「ロボファイト9」レポート【前編】

~SRC1.8kg以下級&1.8kg超級のバトルをお届け


スペシャルゲストも加えて、初日の参加ロボット記念撮影。後方はロボットフォース代表の岩気裕司氏

 5月8日(金)~10日(日)に京セラドーム大阪で、「ロボカップジャパンオープン2009大阪」と同時開催された二足歩行ロボット格闘競技会「ロボファイト9」。初日はエキシビションが行なわれ、2日目はSRC(Standard Regulation Class:小型機/市販機部門)の2部門が実施された。そして最終日のメインとなったのが、第17回ROBO-ONE認定大会であるORC(Over Regulation Class:大型機部門)。同時に、最終日には新競技のロボットアスレチック「SWORD7(ソードセブン)」と、演技・デモ部門の「ロボスター」も行なわれた。どの部門も参加機数が充実し、またいつも以上にちびっ子やそのご両親を含めた多数の観客が集まり、大盛況という結果。まずは2日目に行なわれたSRCの模様からお届けする。

ロボット競技会の会場としては珍しいドーム球場

 今回の会場となった京セラドームだが、なかなかロボット競技会の会場としては珍しい部類で、いつもとは雰囲気が異なる。前後左右にも広ければ、天井方向もやたらと高さがあるという広大な空間。ロボファイト9のブースはセンター方向のフェンス際に設置されていたのだが、入口がホームベース側にあるため、縦断していくとドーム球場の広さを体感できるというようになっていた。このまま何十年と技術が進歩していくと、いつかはこんな広い球場で、自律ロボットが野球をできるようになったりもするのだろうか? サッカーロボットは珍しくもないが、野球ロボットはあまり聞かない。飛んでくるボールをキャッチできるロボットハンドが日本科学未来館でデモを行なっているが、やはりボールが小さいだけにいろいろと大変なのだろうか。ぜひともどこかで研究をしてもらいたいところである。

京セラドーム大阪の外観。UFO風の外観が特徴ロボファイト9のブース
ロボカップジャパンオープンの会場の一部天井は単純なドーム形状ではない点も特徴

SRC1.8kg以下級は33機がエントリー

【画像1】トーナメント表

 SRCはロボットの重量で2クラスに分けられており、1.8kg以下級と、1.8kg超級となる。まずは、市販機並びにそれに近い性能の小型自作機が参加できる1.8kg以下級からお伝えしよう。

 今回のエントリー数は33機。最終的に28機が出場した。エントリーリストは以下の通りで、トーナメント表は【画像1】を参照のこと。なお、ロボット名が漢字やアルファベットの場合は、読み方をカッコ内に所属チーム名・オペレーター名とともに記してある。また、本名で登録している高校生以下の選手に関しては、掲載を控えさせてもらった。ロボット名は、大会ごとに若干の表記に差異(大文字小文字、ピリオドのあるなしなど)がある機体もあるが、今回はロボファイト9のトーナメント表の表記に従っている。

・abide(アバイド:大同大学ロボット研究部・とーいちさん)
・Captain.PEKO(キャプテンペコ:クロイチさん)
・Centurion(センチュリオン:桃色兎さん)
・Dreadnought(ドレッドノート:大同大学ロボット研究部・POTATOさん)
・GN-S(ジーエヌエス:大阪産業大学テクノフリーク部・レイさん)
・NIKILA(ニキラ:ナッキィーさん)
・青嵐(あおあらし:大阪工業大学ロボットプロジェクト・末澤佑一朗さん)
・YaMaTo(ヤマト:大阪工業大学ロボットプロジェクト・高田晶太さん)
・アフ・ロゥ(マサ吉さん)
・イプシロン(大阪工業大学ロボットプロジェクト・川端豊さん)
・ヴァイパー09(大同大学ロボット研究部・かろとさん)
・コスモス(kaiさん)
・じゃこ(大同大学ロボット研究部・有機物さん)
・シャボザック(シャボルトさん)
・黒爪(ダークロー:大阪産業大学歩行ロボットプロジェクト・srooさん)
・たーたーさん(大同大学ロボット研究部・Marlさん)
・拓歩(たくゆ:福岡県立八幡高等学校科学部)
・つばめ(大阪産業大学テクノフリーク部・けいすけさん)
・剣姫(つるぎひめ:凶器屋本舗・舞鈴堂さん)
・テルル(大阪産業大学歩行ロボットプロジェクト・A4さん)
・ねこ(ヴィーさん)
・春風交式(はるかぜエックスしき:有紀ハルさん)
・ピクセル(大同大学ロボット研究部・非売品さん)
・ぷらくちす♪(大阪産業大学テクノフリーク部・motoぶちょうさん)
・ヘルハウンド(シェブサトさん)
・ムラクモ(ブッチーさん)
・やまぴー(大阪産業大学テクノフリーク部・ペーターさん)
・レッド・アイ(大阪工業大学ロボットプロジェクト・川浦志郎さん)

