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「第15回かわさきロボット競技大会」決勝戦開催
~かわロボの頂点を極めたのは誰だ!?


 8月24日、神奈川県にある川崎市産業振興会館において、ラジコン型ロボットを利用した異種格闘技戦の登竜門「かわさきロボット競技大会」(以下、かわロボ)のバトルロボット決勝が催された【写真1】【写真2】。主催は財団法人 川崎市産業振興財団、共催は川崎市。


【写真1】今年で15回目を迎えた異種格闘技戦の登竜門「かわさきロボット競技大会」。川崎市産業振興会館において開催 【写真2】競技会場では、2つのフィールドが用意され、交互に対戦が行なわれた。会場は満員で熱気にあふれていた

15回目の大会を迎え、大きなルール変更も

 15回目を数える本大会では、最強の称号を得るために242チームの中から予選会を勝ち向いた精鋭たちが熱いバトルを繰り広げた。その中で今年はいくつか大きなルール変更があった。まず決勝に進むチーム数が48に変更され、チャンスが広がったことが1つ目。さらにチームを3つのブロックに分け、トーナメント制で勝ち抜いたブロックの代表チームが総当り戦で順位を競うという、2段階選抜によって優勝者を決定する方式になったことが2つ目の変更点だ【写真3】。

 また、主催者である川崎市産業振興財団の発足20周年を記念し、従来の技術賞が「実機部門」と「企画部門」の2部門に分けて審査されることになった。前者の実機部門は、大会の勝敗にかかわらず、新技術にチャレンジした斬新なロボットに対して評価されるもの。一方、後者の企画部門は、技術現場で要求される図面や提案書などのドキュメント作成に対して評価されるものだ。そのほか、昨年まで別日程で開かれていたJr.ロボット競技会の決勝戦も同日開催となった。こちらの大会についても後述する。

 さて本決勝大会の基本的なルールについて、あらためて説明しておこう。かわロボは相手のロボットを倒すか、リングの場外に相手機体を押し出し、2本先取したほうが勝者となるシンプルなバトル競技だ。制限時間内(3分×3試合)に勝敗が決まらない場合には、さらに延長戦に突入する。チーム制で競技を行ない、キャプテン、ドライバ、エレキ、メカニック担当の4人で編成。ドライバはロボットを操作するため、直接勝敗を左右する重要なチーム要員だ。

 ロボット本体のサイズは、250×350×700mm(幅×奥行き×高さ。高さは本大会から規定)、重量3,500g以内だが、基本的に脚と腕構造を持つ構造で設計される。脚と腕構造は創意工夫を凝らしたものにする必要があるため、さまざまなアイデアを凝らしたユニークなロボットが毎年登場している点も、本大会の大きな特徴といえるだろう。

 なお脚構造には、大会規定のモータ(マブチモーター製RS380PHまたは、ジョンソン製380モータ)の使用が義務付けられている。腕構造については同様のモータか、モータ以外(RCサーボモータも含む)の動力として、空気圧や油圧などのアクチュエータも利用できる。また、送受信機は双葉電子工業製のもの(ATTACK-4 4WD、ATTACK T4GWDなど)を使用する。

 ロボットを攻撃面から大別すると、回転式アームで相手を勢い良く弾き飛ばすタイプ、機体をアームですばやくリフティングしてすくい投げるタイプ、あるいは長いスティック状アームで突き出すタイプ、これらのメリットを生かした併用タイプなどが主流だ。

 激しいバトルを支える競技リングは、硬質性のゴムを張ったスクエアなフィールドになっている。本大会では、リング仕様も変更され、昨年と比べて難易度が高くなった。また、中央にあった大きな円丘陵が2つの高い円丘陵に変更され、さらに2つの正方形状の丘陵にも溝が設けられたため、段差を乗り越えられるパワーと、より安定した走行性能がロボットに求められたようだ【写真4】。


【写真3】今年より全48チームが3ブロックに分かれて決勝トーナメントに参戦。トーナメントを勝ち抜いた3チームの代表が総当たり戦により優勝を争う 【写真4】競技フィールドは年を追うごとに難易度が高くなっている。今年は中央部が2つの高い円丘陵に変更され、さらに2つの正方形状の丘陵にも溝が設けられた。機体の走破性が要求される

ブロック1は古豪ぞろい、白熱のバトルを繰り広げる

 さて、ここからは実試合についてレポートする。前述のように今年から3ブロック制トーナメント方式と、トーナメントを勝ち抜いた3代表による順位決定戦が行なわれた。まずブロック1で印象に残った戦いや機体について振り返ってみよう。

 ブロック1のエントリーマシンは、過去によい成績を収めたハイレベルなマシンが集まっていたようだ。第1回戦目の「対流」vs「DanStab」は、異なる攻撃手法をもったロボットによる対戦だった【動画1】。対流は2対の回転アームを備え、回転力で相手を弾いたり、ひっくり返す方式【写真5】。流線型や同心円状に抜き打ちされたフレームやデザインが目を引いた。また、DanStabは機敏な動きが特徴で、そのコンセプトは「蝶のように舞い、蜂のように刺す」というもの【写真6】。一角獣のようなアームを振り上げて、相手の車体を転倒させる方式だ。奇しくも両者は同じ学校同士(川崎市立川崎総合科学高等学校)だったが、対流は地元サッカーチームの「川崎フロンターレ賞」を、DanStabは「東芝賞」を受賞した。


