い入れがある、モチーフとした作品の曲を入場時に流してもらえるというのも、他のイベントではなかなかできない豪華な演出である。

 「ヴェーク ガンダム」は、ユウ・ヒロヒト氏が元々制作していた自作機にガンダムを模した頭部を組み込んだもの。「なんだ、乗せただけか」と思うなかれ。この頭部はすべてアルミの板金部品(もちろん自作)で構成されているのだ。顔つきそのものも、普通のガンダム(RX-78-2)よりもシャープで、ゼフィランサス(RX-78GP01)のほうに似ている、ような気がする。ボディも板金で自作されており、手間暇かかった機体だ。

 一方の「百式 by ナガレイエロー」は、既存の“ナガレイエロー”にペーパークラフトの「百式」をかぶせたもの。リング上で観客から見やすくするために、大きめの頭部を別に作ってくるという工夫も見せてくれた。もっとも、この百式のポイントは、機体以外のところだ。まずは武装として持ち込んだメガ・バズーカ・ランチャー。百式の外装はWeb上にある素材を改良したものということだが、メガ・バズーカ・ランチャーのほうは完全に自作なのだという。そして「コスプレ歓迎」という主催者側のアナウンスに応えて、機体制作者がクワトロ・バジーナ大尉のコスプレで登場。試合には使えないモノにノリノリで時間をかけて準備しているあたり、この日の趣旨を十二分に理解していたチームと言えるだろう。

『機動戦士Zガンダム』より、「百式」。画像提供:株式会社サンライズ
(C)創通・サンライズ
入魂の一作、メガ・バズーカ・ランチャーを撃つポーズもしっかり作り込んでいる。気合い十分のコスプレ。ただし操縦は部下にやらせていた、クワトロ・バジーナ大尉
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』より、ゼフィランサス(RX-78GP01)。画像提供:株式会社サンライズ
(C)創通・サンライズ
「ヴェーク ガンダム」。外装はすべて板金パーツ。丈夫だが、重量面では厳しいようだ。「ヴェーク ガンダム」の頭部。目はLEDで光らせている。
【動画】一年戦争時の主力兵器同士が対戦した「RGM-79 GM」対「MS-06F ザクII くまま専用機」

 次に対戦したのは、「RGM-79 GM」(吉田ファミリア)対「MS-06F ザクII くまま専用機」(kumama)。こちらはむしろ、ROBO-ONEで勝ち負けできる格闘用のロボットにサンライズロボットの外装を合わせたモノ。だが、どちらも『機動戦士ガンダム』の作中では量産機(つまりヤラレ役)を外見に選択するあたり、マニア心が見える気がする。

 「RGM-79 GM」は、吉田氏の持つ巨大な「ガーゴイル」をベースに、自作したGMの頭と外装を貼り付けている。色味などは遠目に見ると見事にGM(ジム)っぽいのだが、近くで実際に動きを見たとたん、その大きさと強力な攻撃が、作中での扱いと違いすぎるので、違和感が出てきたのは筆者だけだろうか?

 「MS-06F ザクII くまま専用機」は、ガンダムと同じくらい知られている有名なモビルスーツ、ザクがモデルだ。ベースはくまま氏の所有する「ウォルフラム」(他イベントでも活躍する「クロムキッド」や「ガルー」の兄弟機)だが、右肩にはシールド、左肩にはスパイク付きショルダーアーマーを装備。頭部やヒートホークを握った両手も含め、アルミの板金パーツでカバーされ、専用に作った機体のように見える仕上がりになっていた。2週間くらいで一気に製作したと話してくれたが、ペーパークラフトを参考にできた肩とふくらはぎ以外は苦労したという。

 この2機の戦いは、スタートから本気のROBO-ONEバトルが展開したが、ジオンの紋章が入ったミリタリー風シャツのザクIIパイロット・くまま氏に対し、連邦軍制服をきっちり着こなした吉田氏のほうが気合いがまさったか、3ノックダウンで勝利。くまま氏は「GMに負けると思わなかった。次は負けません」と悔しがっていた。

