ノモケンの「素組でロボット」
コトブキヤ「1/100 MBV-04-G テムジン(Ver.1P)」(その2)

~アルミ蒸着シートでクリアパーツをディティールアップ

Reported by 野本憲一

 このコーナーは「ロボットのプラモデル」を組み立てて、その姿やギミックを中心に紹介していく。作り方は、塗装などをせず、あえてキットのまま組み立てていく“素組(すぐみ)”に限定。ここでは模型としての仕上がりを高めるよりも、キットを手早く楽しむことを優先させるのだ。

 最近のキットは、成型色(パーツの素材色)だけでもかなり色分けされていて、無塗装でも見栄えのする姿に仕上がるものも多い。また、塗装の剥がれを気にせずに動かして遊ぶこともできるのもメリットだ。購入した模型を貯め込まずドンドン組むためにも、レッツ素組!


 前回に引き続き、コトブキヤの「テムジン」を製作する。今回は脚、武装を組み立て完成させたあと、簡単なディテールアップも施してみる。

 キットについてはすでに紹介したように、造形面ではハイエンド3DCGを基にしているため、見る人のイメージを損なうことはないといっていいだろう。といっても、プラモデル化する段階で、関節ギミックや色分け、パーツの厚みや、組み立てやすさなど、さまざまな制約があるので、3DCGがあるからといって、たやすく設計できるわけではない。特にコトブキヤのプラモデルは組んだだけでも十分な色分けがなされる「マルチカラー」を“ウリ”としているので、そのためのパーツ分割は、決められた形の中で工夫を凝らす必要がある。

 そんなところにも注目しつつ、製作後半を進めていこう。

パッケージ
コトブキヤ 1/100 「MBV-04-G テムジン(Ver.1P)」。初期の「電脳戦機バーチャロン」に登場する代表的なバーチャロイド。価格は5,040円
各色パーツ
機体のカラーリングを素組でもできるだけ再現できるよう、7色もの成型色が使われている
前回までの製作状態
前回は頭部、胸~腹、腰、腕を製作した

脚部

 モモ~ヒザ~スネまでと、足首アーマー、足首の3ブロック構成になっている。

ヒザ関節パーツ
モモとスネ側をつなぐヒザ関節部の全パーツ。大きく穴の開いたところがヒザの回転軸。さらに上側にも小さな軸がある
ヒザ関節組み立て
ヒザ関節中心部分を左右貼り合わせ。上側の関節はアーム状のパーツを挟む込む
ヒザ関節組み立て2
下側はヒザの回転軸となるパーツでさらに挟み込む。写真上側がヒザの表側
スネ内部パーツ
スネ内部でヒザ関節から足首までをつなぐパーツ。単に内部フレームではなく、それぞれの色の外観表現も兼ねる
ヒザ、スネ接続
ヒザ関節と足首側を黒いパーツで挟み込むようにつなぐ
モモ~スネ外装
ここまで作った部品に被せる外装パーツ。上にあるのは股関節のボール軸受け
外装取り付け
ヒザアーマーはスネ側に付く。股関節部は箱状にしたあとヒザ関節とごと外装で囲む
モモ~スネ完成
ふくらはぎの曲面部分でも内外装のパーツがピタリとあって、綺麗に色分けされる。
ヒザ可動1
ヒザ関節の可動範囲は広く、下側の軸で曲げるだけで直角以上に曲がる
ヒザ可動2
さらに上側の軸も使うと、二つ折りにちかくなる
足首アーマーパーツ
スネと足首を繋ぎつつ、関節部の隙間をカバーするパーツ。ここも内貼りがありパーツ点数は多い
足首アーマー組み立て
前後、内部、関節軸をそれぞれ組んだ状態。四角い枠の部品は関節軸パーツを中に通す
足首アーマー完成
前側アーマーと関節パーツは小さなボールで接続。四角い枠パーツはフリーに動いて隙間を埋める
足首アーマー前側
グレーとホワイトパーツの境目がしっかりと「凹」で整形されているのが分かる
足首全パーツ
足首はボール軸受けのみで可動。ポリキャップをはめるL型部品の向きが違うのみで、左右とも共通
足首組み立て
ポリキャップを収める左右面と足底を合わせると大まかな形ができる。そこに周囲のパーツを取り付けていく
足首完成
完成した足首。合わせ目も目立たず、彫りの深いモールド表現が映える
足首完成2
同じく後ろ側から。カカト側の青い部分は、回り込んだ凹みを合わせ目を出さずに再現するため、パーツ分割されている
脚部、各ブロック
組み上げた、脚部各ブロック。足首関節はスネ側の小さなボール部と、足首側の大きなボールで構成される
脚部完成
それぞれを接続して完成した脚。スネから足の甲まで一連の流れが感じられる造形

全体を組み上げる

 上半身、下半身のパーツが揃ったところで全体を組み上げてみた。

全身の各ブロック
頭部、胸~腹、腰、腕、脚と各ブロックが揃った。背部ユニットがまだだが、ここで人型に組んでみよう
全身前
細身だが、安定感があり均整のとれたプロポーションとなっている。頭部アンテナまでの全高は165mm
全身後ろ
背部ユニットがない状態。背中から脚部後面まで弓なりに面が連なる
全身ポーズ1
大胆なポーズ付けもできる。関節を大きく動かしても四肢のつながりに違和感が出ないのがいい
全身ポーズ2
こんな風に片足で立つこともできる

