『アクト・オン!』の二足歩行ロボットコンテスト、略して「ニソコン」開催!
2009年6月7日、東京・お台場の日本科学未来館7FみらいCANホールにて、二足歩行ロボット競技会「ニソコン」が開催された。
●東京理科大学の学生による手作りイベント
「ニソコン」は、東京理科大学サイエンスフェア学生企画「みらい研究室~科学へのトビラ~」というイベントの中で開催される、二足歩行ロボット競技会だ。「みらい研究室」は、日本科学未来館の7F全体で行なわれており、かわさきロボットが40機以上も集まる「ROBOT WARS 2009 in お台場未来館」といった競技会や、来場した子供たちが実際に体験できる科学実験コーナーなどが設けられている。そのためか、親子連れで観戦する姿が多かった。
みらいCANホールをステージから。休憩中に撮影したので人数が少なく感じられるが、バトルの最中などは8割方埋まっていたように感じた。 | 「みらい研究室」の中の“DNAを見てみよう”というコーナー。 | 電子工作コーナーなどもある。子供たちに体験してもらえるブースが盛りだくさんだった。 |
ちなみに「ニソコン」という名前は、第5回ROBO-ONEの特別解説としても登場したことがある、漫画家・神矢みのる氏『アクト・オン!』作中に登場する“全国二足歩行ロボット競技会”の略称と同じだ。なぜこの名前になったのかという理由に関して尋ねてみると、
・もともと日本科学未来館で行なわれる学校のイベント(みらい研究室)があり、その中で二足歩行ロボット競技会を行ないたいと考えていた。
→『アクト・オン!』作中で「ニソコン」が開催されているのは日本科学未来館(に非常にそっくりな)建物。
→主人公たちが学ぶ学校は「神楽坂学園」。東京理科大学も神楽坂に校舎があるという縁がある。
→いろいろ縁があるからには、イベントタイトルは「ニソコン」にしないと!
という流れによるものだったという答えが返ってきた。もちろん、原作者の神矢みのる氏には許可をいただいているとのこと。オリジナルでは学校対抗の競技会という形だったが、こちらの「ニソコン」は一般社会人ビルダーからも参加者を広く募り、20機が参加して行なわれた。
●予選は障害物レース
予選は4組に分かれ、全長2.5mのコースを5機が同時に走る一発勝負。それぞれの組の上位3機は決勝へ自動進出する。そのほか、各組の4位以下の中でタイム上位の4機が決勝に進出できる……という方式だ。陸上競技の予選→決勝にも似たシステムがあるのでご存じの方がいるかもしれない。
コースは継ぎ目に多少段差があるものの、基本的に平坦。ただ、幅20cm×長さ60cmの一本橋と、高さ30cmのところで回転する棒が3つ、障害物として設定されている。この障害物は、『アクト・オン!』作中の「ニソコン」参加資格審査コースをモチーフにしたものだ。ただし、一本橋は横歩きで渡る必要はないし、棒は比較的弱い力で回っているので、しゃがまなくても突破できてしまうあたりが、原作と違うところだ。
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コース全景(白い部分がコース)。右がスタート、左がゴールとなる。
1組目は「ドルカス」(SRDCほうれんそう)、「おふじゃんびぃZ」(佐藤ロボット研究所)、「サアガ」(イガア)、「さくら2号」(チームさくさく)、「マンボー」(東京理科大学RobotCreators)の5機。
スピード勝負においてはさまざまな競技会で圧倒的な強さを見せつけていた「サアガ」は、障害物がちょうど頭の上を通過する身長という幸運もあって、トップでゴール。筆者が対抗馬と目していた「さくら2号」は逆に頭のボンボンがちょうど障害物にぶつかってしまい、タイムロス。「おふじゃんびぃZ」にかわされて3位でのゴールとなった。
2組目は「ドリラー」(法政大学電気研究会)、「ラッキースター」(法政大学電気研究会)、「TINY WAVE」(スギウラファミリー)、「Cancer Type Balanina」(えまのん)、「サイコログレート」(T.K)。
先頭で一本橋に到達した「ドリラー」、二番手だった「TINY WAVE」がコース設計者の思惑通りに落下。すると、その後ろから一本橋を渡りきった「ラッキースター」が一気にゴールを目指す……と思いきや、今度はその「ラッキースター」が障害物を脇に挟み込んでしまって足止め。その間に一本橋を渡り直した「TINY WAVE」が1位でゴール。「ラッキースター」は2位となった。最後にゴールした「サイコログレート」は、他のロボットが蹴散らす障害物にしっかり倒されながら、制限時間まであと少しというところでゴールした(ゴール後にも障害物に引き倒されるというおまけ付き)。
3組目は「銀紙」(SRDCスキー好き)、「ザウラー」(KENTA)、「クロムキッド」(くぱぱ)、「ガルー」(くまま)、「Kinopy」(小田利延)。
スタートは横一線だったものの、一本橋で「ガルー」と「Kinopy」が(偶然とはいえ)邪魔し合う展開で始まったが、真の見せ場は「ザウラー」→「銀紙」→「ガルー」と勝ち抜け枠が埋まった後。何とかいいタイムを目指そうとゴールを目指した「クロムキッド」が跳ね飛ばした障害物の反対側が見事に「Kinopy」にヒット! もんどり打って転倒した「Kinopy」にはさんざんな予選となった。
4組目は「ALDIA」(電気通信大学ロボメカ工房REP-ALDIA)、「コセキト」(電気通信大学ロボメカ工房コセキト)、「Emilio」(電気通信大学ロボメカ工房REP-Emilio)、「竜鬼II」(コイズミ)、「ヨコヅナグレート不知火二代目」(Dr.GIY)。