 チームとしては地元・大阪産業大学のテクノフリーク部および歩行ロボットプロジェクトの合同チームが5人+3人、大阪工業大学ロボットプロジェクトが4人、そして名古屋の大同大学ロボット研究部が7人という具合で、大学生が多かった。ちなみに大阪vs名古屋で火花を散らしているかというと、もちろん選手によってはライバル意識を持っていたりもするだろうが、仲良くやっていた。こうした部分は、ロボット格闘技のいいところの1つだろう。

 Robot Watch初紹介となる機体は、abide、コスモス、じゃこ、たーたーさん、テルル、春風交式、ぷらくちす♪、ムラクモの8機。テルルやぷらくちす♪などは、今回が競技会初参加というできたてほやほやの機体。テルルは外装もかわいく、色づかいも鮮やかで、会場での人気も高かった。また、名称はすでに掲載済みだが、ピクセル、ヘルハウンド、レッド・アイの3機はRobot Watchでは画像未掲載と思われるので、合わせて掲載する。

abideコスモスじゃこ
たーたーさんテルル春風交式
ぷらくちす♪ムラクモピクセル
ヘルハウンドレッド・アイ

SRC1.8kg以下級準決勝レポート

 各選手がどこまで勝ち進んだかは、トーナメントの結果表を確認していただくとして、詳細なレポートは、準決勝からお伝えする。第1試合は、kaiさんのコスモス vs クロイチさんのCaptain.PEKO。コスモスは、前述したようにRobot Watch初登場で、赤い頬が純朴そうな顔をしたオリジナル設計と思われるロボット。しかし、そのかわいい顔とは裏腹に、抜群の安定感と、攻撃力のある長い腕でかなりの実力者だ。1回戦でテルル、2回戦でヴァイパー09、準々決勝でイプシロンと、大学生選手のロボットに3勝しての進出だ。一方のCaptain.PEKOは、RB1000ベースのロボットで、ペコ海賊団の船長というキャラクターがポイント。関西圏のロボットとしてかなり名の通った1機である。1回戦でペコ海賊団のメンバーであるねことの師弟対決に勝利すると、大産大テクノフリーク部らしいとてもにぎやかなやまぴー、そして美少女剣士キャラの剣姫と、自分と同様にキャラクター色の強いロボットたちを連破してのベスト4である。

Captain.PEKO。海賊団の船長というキャラクターだコスモス。肉厚で質量のある前腕は体積もあり、パンチのヒット率や打撃力がある

 試合は、ダウンまではなかなか結びつかないものの、両者ともに手を休めないパンチの応酬が続く展開。ロボファイトは3分1ラウンド制だが、先に6点になってしまった方が負けというポイント加算制が独自ルール。1スリップで1点、1ダウン(リングアウト、タイム申請も同じ)で2点加算される仕組みとなっている。Captain.PEKOは、1ダウンを奪うが、自らも2回スリップしてしまい、同点で1分間のサドンデス方式の延長戦に突入。準々決勝までなら同点であってもCaptain.PEKOが攻撃を決めているので、優勢ということで、おそらくは審判のジャッジで勝利判定となっていたことだろう。延長戦は、どちらか1ダウン(=2スリップ)した方が負けとなる。開始40秒ほどでCaptain.PEKOのパンチがヒットして、コスモスがダウン。Captain.PEKO自身も倒れてしまうほど体重を載せた「肉を切らせて骨を断つ」的な攻撃で、「Captain.PEKOの3位伝説」を遂に返上したのであった。