【動画1】ブロック1の1回戦目。「対流」(手前)vs「DanStab」。対流は2対の回転アームで、DanStabは一角獣のようなアームで攻撃 【写真5】「川崎フロンターレ賞」を受賞した「対流」(川崎市立川崎総合科学高等学校)。名前のごとく、流れるようなデザインも目を引いた 【写真6】「東芝賞」を受賞した「DanStab」(川崎市立川崎総合科学高等学校)。奇しくも同じ学校同士の対戦となり、ちょっと運が悪かった

 「カンタンク5」vs「飛拳改」の戦いは、カンタンク5が見事な投げを放って勝利をつかんだ。カンタンク5は、中距離まで届くアームとサスペンションを備えており、相手を寄せ付けずに戦うことができたようだ【写真7】。飛拳改は、軽量なボディと機敏な動きが特徴だった。強度や機構部の弱点を補強して戦いに臨んだものの惜敗した【写真8】。


【写真7】「敢闘賞」を受賞した「カンタンク5」(Tエンジニアリング)。中距離まで届く、長いリーチのアームが特徴 【写真8】「敢闘賞」を受賞した「飛拳改」(個人参加 比企成光さん)。強度や機構部の弱点を補強していた

 「The BOSS Ver.2」vs「曙光」の対戦も面白かった【動画2】。The BOSS Ver.2は、シールドアームで相手下にもぐり込み、押し出しを狙うタイプ【写真9】。オーソドックスな構造だが安定感があり、重厚な攻撃をみせた。一方、曙光は回転するハサミのようなハンドを備え、相手をつかんでひっくり返す方式で勝利をつかんだ【写真10】。曙光は脚にクランク・スライダ軸機構、カムや歯車の軸まわりにベアリングを採用して回転抵抗を低減させている。またアームにはネジアクチュエータを利用したそうだ。曙光は「デザイン賞」を受賞している。


【動画2】「The BOSS Ver.2」(左)vs「曙光」の対戦。曙光がハサミのようなハンドで、The BOSSをつかんでひねる 【写真9】「敢闘賞」を受賞した「The BOSS ver.2」(芝浦工業大学SRDC)。安定感があり、重厚な攻撃をみせた 【写真10】長いハサミのような2対のアームを備え、「デザイン賞」を受賞した「曙光」(FuverSystems)

 「燐Vanadis」vs「夜想曲」(ノクターン)の試合は、パワー面で燐Vanadisに軍配が上がった【動画3】。燐Vanadisも夜想曲も回転式アームを備えているが、前者の燐Vanadisは、高速回転する面制圧方式。面部分に重りが付いており、慣性力のついた面で相手を強力に弾く。昨年の大会で3位に入賞した実力派だ。後者の夜想曲は、ツノのようなアームが回転する方式。モータ×2台による回転攻撃で相手を投げ飛ばす【写真11】。燐Vanadisは「技術賞(実機部門)」を、夜想曲は「TMCシステム賞」をそれぞれ受賞した。

 「グランビートル」vs「マイペンライン」の戦いは、リフティングタイプの面制圧方式で攻撃するグランビートルが勝ち進み、「オリエンタルモータ賞」を受賞した【動画4】。マイペンラインは、長めのアーム先端が回転する方式で、アーム先端に車輪が付いている。昨年の機体を改良し、走・攻・守に磨きをかけた仕上がりで、リーチが長いぶん有利に思われたが、残念ながら敗退した。


【動画3】「燐Vanadis」(手前、KHK歯車工房)vs「夜想曲」(ノクターン)の試合。燐Vanadisがパワーで夜想曲を押し出す。燐Vanadisは、この後の試合も順調に勝ち進む 【写真11】「TMCシステム賞」を受賞した「夜想曲」(茨城工業高等専門学校 CAD研究同好会)。ツノのようなアームが回転して相手を攻撃。脚回りのデザインもよかった 【動画4】「グランビートル」(左、芝浦工業大学SRDC)vs「マイペンライン」(オリエント精機)の戦い。白熱した試合展開で、グランビートルが勝ち進んだ。グランビートルが勝ち進み、「オリエンタルモータ賞」を受賞。グランビートルは「敢闘賞」を受けた

 「たんぽぽ」vs「炎神Recycle」も強豪同士の戦いだった。たんぽぽの機体は、回転式アームと長いロッドを併用し、遠近距離両方に対応できる攻撃が大きな特徴。回転式アームは自転車のような構造で、アーム先端にあるペダル部の回転によって相手をひっくり返す【写真12】。一方の炎神Recycleは、2対のツノのようなショートアームで相手を転倒させる方式だ【写真13】。横に長く安定した機体で、旋回力の高い足回りに仕上げたため、すばやく相手脇を突くことができるという。この試合ではたんぽぽが勝ち進んだが、とてもよい勝負だった【動画5】。たんぽぽは「さいか屋賞」、炎神Recycleは「川崎南法人会青年部賞」に選ばれた。


