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「つくばチャレンジ2008トライアル走行」レポート
~47台中22台が100mのトライアル走行に成功


 つくばチャレンジは、人々が生活しているリアルワールドの中で、ロボットが確実に動き回って働くための技術の追求をテーマとして行なわれる、自律型ロボットによる技術チャレンジである。つくばチャレンジは昨年初めて開催され、今年が2回目の開催となる。今回は、11月20日(木)に100mのトライアル走行、翌21日(金)に1kmの本走行が行なわれた。本走行に出場できるのは、トライアル走行をクリアしたチームのみだ。そこでまず、トライアル走行の様子をレポートしていきたい。


トライアルは2回のチャンスがあり、制限時間は12分

 つくばチャレンジ2008では、大学や研究機関、企業、有志、個人など、合計50チームがエントリーしたが、11月20日のトライアル走行に実際に出場したのは47チームであった(棄権が3チーム)。つくばチャレンジ2008のコースについては、試走会レポートを参照していただきたいが、今回は距離は同じ1kmでも、500m地点でUターンして折り返す必要があるなど、難易度が格段に向上している。11月20日に行なわれたトライアル走行では、コースの100m地点にゴールテープが貼られ、そこを通過したチームがトライアル達成となる。トライアルには2回挑戦でき、1回目のチャレンジで100mを完走したチームは、2回目のトライアルを行なう必要はない。

 つくばチャレンジは、あくまで技術チャレンジであり、スピードを競う競技会ではないが、大会運営上制限時間は設けられており、トライアルの場合は12分以内に100mを走破する必要がある。また、トライアルのゴールは100mだが、200mまでは走行を続けることが許可されている。トライアルは3分間隔でスタートが行なわれるので、速いロボットが、先行した遅いロボットに追いつく可能性もある。


つくばエキスポセンターの敷地に、各チームの調整エリアが設けられた。電源は各チームで確保する必要がある 最初に財団法人ニューテクノロジー振興財団の田代氏が、ルールや注意事項などについて解説を行なった

トライアルは本走行のコース(1km)の最初の100mで行なわれる 100mのところにゴールラインを示すテープが貼られている

1回目のトライアルで17台が完走

 トライアルは本走行の1/10の距離とはいえ、スタート直後に直角に左に曲がる必要があり、そこから少し進むと、今度は右に進路を変えなくてはならない。そのため、GPSやオドメトリ情報、レーザーレンジファインダー、地磁気センサーなど、各種のセンサーを活用して、自己位置を推定し、目標経路に沿うように進路を制御する必要があり、決して簡単な課題ではない。

 しかし、昨年に続いて参加していたチームは、昨年の経験を活かしてハードウェア、ソフトウェアとも改良を行なってきたようで、ロボットの技術は大きく進歩していた。1回目のトライアルで、実に17台ものロボットが100m完走に成功した。午後からは1回目で完走できなかったチームが2回目のトライアルを行ない、5台のロボットが完走。合計22台ものチームがトライアルの課題を達成した。ちなみに昨年は、より簡単なコースであったが、トライアルに成功したのが27台中11台(エントリーは33台)であり、完走率も向上している。

 タイムはあくまで参考だが、最速タイムを記録したのは、北陽電機・産総研ジョイントリームの「HOIST2」の1分46秒(HOIST2の写真や動画については、本走行レポートに掲載予定)、2位はヤマハ発動機つくばチャレンジタスクフォースチームの「JW-Future」の2分12秒であった。

 以下に、完走に成功したロボットやユニークな設計のロボットを中心に、出場ロボットの写真や動画を載せるので、つくばチャレンジに興味を持った方は是非見ていただきたい。つくばチャレンジは、まだ歴史の浅いチャレンジであり、完走するための方法論が確立されているわけではなく、ロボットによって、移動経路を決定するアルゴリズムや走行メカニズムが異なるので、そのあたりを見比べると面白いだろう。


トライアルの口火を切ったのは、明治大学黒田研究室-Bチームの「INFANT-Pro」 【動画】INFANT-Proのスタートの様子。スタート直後に、左に直角に曲がる必要がある 【動画】INFANT-Proの1回目のトライアルは、途中で経路を見失って、クルクルと回転を始めてしまい、30m地点でリタイヤ

宇都宮大学尾崎研究室チームの「ERIE」。トライアルでは2番目に出走した 【動画】ERIEのスタート直後の直角ターンの様子。前方に一時停止させたINFANT-Proがいたが、うまく避けている