【動画】準決勝第1試合。コスモス vs Captain.PEKO【動画】コスモス vs Captain.PEKOは、1分間のサドンデス方式の延長戦に突入

 準決勝第2試合は、たーたーさん vs アフ・ロゥ。たーたーさんは、7名で1.8kg以下級に参戦した大同大学ロボット研究部の一員、Marlさんの機体だ。オリジナルフレームのロボットで、背中にいかにも秘密がありそうな特別な機構を備えている。1回戦ではCenturion、2回戦で関西ライト級王者といっても過言でないmotoぶちょうさんの新型オリジナル機ぷらくちす♪を撃破し、そして3回戦でシャボザックを破って準決勝進出。一方のアフ・ロゥは、その名の通りにアフロ頭でお馴染みのKHR-1ベースのロボット。非常にキャラクターが立っており、会場人気が高いのが特徴だ。シードで2回戦から試合開始。青嵐を破ると、たーたーさんの同門のDreadnoughtに勝利して、準決勝進出となっている。

 試合は、オペレーター同士の技量的にはベテラン・マサ吉さんの方が上回っている感じだが、機体性能的にはたーたーさんの方が上に見える。アフ・ロゥはたーたーさんの背後を取ろうと積極的に動き回るが、機動力のあるたーたーさんはそれをさせない。逆に、先端がフックになっているヒジ関節のないウデによる強力な横パンチでダウンを奪っていく。アフ・ロゥはスリップもしてしまい、最終的にたーたーさんのパーフェクトゲームで試合は終わった。

アフ・ロゥ。モコモコのアフロ頭が特徴たーたーさんを真横から。何やら背中の機構に秘密がある模様。脚部はリンク機構【動画】準決勝第2試合。たーたーさん vs アフ・ロゥ

1.8kg以下級3位決定戦&決勝+2×2決勝レポート

 続いては、3位決定戦。コスモス vs アフ・ロゥだ。試合は、お互いに打っては離れてのアウトボクシングスタイルが展開していく。特にアフ・ロゥはリングをいっぱいに使うような形で、縦横無尽に駆け抜ける。両者スリップもなく、1分30秒動き続けるが、アフ・ロゥの左パンチがコスモスの大きな頭を刈って前方へ倒れさせ、遂に均衡が破れる。しかし、間を置かずにコスモスの反撃が決まり、アフ・ロゥも1ダウンで、2-2のイーブンに。残り1分を切る頃から、コスモスにスパートがかかり、手数でアフ・ロゥを圧倒。しかし、アフ・ロゥもベストポジションを狙っており、両者なんとか決着をつけようと激しいバトルを繰り広げる。が、結局有効打が出ず、延長戦に。コスモスは2戦連続である。延長戦は、開始早々にアフ・ロゥがスリップ。2ポイント加算とならなければ負けではなく、1スリップまではOK。いきなり追い込まれたアフ・ロゥ、それがどう影響するか。コスモスも先ほどは延長戦で負けているだけに、プレッシャーがあるはず。そんな中、アフ・ロゥが2度目のスリップとなり、3位はコスモスが獲得した。

【動画】3位決定戦。コスモス vs アフ・ロゥ【動画】3位決定戦。コスモス vs アフ・ロゥの延長戦

 そして、いよいよ決勝戦。3位の神様に見放された(?)Captain.PEKO vs 名古屋からの刺客・たーたーさん。開始早々は両者ともやや様子見かと思っていたら、一気にたーたーさんが懐に入り、腕先のフックでひっかけて倒し、1ダウンを奪取。わずか10秒ほどのことだ。しかも、Captain.PEKOは立ち上がった後、しばらくして異音を発して前のめりに倒れてしまう。連戦の疲れがサーボなどに出ているようで、調子があまりよくないようだ。その後、持ち直したか積極的にたーたーさんの懐に飛び込んでパンチの応酬を繰り広げるが、少し絡むような格好でバランスを崩し、2スリップ目。これにより、あと1ダウンで敗北というところまで追い込まれてしまう。さらに1スリップを重ね、1分立たずに窮地に立たされてしまう。1分と10秒ほどが経過した時、投げ技を狙ってたーたーさんがつかみかかるが、それは不発。1スリップのカウントとなり、たーたーさん初のポイント加算。しかし、その後のたーたーさんとの横パンチの応酬でスリップしてしまい、試合終了。

