北九州市立大学で円盤型飛行ロボットが特別公開

~UFOにも見える飛行ロボット


 8月22日、北九州市若松区の学研都市ひびきのにある北九州市立大学国際環境工学部ひびきのキャンパスにおいて、高校生向けのオープンキャンパス「機械工学への招待」が行なわれた。その中において、山本郁夫研究室で開発中の円盤型飛行ロボットの飛行実験が実施された。

 筆者は特別に取材することを許可されたので、その様子をレポートする。

北九州市立大学のオープンキャンパス

 北九州市立大学国際環境工学部ひびきのキャンパスでは、8月22日に「機械工学への招待」というテーマで高校生向けのオープンキャンパスが行なわれた。この中で北九州市立大学の山本郁夫教授がロボットについての講座を行ない、研究中の飛行ロボットの飛行実験を公開したものである。

北九州市立大学ひびきのキャンパス校舎オープンキャンパス講義の様子山本郁夫教授。手にしているのは若田宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに持っていったエイ型ロボットの写真
山本郁夫教授は魚型ロボットの研究でも知られているオープンキャンパスではロボットの製作現場の見学もあったフライトシミュレーターの体験も

災害時における情報収集ロボットとして開発

 飛行ロボットは、8つのブラシレスモーターによって回転するプロペラによって浮上・飛行する。

 モーターはリチウムポリマーバッテリによって稼動し、フル充電だと15分くらい飛行することが可能となっている。

 操縦はラジコンヘリ用のプロポを使用しているが、将来はGPSと高度計を装備させ、自動で目的地まで飛行させることを考えているという。

 ただ現在は無線電波による操縦のため、電波で確実に操縦できる範囲での飛行にとどめている。

 飛行ロボットは上空から観測することを目的としているために、飛行ロボットの下にはカメラなどの観測機器が取り付けられるようになっている。2kgまでの観測機器を取り付けることが可能だが、安定して飛行させるためには1kg以下が無難だろうとのことだった。

 この飛行ロボットの目的は、災害が起こった時に災害地の上空に飛ばし、上空から災害地の状況を把握するために開発されているものだ。

 この用途ならばラジコンヘリを使う手もある。実際、福岡県八女市で行なわれた防災のための実証実験ではラジコンヘリが使用され、成果を収めた。

 しかし、ラジコンヘリの操縦は必ずしも簡単なものではない。ラジコンヘリ操縦の経験者でも操縦中にヘリを落としたりしないか緊張するという。

 もし、エンジンを積んだ重いラジコンヘリが被災地で墜落した場合、地上の家屋などに被害が出ることも考えられる(少なくともラジコンヘリを操縦するような広い空き地で運用することはあまりないだろう)。

 また災害時にラジコンヘリの操縦者が確保できるという保証も無い。

 そこでラジコンヘリよりも、安定していて、誰にでも操縦でき、また墜落時の被害軽減のために軽量化した飛行ロボットを開発することとなった。

 その結果として開発されたものが、今回公開実験が行なわれた円盤型飛行ロボットだ。

 その構造はシンプルなもので、8個のモーターとプロペラ、それに中心部に無線受信機とリチウムポリマーのバッテリを載せる場所がある構成となっている。

 それゆえに軽量化と低コストが実現できたロボットだといえる。

床に置かれた円盤型飛行ロボット。赤い部分は、正面を示すための目印円盤型飛行ロボットの開発目的についての説明ラジコンヘリからの映像
筑豊地方のボタ山を背景に飛ぶ円盤型飛行ロボット。まだ外側の枠がついていない(写真提供・山本郁夫研究室)地面に置かれた円盤型飛行ロボット。特別の発射装置は必要としない

ひびきのキャンパスでの飛行実験

 今回の飛行実験は北九州市大学ひびきのキャンパス構内で行なわれた。オープンキャンパスに参加した高校生が見守る中、飛行ロボットは地上からの操縦により自在に飛び回った。

 実はこの時、敷地外に人がいて飛行ロボットの飛行実験を見たらしく、「空飛ぶ円盤だ!」という声が聞こえてきた。飛行ロボットは、それだけ自由に動いていたということだろう。

飛行する円盤型飛行ロボットこうして見ると、確かに「空飛ぶ円盤」に見える低空での飛行も可能
下から見上げたところ飛行実験を見学する高校生たちバッテリ交換の様子。リチウムポリマーバッテリなので、交換にはそれほど時間はかからない
【動画】飛び立つ円盤型飛行ロボット【動画】着陸の様子【動画】自由な飛行が可能となっている

天空からの映像

 オープンキャンパスが終了した後、サプライズが待っていた。筆者が「飛行ロボットからの映像がほしい」と山本教授に申し入れたところ、成り行きで筆者のカメラを使用して飛行ロボットからの映像を撮影することになったのである(もちろん、特例中の特例だ)。

 カメラの重量を計測して大丈夫だろうということになり(1kgの半分以下だったため)、円盤型飛行ロボットに装着して飛行開始。

 普段使用しているカメラと違うため、操縦に戸惑ったところもあったようだが、無事にカメラを回収して、飛行ロボットからの映像を確保することができた。

筆者のカメラを取り付けたところ飛行前の様子こんな感じでカメラは取り付けられていた
モーターが回転し始め、飛び立つ直前上空に舞い上がった円盤型飛行ロボット。カメラが付けられているのがわかる【動画】円盤型飛行ロボットからの映像・離陸編
【動画】別のカメラから撮影した離陸の様子【動画】円盤型飛行ロボットからの映像・着陸編。眼下の右手に見える白い建物は北九州市立大学の校舎

 飛行ロボットは、構造が単純なだけに比較的安価に製作でき、また持ち運ぶことも簡単だ。もう少し飛行の安定性が高まれば、災害時の情報確保だけでなく、いろいろな場面で使われていくことだろう。


(大林憲司)

2009/9/24 17:43