【写真12】「さいか屋賞」を受賞した「たんぽぽ」(東京エレクトロニツクシステムズ)。回転式アームは自転車のペダルのような構造 【写真13】「川崎南法人会青年部賞」を受賞した「炎神Recycle」(東海大学ロボット技術研究会)。2対のショートアームで相手を攻撃 【動画5】「たんぽぽ」(左)vs「炎神Recycle」の戦い。たんぽぽが回転式アームで炎神をひっくり返す

 「やまだーん轟雷剣」vs「K314-九式」の対戦も迫力があった【動画6】。やまだーん轟雷剣は、昨年準優勝の実績がある機体をブラッシュアップしての参戦となった【写真14】。回転式の4連装クランクアームが特徴。K314-九式は、アームの強化に力を入れた機体だったが、やまだーん轟雷剣の圧倒的なパワーを前にして惜敗した【写真15】。


【動画6】「やまだーん轟雷剣」(左)vs「K314-九式」の対戦。やまだーん轟雷剣がK314-九式の脇をついて攻撃 【写真14】「敢闘賞」を受賞した「やまだーん轟雷剣」(魁!やまだーん塾)。回転式の4連装クランクアームが特徴 【写真15】「敢闘賞」を受賞した「K314-九式」(Team K-314)。アームの強化に力を入れた機体でデザインもよかった

 ユニークなネーミングの「団地妻無妖艶」(だんちづまいろけなし)vs「アシュラ」の一戦も面白かった。団地妻無妖艶のメカはマニアックそのもの。攻撃力の高いブレード型回転アームは380PHモーターを8連装にして駆動し、脚まわりは3相リンク12本足で構成【写真16】。この機体は「デザイン賞」を受賞した。アシュラはシンプルな構成を心がけ、回転アームと3相クランクの脚まわりを製作したという【写真17】。この試合では団地妻無妖艶が勝ったが、次試合でも団地妻は強豪・やまだーん轟雷剣に打ち勝ち、ブロック1の準決勝戦へと進んだ。


【写真16】「デザイン賞」を受賞した団地妻無妖艶(あぁ真夜中の機動技術研究部)。ユニークなネーミングだが、機体はマニアック。ブレード型回転アームは8連装モータで駆動 【写真17】「敢闘賞」を受賞した「アシュラ」(近畿大学ロボット研究会OB)。回転アームと3相クランクの脚まわりとシンプルに製作

 午後に行なわれたブロック1準決勝戦では、DanStabと燐Vanadis【動画7】、たんぽぽと団地妻無妖艶【動画8】の対戦となった。いずれも手に汗にぎるような白熱した試合運びだったが、ブロック1決定戦に進んだのは燐Vanadisと団地妻無妖艶【写真18】。最終的にブロック1の代表の座を射止めたのは燐Vanadisだった。


【動画7】ブロック1準決勝戦「DanStab」(左)vs「燐Vanadis」の戦い。攻撃のパワー面では燐Vanadisに分があったようだが、DanStabも脇からアームを入れて応戦するなど、よい試合だった 【動画8】ブロック1準決勝戦「たんぽぽ」(左)vs「団地妻無妖艶」の戦い。たんぽぽのアームは剛性があり頑強そうだったが、団地妻無妖艶の回転アームで弾き飛ばされた 【写真18】ブロック1決定戦の模様。「燐Vanadis」(左)vs「団地妻無妖艶」の戦いを制したのは、燐Vanadisであった。団地妻無妖艶は攻撃が強力で、かなりいい線まで行きそうな予感であったが、残念ながらここで敗退

高速回転アームで相手を投げ飛ばすロボットが有利か?

 次にブロック2の戦いをみてみよう。まず「イナギ」vs「FUN」の対戦では、FUNが1回戦を勝ち進んだ【動画9】。イナギは高速移動を得意とする足回りとトルク重視のアームが特徴【写真19】。対するFUNは長いアームに電磁クラッチを備えた構造だ【写真20】。


【動画9】「イナギ」(奥)vs「FUN」の対戦。長いリーチを活かしてFUNがイナギを押し出す。この試合はFUNが2本先取で勝った 【写真19】「敢闘賞」を受賞した「イナギ」(鮫洲レーシング)。高速移動を得意とする足回り。いかにも頑強そうなつくりだ 【写真20】「敢闘賞」を受賞した「FUN」(RRST OB、立命館大学ロボット技術研究会OB)。長いアームに電磁クラッチを備えた構造

 「マドカStriker」vs「小悪魔神楽TYPE-R」の試合は迫力があった。小悪魔神楽TYPE-Rは、ブロック1のやまだーんや団地妻と似たような構造で、デザインもおしゃれで凝っていた【写真21】。大回転アームとヘッケンリンク機構を応用した脚が特徴だという。一方のマドカStrikerは、機動力のある足回りとシールドアームが持ち味の機体【写真22】。小悪魔神楽を押し出て、勝利をもぎとった【動画10】。マドカは「ホテルスカイコート賞」、小悪魔神楽は「大西家具賞」を受賞した。