重さは3kg級だが、人間サイズの椅子にちょこんと座れるほどの大きさを持つ、「RGM-79 GM」パイロット、吉田氏は連邦軍の男子制服を着用『機動戦士ガンダム』より、「GM」。画像提供:株式会社サンライズ
(C)創通・サンライズ
「MS-06F ザクII くまま専用機」。06Fは一年戦争を通じて主力として活躍したいわゆる“ザク”である。本来ヒートホークは1挺だけだが、両腕に装備一部はペーパークラフトの展開図を参考にしたというが、胸パーツやスカートなどは制作したくぱぱ氏が設計。この部分だけアップで撮影しても、しっかりザク『機動戦士ガンダム』より、「ザクII」。画像提供:株式会社サンライズ
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【動画】「ナベダム」対「GUNDAM MK-II Ver.Mako」

 3戦目は「ナベダム」(ワタナベケ)対「GUNDAM MK-II Ver.Mako」(makoのガンダム)。作中ではあり得なかった、初代と二代目のガンダム同士による決戦である。

 「ナベダム」のほうは、KHR-1をベースに小改造した機体で、頭はおもちゃを流用。その他の外装はペーパークラフトで作られている。ビームサーベルを持っているので、ランドセルに残っているのは1本とか、胸部分の外装をめくるとパイロットがいたりとか、外装に細かいこだわりがあるのもさることながら、ガンダムっぽいモーションでビームサーベルを振ってくれるので、見ているだけでニヤニヤしてしまうそっくりさん具合である。

 「GUNDAM MK-II Ver.Mako」はバンダイから発売されているプラモデル「MG GUNDAM Mk-II」の中に二足歩行ロボットのメカニズムを組み込んでしまったという、強烈な機体。腰部分の張り出しが少し大きいが、その他の部分はサーボを分解してフレームとケースを一体化してしまうなど、他人には真似するのが難しい技術を満載している。現在大学生のmako氏だが、高校生の時点でプラモデルの中に二足歩行ロボットのメカニズムを組み込む挑戦を始めており、今回のMk-IIはその進化形といえる。

 バトルの方は、1kgもない軽い「GUNDAM MK-II Ver.Mako」が不利かと思われたが、意外と素早く動き回り、優しいレフェリーにも助けられて「ナベダム」の自爆リングアウトを誘って優勢勝ち。「ナベダム」の渡辺氏は「残念だったんですけど、新型と戦えて満足しています」と、笑顔で勝者をたたえた。

『機動戦士ガンダム』より、「ガンダム」。画像提供:株式会社サンライズ
(C)創通・サンライズ
ちゃんとパイロットのアムロが搭乗している。AパーツとBパーツは……さすがに分離しないコントローラーに付属していた“操縦マニュアル”。裏はちゃんとロボットのコマンドが一覧になっている
『機動戦士ガンダム』より、「GUNDAM MK-II」。画像提供:株式会社サンライズ
(C)創通・サンライズ
「GUNDAM MK-II Ver.Mako」を全体がわかるカットで整備中の「GUNDAM MK-II Ver.Mako」。胴体の空洞部分にはバッテリが収納される
【動画】「百式 by ナガレイエロー」対「勇人特急隊 ユウトガイン」

 ここから二回戦に移り、シードされていた機体が登場。まず、1回戦を勝った「百式 by ナガレイエロー」が、勇者シリーズをモチーフにした「勇人特急隊 ユウトガイン」と対戦した。

 非ガンダム系でこの日初めて戦いの舞台に上がった「ユウトガイン」(勇斗特急隊)は、「勇者特急 マイトガイン」をモチーフにした機体。中身はKHR-2HVで、オプションの旋回軸が追加されている。SHRBが開催されるはるか前から勇者ロボにこだわり、凝った外装を作り続けてきた勇斗特急隊のあるば~と氏が、腕によりをかけて制作したものだ。この日パイロットとして登場した息子・勇斗君の着用した旋風寺舞人のコスプレも含めて、情熱が惜しみなく注ぎ込まれた外装だけに、デフォルメの的確さと再現性は抜群。主に工作用紙でできているとは思えない完成度である。