場所によって歩行速度を変えながら、スタートから「竜鬼II」がノーミスでトップゴール。続いて「ヨコヅナグレート不知火二代目」もゴール。残った電通大ロボメカ工房対決は、背の小さい(障害物が全く関係ない)「コセキト」や「Emilio」を差し置いて、一番大型の「ALDIA」が制した。
全体の上位タイム4機は各組の1位~3位を除いた上で比較され、1組目から34秒2の「ドルカス」と45秒9の「マンボー」、3組目から40秒9の「クロムキッド」と52秒6の「Kinopy」が選出された。1組目と3組目は全員決勝進出、2組目と4組目からは敗者復活ならずという、明暗分かれる結果となった。
【動画】予選1組目。時間が余ったサアガはスタート地点まで戻ってきていた | 【動画】予選2組目。倒れても倒れてもゴールを目指す「サイコログレート」の姿は感動(?)を呼ぶ | 【動画】予選3組目。何度見ても「Kinopy」が気の毒でしょうがない |
【動画】予選4組目。「竜鬼II」は、LEDだけじゃなく操縦のうまさも光っていた |
●デモンストレーション
ニソコンでは、「強さだけではなく、みんなに愛されるロボットであることも大事」という理念(?)のもとに、出場ロボットの人気投票も同時進行で行なわれることになっていた。
投票の助けとするため、会場入り口付近には各ロボットのアピールペーパーが掲示されていた。そのアピールペーパーには「スピード」「パワー」といった共通能力値の他に、ビルダー自身が自由に追加できる能力値のワクが1つだけ存在。「根性」や「男のロマン」など、各ビルダーが思い思いにロボットの特徴(?)を書き込んでいたため、ロボットの個性がより強く表れていた。
もちろんペーパーだけではわからないので、各ロボットにはステージでのデモンストレーションタイムが用意され、観客に向けてロボットの動きとマイクアピールを行なうことができた。
ここで水を得た魚というべきパフォーマンスを見せたのが、予選はタイムで通過したものの、気の毒な内容に終わっていた「Kinopy」。おなじみの木琴を使ったデモでは梅雨時に合わせた『雨降り』という曲を含めて2曲を披露。みらいCANホールはすり鉢状の観客席配置になっていることもあってか、マイクを寄せなくても響き渡るほどのいい音響効果で、すばらしいデモとなった。
●決勝バトル
決勝トーナメントは、2.1m四方のリングで行なわれる、3分1ラウンド3ノックダウン制の格闘競技だ。対戦するロボットの体重差によってハンデが加えられるルールが組み込まれている点が、一般的な格闘競技会と異なる点である。
トーナメントでは、体重差が約1.9倍の「銀紙」対「TINY WAVE」戦と体重差約1.7倍の「クロムキッド」対「マンボー」戦で重量が重い「銀紙」と「クロムキッド」に対し、それぞれスリップダウン(1回ごとに0.5ダウン)を取られることになっていた。だが、戦いの内容には大きな影響が出ずに、どちらの試合も重量が重い方が勝ち上がることになった。特に「銀紙」対「TINY WAVE」戦が顕著だったが、素早く動く「TINY WAVE」が捨て身技を何度かけても「銀紙」に弾き返されてしまうので、軽い機体にとってはそれほど有利にならないのかもしれない。
1回戦から有力ロボットが順調に勝ち上がっていったが、特に「サアガ」は緒戦も2戦目も相手を脳天から叩き落とす完璧な投げを披露。と思えば準決勝利の「ガルー」戦では裏拳を上手く使ってダウンを取るクレバーな戦いも見せた。
もう一方の山から勝ち上がったのは、「今日は早めに負けると思って充電器を持ってこなかった」という、「さくら2号」。試合ごとに「バッテリが厳しい」といいながら、はたき込みで「ヨコヅナグレート不知火二代目」「銀紙」「クロムキッド」を降して決勝まで進んだ。
決勝は、重心の低いさくら2号には投げが効かないと見てか、いきなり後ろに回り込んだ「サアガ」が裏拳で1ダウンを先取。いったんは「さくら2号」がはたき込みでダウンを奪い返すものの、「サアガ」はさらに裏拳でリードする。素早く動き回る「サアガ」に対してバッテリの残量が厳しい「さくら2号」は最小限の動きで対抗しようとするのだが、やはり捕らえきることができず、結局2-1で「サアガ」の勝利となった。「さくら2号」は終了寸前にバッテリ切れで膝がガクンと落ちるという、まさに精根尽き果てるまで戦った決勝戦だった。
優勝した「サアガ」のイガア氏は「記念すべき第1回大会で優勝できて嬉しい」とコメント。この大会の企画段階から競技内容などで相談を受けていたことも明かしてくれた。
また、投票総数217票が集まった観客による人気投票では、「Kinopy」が38票で1位を獲得。2位の「さくら2号」に13票の差を付けた。「バトルよりもこの人気投票を目指してやってきた甲斐がありました」とは、「Kinopy」制作者の小田利延氏。「人と一緒にいられるロボットとして作ったつもりなので、その点が評価されたようで嬉しい」と語ってくれた。
第1回ニソコン参加者全員集合 |
●時期は未定ながら次回も開催予定
この大会は今回だけで終わりではなく、恒例としていきたいということは、主催者側からも出ていたが、現在のところ次回の予定は確定していないとのこと。決まり次第、ニソコンのWebサイトに掲載されるということなので、チェックしておきたい。
今回のルールでは発射体が認められていたが、ロボファイトなどで採用されている「当たったらダウン扱い」というものではなく、相手を物理的にダウンさせられるレベルのものしか認められないとされていたためか、採用している機体はいなかった。是非次回は発射体が付いたロボットの格闘を見てみたいと、筆者は今から楽しみである。
2009/6/18 00:00