セグウェイジャパン、設立記念記者会見を開催

~2013年にセグウェイの歩道走行を目指し、認識・移動技術を使ったロボット事業を展開


 5月14日、セグウェイジャパン株式会社は設立に関する記者会見を横浜市中区・創造空間万国橋SOKO内にある同社にて開催し、今後の事業展開、ビジネス概要とグローバル戦略について説明した。会見にはセグウェイジャパン株式会社 代表取締役の大塚寛氏のほか、米Segway社President&CEOのジム・ノロッド氏も出席し、セグウェイをベースとした移動ロボットのデモも行なわれた。

 セグウェイジャパン株式会社は2008年12月に設立された。2006年10月から日本SGI株式会社が国内正規総販売代理店だった立ち乗り電動二輪車「セグウェイ」の国内事業を本格的に展開することが目的であり、同社は「持続可能な社会システムデザインの実現」に必要な「モノ」「技術」「コンサルティング(人)」による貢献を目的とした企業であると自分たちを位置づけている。4月1日からセグウェイジャパンが国内正規総販売代理店の権利を得て、本格的な活動を開始した。社員数は7名。

 「セグウェイ」は現在、公道を走ることができないため法人向けのみに販売されている。だが同社ではこれからは近距離移動体の時代が来ると考えている。また、他の分野においても移動技術や感情認識技術など、同社が持つロボット技術を付与しながらサービスモデルを構築していくという。

 横浜に拠点を設けた理由は、横浜が多くの文化発祥の地であり、横浜からセグウェイを使った21世紀型のビジネスを構築したいと考えたのだという。また横浜市は「環境モデル都市」として採択されており、先進性のアピールという意味でも横浜が適していると考えているという。資本金は1,000万円。創業社員たちが出資した。まもなく増資を考えているが、米国セグウェイ社、日本SGIともに資本関係はない。販売代理店は株式会社クレセント、キャノンマーケティングジャパン株式会社、JA三井リース株式会社の3社。

セグウェイジャパン株式会社 代表取締役 大塚寛氏

 大塚氏は日本SGI時代を振り返ると「IT屋が考えるロボット事業」を考えて、研究開発を行なってきたという。少女型のフラワーガールロボット「Posy」、マネキンロボットなどが代表例だ。これらはまだ市場に投入されていないが、感情認識技術を使ったインターフェイス事業に関してはセグウェイジャパン社が引き継ぎ、コミュニケーション技術を使ったロボットへのコンサルティングとして展開していく。またセグウェイそのものだけではなく、プラットフォームロボットなど研究開発用のロボット販売も行なっていく。大塚氏は日本SGIでのロボット事業展開の8年間を「予習」として位置づけ、「本気でロボットのマーケットを作るために会社を設立した」と述べた。

 セグウェイは2001年に展開が始まり、2006年から第2世代の展開が始まっている。米国では警察や警備、また観光用のツアーのほか、一般コンシューマーも購入しているという。走行中にガスを排出しないこと、1回の充電で約40km走行できることなど環境にやさしい乗り物だとアピールした。国内では私有地のみしか走行できないが、イオン越谷レイクタウンMori、中部国際空港セントレアのほか、横浜ではパシフィコ横浜で警備に使われている。

セグウェイジャパン社の事業国内のセグウェイ導入事例ロボット事業はシステムインテグレーションで展開する予定

 セグウェイとしては、これからは公道走行を目指すことになる。大塚氏は4段階のフェーズを経て2013年に公道走行を目指すとし、ゲリラ的にやっていくのではなく、きちんとデータをとり、特区申請などをしながら道路交通法改正などを経てセグウェイの歩道走行を目指すと述べた。特に横浜は半径2km以内に観光に適している場所がいろいろある。だがそれぞれのコンテンツは点在しており、移動のためには電車を使う人が多い。そこをセグウェイでつないでいきたいとし、そのためにガイドの養成など人材養成も含めて事業を展開していきたいと述べた。セグウェイがあたりまえに走れる世の中を実現するために人、モノ、システムの充実を目指すという。

公道走行までの予定横浜でのパーソナルモビリティの可能性ID認識機能を備えたデジタルサイネージによるセグウェイレンタルステーションのイメージ(CG)。

 デモとして、人が乗車したセグウェイの後ろを、セグウェイと同じ技術を使った移動ロボットがついていくというものが行なわれた。カメラでセグウェイに乗った人のジャケットの色を認識し、レーザーレンジファインダーで一定の距離を取ってついていく。このようなシステムを使うことで、たとえば荷物をロボットに運ばせることができるという。今後、さまざまなロボット機能をモジュール化し、それをミドルウェア上で組み合わせることで、サービスに応じたシステムインテグレーションの提案をロボット事業として展開していきたいという。ミドルウェアに関しては、同社独自のもののほか、産総研の「RTミドルウェア」やMicrosoftの「Robotics Studio」などさまざまなものを扱っていく予定。

【動画】セグウェイの後ろを荷物運びを想定したロボットがついていく移動ロボットには認識用のカメラとレーザーレンジファインダーが付けられているジャケットの青色を認識、一定距離を保つ
米Segway社President&CEO ジム・ノロッド氏

 ノロッド氏は、米セグウェイ社のロボティクス・ビジネスについて解説。警備、一般商用、カスタマーの3領域を対象にしており、たとえば昨年の北京オリンピックの際は100名の警備員がセグウェイに乗って警備を行なったという。セグウェイガイドツアーはこれまでにない楽しい体験であり、ディズニーランドや、オーストリアでは雪上を走行するツアーも行なわれている。ゴルフプレーにも使われており、ノロッド氏はゴルフクラブを振ってアピールした。

 また、米国ではコンシューマーも重要なターゲットとなっているという。日本では規制があって公道を走行できないが、米国では事業のうち50%を占めている。またドイツでも公道での走行が認められ、市場が伸び始めている。特にセグウェイは半径10km程度の走行に適していると考えているという。また、先ごろ4月7日に発表された「P.U.M.A.」のコンセプトビデオほか、2輪のバイクタイプのプロトタイプ「STEELDUST」のコンセプト、4輪の「P.U.M.A.」などもビデオとCGで示された。「STEELDUST」は、今後1、2年の間に完成させていきたいと考えているという。なお「P.U.M.A.」はさまざまなハードウェア・ソフトウェアのパーツを組み合わせることにより、90日で作られたという。

ゴルフクラブを振るノロッド氏2人乗りの「PUMA」バイク型セグウェイ「STEELDUST」も開発中

 セグウェイジャパン社の年間販売台数目標は300台。今後、年々倍増させることを狙う。3年後には4桁の販売台数を実現することを目指す。他の車メーカーに対する米Segway社のアドバンテージとしては、ノロッド氏曰く、「シンプルに作っていくこと」があるという。自動車業界でも新しい自動車システムを考える上では、シンプルなものを選ぶ傾向があるという。横浜市に対しては規制を緩和して新しいモビリティ手段を提案していこうと呼びかけた。



(森山和道)

2009/5/14 18:29