ノモケンの「素組でロボット」
バンダイ 1/100スケール MG「MS-07B グフ Ver.2.0」(その1)

~「ザク」系列の改良強化新型が「MG Ver.2.0」で登場

Reported by 野本憲一

 このコーナーは「ロボットのプラモデル」を組み立てて、その姿やギミックを中心に紹介していく。作り方は、塗装などをせず、あえてキットのまま組み立てていく“素組(すぐみ)”に限定。ここでは模型としての仕上がりを高めるよりも、キットを手早く楽しむことを優先させるのだ。

 最近のキットは、成型色(パーツの素材色)だけでもかなり色分けされていて、無塗装でも見栄えのする姿に仕上がるものも多い。また、塗装の剥がれを気にせずに動かして遊ぶこともできるのもメリットだ。購入した模型を貯め込まずドンドン組むためにも、レッツ素組!


 アニメ作品「機動戦士ガンダム」に登場するジオン軍モビルスーツ「グフ」。作品初期の“敵メカ”「ザク」に続く新型として、劇中に登場。古参パイロット「ランバ・ラル」の台詞、「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」と共に覚えている人も多いだろう。

 モビルスーツ「グフ」は「ザク」の改良進化型という設定。甲冑をイメージさせる厳ついシルエットを持ち、武装も「フィンガー・バルカン」「ヒート・ロッド」「ヒート・サーベル」などモビルスーツ同士の接近戦向きの装備となっている。「ランバ・ラル」搭乗機がガンダムとの熾烈な闘いを繰り広げたほか、「オデッサ作戦」や「ジャブロー攻防戦」などでも使われた。

 今年5月に発売された新作1/100 MG「MS-07B グフ Ver.2.0」。キット内容は2007年に発売された「MG ザクVer.2.0」シリーズの流れを汲むもの。といってもフォーマットを引き継いだだけではなく、そこは「グフ」ならではの再現と、2年間の進化が盛り込まれている。

 アニメ設定でも、模型としても「ザクの発展型としてのグフ」をこのキットで体験してみよう。

パッケージ
バンダイホビー事業部 1/100スケール マスターグレードモデル「MS-07B グフ Ver.2.0」。劇中では「シャア専用ザク」に変わる強敵として登場。はめ込み式スナップフィットモデルで、価格は3,990円
ランナーパーツ
パーツは13枚のランナー枠で構成。材質は外装パーツがポリスチレン、内部フレームや関節パーツがABS。関節のポリキャップや動力パイプ軸、ヒート・ロッド用などがポリエチレン。細部マーキング用にシールとドライデカールが付属する
ザクVer.2.0との共通パーツ
関節パーツなどのランナー枠「G」「I」はザクVer.2.0用が使われている
ザクVer.2.0との共通パーツ
左から「G」、「H」パーツ。グリーンの部分(画像を加工)は不要パーツ。それらパーツがグフ用パーツとどう違うか比較するのも面白い
Iパーツ
動力パイプの芯やヒート・ロッドのパーツは、軟質樹脂(ポリエチレン)製でこのように成型されている
Cパーツ
「ザクVer.2.0」では動力パイプは各コマと芯が挿入状態で成型されていたが、「グフ」では別になっている。とはいえ基本的には同じ手順
完成状態 全身
巨大な角、鋭角的な各部形状に加え、ムチ、シールドなどを装備。機体のキャラクター性が伝わってくるデザインだ
完成状態 後面
背面にはザクよりも大型になったランドセルを装備する。
付属フィギュア
同スケールのフィギュアも付属。左から、ランバ・ラルとクラウレ・ハモン。他にコクピットに着座するパイロットもある

頭部

 組み立て説明書とは順序が異なるが、頭部から順にパーツの様子やギミックを紹介していこう。

頭部全パーツ(パイプ部を除く)
頭部パーツ群。中央のポリキャップが首の回転軸になり、そこに内部パーツを組み上げていき、最後に青い外装パーツを取り付ける
首、内部下側、モノアイ
左からモノアイ、頭内部下側。右の首部品の上にこれらを重ねていく。首部品に中央の軸がピニオンギア状になっているのに注目
モノアイ
頭部カメラとなるモノアイ基部を下側から。こちらもピニオンギアの様になっている。レンズ部はクリアーパーツ。先端のピンクは付属のシール
内部下側
首上部を組み立てたところ。首中央と、モノアイ側のギアがかみ合っている。顔を左右に振るとモノアイも合わせて向きを変えるようになっている
頭部内完成
内部上側とモノアイのバイザー(クリアーパーツ)を取り付けた状態。バイザー越しにモノアイが見えることになる
【動画】首から上は上下に振れる。頭部を左右に振ると、モノアイがさらに大きく向きを変える。正面に戻すと頭部の向きと揃う
頭部外装取り付け
頭部外装は前後からはめ込む。続いてパイプ基部を取り付ける。
外装取り付け後
ほぼ完成した頭部。巧みなパーツ分割で、特に正面からパーツの合わせ目が目立たないようになっている。

