「ロボファイト9」レポート【後編】

~公式戦初開催となった「SWORD7」「ロボスター」の様子をお届け


 5月の8日(金)、9日(土)、10日(日)に京セラドーム大阪で開催された、二足歩行ロボット格闘競技会「ロボファイト9」。最終日は、第17回ROBO-ONE認定大会のORC(Over Regulation Class:大型機部門)と、公式戦は初開催となるロボットアスレチック「SWORD7(ソードセブン)」、そして演技・デモ部門の「ロボスター」の3部門が行なわれた。本稿では「SWORD7」、「ロボスター」についてレポートしていく。

新部門ロボットアスレチックSWORD7

 今回新設されたのが、ロボットアスレチックSWORD7だ。競技内容は、競技名に7と付くから想像がつくかと思うが、全長5mの中に設けられた7つの難関を突破していくというもの。詳細は以下の通りだ。競技時間は3分で、1分以内ならやり直せるというもの。テーブルから落下してしまったりしない限りは、倒れても問題ない(最後のクリスタル・ロータリーだけ、起きあがり動作禁止)。3分経った時点でゴールできていない場合は、スタート地点からの距離計測となる。ただし、距離計測は2回の競技の内、どちらかいい方の記録ではなく、2回目の記録が正式なものとなる。各ステージの内容は下記の通り。

【一本橋】幅25cm×長さ90cm。両足が落ちてしまうとアウト。直進性がよくないと、落ちやすい【ミサイル】一本橋の途中にあり、ロボットをめがけて飛んでくる。直撃を受けると倒れる可能性が大きく、いかにかわすかがポイント【エレベーター】小型ロボ「カンショウくん」を倒すと一定時間下がり、1段高い次のターンテーブルステージに進める。一本橋とターンテーブルの段差は、これで越える
【カンショウくん】エレベーターを作動させるには、彼を倒す必要がある【ターンテーブル】4本の爪(棒)が斜めに立っており、ゆっくりと回っている。また、エレベーターが上がった場所のすぐ右にはラリアットタワーという棒が立っており、小型ロボットでない限り1回転するのは難しくなっている【スロープ】長さ約90cmの下り坂。ただし、一本橋とは異なり、ターンテーブルから段差を一気に飛び降りて横を通ってもOK
【ムービングウォール】2枚の動く壁が行く手をふさいでおり、その動きのパターンを見きってすき間を通り抜けないと、進めない仕組み【クリスタル・ロータリー】直径60cm、コース幅は20cmの円状の道で、これを抜けるとゴール。ロボットがわざと引っかかりやすい角度でついたてが立てられており、スムーズに移動するにはテクニックがいる。60秒のペナルティ加算で、パスすることも可能。細かく旋回していく操縦テクニックが要求される

 今回参加したのは13機(エントリーは17機)。ロボット名は以下の通りだ。なお、高校生以下のオペレーターが本名で登録している場合は、掲載していない。

・Centurion(せんちゅりおん:桃色兎さん)
・den-dera(でんでら:つかみ隊・dautoさん)
・NIKILA(にきら:ナッキィーさん)
・RB2000SF(あーるびーにせんえすえふ:realmotor 大工大・zenoさん)
・アフ・ロゥ(マサ吉さん)
・うさぎ(ヴィーさん)
・ザクとは違う(ガルマ仇討ち部隊・まさるくん)
・セバスちゃん(クロイチさん)
・拓歩(たくゆ:福岡県立八幡高等学校科学部)
・つばめ(大阪産業大学テクノフリーク部・けいすけさん)
・テルル(大阪産業大学歩行ロボットプロジェクト・A4さん)
・ぷらくちす♪(大阪産業大学テクノフリーク部・motoぶちょうさん)
・ムラクモ(ブッチーさん)

 この日の新型機は、ザクとは違う。これまで、ザクとは違うは、ROBONOVA-Iベースに1/60ガンプラのザクの頭部を載せていたが、今回は左腕のシールドやお腹の辺りの処理、そして何よりカラーリングがブルーと、確かに「ザクとは違う」グフになっていた。ちなみに、会場のちびっ子たちからは速攻で、「ガンダムに出てくるやつ!」と声が上がっており、ファーストのモビルスーツなのによくわかるものだと感心させられた次第である。きっと、どこの家のお父さん(お母さんの可能性もあるが)も、記者と同じように息子にガンダムの英才教育を施しているに違いない(笑)。なお、テルル、ぷらくちす♪もロボファイト9が公式戦初参加だが、前日のSRC1.8kg以下級に参加しており、そちらで紹介させてもらっている。