【写真21】「大西家具店賞」を受賞した「小悪魔神楽TYPE-R」(みわっちFARM)。大回転アームとヘッケンリンク機構を応用した脚が特徴 【写真22】「ホテルスカイコート川崎賞」を受賞した「マドカStriker」(長岡工業高等専門学校ロボティクス部)。機動力のある足回りとシールドアームが持ち味 【動画10】「マドカStriker」vs「小悪魔神楽TYPE-R」の試合。粘り腰の小悪魔神楽に、マドカStrikerが追い討ちをかける

 「カトレア」vs「鬼哭斬破刀」の勝負は、カトレアに軍配が上がった【動画11】。カトレアは極力無駄を排除して、攻撃を重視した構造になっていた。回転アームの正面と側面で相手を倒す設計だという【写真23】。鬼哭斬破刀は足回りをヘッケンリンク機構とし、ハサミのような4本のスライダクランクアームで相手を投げ飛ばす方式を採用【写真24】。カトレアは「努力賞」、鬼哭斬破刀は「山鉄物産賞」を受賞した。


【動画11】「カトレア」(左)vs「鬼哭斬破刀」の勝負。カトレアの回転アームが鬼哭斬破刀の機体下からすくい上げ。操縦テクニックが光る 【写真23】「努力賞」を受賞した「カトレア」(東京エレクトロニツクシステムズ)。極力無駄を排除して、攻撃を重視した構造 【写真24】「山鉄物産賞」を受賞した「鬼哭斬破刀」(東京電機大学自動制御研究部)。ハサミのような4本のスライダクランクアームが特徴

 「セレクト」vs「幽谷響」の戦いは、どちらもアームリフティング型で攻撃する機体だったが、幽谷響の勝ちとなった【動画12】。セレクトは耐久性を重視し、関節部に真鍮やステンレスなどの材料を使用【写真25】。メンテナンス面も配慮して極力部品点数を抑えたという。また幽谷響は、規定サイズ内で機敏な動作を行なえる設計にしたそうだ【写真26】。幽谷響は「味の素賞」を獲得した。


【動画12】「セレクト」(左)vs「幽谷響」の戦い。どちらもアームリフティング型で攻撃手法は似ていたが、幽谷響のほうが底面に近い高さから入り込めたようだ 【写真25】「敢闘賞」を受賞した「セレクト」(個人参加 酒田直敬さん)。耐久性を重視し、関節部に真鍮やステンレスなどを使用 【写真26】「味の素賞」を受賞した「幽谷響」(芝浦工業大学SRDC)。機敏な動作と低い位置からの攻撃が特徴

 「TERAマイスター」vs「機甲揚陸艦Gブレイカー」の試合も見ごたえがあった。TERAマイスターはTERAの言葉どおり、規定の高さ700mmを最大限に活かした設計【写真27】。一方の機甲揚陸艦Gブレイカーも名前のように、水陸両用で設計されたユニークな機体が大きな特徴【写真28】。水上から上がって陸上で臨戦態勢に入れるという。水陸でのロボット大会はほとんどないので、ぜひ開催してほしいところだ。

 両者とも個性的な機体であったが、機甲揚陸艦Gブレイカーは対戦相手が大きすぎたためか、アームで相手を倒しきれずに逆に押し出されてしまった【動画13】。TERAマイスターは「川崎マリーンロータリー賞」、機甲揚陸艦Gブレイカーは「技術賞(実機部門)」と「敢闘賞」を受賞した。


【写真27】「川崎マリーンロータリー賞」を受賞した「TERAマイスター」(東京電機大学自動制御研究部)。テラでかい機体で迫力があった 【写真28】実機部門の「技術賞」と「敢闘賞」を受賞した「機甲揚陸艦Gブレイカー」(KHK歯車工房)。水陸両用で設計されたユニークな機体。このようなロボットがもっと登場すると面白そうだ 【動画13】「TERAマイスター」(手前)vs「機甲揚陸艦Gブレイカー」の試合。TERAマイスターのパワーでGブレイカーが押し出される

 「Nine Long Tail」vs「沐日蘿特瓦拉」の戦いは、長いツノのようなリフティングアームを備えたNine Long Tailが勝った【動画14】。Nine Long Tailは、機体の高さを低く抑え、地面を這うように歩行するため安定感があった【写真29】。沐日蘿特瓦拉も面制圧タイプで安定感があったが、相手の長いリーチに攻撃を阻まれてしまったようだ【写真30】。なお、沐日蘿特瓦拉は「オリジナルマインド賞」を受賞した。


【動画14】「Nine Long Tail」(左)vs「沐日蘿特瓦拉」の戦い。Nine Long Tailが長いアームで沐日蘿特瓦拉の側面を攻撃 【写真29】「敢闘賞」を受賞した「Nine Long Tail」(大同信号)。長いツノのようなリフティングアームが特徴 【写真30】「オリジナルマインド賞」を受賞した「沐日蘿特瓦拉」(葵屋)。安定感のある面制圧タイプの攻撃を採用