動力パイプの組み立て

 このキット製作のポイントとなる動力パイプ部。手順に沿って詳しく紹介しよう。

パイプパーツと芯
グレーのパーツが動力パイプの芯。パイプに刺していく直線部分と完成状態で使う曲線部分が繋がっている
パイプ、芯の断面
パイプの内形、芯の断面とも「D」型になっており、各コマの向きが揃うようになっている
芯をパイプに通す
ランナー枠からパイプの各コマを貫くように芯を刺していく。
ゲートを切り取る
並んでいる5コマを刺したらゲートを切り、芯の奥側に寄せる
続いてパイプを通す
同様に続けていき、コマ数を増やしていく
コマを揃える
必要な13コマ分を通したところ。直線部分に丁度収まるようになっている。尚、パイプパーツは2コマ余るので、無くしても安心。
ゲート処理
向きが揃って並んでいる状態でゲート跡を仕上げる。個別にするよりも揃えやすい
ゲート処理後
ゲートの隣に台形のモールドがあるので、そこまで削らないように注意しつつ仕上げる
曲線部に移動
仕上げ終わったら曲線部にずらしていく。ここも断面が「D」型なので向きを揃えやすい
連なるコマ
向きを揃えていくとコマ同士の隙間が少なく、綺麗にまとまる
パイプ部完成
不要になった芯の直線部分を切り離して動力パイプの完成
頭部に取り付け
動力パイプを頭部の前後に差し込む。後ろは円形パーツで取り付け部を覆う
頭部完成
ヒゲのような動力パイプがついて完成した頭部
頭部側面
力強い曲線で跳ね上がっているのがグフの動力パイプの特徴。しっかり芯が通っているので、形が崩れることもない
頭部後面
頭部形状はザクよりも下にすぼまっていて、球に近い形状

胸~腹部

 胴体は胸、腹、腰の3ブロック構成。胸部には胴体側の肩関節軸やコクピットが内蔵される。腹ブロックはそれを腰とつなぐ役で、前屈などの動きも可能。

胸部内部パーツ
胸部は大きく前後と上面に分割。左右に引き出し式の肩関節を内蔵する。コクピットは胸の中央下に収まる
コクピットとパイロット
コクピットのバスタブとパイロットフィギュア。完成後は奥まって見にくいのだが、抜かりなく再現されている
コクピット取り付け
コクピットを胸前側パーツに取り付けた状態
胸後面パーツ
胸後面パーツに角形ポリキャップを入れる。これはランドセルの取り付けを受ける部分
肩関節
左右3パーツで構成される引き出し式の肩関節。先端が球になった軸が腕が着く部分。短いシリンダー状パーツは軸の引き出しに合わせてスライドする
肩スイング軸
肩を引き出すときの回転軸。軸パーツが抜けないように先端に“かえり”がついている
胸前後取り付け
肩関節を左右に挟むようにし胸内部を前後はめ込む
上面取り付け
さらに上面パーツを取り付ける。首軸部は球体で、既に紹介した首部の関節の他、ここでも向きを変えられる
腹パーツ
腹パーツは左右と腰軸を受ける部分の4パーツ
腹パーツ組み立て
前、上に開いた箱状になる上側に「C」部分が胸とかみ合う
腹パーツ取り付け
腹パーツを胸側面の軸に取り付ける。ここはパチンとはまる
胸~腹 内部完成
胸と腹の内部が完成した状態
背面
同じく後ろから。これは前屈させた状態で、この時にしか見えない部分も蛇腹状のモールドが施されている
【動画】肩関節軸を前側に引き出す機構。銃やヒート・サーベルを両手で構える際に大きな助けになる【動画】胸を前屈動作。この際、コクピットも前後に動くことになる
胸~腹、外装パーツ
胸、腹の外装パーツ。オレンジのパーツはコクピットハッチの三角部分にはまる。アニメ設定ではイエローだが、ヒート・サーベルに成型色を合わせてクリアーオレンジとなっている
腹外装取り付け
腹の外装は1パーツで下から被せる
コクピットハッチ
コクピットハッチは裏面にオレンジパーツを重ねる。これがハッチ開閉ヒンジも兼ねる
ハッチ取り付け
ハッチの左右をコクピット両側の短い軸にはめ込む
胸部外装取り付け
さらに胸の左右と全面パーツを被せる
胸~腹の完成
各外装がピッタリ合うのはもちろん、コクピットハッチも周囲と隙間無く収まる
コクピットハッチ開
ハッチを開いた状態。やや下から覗くと、コクピット奥まで見える
背面
内部が見える部分はこの後ランドセルが付き、隠される
【動画】コクピットハッチの開閉。胸内部にハッチが収まる様に動く