 たーたーさんは結局試合で秘密兵器を使うことなく優勝となった。そのため、勝ち名乗りで秘密兵器を披露。背中のはしご上の部分は実は胴体の一部になる仕組みで、それを展開すると身長が倍近く高くなるという構造なのであった。1.8kg以下級では頭1つ抜け出ている感じなので、今後は1.8kg超級にクラスを上げて出場してみてはいかがだろうか。

【動画】今回は登場時にエレベーターが使用され、かっこよく登場。まずはCaptain.PEKO【動画】続いて、たーたーさんが登場。ちょっと秘密兵器を見せている
【動画】決勝戦。Captain.PEKO vs たーたーさん。試合後にたーたーさんが秘密兵器を公開SRC1.8kg以下級トーナメント結果

 また、トーナメントの序盤で負けた選手たちが2名ずつのタッグチームを結成し、2対2で闘う2×2も行なわれた。同じチームのどちらの選手がダウンしても2点、スリップしても1点が加算され、先に6点に達してしまったチームが負けというルールだ。こちらの決勝は、ムラクモ&ぷらくちす♪vsYaMaTo&テルル。MANOI AT01をベースにした格闘技系としては少数派のムラクモは、Wiiリモコンで操作するという機構も特徴の1つ。ただし、まだ素早く動かすのは難しい様子で、1.8kg以下級の試合では使用したが、2×2ではノートPCからの直接の操作を行なっていた(Wiiリモコンを使用する場合は、ノートPC経由での操作となる)。ぷらくちす♪は、長らくジローちゃん♪で関西ライト級の王者といっても過言でない活躍を見せてきた、大産大テクノフリーク部motoぶちょうさんが製作したオリジナルの機体。名前からすると、データ収集用のテストベッド機的な機体らしい。一方のチームのYaMaToはRB2000ベースの機体。マスク(サングラス?)をしていて、なおかつその上に目と眉が描かれているのが特徴だ。手先も改造されている。そしてテルルは、ピンク色の機体にネコミミ、女の子のようなかわいらしい声を出す、新型機。motoぶちょうさんとは同じ大産大の歩行ロボットプロジェクトに所属するA4さんの機体だ。所属は異なるが、いつも合同練習しているということなので、決勝戦は同門対決も含まれるカードとなった。

 決勝戦の展開は、あまり機敏に動けないムラクモをぷらくちす♪がカバーするという展開。ムラクモは上背がある上に倒しやすそうな不安定さがあるので、YaMaToとテルルが狙っていくのだが、それを横からぷらくちす♪が倒していく。ムラクモはナイス囮というところだ。結局、ムラクモ&ぷらくちす♪組は1ポイントも加算されず、パーフェクトゲームで優勝した。

ムラクモはこのようにWiiリモコンで操作ぷらくちす♪YaMaTo
テルル【動画】2×2決勝戦。ムラクモ&ぷらくちす♪ vs YaMaTo&テルル

SRC1.8kg超級レポート

トーナメント表

 SRCのもう1つのクラスが1.8kg超級だ。重量制限が2.9kg以下という点だけが1.8kg以下級と異なり、サーボの搭載数や自由度、有効身長(40cm以下)や手などを伸ばした時の最大幅(60cm以下)などはすべて一緒だ。

 今回は7機がエントリーした。エントリー機数が少ないため、特殊なトーナメントが構成された。第1トーナメントの優勝者が、最終的な決勝戦への出場権を確保。そして第1トーナメントの準優勝者は、敗者復活となる第2トーナメントの優勝者と闘い、そこで勝利した方が最終的な決勝戦で第1トーナメントの優勝者と争うというものだ。第2トーナメントの決勝戦の敗者は3位扱いで、第1トーナメントの準優勝者と第2トーナメントの優勝者との勝負での敗者も3位扱い。