ザクとは違う。確かにザクとは違う機体だザクとは違うを後ろから。ジオン軍マークが各所に張られている

 競技は午前と午後に1回ずつ行なわれた。制限時間が3分というのもあるためか、意外と難しいようで、なかなかゴールまでたどり着けない。そんな中、1回目から成功させ、2回目は驚異的な41秒というダントツのタイムを叩き出したのが、テルルだ(タイマーは3分からカウントダウンしているため、2分19秒の表示)。文句なくの優勝である。テルルは、前日のSRC1.8kg以下級が公式戦初参加という機体。耳が特徴的でピンク(マゼンダ)のボディの上に、一部の動作には音声も用意されており、非常にかわいい機体である。なお、撮影の都合上、ゴールが見づらい状況となってしまったことをお詫びしたい。

 2位は、1回目に1分39秒を記録したぷらくちす♪だ。こちらも前日のSRC1.8kg以下級が公式戦デビューという機体。ぷらくちす♪のオペレーター兼ビルダーのmotoぶちょうさんは、以前はRB2000ベースのジローちゃん♪を使用し、関西圏のロボット格闘技のライト級の大会で幾度も優勝している選手。ロボファイト9には自作のぷらくちす♪で参加し、最終日はSWORD7に参加した。ちなみに、エレベーターが上がる際に若干待たされるため、それを嫌ったmotoぶちょうさんは、2回目のトライの際は自力で登ってタイム短縮を狙うという、一か八かの作戦を展開。これが決まっていれば、もしかしたら1位もあり得たかも知れないが、やはり本番には魔物が棲むもので、残念ながらうまくいかず。練習ではうまくいっていたそうだが、そのチャレンジ精神をたたえたい。1回目のタイム1分39秒が記録となり、2位となった。

 3位は、アフロ頭で会場人気の高いKHR-1ベースのアフ・ロゥ。ベテランのマサ吉さんの機体だ。こちらも前日のSRC1.8kg以下級に参加し、惜しくも4位となっている。やはりサイズ的には、SRCクラスでないと、最後のクリスタル・ロータリーが難しい。逆にムービングウォールは体重やパワーなどで大型の方が突破しやすいかも知れないが、クリスタル・ロータリーをショートカットして60秒加算は結構痛いペナルティーなので、SRC向きの競技といえよう。見たところ、とにかくオペレーターの思い通りにまっすぐならまっすぐをきちんと移動できることが重要。クセがあって直進しようとしても左右に曲がっていってしまうといった機体は、最初の一本橋からして難しいようである。アフ・ロゥは1回目に1分45秒を記録し、3位となった。2位のぷらくちす♪とは6秒の僅差だっただけに、惜しかった。

【動画】テルルは2回目のトライで41秒を記録【動画】ぷらくちす♪は1回目のトライで1分39秒を出して2位となった【動画】アフ・ロゥの1回目のトライは1分45秒。僅差で3位に

 なお、2回のトライを通して、完走できたのは4台。4月25日の試走会の時から比べると、完走率が上がっているということである。制限時間さえなければゴールできたと思われる機体も何台かはあった。また、今回は多数のちびっ子を含めた一般の観客も非常に多く、普段の競技会とはかなり雰囲気が異なっており、少々プレッシャーもあったかも知れない。何はともあれ、ひとつずつ関門を突破する度に会場を沸かせており、かなり楽しめたので、新競技としては成功だったといえるのではないだろうか。

【完走選手の記録】
・優勝 テルル/41秒
・準優勝 ぷらくちす♪/1分39秒
・第3位 アフ・ロゥ/1分45秒
・第4位 拓歩/2分13秒

【完走できなかった選手の距離計測記録】
・つばめ/485cm
・セバスちゃん/461cm
・den-dera/358cm
・うさぎ/290cm
・NIKILA/284cm
・Centurion/272cm
・RB2000SF/126cm
・ザクとは違う/116cm
・ムラクモ/68cm

表彰台の3機。左から2位ぷらくちす♪、優勝テルル、3位アフ・ロゥ参加ロボット全機でフォトセッション表彰式でのテルルのオペレーターのA4さん

ロボットコンテストのロボスター

 格闘技やSWORD7のように、ロボットの運動性能やオペレーターの操縦テクニックや駆け引きなどを必要とせず、ロボットを飾り立てるセンスや、どんなアピールをするかといったストーリー的な組み立ての能力を必要とする、パフォーマンス部門が「ロボスター」だ。

 今回は、一般観客、関係者、審査員が投票するポイントシステムで、合計72点の有効票が集まった。参加ロボットは、10機(エントリー11機)。ロボット名は以下の通りだ。