【動画】スタート直後の直角ターンのあと少し進むと道が斜めにカーブしており、方向を変える必要があるが、ERIEはその方向転換も成功 【動画】ERIEのゴールシーン。1回目のトライアルで、見事100mの完走を達成。タイムは8分51秒である

芝浦工業大学ロボティクス研究室チームの「SITRAL-ROBO 01」 【動画】SITRAL-ROBO 01は、1回目のトライアルでゴール地点まで到達したが、本来のゴール地点よりもわずかに右側にそれてしまった(今回は100m完走として認められていた)

DIT-HL(大同工業大学橋口研究室)チームの「GRカミフミ」。2輪のポケバイをべースにしているところがユニーク 筑波大学知能ロボット研究室屋外組2008チームの「ひとつぼ」。1回目のトライアルでゴールに到達した

「たこ焼き」や「くじら」など凝った外装のロボットが増える

 今年のつくばチャレンジは、走行技術が進歩しただけでなく、外装(外見)にこだわったロボットが増えたことも特筆したい。昨年は、エントリ受付開始から本戦までの期間が短く、センサーやノートパソコンなどが剥きだしの、無骨な外見のロボットが多かったが、今回は外装にこだわる余裕が出てきたチームが多かったということだろう。将来、ロボットがリアルワールドで、人間と一緒に共存するためには、機能だけでなく、外見も重要なポイントとなる。人間に恐怖心を与えず、親しみを感じるようなデザインが求められる。そういった意味でも、今回のつくばチャレンジのロボットは、昨年よりも大きく進歩したといえるだろう。

 「くじら」や「パンダ」「雪うさぎ」など、動物を模した外装を採用したロボットが多かったが、特にユニークだったのが、電気自動車ロボット研究会の「クリコアビークル」だ。クリコアビークルは、関西出身のチームらしく、たこ焼き器を模した外装を採用。6個のたこ焼きは、鰹節の代わりに木のかんな屑を使うなど、非常にリアルだ。また、たこ焼きをひっくり返すための千枚通しの上にセンサーを搭載しているなど、機能的にも意味があるデザインになっている(メンバーに話を聞いたところ、最初からたこ焼き器にしようとしていたわけではなく、センサーを高い位置に設置する必要があり、それをどうやって外装デザインで目立たないようにするか考えた結果、千枚通しを思いつき、たこ焼き器にしたという)。残念ながら、クリコアビークルは、1回目のトライアルで95mという、ゴールまであとわずかのところまで到達したが、そこでタイムアップになってしまい、残念ながら翌日の本走行には出場できなかったが(2回目のトライアルでは60m地点でタイムアップ)、注目度はナンバーワンであった。


電気自動車ロボット研究会チームのクリコアビークル。たこ焼き器を模した外装がユニークで、たこ焼きも非常にリアルにできている 【動画】クリコアビークルの1回目のトライアルの様子 【動画】クリコアビークルの1回目のトライアルは、ゴールまであと5mという地点で、タイムアップとなってしまった

芝浦工業大学ヒューマンロボットインタラクション研究室チームの「PAR-NE07r」。クジラのような外装がかわいい PAR-NE07rの1回目のトライアルは、80m地点で街路樹にぶつかってしまいリタイヤ 【動画】PAR-NE07rは、2回目のトライアルで見事100m完走に成功

富士ソフト/筑波大学MRIMプロジェクトチームの「TUFS」 【動画】TUFSも、1回目のトライアルで100mの完走に成功した 左が東北大学田所研チームの「anemone」。anemoneは、セグウェイをベース台車として使っている。右が富士ソフト/筑波大学MRIMプロジェクトチームのTUFS

千葉工業大学林原研・中嶋研チームの「CIT-shuttle」 【動画】CIT-shuttleのスタート直後の様子。前輪と後輪が同時に曲がる機構を採用している CIT-shuttleの1回目のトライアルは、スタートから18m地点でコースからそれてしまいリタイヤ。2回目のトライアルで100m完走に成功する

金沢工業大学夢考房自律走行車プロジェクトチームの「Luxon」。パンダの外装がかわいい 【動画】Luxonのスタート直後の様子。見事に直角に曲がっている 【動画】Luxonのゴールシーン。1回目のトライアルで100m完走に成功