 出場ロボットは以下の通り。こちらも、大同大学ロボット研究部が3名を送り込み一大勢力となった。

・アーチャー(ルチオさん)
・イーピゲネイア(大同大学ロボット研究部・トミー=ユウさん)
・花蓮弐式(大同大学ロボット研究部・リュウ太郎さん)
・den-dera(つかみ隊・dautoさん)
・爆裂進学ダイガック(大同大学ロボット研究部・アキツカさん)
・メリッサ・トライブ(しゅうせいさん)
・Robovie-XSF(realmotor 大工大・zenoさん)

 Robot Watch初登場の機体としては、イーピゲネイア、花蓮弐式の2機。大同大ロボ研の2体はオリジナルの機体だ。イーピゲネイアはガンダム系の顔やお腹をしており、ぶ厚い腕部や肩部、脚部の装甲がぶ厚い感じから、雰囲気的にはそれらの辺りにだけチョバムアーマーを装備した「NT-1アレックス」という感じだろうか。花蓮弐式は、その名前の雰囲気と右手のクローのみが大きいという非対称なデザインから、ロボットアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ」のナイトメアフレーム「紅蓮弐式」をモチーフにしていると予想される。

アーチャーイーピゲネイア花蓮弐式
den-dera爆裂進学ダイガック(実は別の旧型の機体)Robovie-XSF

 また、クラフトハウスから二足歩行ロボット用フレームキット「メリッサ」発売の記事で紹介済みだが、メリッサ・トライブは、福岡のクラフトハウスが販売している二足歩行ロボット用フレームキット(汎用パーツアセンブル機)のSRC仕様モデル。実は、クラフトハウス社長の栗元一久氏(オペレーターネームはクラフトマン)がお子さんと参加した形だ(試合のオペレーターをお子さんが務めた)。完成度の高さは抜群で、歩行時の安定感だけでもプロの手によるものを感じさせ、まさに九州からの刺客。また、より強化したタイプのメリッサ・ヘカトンケイルによるデモも行なわれ、見事なフロント・スープレックスも披露していた。なかなか実戦の中で決めるのは難しいだろうが、プロレスラーが決めたかのような、華麗さがとても印象的だった。動画も用意したので、ぜひ見てみてほしい。

メリッサ・トライブ【動画】メリッサシリーズのもう1台「ヘカトンケイル」によるフロント・スープレックス

SRC1.8kg超級第1&第2トーナメント決勝戦レポート

 前述したように1.8kg超級は、少し複雑なトーナメントを採用。まずは、全体での準決勝的な位置付けになる第1トーナメント決勝戦からお届けする。3分1ラウンド制、6ポイント制など、ルールは1.8kg以下級と同じだ。

【動画】第1トーナメント決勝戦。花蓮弐式 vs メリッサ・トライブ

 第1トーナメント決勝は、花蓮弐式 vs メリッサ・トライブ。花蓮弐式は、イーピゲネイアを1回戦で、den-deraを準決勝で下して(不戦勝)決勝に進出した。メリッサ・トライブは、Robovie-XSFを1回戦で、爆裂進学ダイガックを準決勝で下しての進出である。

 試合は、花蓮弐式が先にダウンを奪い、先行していく。さらに、決勝戦はさすがに緊張からか、メリッサ・トライブは完成度の高い歩行モーションを持つにも関わらず、2連続でスリップしてしまい、早くも1ダウンで敗北の瀬戸際に追い込まれてしまう。しかし、そこで吹っ切れたのか、動きがよくなり、逆襲を開始。1ダウンを奪い返すと、その起きあがり中にリング外に落下したのが影響したのか、不調となりタイム申請。これで4-4のイーブンに。そのあと、さらに1スリップしていよいよ完全に後がなくなると、メリッサ・トライブは突きを連打に継ぐ連打。連打に押し込まれる花蓮弐式が攻撃を繰り出し、空振りして隙ができた瞬間にメリッサ・トライブの一撃がクリーンヒット。逆転で第1トーナメントを制する形となった。

