サンリツオートメイション杯「第9回レスキューロボットコンテスト」中間審査レポート

~プレゼン形式で実施、競技会に向けた試走会も


第9回レスキューロボットコンテスト中間審査会。試走風景

 7月5日、神戸サンボーホールにおいて、第9回レスキューロボットコンテストの中間審査会が実施された。主催は、レスキューロボットコンテスト実行委員会、兵庫県、神戸市、株式会社神戸商工貿易センター、読売新聞大阪本社。

 レスキューロボットコンテスト(以下、レスコン)は、1995年の阪神・淡路大震災後、ロボットやメカトロニクスの研究者が集まり、救命救助機器の技術的な課題を調査・研究する中で、発案されたものだ。

 レスキューシステム拡充に向け、継続性と求心力を得るための手段として、大規模都市災害における救命救助活動を題材としたロボットコンテストを2000年にスタートした。コンテストを通じ次世代の研究者・技術者の育成とともに、広く一般に防災や減災について啓発と広報することを目的としている。

 本コンテストでは本物のレスキューロボットを用いるわけではなく、1/6スケールの市街地模型を使ったロボットコンテストとなっている。コンテストを通じ、将来、レスキューロボットを実現するために必要となる遠隔操縦技術、対象物をやさしく扱う技術、複数のロボットの協調技術などの課題を考える機会を提供している。

 今年は全国から26チームの応募があり、書類審査によって20チームの出場が決定した。昨年までは予選競技会を実施していたが、今大会からプレゼンテーションによる中間審査会となった。同審査会の評価は、本選のレスキュー工学大賞を選出する際の基準の一部となる。また競技フィールドの一部を使った試走会も実施し、新型ガレキやマーカー付ダミヤンの救助をテストした。

 当日は、災害時に必要なさまざまな知識や技をゲームを通じて学ぶ体験型の防災イベント「イザ! カエルキャラバン!」が同時開催され、多くの親子連れでにぎわった。

神戸サンボーホールプレゼンテーションで審査員にレスキュー方針やロボット製作状況を報告防災体験イベント「イザ! カエルキャラバン!」にも多くの来場者があった

プレゼンテーション形式の中間審査会

 大会出場チームを選出する書類審査は、「レスキューに対する考え方」「ロボットのアイデア」「実現性」が重視されている。今回の中間審査会では、その応募書類に基づいたロボットの完成状況やロボットのコンセプトを1チーム7分間でプレゼンテーションした。プレゼンテーションの中に、応募書類に記載したロボットの重要な機能が実装されているのを示す動画、ロボットの走行動画、救助活動を行なっている動画を含めることが指示されている。

 その後、審査員から質疑応答が3分間ある。審査員の評価は、レスキュー活動コンセプト、ロボット製作の技術力、計画性、規定適合性、実現する機能の具体性といったマネジメント力が評価される。応募書類に記載した重要な機能が実装されていなかったり、製作の進捗が極端に思わしくない場合は、委員会から競技会の棄権勧告がなされる場合もある。

 昨年までは、この時期に予選競技会を行ない、上位チームが本選に進出する方式だった。今回のプレゼン方式により、審査員と審判団の役割が分担でき「審査員は応募書類に基づいたロボット製作ができているかチェックしやすくなった」と土井委員長は語った。

 初めての試みなので、緊張している発表者が多いようだった。動画が必須となっているため、事前にロボットを動かせる状態にしなくてはならないので、開発スケジュールも従来より前倒しになったのではないだろうか。実際には、プレゼン資料の完成が直前になりリハーサルをする余裕もなく、中間審査会に臨んだチームも多いようだった。

他チームの中間発表審査会を聴講したりビデオ撮影したりで研究に余念がない

 質疑応答では、審査員から「レスキュー方針と、ロボットの性能がマッチしてないのでは?」というような厳しい質問もあった。その一方で、ロボットの機能向上に関するアドバイスとなる質問もあった。

 例えば、「救命ゴリラ!」(大阪電気通信大学自由工房)の2号機は、車高を上げてガレキの上を通過するという従来とは逆転の発想をしたロボットだ。これに対し審査員から「タイヤ部分にガレキがあったら乗り越えなくてはならない。その対策は?」と質問があった。現時点では対策を取っていないという返答に対して「車体前方に漏斗状のフレームをつければ、ガレキを車体中央に集められるのでは?」といった意見が出された。プレゼン後にミーティングを開いたチームメンバー達は「フレームがバンププレート走行時に干渉しそうだが、検討してみたい」と前向きに検討していた。他のチームも同様に、ロボットの機能改良や問題点について具体的なアドバイスを得て、モチベーションを上げているようだった。