背部ユニット(Vコンバータ)

 セガサターンがモチーフになっている背面ユニット。展開ギミックも再現される。

背部ユニット全パーツ
小さなユニットだが、展開ギミックもあるのでパーツ数は多い。一部は差し替えパーツだ
背部ユニット組み立て
上に開くフタ部分、下のボックス部分ともクリアーパーツをはめ込んで組む。ボックスから出た「板」がフタのヒンジパーツを通り、機体背面に固定される
背部ユニット組み立て2
左右に開く部分。ボックスへの取り付けヒンジをブルーのパーツで挟み込む。ヒンジはピンが小さいので扱いに注意
背部ユニット組み立て3
中央のボックスにフタと左右展開パーツを差し込む。これが展開状態でもある
背部ユニット完成
それぞれを閉じて、通常の状態は完成
背部ユニット展開
開いた状態では、中央にディスク、左右の裏面に四角ノズルパーツを差し込む。これで展開状態の完成

武装

 ビームランチャーやサーベルとしてつかう「MPBL-7」。持ち手の右手首と共に使う。

武装全パーツ
色分けと共にそれぞれがほぼ半分に分かれたパーツ構成。形状は左右対称
武装組み立て
黒いパーツを中心に、そこに被せたり、挟み込んでいくように各部を組み立てる。
武装完成
完成したランチャー
武装と手首
ランチャーのグリップにはミゾがあるので、これと手のひらのピンをはめ合わせて手首を固定する。一旦、指パーツを外して取り付ける
武装と手首2
グリップを持った状態、指も回り込んでしっかり持った姿になる

完成

 背面、ランチャーを取り付けて、デカールを貼り付けて完成。

デカール
各部のマーキングを再現するデカール(水転写シール)。モモの帯は外観上でのポイントになる
全身前
ランチャーを装備し完成した姿。長めなので、上手く脇に抱えてポーズ付けしたいところ
全身後ろ
背面アップ
Vコンバータ部のアップ。細かくモールドされているので、スミ入れや細かく塗り分けるとさらに映えるだろう
背面アップ2
Vコンバータの展開状態
デカールアップ
各部に貼られたデカール。モモの帯はポーズ付けをしていると、こすれて剥がれやすいので扱いに注意

クリアー部を輝かせる

 素組としては完成したが、今回は簡単なディテールアップを行なってみる。金属シールを使って、クリアーパーツをさらに輝かせる。

説明書から
説明書でもクリアーパーツについて「裏面に市販の金属シートを張り込んだ後、取り付けるとより綺麗に仕上がります」と紹介されている
金属シール
ここで使うのは「アルミ蒸着シート」。表面が金属色の薄いテープで、セメダイン社の「キッチンテープ」(420円)や「ラピーテープ」(262円)などがある
テープの裏面
使うのはテープの裏面。表面が色つきでも裏はシルバーなので、どれでも同じように使える
クリアーパーツに貼る
テープのノリの付いた面にクリアーパーツを貼り、しっかりと密着させる
余白を切る
余白をデザインナイフなどで綺麗に切り取る。余白があるとパーツのはめ込みがうまくいかなくなる
パーツを取り付ける
テープは極薄いので、スナップフィットを活かしてそのままはめ込める。これでOK
クリアーパーツ比較1
こちらはノーマルの状態。クリアーパーツの下地の色(黒、青)が透けているのが分かる
クリアーパーツ比較2
こちらは金属テープを貼った状態。下地の色の影響も無くなるし、それぞれが輝いている
全身
ランチャー側面など全身のクリアーパーツに施した状態。クリアーパーツ裏の格子模様も映える

スタンド展示

 このキットには別売の展示スタンドの取り付けパーツも付いている。スタンドを使えば飛び上がったポーズでも飾れる。

スタンド接続パーツ
キット付属のスタンド接続パーツ。股の下側に取り付ける
スタンド
コトブキヤの「メカニカルベース フライング2」(630円)。アームの先端にキットの接続パーツを取り付ける
スタンド取り付け
スタンドを取り付けた状態。アームは後ろから前に出るようにすると目立ちにくい
スタンド展示
跳びポーズや機体を傾けた状態でも保持できる。キットの可動範囲の広さもより活かせるだろう
パッケージのポーズ

 素組から、さらに手を加えてみた今回のテムジン。作ってみるとキットの素性が良さが感じられる。造形物としてクオリティの高い3DCGを基にし、カラーリング、ギミックまで再現した内容は、ゲームユーザーにもモデラーにも満足いく内容といえるだろう。

 尚、今回の「テムジン」はシリーズ2作目で、第1作は「1/100 HBV-502-H8 ライデン(DNA SIDE)」が発売済み、最新の第3作「1/100 RVR-87 スペシネフ(DNA SIDE)」は6月に発売済みだ。

(C)SEGA CHARACTER DESIGN:KATOKI HAJIME


野本憲一(のもと けんいち)
職業:プロモデラー。1967年新潟市生まれ。プラモデルやトイ、ガレージキット等の原型製作に携わると共に、模型専門誌ライターとしても活動すること20余年。著書に模型製作テクニックをまとめた「NOMOKEN(野本憲一モデリング研究所)」(ホビージャパン)がある。




2009/7/8 00:00