【動画】第2トーナメント決勝戦

 続いては、第2トーナメント決勝戦。den-dera vs Robovie-XSFだ。den-deraはイーピゲネイアを1回戦で、アーチャーを準決勝で破っての進出。Robovie-XSFは1戦目が早くも準決勝で、爆裂進学ダイガックを破っての進出となった。den-deraは「大阪の青い暴れん坊」ことYOGOROZAのオペレーター・dautoさんのSRC用の機体だ。両腕が太く長いので、脚部にもなるようで、上下どっちを上にしても立たせられるというのが特徴である。古い例えで申し訳ないが、逆立ちしてもOKなんて、アニメ「超力ロボ ガラット」のようだ。ZENOさんのRobovie-XSFは、その名の通りヴイストン製Robovie-Xの強化機だ。発射体機構を備えていて、弾を発射できるのが特徴。ロボファイト特有のルールとして、小型機が大型機との闘いで体格の不利さをカバーできるようにと、発射体が設けられている。胴体中央部に当たると、1ダウンを奪える形だ(ただし、5ポイント目までで、発射体を当てても試合を決することはできない)。

 試合では、Robovie-XSFが開始早々から発射体攻撃で、ポイントを稼ぐ作戦を展開。やはり関西四天王(4人いないとする説があり、キングカイザーのMARUファミリーさんはワールドクラスなので別格、現在はレグホーンのNAKAYANさんとdautoさんの2強ではないかというのが通説)の1人といわれているだけに、直接闘うのは分が悪いという判断か。den-deraは1スリップした後、Robovie-XSFのパンチで1ダウン。しかも、そこで距離を取って発射体攻撃。1発が命中し、一気にden-deraを5ポイントの後がない状態に追い込んでいく。zenoさん、関西地区のロボット競技者仲間の間ではイジラレ役として人気者なのだが、ここでそのツッコミどころを披露。まだ試合が決してないのに、Robovie-XSFが喜びのモーションを披露し始めたのだ。さすがに、ここはパンチを入れて1ダウン、den-deraが一矢報いることに成功する。なおかつ、その直後にも両者接近した際にカウンター気味にden-deraのパンチが決まり、一気に4ポイント。なおかつ肩の軸が壊れたらしく、起きあがれない。den-deraの大逆転の可能性も見えてきたが、奇跡的にRobovie-XSFが立ち上がる。最後は両者足を止めての打ち合いとなり、den-deraが打ち負け。Robovie-XSFの勝利となった。den-deraは3位決定だ。

第1トーナメント準優勝者vs第2トーナメント優勝者&決勝戦+ランブルレポート

【動画】総合の決勝戦進出をかけた1戦。花蓮弐式 vs Robovie-XSF

 続いては、第1トーナメントの準優勝者・花蓮弐式と、先ほど第2トーナメントで勝利を挙げたRobovie-XSFの総合の決勝戦への出場を賭けた闘い。これで負けると、den-deraと同じ3位となる。

 Robovie-XSFは、den-dera戦同様、試合開始とほぼ同じくして発射体攻撃。発射体攻撃の際は攻撃されると弱いので、距離がある内に行なうのがセオリーなのだが、距離があったらあったで命中率が下がるという、なかなかこの機構を備えたからといって即有利になるというわけでもないのがポイント。有効活用するには技術が必要というわけだ。発射体は当たらず、ポイントを稼げないところに持ってきて、機動力のある花蓮弐式が発射姿勢の内に攻撃しようと急接近をRobovie-XSFにかける。パワーショベルのバケットのような右手の大型クローをブンブンと音が聞こえそうなほど振り回す、右腕ハリケーンともいうべき攻撃だ。その内の一発がクリーンヒットし、Robovie-XSFが1ダウンで2ポイント加算となる。その後も花蓮弐式の方がポジション取りがうまく、右側にRobovie-XSFをとらえ、右腕ハリケーン。しゃがんでかわしていたRobovie-XSFだが、通り過ぎた裏拳が後頭部をとらえ、1ダウン。体勢的に花蓮弐式もちょっと無理があったが一緒に倒れてしまい、こちらは1スリップとなった。しかし、1-4で、花蓮弐式の圧倒的に有利な展開だ。しかし、この立ち上がりをうまく利用したのがRobovie-XSF。先に立ち上がって距離を取ると、後から起きあがってきた花蓮弐式に発射体攻撃。見事に命中し、1ダウン、3-4と差を詰める。さらにもう一発が決まったかに見えたが、腕の付け根だったようで、ジャッジはノーカウント。これでちょっと油断したか、詰め寄られ、またもや右腕ハリケーンで3ダウン目。遠距離射撃型と近接格闘型という、戦術的にタイプの異なる2台だったが、ガッチリかみ合い、僅差のなかなかいい勝負であった。Robovie-XSF、3位決定である。