 バトルの方では序盤の転倒で外装を巻き込んでしまい、その後は思うように動かない機体を四苦八苦しながら操縦する事態に。対する「百式 by ナガレイエロー」のほうも転倒が多く、お互いに有効打が少ない戦いになる。そんな中で乾坤一擲のパンチを決めた「百式 by ナガレイエロー」が優勢勝ちをおさめた。悔しい負けとなったが、敗者コメントを求められた勇斗特急隊は「また頑張ります!」と力強い言葉。実況から「それでこそ勇者だ!」と太鼓判が押されていた。

『勇者特急マイトガイン』より、「マイトガイン」。画像提供:株式会社サンライズ
(C)サンライズ
「勇人特急隊 ユウトガイン」全身。言われないと工作用紙で作られているなんて気づかないクオリティ
パイロットの勇斗君は旋風寺舞人となって登場。裏側を見ると、外装の素材である工作用紙の方眼が見える。ちなみに見えているのは2機分の外装で、この日ランブルの際には「ユウトカイザー」で出撃した
【動画】「RGM-79 GM」対「メラン・ブルー? in で・か~る」

 1回戦の量産機対決を制して勝ち上がった「RGM-79 GM」に対し、この日リングに初登場したのは「メラン・ブルー? in で・か~る」。WOWOWで放映された『BRIGADOON まりんとメラン』に登場する、主人公と心を通わせる生体兵器「メラン・ブルー」をイメージした機体である。

 元の作品が“知る人ぞ知る”ものだったが、解説のサンライズ井上氏は「特徴的な頭の部分がうまく表現されている」と、お墨付きを与えていた。あらためて見てみると、制作者の道楽、氏自身の愛機である「で・か~る」をベースとして、しっかりカスタマイズされているのがわかる。「メラン・ブルー」は右手が剣、左手が銃になっているため、左手にはしっかり銃を搭載。黒をベースにブルーが入るカラーリングもわかりやすい。ただ、右手の剣は「で・か~る」と同じ木べら。そのあたりがロボット名の「?」につながるのだろうか。

 バトルでは体を倒した姿勢でダッシュする奇妙な動きを見せ、会場の度肝を抜いた(注:ホンモノの「メラン・ブルー」はこんな動きはたぶんしません)「メラン・ブルー? in で・か~る」。「RGM-79 GM」の懐に入って投げを打ったりもしたのだが、なかなか決定打にならず、反対にスリップダウンから立ち上がったところを狙い撃ちされて2ダウンを奪われ、敗退した。道楽、氏は「当日会場で作ったばかりのモーションだったので、どう動かしていいかわからなかったのが敗因です」と、コメントしてくれた。

『BRIGADOON まりんとメラン』より、「メラン・ブルー」。画像提供:株式会社サンライズ
(C)サンライズ
「メラン・ブルー? in で・か~る」顔のアップ。左手の銃もよくわかる。右手の木べらは「で・か~る」の時と違い、“肉球”が外されている「メラン・ブルー? in で・か~る」全身カット
【動画】「GAT」対「SDレイズナー」

 2回戦最後のカードは、両機ともにこれが緒戦となる「GAT」(くぼ)対「SDレイズナー」(いしかわ)。

 「GAT」は言わずと知れた『機動戦士ガンダム』のモビルスーツ「RX-78-2 ガンダム」をモデルにしたもの。ビームサーベル二刀流で登場しているが、このサーベルはしっかり「GAT」自身の手で握っている。制作者兼パイロットのくぼ氏によると、SHRBのために制作された機体ではなく、もともとサッカーや格闘競技に出場している同名ロボットをベースに、友人の結婚式の余興のために作った機体なのだという。とはいえ、元になった「GAT」にガワをかぶせるだけではなく、体のバランスも変更している、こだわりのボディだ。