・AMATERAS(あまてらす:こそこそ団・のむむさん)
・C-6PO(しーしっくすぴーおー:ナッキィーさん)
・ガジェット・フロッグJR.(ドクター・ガジェットさん)
・キヌゴシ(コナーファ)
・銀角(ぎんかく:ざきさん)
・タミやん(場坂さん)
・バーソルーザ(コナーファ)
・春風交式(はるかぜえっくすしき:有紀ハルさん)
・ハロっぽ(FROM_G 頑屈王国・うじさん)
・雛(ひな:mujakiさん)

 投票の結果、得点は各機にバラけた感じで、優勝は22点を獲得した銀角。MANOIファンクラブ会長のざきさんの機体で、MANOI PFベースの機体だ。歌舞伎をイメージした和風スタイルが特徴で、コスチュームにかけている意気込みはまさに別格という具合だ。主催者サイドも、そのゴージャスさから、当日はロボスターの大トリを務めてもらうことにしたという1機である。その豪華さをご覧いただきたい。

銀角【動画】銀角のパフォーマンス優勝のメダル姿

 準優勝は同点のため2機いて、そのひとつが雛。一般の観客、特にちびっ子には少しわかりづらかったかも知れないが、雛はサーボのケースまでもがオリジナル設計という、技術賞もの。それにより、女の子の細身のボディがとても美しくデザインされており、非常にかわいいのが特徴だ。また、ダンスもとてもかわいくて華麗。最後は頭が重いために前のめりに倒れてしまうのだが、その後に女の子座りになり、頭を打ったという感じフラフラさせるという動きにつながっており、それはそれで演出の一部という感じとなっていた。

【動画】雛のパフォーマンス【動画】雛のダンス部分をアップで紹介

 もう1機の準優勝は、春風交式。銀角や雛ほど、コスチュームやデザインなど外見的な部分を重視した1機ではないのだが、2足歩行の人型形態から4足歩行の動物形態の「狼モード」に変形する仕組みがポイント。単に腹這いになるわけではなく、脚が回転してヒザ関節が人型形態時とは逆になる点は技術的に評価されていた。かわいかったのは、やはりモーション。狼モードということだが、どちらかというと犬モードのようで、お手や伏せなどを見せていた。

春風交式【動画】春風交式のパフォーマンス

 そのほか、Robot Watch初登場の機体も紹介しよう。ちなみに、キヌゴシは何度も紹介されているが、見る度に着ぐるみが異なっているので、せっかくなので紹介したい。

ガジェット・フロッグ Jr.。キーボードで操作するのが特徴スーパーロボット系のバーソルーザ。反対から読むと……?

 さらに、会場からリングに向かって左側にはディオラマが3セット用意されており、前日にはSRC部門に参加したロボットたちも加わって、ちょっとした撮影会も行なわれていた。

SF系ディオラマのカタパルト上に並んで立つのは、ナッキィーさんのNIKILA&C-6POAMATERASと剣姫の美少女ロボットによるツーショット。畳と縁側がさすがに似合うこちらは普通の部屋。手前はロボットフォース製のポリピー(名前の由来はポリプロピレン製だから)

 今回は、ちびっ子を含む一般観客が多かったのが大きな特徴。大成功といってもいいのではないだろうか。なにせ、リングの近くで撮影していると、記者は身体が大きいので、できるだけ縮こまっているとはいえ、非常に申し訳ない感じがしてしまうほどである。ぜひ、ちびっ子たちには将来、自分でロボットを作ってもらって、こうした大会に参加してくれるようになってくれれば幸いである。何はともあれ、エキシビションの初日も含めて3日間の参加者と、スタッフの方々はご苦労様でしたと申し上げたい。そして、各部門の優勝者並びに入賞者の選手のみなさんには、おめでとうの言葉を送らせていただく。

最後に各部門入賞者全員で記念撮影ORCで優勝したCavalierのオペレーターのえまのんさん第17回ROBO-ONE決勝出場権は、ORC準優勝のレグホーンのオペレーターのNAKAYANさんが獲得

 そして、この日もバトルカオスを実施。今回は大型機が多いので、前日とはまた違った迫力があった。こちらも掲載しよう。この日は、3本行なわれた。

【動画】バトルカオス1本目【動画】バトルカオス2本目【動画】バトルカオス3本目

 なお、次回大会ロボファイト10はすでに日程や会場が発表されており、10月の連休10日(土)、11日(日)を予定。翌12日が休日なので、遠方からも参加しやすいはずだ。場所は、ロボファイトのホームグラウンドの大阪・産業創造館。また、練習会のロボゴング10は8月1日(土)を予定している。



(デイビー日高)

2009/5/19 17:59