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第8回レスキューロボットコンテスト本選レポート
~レスコンボード搭載で、ミッションコンプリートのチームが続出


 8月9日(土)~10日(日)に、自治体消防60周年記念 RSコンポーネンツ杯「第8回レスキューロボットコンテスト」(以下、レスコン)が、神戸市中央区の神戸サンボーホールで開催された。主催は、レスキューロボットコンテスト実行委員会、兵庫県、神戸市、(株)神戸商工貿易センター、読売新聞大阪本社、神戸からの発信ネットワーク。会場には2日間で、6,027人の来場者があった。

 同コンテストは、1995年の阪神淡路大震災を教訓とし考案された。レスコンは、本物のレスキューロボットで行なうわけではないが、将来レスキューロボットを実現するための要素技術がいくつも盛り込まれている。

 実行委員長の升谷保博氏 (大阪電気通信大学) は、「災害に強い街づくりのためには、住民が日頃から防災意識を持つことが重要」といい、レスコンをロボット研究を志す学生だけではなく、多くの人がレスキューについて考える機会と位置づけている。

 本選には7月に行なわれた予選で優秀な成績だった12チームが出場した。


神戸サンボーホール 本選出場者チーム レスキューロボットコンテスト実行委員長 升谷保博氏 (大阪電気通信大学)

控え室風景 各チーム紹介ポスター 親子連れの一般観客が多く、レスキュー活動に対する関心の大きさが伺えた

レスコンボード搭載で、ロボットの性能が格段に進化

 大会委員長の升谷氏は、今大会について「参加者が委員会に挑戦状を突きつけてきた」とコメントした。思わずそう言いたくなるほど、参加チームのレベルが高かった。

 レスコンは、基本的な競技内容は毎年同じだが、いくつかのルール変更や追加があり、年々難度が上がっている。今年は大きく3つの変更点があった。それにも関わらず本選1日目に行なわれたファーストミッションでは、参加12チーム中6チームがミッションを完遂しファイナルへ進出した。

 コンテストは、「国際レスキュー工学研究所(現時点では架空)」内に設けられた実験フィールドで行なわれる。大地震発生直後の倒壊した市街地は、二次災害の恐れがあるため、レスキュー隊員は立ち入ることができない。上空を飛ぶヘリコプターから被災地の状況を把握し作戦会議を行なうと、遠隔操縦のロボットが被災地に取り残された要救助者(公式愛称:ダミヤン)をガレキの中から救出するため出動する……という設定だ。

 12分の競技時間内に、ガレキの中から要救助者を捜し出し、いかに早く優しく基地まで搬送するか、ロボットによるレスキュー技術を競う。


被災地を模した1/6フィールド。ファイナルは、ガレキが多くより難しい設定になった ロボットベース(1,200×1,200mm)。ロボットはここで待機して、ゲートから出場する 要求助者役の人形(通称:ダミヤン)。大サイズの身長は約29cmで、体重が約900g。小サイズの身長は約26cmで、体重が約700g。ボディ、首に圧力や衝撃、振動を検知するセンサが入っている

スピーカーによるプレゼンテーション。制限時間(2分)をオーバーすると減点となる 【動画】ヘリテレから送られてくる映像を見ながら、救出作戦を練る ホワイトボードに、被災状況やダミヤンの位置などをチェックしていく

ファイナルミッションでは、救助を待つダミヤンがエリア内全域にいる 救助を待つダミヤンの位置は、観客にだけ知らされる 【動画】レスキューロボット出動!!

 今大会で、変更になった競技ルールは3つある。

 1つ目は、ダミヤンが2体から3体に増えたことだ。これにより、単純に考えてもタスクが5割増になった。

 2つ目は、ヘリテレが遠隔操縦になったことだ。これまでは、メンバーの1人が「ヘリテレ」として、フィールド内をビデオ撮影していた。つまり目視で被害状況を確認して撮影ポイントを絞ることができたのだ。言うまでもないが、人の目は一瞬で広い範囲から多くの情報を取捨選択できる。それに対して視野が限られるカメラアイだけで、フィールドの状況を把握するのは、かなり難しい。

 3つ目は、「特殊ガレキ」と呼ばれる屋根ガレキ(重量3kg)の導入だ。フィールド内には複数の屋根があり、ヘリテレからはダミヤンが取り残されている屋根を特定できない。そのため、フィールドを走り回ってガレキ内をサーチするロボットが必要となる。

 大会委員会は、ヘリテレの遠隔操縦と屋根ガレキにより、参加チームが苦戦することを予想していたという。

 ところが、ヘリテレに関してはMS-R(金沢工業大学 夢考房)が「実際のレスキュー活動では、ヘリテレで要救助者の発見はできない。ヘリテレなしでダミヤンを救出する」と宣言し競技に参加した。

 難物と思われた屋根ガレキは、予選で多くのロボットがあっさりと撤去していた。そこで、本選では屋根の足にゴムをつけ床面の抵抗を強くした上、3方向をガレキで囲い中が見えないようにしたが、それでもクリアしていくチームが多かった。