 一方の「SDレイズナー」は、『蒼き流星SPTレイズナー』の主人公・エイジの乗る「レイズナー」をデフォルメしたもの。片足3軸、1.7kgのコンパクトな機体だが、特徴的な頭部を筆頭にフォルムをきれいに再現。無線操縦に必要なアンテナも、オリジナル機体と同じ位置にうまくまとめるなど、工夫も盛り込まれている。関東練習会の会長として多くのビルダーに頼られている制作者のいしかわ氏が、ついに競技会に送り込んだ“自分のロボット”でもある。

 試合は「GAT」がお得意のサーベル乱舞でダウンを奪おうとするが、「SDレイズナー」のほうもぐっと耐える姿勢を見せ、懐に飛び込まれる。この間合いでは「GAT」も攻撃できない……と思ったが、サッカーもこなす「GAT」は蹴りをヒットさせて2ダウンを連取。「SDレイズナー」も捨て身の回転蹴りを見せたが、もともとの重量差・大きさの差を跳ね返すまでには至らず、そのまま終了。とはいえ、小さい体でぐっと耐える姿はいじらしく、解説の井上氏からは「お客さんの拍手で決まるなら、間違いなくSDレイズナー勝利ですね」というコメントも出ていた。まだまだできたてと言うことで、モーションの熟成はこれからというから、今後も楽しみである。

『機動戦士ガンダム』より、「ガンダム」。画像提供:株式会社サンライズ
(C)創通・サンライズ
頭はキャラクターグッズの扇風機を流用(可動する!)。ボディのほとんどはプラダン(プラスチック製の段ボール)だ。南国のTV画像を背景にしたのはわざとです
『蒼き流星SPTレイズナー』より、「レイズナー」。画像提供:株式会社サンライズ
(C)サンライズ
あまりに出来が良かったためか、出番を終えたSDレイズナーはサンライズブースで展示LEDで光る「目ヂカラ」を見せるSDレイズナー

準決勝から決勝は、禁断の対決オンパレード!

 準決勝第1試合は、「GUNDAM MK-II Ver.Mako」対「百式 by ナガレイエロー」。原作『機動戦士ガンダムZ』では同じエゥーゴに属する僚機である2機の対決である。パイロットの方もカミーユvsクワトロという、象徴的なカットになった。

 実際の戦いの方では重量差が大きかったせいもあったか、3-0で百式の圧勝。とはいえ、何度となく攻撃を避けたり、安定した起き上がりを見せるなど、その性能は「さすがガンダム」と言えるものだった。まだ「GUNDAM MK-II Ver.Mako」はブラッシュアップ中と言うことで、「普通はロボットに外装をつけるんですが、僕は外装の中にロボットを入れる主義なんです」という、まこ氏による完成型を見るのが楽しみである。

 準決勝第2試合は、禁断の“試作機 vs 量産機”「GAT」対「RGM-79 GM」。『機動戦士ガンダム』作中ではいわゆる“やられメカ”としての印象が強い「GM」と、その試作型とはいえ、エース機として一年戦争を通して墜ちることの無かった「ガンダム」の戦いである。これまでの戦いでは両機とも大型機として扱われていたが、ここはほぼ同じサイズだ。

 伝家の宝刀、ビームサーベルを振り回して襲いかかる「GAT」だったが、「RGM-79 GM」にはいっこうに効かず、逆にきれいに突きを喰らって2ダウンを奪われてしまう。ならばとレイズナーを墜とした蹴りを見舞うが、これも効果なし。最後は「RGM-79 GM」の突き押しにリングアウトさせられてしまった。試合後は「頭が重く、重心が高いので動いているだけでもうけもんなんです」というくぼ氏のコメントもあったが、ダウンするたびに上を向いてぐっと立ち上がるガンダムの目から涙が流れていたように見えたのは、幻だろうか。

 さて、もうこうなると禁断の対決だらけである。3位決定戦はガンダム同士による「GUNDAM MK-II Ver.Mako」対「GAT」という顔合わせとなった。「GUNDAM MK-II Ver.Mako」にしてみると、対「ナベダム」戦で一度勝利している「RX-78-2」が相手である。