試走会と調整ブースで本選に向けてロボットをチェック

 別室には、スロープ、バンププレート、特殊ガレキ等を配置した試走フィールドが用意され、限られた時間の中でロボットを動かして動作チェックが行なわれた。また、会場の奧には、調整ブースがあり、ダミヤンや家ガレキ、フィールド上空から俯瞰映像を撮るヘリテレシステムを使ったテストができるようになっていた。

 今大会では、救助したダミヤンを胸につけられたマーカーや、目の発行色・発光パターン、音の周波数・パターン、重量などいずれかの項目で個体識別しなくてはならない。各チームともブースを予約して、実物のダミヤンのサイズ計測や、実機に搭載したセンサーでデータ取得に余念がなかった。ガレキやダミヤンの寸法はWEB上で公開されているが、競技会前に実物をチェックできるのはありがたいと、参加者に好評だった。

各種ガレキとバンプ、スロープが設営された試走会フィールド。1チーム30分の試走ができるチーム控えスペースで、ロボットの調整や動作確認を行なう家ガレキ内のダミヤン救出が今大会のポイントとなりそうだ
【動画】社会人チームのO.I.T OB(大阪工業大学OB)は多足歩行ロボットで出場おかQ(岡山大学ロボット研究会)は、発光体を組み込んだマーカーを投下し救助情報を伝達する機能を搭載他チームの試走をビデオ撮影して研究する参加者達
ノギスでダミヤンのサイズを計測し、自作ダミヤンとの誤差を確認ヘリテレテストコーナー。本番で使用するシステムの動作チェックができる本番に向け、チーム内で同寸模型を作りテストを行なうために家ガレキの寸法を計測
目の発光パターンでダミヤンの識別をテスト中【動画】ダミヤンの目の発光色とパターン、音声周波数とパターンなどで個体識別を行なうダミヤンの救助テスト。アームの強度や位置を確認

 競技会は同会場で、8月8日(土)、9日(日)の2日間に渡って実施する。観覧は無料、レスキュードッグのデモンストレーションやレスコンロボット操縦体験など楽しいイベントもあるため、ぜひ多くの方に来場してほしい。競技会まで1カ月の間に、各チームのレスキューロボットの完成度が一段と向上することを期待したい。

【第9回レスキューロボットコンテスト出場チーム】

チーム名(50音順)団体名
R.U.R.東京農工大学 ロボット研究会
MS-R金沢工業大学 夢考房
O.U.S.桃太郎岡山理科大学 知能機械工学科
O.I.T.OB大阪工業大学OB
おかQ岡山大学 ロボット研究会
オクトパス(株)アスパーク ロボット研究会
がんばろうKOBE神戸市立高専
救命ゴリラ!大阪電気通信大学 自由工房
K.U.R.C.京都大学 機械研究会
SHIRASAGI兵庫県立大学 ロボット研究会
太助隊産業技術短期大学
DRP同志社大学 レスキューロボットプロジェクト
T.R.R.L津山高専 電子制御工学科
なだよりあいをこめて神戸市立科学技術高校 科学技術研究会
Fukaken大阪府立高専 福祉科学研究会
メヒャ!岡山県立大学 ロボット研究サークル
やさしさのNICK近畿大学 ロボット研究会
レスキューHOT君近畿大学 産業理工学部
レスコン工房名古屋工業大学 ロボコン工房
六甲おろし神戸大学

震災を知らない子ども達に防災・減災の啓蒙活動

 会場の1階では、併催イベントの「イザ! カエルキャラバン」にも多くの親子連れが集まっていた。1995年の阪神・淡路大震災時の経験や知識を活かし「消火」「救出」「救護」などをゲーム形式で学ぶコーナーが数多く用意されたイベント。ゲームで集めたポイントは、会場に集められたおもちゃと交換できる。

 来場者は、親子で防災体操に参加したり、消火器の使い方や毛布を使った即席担架で救助者の搬送を体験したり、非常時持ち出し袋に入れるものを覚えたりと楽しそうに過ごしていた。

防災の技を楽しみながら身につける防災体操タオルを担架にして要救助者役のカエルを搬送する練習消火器の使い方を練習


(三月兎)

2009/7/7 17:29