ロボットプロレス「できんのか!3」レポート
~“涙のカリスマ”くまたろうが復帰戦でリングに沈む!
満席になったROBOSPOT |
2009年5月5日(火・祝)、東京・秋葉原のROBOSPOT特設リングにて、ロボットによるプロレス「できんのか!3」が開催された。ROBO-ONEの翌日という日程ながら、室内は満席。立ち見が出るほどの熱気の中、密度の濃い7試合のパフォーマンスが行なわれた。
「できんのか!1」の草加、「できんのか!2」の長井に続き、秋葉原で開催されることになった「できんのか!3」。第15回ROBO-ONEの会場で流された認定大会紹介ビデオに大会告知を紛れ込ませた効果があったのか、大会翌日となる開催日には、開始前から20席ほどの椅子が埋まり、立ち見が出る盛況を見せた。会場に訪れた中には、前日のROBO-ONEで優勝した「Bi-Ma」チームを筆頭に、準優勝「automo 05(Go-Wan)」のholypong氏、4位の「Stormwaves Light」チームなど、多くのロボットビルダーが含まれていた。また、3位だった「rsv3」のチームさくさくも参加していたため、ROBO-ONEのベスト4が一堂に会した、超豪華な顔ぶれが揃う二足歩行ロボットイベントとなった。以下、試合を順に紹介する。
●第1試合 フューチャーファイト(5分3本勝負)
【動画】カルマ(左) vs ゼルファー |
ロボットプロレスの未来を担う、若手同士の一戦として組まれた“フューチャーファイト”。高電圧(HV仕様)でスピードが自慢のカルマに対し、非力な6Vながら試合経験で上回るゼルファーという組み合わせである。
スピードに任せて試合開始後すぐにダウンを奪ったカルマは、続けて押し込もうとするものの、腕を取られて逆にダウンを奪われる。ここからのし上がっていこうという新人同士の戦いだけに、お互いにダウンを奪い合った2-2のイーブンまでもつれ込んだのだが、最後は組み合ったところから、強引にいったカルマにゼルファーがのど輪落としを決め、TKO勝ち。“初心者上等”の看板を背負ったゼルファーの、怖い者知らずな今後の試合に期待したい。
×カルマ 【3分32秒 喉輪落とし→TKO】 ゼルファー○
●第2試合 シングルマッチ(約5分1本勝負)
【動画】ナガレゴールド(関東本部) vs GAT |
フラワー戦隊ナガレンジャーの「山形本部」に勝利し、「支部」から「本部」へ下克上を成し遂げた「関東本部」だったが、その戦いの中で活躍したナガレゴールドのレベルアップのため、ミステル・タマオ総統が“お笑い”をメインに据えた試合をマッチメイク。企画会議を経て「フォークダンスを踊る」「時報が鳴ったらずっこける」「音だけでシュールに戦う」という3つのルールを組み込んた試合は、企画会議の様子を収録したオープニング映像によって、観客にも周知されたうえで始まった。
そもそも真剣勝負の大会でもオイシイ立場になると「よし!」と大喜びするGATが相手だけに、試合運びは順調。音での勝負でも決着がつかず、さあどうオチを付けるのかと観客が期待する中、会場内を飛び始めた(らしい)ハエを退治しようと、GATが振り回したハエ叩きがナガレゴールドにヒット。たまらずダウンしたナガレゴールドは立ち上がれず、そのままGATのノックアウト勝ちとなった
×ナガレゴールド(関東本部) 【6分16秒 ハエ叩き→KO】 GAT○
●第3試合 カウントダウン60~炎の自律5番勝負(第2戦)(5分3本勝負)
【動画】こめた(Mr.K、右) vs ナガレブラックタイガー(関東本部) |
自律格闘ロボットであるナガレブラックタイガーが、長井大会で負けてしまったリベンジとして、格闘システムを組み直して臨んだ第3試合。勝利しなければ後はないと告げられたこの試合の相手「Mr.K」として会場に現れたのは、ロボットサッカー「KONDO CUP」などで活躍するこめただった。
ナガレブラックタイガーは早々に1ダウンを奪ったが、そのとたんに会場が停電トラブル。すぐに復旧したが、明るくなったときにはこめたが3機に分身。シンクロしながら襲いかかってくる異様な試合になった(特別ルールにより分身のダウンも試合内のダウンとしてカウントされる)。人間なら混乱するところだが、そこは自律ロボットのナガレブラックタイガー。あくまで格闘システムの指令に従って冷徹にこめたからダウンを奪い、分身1機を破壊すると、あっという間にもう1機もダウンさせ、試合を決めた。
×こめた(Mr.K) 【2分24秒 右ジャブ→TKO】 ナガレブラックタイガー(関東本部)○
●第4試合 KONDO時間差バトルロイヤル(時間無制限)
【動画】バトルロイヤル。最後は山手線とドカレッド1の一騎打ち |
第4試合は、時間差で続々とロボットがリングインし、時間無制限で戦う中で生き残った者が勝利という、バトルロイヤル。
