ロボスクエアで植物型ロボット「himawari prototype」公開
~25日には講演会も開催
福岡市早良区百道浜のTNC放送会館内にあるロボスクエアで、7月23日(木)から植物型ロボット「himawari prototype」が展示され、25日(土)には製作者による講演会もロボスクエアで実施された。
ロボスクエア内部。右手奥に「himawari prototype」が展示されている | himawari prototypeの展示スペース |
himawari prototypeは、九州大学大学院芸術工学府富松研究室の中安翌(なかやすあきら)氏によって製作された「動くアート」作品だ。
アジアデジタルアート大賞展2008インタラクティブアート部門で入賞している。
今回、himawari prototypeの動態展示は、ロボスクエアの夏休みイベント「サマーチャレンジ2009」の中のイベントとして実施されたものだ。
地元で製作されたことと、ロボット的な要素があることから、ロボスクエア側が中安氏側に依頼して実現したものとのことである。
デジタルアートといえば、CGによるアート作品が主流ではあるが、himawari prototypeは実体を持ち、動くことに特徴がある。
全体としては植物のヒマワリを模したもので、ヒマワリが「太陽に向かって動く」とされていることから、ヒマワリを選んで動く植物型ロボットとして製作したものだ。
なお、製作には吉川工業株式会社から制作協力・技術提供を受け、株式会社吉見製作所、NPO法人創を考える会・北九州から協力を受けたとのこと。
茎の部分はサーボモーターで駆動する。花の部分は、中央にあるカメラとLED、それを取り囲むように配された形状記憶合金のおしべ(?)からなっている。
中央にあるカメラは、カメラの前にある動くものを感知し、動くものがある方向に向かって花を向けるように動き、またLEDと形状記憶合金が反応する。
つまりhimawari prototypeは、観客の動きに反応して動き、またその動きに観客が反応するというインタラクティブアートだ。
動きを感知するカメラは、赤外線カメラとなっており、カメラが取り込んだ動画の中で動くものだけを感知し、動かないものの画像は切り捨ている。動くものに対して反応するため、花の中央にあるカメラの前で手を振ったりすると、その手に向かって花が動き、花の中のLEDと形状記憶合金が反応する。
反応は必ずしも俊敏ではないが(植物ロボットという設定なので)、手を振っているとhimawari prototypeが動く姿はなかなか面白い。まさに物理的実体のあるインタラクティブアートと言えよう。
●製作者による講演会も
7月25日には製作者の中安翌氏による講演会も行なわれたので、その様子をレポートする。
まず中安氏は自身が所属する九州大学大学院芸術工学府富松研究室について紹介。九州大学大学院芸術工学府富松研究室はメディアアートについて研究している研究室で、デジタル的なものを使用したアートであれば、何をやってもいいという。
その結果、研究室の関係者からはCGやソフトウェア、そして今回のhimawari prototypeのようにロボットを使ったアート作品が生み出されている。
続いて世界の動くアート作品について紹介。オランダのTheo Jansen氏の作品や韓国のChoe U Ram氏の作品が、写真と動画を使って紹介された。
その次にhimawari prototypeについて製作者自らが解説をした。
もともと中安翌氏は、形状記憶合金を使用した三次元立体ディスプレイについての研究をしていた。
そこに、北九州市の企業が開発した製品を使ったアート作品を作ることがコンセプトの「街じゅうアートin北九州2008」から声がかかり、医療関連自動機器などを製造している吉川工業株式会社と組んでアート作品を制作することとなった。そこで作られたのがhimawari prototypeである。
コンセプトは「太陽に向かって動く」とされる向日葵を機械で作り、太陽ではなく人の動きに反応してそちらに向くようにしたものだ。「動かないはずの植物をロボットにしたら、どうなるのかを見てみたい」や「研究室から生まれた機械生命体」などのコンセプトもあるという。
最後に中安氏はアート作品と工業製品の違いについて語り、「実用性から使用するのが工業製品、コンセプトを理解して受け入れるのがアート作品」だとした。
また「ヒューマノイドロボットは(実用性ではなく)コンセプトで製作しているのでないか」と、ヒューマノイドロボット=アート説を提唱していた。
himawari prototypeは、8月中旬までロボスクエアで展示される。その後は海外で展示される予定もあるそうだ。
2009/8/3 20:30