 「K314-七式」vs「のらねこ」の対戦は、K314-七式の圧倒的なパワーが、のらねこの力を上回った。K314-七式はシールドアームの装甲部に堅いチタンを使用している点が大きな特徴【写真31】。まさに装甲車といった外観だ。K314チームは次のブロック3でも六式がトーナメントに勝ち残っていた。のらねこは、アームが上下方向のリフティングに加えて回転するため、相手をひっくり返しやすい構造だった【写真32】。K314-七式は「日の出製作所賞」を受賞した。


【写真31】「日の出製作所賞」を受賞した「K314-七式」(Team K-314)。シールドアームの装甲部に堅いチタンを使用 【写真32】「敢闘賞」を受賞した「のらねこ」(豊橋技術科学大学ロボコン同好会)。アームが上下方向のリフティングに加えて回転する構造

 「オニキス ナマハG」vs「MUSASABI」の戦いも迫力があった【写真33】。MUSASABIは、フレームを肉抜きして軽量化を図り、デザインもよく見えた【写真34】。風車のようなアームの高速回転で相手を弾き飛ばす構造だ。一方、オニキス ナマハGは、正面から見るとアーム部が鬼のような顔になっていることが特徴【写真35】。両者激しいバトルを繰り広げた。オニキス ナマハGはバッテリが外れてしまうというアクシデントもあり、残念ながらMUSASABIの高速回転アームの前に敗れた。


【写真33】バトルを繰り広げた「オニキス ナマハG」(奥)vs「MUSASABI」の戦い。オニキスはバッテリが外れてしまうというアクシデントもあった 【写真34】上位入賞に食い込んだ「MUSASABI」(サレジオ工業高等専門学校)。風車のようなアームの高速回転で相手を弾き飛ばす 【写真35】「敢闘賞」を受賞した「オニキス ナマハG」(KHK歯車工房)。正面から見るとアーム部が鬼のような顔になっている

 午後に行なわれたブロック2準決勝戦は、マドカStrikerとカトレア【動画15】、TERAマイスターとMUSASABI【動画16】の対戦となった。ブロック2決勝戦はカトレアとMUSASABIの一騎打ちとなり、両者とも強そうな風貌で実際に好試合を展開したが、ブロック2の代表を勝ち取ったのはMUSASABI【動画17】だった。


【動画15】ブロック2準決勝戦「マドカStriker」(左)vs「カトレア」。間合いをみながら攻撃を繰り返す。両者一歩も譲らない状態が続いたが、カトレアの勝利となった 【動画16】ブロック2準決勝戦「TERAマイスター」(右)vs「MUSASABI」。強豪同士の戦い。TERAマイスターは勢いが強すぎて自爆してしまった感じで残念 【動画17】ブロック2決勝戦「カトレア」(左)vs「MUSASABI」。どちらも強かったが、ダブルアームで回転するMUSASABIの攻撃が勝っていたようだ。ブロック2ではMUSASABIが代表の座を射止めた

不死鳥のように起き上がるVoRteX-IIが代表に

 ブロック3の試合は、「グロンド」vs「マダデキテナイノ」から始まった。グロンドは強力な面制圧型の回転アームを持つ機体【写真36】。一方、マダデキテナイノは機敏な動きが特徴。操縦に負担がかかるため、アームをあまり動かさずに攻撃できるように設計したという【写真37】。ちなみにマダデキテナイノは昨年も同じネーミング。さすがにモウカンセイシテイルようだった。

 さて試合のほうは、回転シールドアーム型のグロンドが勝った【動画18】。このタイプの機体は上位に進んだものが多かったようだ。なおグロンドは「ユニーク賞」も受賞している。


【写真36】ブロック3の試合。「ユニーク賞」を受賞した「グロンド」(芝浦工業大学SRDC)。面制圧型の回転シールドアームを持つ 【写真37】「努力賞」を受賞した「マダデキテナイノ」(川崎市立川崎総合科学高等学校ロボット研究部)。アームをあまり動かさずに攻撃できる構造 【動画18】「グロンド」(手前)vs「マダデキテナイノ」の戦い。やはり高速回転するシールドアームのパワーは強かった。グロンドの勝利

 「フォーチュンブレイカー」vs「Aigis」の対戦はAigisの勝利となった【動画19】。Aigisはスタンダードなシールドアームによって相手の攻撃を防御し、面制圧でアームを上げて機体をひっくり返す【写真38】。フォーチュンブレイカーは、三日月形状のフレームが印象的な機体で、強力なクランクアームを装備していた【写真39】。フォーチュンブレイカーは「協育歯車工業賞」を受賞した。


【動画19】「フォーチュンブレイカー」(左)vs「Aigis」の対戦。重厚なAigisがフォーチュンブレイカーを横転させた 【写真38】「敢闘賞」を受賞した「Aigis」(東京理科大学I部無線研究部)。面制圧でアームを上げて機体をひっくり返す 【写真39】「協育歯車工業賞」を受賞した「フォーチュンブレイカー」(東京工科大学ロボット研究部)。三日月形フレームが印象的な機体