 このように難易度が格段に上がっているにもかかわらず、ファーストミッションで6チーム、ファイナルミッションでも3チームが、全てのダミヤン救出に成功した。昨年度は、2体のダミヤンを救出したのが3チームずつだったこと考えると、各チームのレベルがいかに高いか分かるだろう。

 委員会が、技術のレベルアップだけではなく、レスキューに対する姿勢についても「挑戦状」と受け止めたのも納得できる。


ガレキの下敷きになり救助を待つダミヤン。ガレキを除く時に、ダミヤンに怪我をさせないように配慮が必要 ファイナルでは、屋根ガレキの3方向がガレキで囲われダミヤンの発見が難しくなっていた 【動画】ミッションの進捗状態は、モニタに表示される。ダミヤンが痛みを感じるとインジケータが赤く伸びる

 各チームの成績がアップした背景には、サンリツオートメイション株式会社が提供する遠隔操作IPシステム(同コンテストでは、これを「レスコンボード」と呼んでいる)の全面導入が影響している。

 以前は、1チームがロボットに搭載できるカメラは委員会が提供した3台に限られ、ロボットの操縦もラジコン模型用のものを使っていた。しかし昨年から、レスコンボードがテスト的に導入され、今大会からは全参加チームがレスコンボードを使用している。

 このレスコンボードにより、1台のロボットにカメラを複数搭載できるようになった。今までは、ロボットが被災地の状況をコントロールルームへ知らせるためには、ロボットが動き回り方向転換して情報収集する必要があった。それが複数のカメラからの映像を切り替えてモニタへ表示できるようになり、前後左右の状況を素早く把握できる。また、制御できるモータ数も増えたため、カメラを上下や旋回させるなどして、より広範囲の情報収集が可能となった。

 モニタの映像による遠隔操縦が難しいのは、人が視認するのにわずか0.1秒の遅延でも違和感を感じるためだ。同社の遠隔IPシステムは、カメラが捉えたキャプチャと画像圧縮を並行処理しながら、無線LAN経由で100ms以下の遅延時間を実現している。

 ロボットから送られてくる映像がクリアになったことと、ゲームパッドなど操作性のよいツールでリアルタイムな操縦ができるようになったことが、大会のレベルアップに貢献しているという。


競技内容は、ミッションポイント、フィジカルポイントおよびタイムで総合的に評価される ミッション終了後の活動報告 タワーカメラで高いところから情報収集し、救助活動中にロボットのサポートをする(近畿大学産業理工学部)

ファイナルミッション活動報告

 それでは、ファイナルに残ったロボット達の特徴と活躍を紹介しよう。

 「レスキューHOTくん(近畿大学産業理工学部)」は機能の異なる4台のロボットが協調して、レスキュー活動を行なった。中でも独創的な機構を持っていたのが、2号機「きよまさ」だった。ロボットの下部に透明なスウィーパー機構があり、ダミヤンを真上からすくい上げる。その後、車高を上げてロボットべースへ搬送する仕組みだ。

 1号機「きよたか」には、屋根ガレキを除去する専用アームが搭載されている。ウォームギアを使って減速比を高めて5kg以上あるガレキも持ち上げられるという。ガレキを必要以上に動かすと二次災害のおそれがあるため、ダミヤン救助用アームを差し入れる隙間を作り、素速くダミヤンを救助していた。


【動画】レスキューHOTくん(近畿大学産業理工学部)1号機「きよたか」。専用アームで屋根ガレキを持ち上げる 【動画】1号機「きよたか」。アームで救いあげたダミヤンを、本体から出したベッドに救出する 【動画】2号機「きよまさ」。独特のスウィーパー機構で、ダミヤンを優しく救助する

 「ミノーズ(岐阜高専)」は、走行時に壁やガレキを認識したり、ガレキ除去のためにロボットに距離センサを搭載した。また、ダミヤンを搬送中に発生する振動を検知するために、加速度センサを搭載している。これにより走行中に大きな振動を感知したら、オペレータが走行スピードを落とし、ダミヤンに負担の掛からないように配慮できる。

 ミノーズは、レスコンボードによるPC側オペレーションソフトウェアを、より直感的にオペレーション可能な画面に改造している。今後は、ロボットが感知したセンサの値をフィードバックしていきたいという。同チームは、レスコンボードの活用を評価され、サンリツオートメイション賞を受賞した。


ミノーズ(岐阜高専)2号機「Saver」。子機がダミヤンの脇を保持して、本体ベッドに運びあげる。搬送中は子機がダミヤンを固定する ノーマルのレスコンボード操作画面。通信状態やバッテリー残量、アナログ入力の値などが表示される ミノーズ(岐阜高専)のPC画面。モニタ左側の枝のようなものは、画面に映っているロボットのアームをモデル表示している