圭司と愉快な仲間たち2008チームの「ハマボウ」 【動画】ハマボウも1回目のトライアルで見事ゴールに到達した

CIT-CATチームの「Kenaf 23」 【動画】Kenaf 23も、1回目のトライアルで100mの完走に成功

宇都宮プロジェクトチームの「アロマックス」。比較的小型のロボットだ 【動画】アロマックスも、1回目のトライアルで100mの完走に成功した

エコアシストチームの「ペンギンカート」。その名の通り、運転席にペンギンが乗っている 【動画】ペンギンカートの2回目のトライアル。残念ながらスタート直後に右に大きくそれてしまい、リタイヤとなった

防衛大滝田研究室の「Smart Dump 2」 【動画】Smart Dump 2のスタート直後の様子。サイズの割にスピードが速い

チームTHINKの「IVEE」 【動画】IVEEのゴールシーン。1回目のトライアルで100m完走に成功

金沢工業高等専門学校チームの「Love it」。雪うさぎを模した外装が目立つ 【動画】Love itのスタート直後の様子。Love itは、1回目のトライアルで見事100m完走に成功

Hosei Univ.Amigoチームの「Amigo2008」 【動画】Amigo2008のスタート直後の様子。Amigo2008も、1回目のトライアルで見事100m完走に成功

ヤマハ発動機つくばチャレンジタスクフォースチームのJW-Future。ヤマハ製の電動車椅子をベース台車として利用している JW-Futureは、センサーとしてDGPSとレーザーレンジセンサー、ジャイロ、オドメトリを搭載したオーソドックスな構成である

【動画】JW-Futureのスタート直後の様子 【動画】JW-Futureのゴールシーン。1回目のトライアルで見事100m完走に成功。タイムも2分12秒と短かい

電気通信大学松野・長谷川研チームの「にこりん」 【動画】にこりんのスタート直後の様子。直角に曲がるところで、オーバーターン気味になるが、すぐに修正して正しい方向に進んでいる

岡大メカトロ研チームの「meTRY」。クローラータイプのロボットだ 【動画】meTRYの走行の様子。残念ながら15m地点でリタイヤしてしまった

関東ロボット連合北関東支部の「Huuu」 【動画】Huuuの2回目のトライアルの様子。スタート直後の直角ターンのあと、少しずつ左にそれていってしまい、自動販売機にぶつかってリタイヤしてしまった

成蹊大学制御工学研究室チームの「AKIRA2号」 【動画】AKIRA2号は、1回目のトライアルでは13m地点でリタイヤしてしまったが、2回目のトライアルで見事100m完走に成功

九州工業大学チームKIT=Eチームの「KIT-C1」 【動画】KIT-C1のスタート直後の様子。残念ながら100m完走はならなかった

栃木県立宇都宮工業高校(科学技術研究部)チームの「UTHS08」。台車から製作した2輪タイプのロボットだが、残念ながら100m完走はできなかった つくばろぼっとサークルチームの「TORIC」 中国能開大ロボット研究会チームの「たまやん」。こちらもクローラータイプだ

ぽけろぼ~もうゴールしてもいいよね~チームの「ぽけろぼ」。残念ながら2回とも50m地点でリタイヤしてしまった 明星大学チームの「Bright Star II」。よしずで覆った外装がユニーク

インターネット上でのオンライン生中継も行なわれる

 また今回は、つくばチャレンジ初のオンライン生中継も行なわれていた。このオンライン生中継は、筑波大学学園祭中継プロジェクトなどの協力によって行なわれており、ハンディカメラとパソコン、屋外用無線LANアンテナを持った3人のメンバーが、随時ロボットを追いかけていくことで実現されていた。実際には、無線LANの電波が途切れたりしたこともあったようだが、こうした試みは評価したい。

 つくばチャレンジ2008のトライアル走行を達成したのは22台であり、昨年の2倍という、予想以上の好結果となったが、その22台の中で、翌日の本走行1kmをクリアしたのは、ヤマハ発動機つくばチャレンジタスクフォースチームのJW-Futureのみであった(本走行のレポートも近日中に掲載される予定だ)。


筑波大学学園祭中継プロジェクトやソフトイーサ株式会社の協力で、インターネットでのオンライン生中継も行なわれていた オンライン生中継は、指向性の強い屋外用無線LANアンテナを利用して行なっていた

初日のトライアル走行の結果一覧 最後に、筑波大学の油田教授が講評を述べられた

URL
  つくばチャレンジ2008
  http://www.robomedia.org/challenge08/index.html

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( 石井英男 )
2008/12/10 18:56

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