 これで決勝戦は、第1トーナメントの決勝戦の再現となった。プロの匠に小学生の反射神経が加わったメリッサ・トライブか、中部地区の強豪大学生軍団・大同大ロボ研でもまれている花蓮弐式か。安定感ならメリッサ・トライブ、攻撃力なら花蓮弐式だろう。あとは、こうしたプレッシャーのかかる中で、少年パイロットがどれだけ普段通りに闘えるか、ということになりそうだ。ダウンを先に奪ったのは、花蓮弐式。最も右腕の感性モーメントが発生するベストの位置でメリッサ・トライブをジャストミートし、20秒強で2ポイントを先取した。しかも、ちょっと油断したか、メリッサ・トライブは立ち上がって試合再開直後に距離を取らずにいたため、今度は横突きのような形でクリーンヒットをもらってしまい、30秒足らずで2ダウン目。しかし、ここで反撃に出て、得意とする連続の突きで花蓮弐式をリング際に追い込んでいく。リングアウトで1ダウンを奪い返すかと会場からも歓声が上がったが、花蓮弐式はリング中央へ脱出。追い打ちをかけようとしてメリッサ・トライブが突きを放って身体が伸びきった瞬間、そこへ右腕の一撃。しゃがめない体勢だったため、そこで後方にバッタリと倒れ、1分足らずで一気に決着となった。

【動画】総合優勝をかけた決勝戦。まず登場するのはメリッサ・トライブ【動画】メリッサ・トライブと闘うのは、花蓮弐式
【動画】総合優勝をかけた決勝戦。メリッサ・トライブ vs 花蓮弐式SRC1.8kg超級トーナメント結果

 1.8kg超級はランブルも行なわれた。イーピゲネイアと爆裂進学ダイガックは機体の不調で不参加のため、5台でスタート。アーチャーが立ち上がれなくなって消え、den-deraもパーツが吹っ飛んでリタイア。数が最初から少ないのもあったが、誰も落ちないまま3分が経過し、花蓮弐式、メリッサ・トライブ、Robovie-XSFの3台で延長戦となる。延長戦は1分間で、なかなか落ちないことから、客席に近いリング際の1カ所に設けられた×印に一番近い機体が優勝というルールに変更。最終的に花蓮弐式が一番近い場所におり、2冠達成となった。

【動画】1.8kg超級のランブル各部門の上位入賞者で記念撮影上位入賞したロボットたち

最後はオマケでラグビー並みの大規模戦バトルカオス

 そして公式戦がすべて終了した後に行なわれたのが、本日の参加ロボットの大多数+α(ロボットフォースの機体など)という、バトルカオスだ。サッカーやラグビー、アメフトの試合のような20体から30体(正確な台数は不明)ものロボットが参加しており、実に面白い。地面が人工芝の上に保護用に丈夫なシートを被せてあるので、ロボットたちにとってはかなり足を取られてしまうため、移動が大変な機体も多かったようだ。これだけの機体が参加して行なうロボット競技というのはなかなかなく、もったいないので撮影できた4回分を掲載する。なお、ルールは赤と青に分かれ、ゴールに立てられたペットボトル数本を先に倒した方が勝ちというものだ。

【動画】バトルカオス1本目【動画】バトルカオス2本目
【動画】バトルカオス3本目【動画】バトルカオス4本目。最後はフィールドを広くして実施

 今回はロボカップジャパンオープン2009大阪との併催となったが、子供たちの観客が非常に多かったのが印象的である。やはりエンターテイメント性が十分にあるということなのだろう。ロボット競技会は、もっと子供たちが気楽に見られるような環境でどんどん開催すべきなのではないだろうかと強く感じた。2日目は以上で終了。翌10日の最終日には、冒頭で述べたように、ORC、SWROD7、ロボスターが実施された。こちらはまた改めて後編として別記事でお届けするのでお楽しみに。



(デイビー日高)

2009/5/15 16:50