 「K314-六式」vs「村正」の戦いは、両者とも善戦の末に、2本先取したK314-六式が次の試合に駒を進めた【動画20】。K314-六式はブロック2で出場した七式の兄弟ロボットだが、こちらの機体は面制圧型ではなく、アーム先端に付いた風車のような回転で相手を攻撃するタイプだ【写真40】。一方、村正のほうは、高速な回転シールドアームで相手を弾き飛ばすタイプ【写真41】。村正は「オリエント精機賞」を受賞した。


【動画20】「K314-六式」(左)vs「村正」の戦い。強い脚回りと高速回転アームを持つ村正が、K314-六式を押し出す 【写真40】「敢闘賞」を受賞した「K314-六式」(Team K-314)。アーム先端に付いた風車のような回転で相手を攻撃する 【写真41】「オリエント精機賞」を受賞した「村正」(芝浦工業大学SRDC)。高速な回転シールドアームを装備

 「黒桜 参式」vs「ROCKY10」の試合は黒桜 参式の勝利となった【動画21】。黒桜 参式はデザインが印象的で、外観も丁寧なつくりをしているようだった【写真42】。機体の形状は桜を意識し、底面部には桜の文様を入れる凝りようだ。スライダーリンクの脚部とクランクアームによる攻撃が特徴だという。一方のROCKY10は、四脚独立懸架(サスペンション)の四輪駆動構造が大きな特徴【写真43】。車軸を独立に上下動できるため、フィールド面の凹凸に対する追従性が向上し、駆動力がアップする。また相手をソフトに投げ飛ばす配慮もあり、安全性の面でも優れている機体だといえる。黒桜 参式は「ゼネラルエンジニアリング賞」、ROCKY10は「ファイティング賞」を受賞した。


【動画21】「黒桜 参式」(左)vs「ROCKY10」の試合は、押し出しで黒桜の勝利に 【写真42】「ゼネラルエンジニアリング賞」を受賞した「黒桜 参式」(神奈川工科大学ロボット工学研究部)。機体の形状は桜を意識し、底面部には桜の文様が入っている 【写真43】「ファイティング賞」を受賞した「ROCKY10」(トキ・コーポレーション)。車軸を独立に上下動でき、フィールド面の凹凸に追従するため駆動力がアップ

 「U-4」(うし)vs「ステュクスカロンD.F.」の戦いも白熱していた【動画22】。U-4は、リーチの異なる2つのアーム先端に付いた回転扇を振りながら攻撃するユニークな構造【写真44】。見た目も他のロボットと異なっており面白かった。脚ごとに独立したサスペンションで走破性を向上し、安定感のある走りをみせた。対するステュクスカロンD.F.は高速で小回りが利くため、相手の死角に入ってもぐりこんで、アームを振り上げて相手を攻撃できる点がウリ【写真45】。脚まわりのモータ数も増やし、パワーアップを図ったという。この試合は、ステュクスカロンD.F.が善戦したが、U-4が次試合に進んだ。なおU-4は「ユニーク賞」、ステュクスカロンD.F.は「ファイティング賞」を受賞した。


【動画22】「U-4」(左)vs「ステュクスカロンD.F.」の戦い 【写真44】見た目が面白く、「ユニーク賞」を受賞した「U-4」(芝浦工業大学ロボット遊交部からくり)。リーチの異なる2つのアーム先端に付いた回転扇を振って攻撃 【写真45】「ファイティング賞」を受賞した「ステュクスカロンD.F.」(須山工房)。脚まわりのモータ数を増やし、パワーアップを図ったという

 「ブレイブブリンガー」vs「H5」の戦いを制したのは、機動力が勝ったブレイブブリンガーであった【動画23】。ブレイブブリンガーは、3つ折構造で、転倒ミスをなくした大型ムカデ脚ロボット【写真46】。H5は、無限回転式と角度制限式の2つのアームを搭載している点が特徴だ【写真47】。


【動画23】「ブレイブブリンガー」(左)vs「H5」の戦い。ムカデ脚構造のブレイブブリンガーがH5を押し出す 【写真46】「敢闘賞」を受賞した「ブレイブブリンガー」(タミヤ)。3つ折構造で、転倒ミスをなくした大型ムカデ脚が特徴 【写真47】「敢闘賞」を受賞した「H5」(個人参加の日野隆さん)。無限回転式と角度制限式の2つのアームを搭載

 「騎鍛」vs「堅牙」の戦いもよい勝負であった。騎鍛は大型クランク機構と回転アームを備え、アームが回転しながら前後に動いて攻撃する方式だ【写真48】。機体のデザインも美しかった。一方の堅牙は、名前のごとく長い1本の棒アームを備え、棒アームのリフティングで相手をひっくり返す【写真49】。この攻撃で1つ勝利を奪ったものの、残念ながら試合結果は騎鍛のほうに軍配が上がった【動画24】。


【写真48】「敢闘賞」を受賞した「騎鍛」(KHK歯車工房)。アームが回転しながら前後に動いて相手を攻撃 【写真49】「敢闘賞」を受賞した「堅牙」(東京電機大学自動制御研究部)。長い1本の棒アームでリフティングする 【動画24】「騎鍛」(左)vs「堅牙」の戦い。堅牙が騎鍛をひっくり返したが、最終的に騎鍛の2本勝ちに終わった