ランドセル

 跳躍の補助や、降下のショックを和らげる推進器を搭載したランドセル。ここも内部と外装の構成になっている。

ランドセル全パーツ
内部メカの左右に動力パイプの受けが付く。ノズルはボールジョイントで接続
ランドセル内部
ランドセル内部を組んだところ。彫りの深いメカ表現がなされている
ランドセル完成
外装を上下から被せてランドセルの完成
ランドセル取り付け
胴体へは左右3本のツメのような部分を差し込んで固定する
ランドセル取り付け後
背面を覆うように取り付けられたランドセル

腰部

 腰部は股関節やモモを囲うようなデザインでありながら、モモの振り上げなど可動範囲を広くとりたいという難しい部分。さらに腰前にはパイプが延びている。それらを避けるために巧みな分割、アーマーの接続がされている。

股ブロックパーツ
腰部の中心となる股ブロック。左右パーツの間に、股関節の軸受けを挟み込む
股ブロック組み上げ
股ブロックの完成。上部の軸は腹パーツへ接続。オプションの展示スタンドはこのパーツの下部に接続することになる
腰部パーツ群
股ブロックの上部、前側に取り付けるパーツ群。丸いパーツは動力パイプの取り付け基部
小アーマー部
青い小アーマー、腰前アーマーの上側のみ分割された状態。左右繋がった部分でグレーのメカ部に取り付け、前後に少し可動する
動力パイプ基部
前側には動力パイプの基部を取り付け。これを股ブロック前側に取り付ける
腰前、側面アーマーヒンジ
さらに腰中央アーマー、側面アーマー用ヒンジを股ブロックに取り付ける
側面、後面アーマーパーツ
腰の側面、後面のアーマーパーツ。股ブロックと接続する内張パーツと外装の構成。腰前アーマー下側は側面パーツ側にポールジョイントで接続する
後面アーマー内側
後面アーマー組み立て。2点のボール部をつなぐ横軸を股ブロックに取り付ける。
後面アーマー外側
中央の小さく外に倒れた部分はザクバズーカのラック。その下の丸い穴はザクマシンガンのマガジンやヒートホークが取り付けられる。機能面でもザクを引き継いでいる表現といえる
側面アーマー
側面アーマーの内張に前側アーマーを取り付ける。これまでにない接続方法
側面アーマー取り付け
股ブロック左右のボール部に側面アーマー内張接続。後面アーマーも後ろにはめ込み
腰アーマー取り付け後
腰各アーマーを揃えたところ。腰前アーマーはパイプに隠れる部分で分割されている
側面アーマー展開
脚部を大きく動かしたいときには、側面アーマーを後ろに回り込ませてから、腰前アーマー振り上げスペースをつくる。腰上部のヒンジの動きにも注目
頭部、胸~腹、腰部
これまでに完成した頭部、胸~腹、腰部。各部を上下に接続し胴体がほぼできあがる
頭部~腰部取り付け
頭部~腰部までを接続したところ。あとは腰の動力パイプが足りない
腰部動力パイプ製作
腰の動力パイプの組み立ては太さやコマ数が違うが、行程は頭部の時と同様。一本15コマを芯に通して進める
動力パイプ
腰用の動力パイプが仕上がった。先端がボールの方はランドセル側面に取り付ける
胴体 完成
動力パイプを取り付けて組み上がったグフ胴体。腰回りの分割はこれでほとんど隠れる。可動と外観のかね合いは作を重ねたことでの進化といえるだろう
胴体 背面
腰後面や側面アーマー部の武装マウントはザクと共通なので、武装を装備させたり、バリエーションモデルとしての遊びも楽しめる
【動画】完成状態であらためて頭部とモノアイの連動。“流し目”のようにモノアイが動く。尚、首の根元ごと動かせばモノアイ動かずに顔を左右に振ることも出来る

 今回はここまで。次回は、腕、脚部、武装を取り付け、完成体としてその姿を紹介する。

(C)創通・サンライズ


野本憲一(のもと けんいち)
職業:プロモデラー。1967年新潟市生まれ。プラモデルやトイ、ガレージキット等の原型製作に携わると共に、模型専門誌ライターとしても活動すること20余年。著書に模型製作テクニックをまとめた「NOMOKEN(野本憲一モデリング研究所)」(ホビージャパン)がある。




2009/8/5 13:34