 とはいえ、この日一番大きいロボットと一番小さなロボットの戦いだけに、「GUNDAM MK-II Ver.Mako」は逃げるのが精一杯。せめてKO負けは避けようと、最後は逃げに打って出るものの、一歩の広さが違う「GAT」から逃げ切ることはできず、ラスト数秒で3ダウン目を奪われて敗退した。

【動画】「GUNDAM MK-II Ver.Mako」対「百式 by ナガレイエロー」【動画】「GAT」対「RGM-79 GM」【動画】3位決定戦「GUNDAM MK-II Ver.Mako」対「GAT」

 決勝戦前に行なわれたランブルでは、最後に残ったのが、大きく、見るからに凶悪な二挺斧の「ザクII」と、対照的に参加ロボットの中でも小さな「SDレイズナー」、「GUNDAM MK-II Ver.Mako」の3機。その瞬間、「ザクII」のパイロットくまま氏が漏らした「えぇ~」という叫びは、どちらを倒しても悪役は免れられないという状況への戸惑いからか。

 そうこうしているうちに「GUNDAM MK-II Ver.Mako」が試合中にも発生した無線トラブルでコントロール不能となり、リングアウト。あとはレイズナー対ザクの一騎打ちとなった。

「大きさの対比もほぼこれくらいなんですよね」という解説・井上氏の言葉もあって、見ていると妄想がふくらんでくる戦いになる。最後まで2機が残れば、勝敗はお客さんの拍手によって決まると実況から宣言され、「それでは勝ち目がない」と踏んだ「ザクII」はラッシュをかける。「SDレイズナー」もよく耐えたが、最後はリングの縁で起き上がる際に墜落。「ザクII」がランブルを勝利した。

【動画】ランブル

 決勝戦は「百式 by ナガレイエロー」対「RGM-79 GM」。連戦の疲労がたまっているのか、歩いているだけで転倒してしまう場面もあった「百式 by ナガレイエロー」に比べ、「RGM-79 GM」は安定した動きを見せ、有利に試合を進める。攻撃のモーションが大きいため、「百式 by ナガレイエロー」のほうも動きを見切って避けていたが、最後は吸い込まれるように「RGM-79 GM」の間合いに入ってしまった「百式 by ナガレイエロー」へ、待ってましたとばかりに突きを決めた「RGM-79 GM」が3ダウン目を奪い、優勝を決めた。

【動画】決勝戦、「百式 by ナガレイエロー」対「RGM-79 GM」優勝「RGM-79 GM」

アニメ世代にはたまらないイベントなこと、間違いなし!

 何のアニメかは世代や好みによってさまざまだろうが、「ロボット好き」の根っこの土壌に、“ロボットアニメ成分”が含まれている人は少なくないだろう。また、せっかく二足歩行ロボットで遊ぶのだから、憧れていたロボットに似せて作って動かしたい、と思う人もいるはずだ。

 とはいえ、二足歩行ロボットの代表的な競技会であるROBO-ONEは、「二足歩行ロボットの進化を促す」といった側面から、予選で要求される技術レベルが高くなってしまっている。その他の競技会でも、格闘競技会ではバトルに特化したロボットも多く、勝負を考えてしまうとなかなかキャラクターを前面に押し出した機体は参加しにくい。ロボットビルダーにせよ、観客にせよ、憧れていたロボットと目の前で動いているロボットの違いに悶々としていた人たちにとっては、待望の「大手を振ってキャラクターロボットを作り、楽しんで格闘できる」大会なのである(特にキャラクターロボットに付きものの版権問題も、サンライズが版権を持つロボットに限定はされているが、公式にクリアされているのはありがたい)。

 今回はテスト的に開催されたものと言うことで、第2回については明言されなかったが、サンライズの井上氏は「このカテゴリーを作るのは面白いと思います」と、次回への含みを持たせていた。今度はぜひ、もっともっと凝ったロボット同士の、“らしい”バトルを見られるのではないだろうか。


(梓みきお)

2009/9/30 14:25