 ブロック3の1回戦最終試合は「VoRteX-II」vs「驪(れい)」の対戦だ。VoRteX-IIは見た目にもインパクトがある異色の存在であった【写真50】。Vortexとは、英語で「渦巻き、旋風、たつ巻」の意味で、このロボットも2本の枝のような細いアームを渦巻きのように回転させながら攻撃できる。驪はクランク機構で棒アームを動かしながら相手をひっくり返すシンプルなコンセプトだ【写真51】。驪は「夢現工房賞」を受賞したが、試合ではリーチが長く、圧倒的なパワーのあったVoRteX-IIが勝利をつかんだ【動画25】。


【写真50】上位入賞を果たした「VoRteX-II」(東京都立工業高等専門学校)。出場した機体の中でも異色の存在。アームを渦巻きのように回転させながら攻撃 【写真51】「夢現工房賞」を受賞した「驪」(立命館大学ロボット技術研究会)。棒アームを動かしながら相手をひっくり返す 【動画25】「VoRteX-II」(左)vs「驪」の対戦。VoRteX-IIは従来にない攻撃で驪を撃沈。長いリーチで相手を寄せ付けない

 ブロック3準決勝戦は、グロントと黒桜 参式【写真52】、U-4とVoRteX-II【動画26】の対戦となった。特にU-4とVoRteX-IIの勝負は手に汗にぎる戦いで観客を沸かせた。両者とも強く、U-4がVoRteX-IIを何度も投げたが、VoRteX-IIが不死鳥のように起き上がり、勝利の切符を手にした。ブロック3決勝戦はグロントとVoRteX-IIの戦い。こちらも両者とも一歩も譲らず、予想どおりの激しいバトルが繰り広げられた。グロントは強豪のVoRteX-IIから1本を奪取したものの【動画27】、最終的にブロック3代表を勝ち取ったのはVoRteX-IIとなった。


【写真52】ブロック3準決勝戦「グロント」(左)vs「黒桜 参式」の戦いはパワー面でグロントが制した 【動画26】ブロック3準決勝戦「U-4」(左)vs「VoRteX-II」の熾烈な戦い。どちらも強かった。U-4がVoRteX-IIを何度も投げたが、VoRteX-IIも負けじと起き上がる 【動画27】ブロック3決勝戦「グロント」(手前)vs「VoRteX-II」の戦い。グロントはVoRteX-IIから貴重な1本を奪取。負け方も豪快だ

頂上決戦! 栄えある優勝の座を手にしたロボットは?

 このようにして決定したブロックごとの代表チームは、決勝までに合計4回の対戦を勝ち抜いてきたため、機体も満身創痍状態であった。ここまでくるためには、攻撃力だけでなく、耐久力も要求されるのだ。

 さて優勝者を決める総当り戦が始まった。この戦いでは「燐 Vanadis」「MUSASABI」「VoRteX-II」という、まったく攻撃手法の異なる個性的なロボットのバトルが会場を大いに沸かせた【動画28】【動画29】【動画30】。

 いずれの代表チームも強豪であり、どの機体が優勝してもおかしくない状況だった。勝負では、機体ごとの相性もあったようだが、燐VanadisはMUSASABIにストレートで勝ち、MUSASABIもVoRteX-IIにストレートで勝った。そのため勝負の行方は最後まで分からず、全試合で3勝1敗という結果を残した燐Vanadisが、かわロボ15回大会の頂点に立った【写真53】【写真54】。MUSASABIは2勝2敗、VoRteX-IIは2勝3敗で、いずれも僅差だった。また来年に期待したいところだ。最終的な結果は以下のとおり。

【優勝】 「燐 Vanadis」(KHK歯車工房、RRSTOB 三宅巧馬さん)  
【準優勝】 「MUSASABI」(サレジオ工業高等専門学校 五十嵐達也さん)
【第3位】 「VoRteX-II」(東京都立工業高等専門学校 茅野創大さん)  
(協賛メーカーによる特別賞は前述したとおり。そのほか20機に「敢闘賞」が贈られた)


【動画28】代表戦その1「燐 Vanadis」(右)vs「MUSASABI」の対戦。燐 Vanadisは強豪のMUSASABIにストレート勝ち 【動画29】代表戦その2「燐 Vanadis」(左)vs「VoRteX-II」の対戦。この試合では、従来と異なる攻撃のVoRteX-IIが2勝し、燐 Vanadisが1勝という結果に 【動画30】代表戦その3「MUSASABI」(奥)vs「VoRteX-II」の対戦。強豪のVoRteX-IIだが、MUSASABIには1勝もできなかった。機体によって相性があるのだろうか

【写真53】バトルロボットトーナメント上位入賞者の表彰式。優勝は燐Vanadis、準優勝はMUSASABI、第3位はVoRteX-IIとなった 【写真54】15回大会の頂上決戦を制した燐Vanadisの俯瞰。昨年の3位からリベンジで初優勝を果たす。「技術賞(企画部門)」と合わせて2冠を達成した