最初にリングインしたのは、この日の会場・ROBOSPOTを運営する近藤科学のKHR-2HV。続いてKCB-2を搭載したタミヤのボクシングファイターが入場。その後KHR-2HVの改造機である小雪とカルマが入場し、いよいよ“まともな”ロボットの入場が続くかと思われたが、どこかで聞いたメロディーとともに入線入場したのは総武線。続いて山手線までが入場し、リングはカオス状態に。そんな混乱するリングへ最後に登場したのは、前日のROBO-ONEでもどよめきを呼んだドカレッド1。さすがに純格闘ロボットであるドカレッド1は、ほとんどの機体が残っていたリングを縦横無尽に動き、山手線をのぞいてすべてのロボットを葬り去ってしまう。
あとは歩くだけで終わり……と思われたが、リング際まで山手線を運んだドカレッド1がよもやのリングアウト。勝者は山手線となった。山手線がロボットかどうかは意見が分かれるが、筆者はその定義をマイコンを搭載したモーター駆動のガジェットと考えることにして、夜眠れなくなる事態を避けることにした。
×ドカレッド1 【14分16秒 リングアウト】 山手線○
●第5試合 関東ロボットヘビー級タッグ選手権試合 (60分6本勝負)
【動画】rsv-3、さくら2号(右) vs キャバリア、で・か~る |
草加大会で初の関東ロボットヘビー級タッグチャンピオンとなったrsv-3、さくら2号組に、出ばやしよりもブーイングの方が大きく聞こえた、関東の“悪役商会”キャバリア、で・か~る組が挑戦した選手権試合は、立ち上がりにキャバリアがさくら2号から2ダウンを奪い、ブーイングを浴びたが、代わったrsv-3が娘の敵とばかりに、ROBO-ONEの列強を沈めたその鎌でダウンを奪い返す。途中、ダウンしたで・か~るが不調となり、キャバリアとrsv-3の一騎打ち状態となると、前日のROBO-ONEでの好調を保っていたrsv-3が逆転。最後は乱戦状態になるが、やはりrsv-3の鎌が決定的なダウンを奪い、rsv-3、さくら2号組が防衛を果たした。
×キャバリア、で・か~る(挑戦者)【9分37秒 引き落とし→TKO】 rsv-3、さくら2号(チャンピオン)○
●第6試合 関東ロボットヘビー級選手権試合(60分3本勝負)
【動画】サアガ vs デュミナス |
草加大会でのチャンピオン・ヨコヅナグレート不知火二代目を地下の闇大会で葬り去り、ベルトを奪ったサアガが、今回は太陽の下で堂々と挑戦を受けるという一戦である。対するはサアガの弟子筋でありながら、師匠を超えるために挑戦するというデュミナス。夫・ファントムとの間にできた子供“デュミ卵(らん)”のためにも負けられないと気合いが入っていたデュミナスは、開始早々の挑発合戦をみずから打ち切り、鉄拳でダウンを奪って宣戦布告する。続いてダウンを奪い、試合を有利に進めるかと思われたが、途中で足にトラブルを抱え不安定に。それを見逃すサアガではなく、ジャーマンスープレックスで最初のダウンを奪うと、間合いを取ろうとするデュミナスの背後に突きを見舞い、あっという間にイーブンに。たまらず助けに入ったファントムと2人を相手に、サアガは両機をダウンさせ続ける。最後は“投げの鬼”らしく、フロントスープレックスでデュミナスを沈め、防衛を果たした。
×デュミナス(挑戦者) 【6分16秒 フロントスープレックス→TKO】 サアガ(チャンピオン)○
●メインイベント くまたろう復帰戦(時間無制限1本勝負)
【動画】くまたろう(手前) vs ガルー |
草加大会で膝の古傷を理由に引退したロボットプロレス界のカリスマ、くまたろうは、弟子のいぬじろうに選手生命の危機となるほどの大けがを負わせたガルーに復讐するため、このメインイベントで復帰することになった(なぜ復帰するに至ったかのエピソードは公式サイトで動画を見られるので、是非)。
復帰戦とは思えないほどに軽快な動きを見せたくまたろうだったが、現役として脂ののりきったパフォーマンスを見せているガルーにとってはちょうどいい的となってしまい、何度となくダウンを奪われる。だが、くまたろうもあきらめずに立ち上がり、ガルーに挑み続ける。
そんな中、スリップしたガルーが立ち上がれなくなったのを見て、残る力を振り絞ってコーナーに上ったくまたろうは、ファイヤーバードスプラッシュを決め、そのままフォール。だが、ガルーはカウント2.9で返してしまう! くまたろうはもう立っているのもやっとという状態で試合を続けようとするが、ふらふらと無防備な体勢のまま、吸い込まれるようにガルーの前に入ってしまう。ガルーはそのくまたろうをがっしりと捕まえると、渾身のジャーマンスープレックスホールドからフォールし、死闘に終止符を打った。
×くまたろう 【7分31秒 ジャーマンスープレックスホールド】 ガルー○
2009/5/14 01:00