ユニークなロボットが登場する特別戦や、Jr.ロボット競技会決勝戦も

 さて、このような本戦のほかに、バトル競技で決勝に駒を進めなかったものの、ユニークな機構を持つロボットたちが集結した「特別戦」も開催された。記者はこの種の創意工夫を凝らしたロボットが大好きだ。

 たとえば本大会で「技術賞」に選ばれた「マッスルクロウ」は、ペットボトルに空気を圧縮した動力源を採用。空気圧式の人工筋肉を使用してアームを動かしているところが斬新だった【写真55】【動画31】。


【写真55】特別戦その1。「マッスルクロウ」(ヤマハ発動機)。ペットボトルで空気を圧縮させ、さらに人工筋肉を採用している点がユニーク 【動画31】特別戦その2。前述のマッスルクロウや、惺(立命館大学ロボット技術研究会)などのロボットが混戦している模様

 従来にないデザインで設計された「暴流」も印象に残った。名前のようなボウルをかぶせた形状で、それが上下に動くようになっていた【動画32】。マジックハンドのようなパンタグラフ式アームを備えた「子番頭弐弐」は、遠距離から豪快に相手を飛ばすアイデアから製作したもの【動画33】。カム機構でシーソーのようにスイングしながら動くアームを備えた「鏃」(やじり)もユニークだった【動画34】。


【動画32】特別戦その3。「暴流」(電気通信大学 電気通信学部 知能機械工学科、左)。ボウルをかぶせた形状で、それが上下に動く。相手は覇王樹 【動画33】特別戦その4。「子番頭弐弐」(有志ロボット同好会)。マジックハンドのようなパンタグラフ式アームで、相手を豪快に吹き飛ばすコンセプトだ 【動画34】特別戦その5。「鏃」(立命館大学ロボット技術研究会)。こちらも名前のようにヤジリを武器にもつ

 赤外線センサーで敵を検知する「惺」は、アーム機構が他のロボットと異なる方式だった。敵に向かって2つのアームを回転させながら突進する【動画35】。このほかに横方向に広がるアームと、枝のようなアームを持つ「覇王樹」【写真56】や、6脚パーツ仕様の半人型ロボット「ファリーキャット」【写真57】、鳥の羽のような凝ったデザインが圧巻の「KING M@NGO」【写真58】も目を引いた。


【動画35】特別戦その6。「惺」。敵に向かって2つのアームを回転させながら突進する 【写真56】特別戦その7。「覇王樹」(電気通信大学 電気通信学部 知能機械工学科)。枝のようなアームを持つロボット

【写真57】特別戦その8。「ファリーキャット」(帝京科学大学)。6脚パーツ仕様の半人型ロボット。残念ながらデモでは調子が悪そうだった 【写真58】特別戦その9。「KING M@NGO」(あぁ真夜中の機動技術研究部)。鳥の羽のような凝ったデザイン。パタパタと羽を広げる

 また、本大会からJr.ロボット競技会決勝戦も同日開催となり、合計20チームの中から選ばれた4チームが戦いに挑んだ【写真59】【写真60】。Jr.ロボット競技会は川崎市の小中学生を対象とし、4名以下のチーム編成で行なわれる。参加者には、腕と脚構造を備えたロボットのパーツが実行委員会より支給され、ロボットの基礎知識から組み立て作業に至る一連のプロセスを、体験しながら学習できるように配慮されている。そして最終的に体験学習で完成したロボットによって、3分間1本勝負でのバトルを行なうというものだ【動画36】【動画37】。

 Jr.ロボット競技会の試合結果は以下のとおり【写真61】。グロピュールは、アームが動いて相手の機体をひっくり返す構造で、アーム先端が釣針のような形状になっており、パワーと操縦テクニックが光った。カワセミは試合中に何かトラブルがあったようで少し調子が悪そうだった。また、小学生の両チームは中学生を相手に善戦した。

【優勝】 「グロピュール」(川崎市立中原区西中原中学校)
【準優勝】「TEAM IKE-P」(川崎市立多摩区三田小学校)
【第3位】 「カワセミ」(川崎市立中原区西中原中学校)
【第4位】 「チームせとJr.」(川崎市立中原区東住吉小学校)


【写真59】Jr.ロボット競技会決勝戦「カワセミ」(左)vs「チームせとJr.」の対戦 【写真60】Jr.ロボット競技会決勝戦「グロピュール」(右)vs「TEAM IKE-P」の対戦 【動画36】「カワセミ」(左)vs「TEAM IKE-P」の対戦。カワセミは機体にトラブルがあったのか調子が悪そうで、TEAM IKE-Pに倒されてしまった

【動画37】「グロピュール」vs「チームせとJr.」の対戦。グロピュールは、アーム先端の釣針で相手の機体をひっくり返す構造。チームせとJr.は脚まわりがしっかりして力強かった 【写真61】Jr.ロボット競技会、上位入賞者の表彰式。優勝はグロピュール、準優勝はTEAM IKE-P、第3位はカワセミ、第4位はチームせとJr.に

URL
  第15回かわさきロボット競技大会
  http://www.kawasaki-net.ne.jp/robo/

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( 井上猛雄 )
2008/09/02 20:16

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