 「MS-R(金沢工業大学 夢考房)」は、前述のとおりヘリテレを使わずに競技にチャレンジした。まず、昇降機構と360度旋回で遠くまで見渡すことができる4号機「Hermes」が、フィールドの探索を行なった。「Hermes」が収集した情報を元に、1~3号機がそれぞれの特性に応じた現場に向かう。各ロボットがレスキュー活動を開始すると、「Hermes」は難易度の高い現場のサポートをする作戦だ。

 3号機「NEMO」には、屋根ガレキ専用アームが搭載されている。アーム先端のフックを下ろして、屋根ガレキの反対側に引っかけて持ち上げる仕組みだ。

 2号機「ATLANTIS」は、幅広い平らなアームでダミヤンを水平に救い出す。アームには弾力と強度があるメッシュ素材を張ってあり、ダミヤンに負担をかけずにそのまま搬送することができる。


【動画】MS-R(金沢工業大学 夢考房)3号機「NEMO」。アーム先端のフックをおろして屋根ガレキに引っかけて引き上げる方式 【動画】2号機「ATLANTIS」。左右に分かれる特殊アームでダミヤンを救助する 【動画】アームには弾力があり強度も高いメッシュ素材を貼っている

 「救命ゴリラ!(大阪電気通信大学 自由工房)」の2号機「べー子」には、ダミヤンの首を固定するギブスが搭載されている。昨年のギブスは上から固定する方式でオペレーションが難しかったため、今回はより確実に素早く装着可能なギブスを考案したという。

 救命ゴリラ!は、ファーストミッション、ファイナルミッションとも3体のロボットがそれぞれの性能を発揮してダミヤンの救助に成功した。全ロボットが活躍していることと、首ギブスが評価され消防庁長官賞を受賞した。


【動画】救命ゴリラ!(大阪電気通信大学 自由工房)1号機「べー太」。本来、脇の下に差し入れて保持するアームだが、反対側から上手にダミヤンを救助した 2号機「べー子」。ダミヤンを無事に救出し、ロボットベースへ向かう

 「O.U.S桃太郎(岡山理科大学知能機械工学科)」は、ロボットのアームに卒業研究で開発した「ゴム人工筋」を使った。通常はダミヤンに当たってもダメージを与えないくらいに弾力性があるが、空気圧によって収縮すると非常に強い剛性と把持力を発揮する。空気圧の大きさで、アームの湾曲角度を制御し、ガレキ撤去やダミヤンの救助に使い分けることが可能だ。

 予選の時は、2号機「Yellow猿」はアームの剛性が足りず不安定だったが、人工筋の配置を放射状から左右平行に変更し、小スペースで動作するように改良し、安定した性能を発揮した。

 また、屋根ガレキの撤去には、2つ折りにしたアームをガレキの下に差し込み空気圧の力で一瞬で跳ね飛ばす機構を新たに搭載した。

 同チームはロボットコンテストに初出場ながら、2日間とも全ダミヤンの救助に成功する素晴らしい成績を残した。ゴム人工筋を用いたアームの性能と技術力を評価され、1号機、2号機がベストロボット賞を受賞した。


【動画】O.U.S桃太郎(岡山理科大学知能機械工学科)1号機「Blue雉」。空気圧で動くゴム人工筋のアームをつかい、ダミヤンを優しく救助する 【動画】2号機「Yellow猿」。一瞬で屋根瓦礫をひっくり返す 【動画】3号機「Peach犬」。2号機からダミヤンを受け取り、素早くロボットベースへ向かう

 「六甲おろし(神戸大学)」は、3号機「こがらし」が大活躍で2日間で6体のダミヤンを全て救助している。

 3号機「こがらし」は、4輪操舵のタイヤを使い、その場旋回や左右への移動など小回りが効く。ダミヤンの脇にアームを差し込み、アームを回転させてダミヤンをベッドに乗せる動きも素早く確実だった。

 ただ、ファーストミッションでは、搬送中にダミヤンへ与える振動が大きく、ダミヤンの体力を表すフィジカルポイントが減点されたらしい。そこで、ファイナルミッションではダミヤンが横たわるベッドを補強し、振動を抑えるように改良した。これに対する審査員の評価は高く、また得点にも大きく影響した。


【動画】六甲おろし(神戸大学)3号機「こがらし」が、全ダミヤンの救出を行なった 【動画】2号機「そよかぜ」がガレキを除いたところに、3号機「こがらし」が駆けつけダミヤンを救出 六甲おろし(神戸大学)がレスキュー工学大賞を受賞した

「自分だったら……」とレスキュー活動について考える

 2日間に渡り全18競技を行なったうち、9競技で全ダミヤンを救助したというのは、これまでにない成果だった。

 7月に行なわれた予選の講評で、升谷氏が「レスコンの目標は、全チームが全てのダミヤンを救出することにあり、そのスピードと優しさを競うようになってほしい」とコメントしていたが、本選では一気にそのレベルに近づいた。

 ファイナル出場チーム全てが、ファーストミッションで全ダミヤンを救助したことは素晴らしい。しかしその結果、ファイナルで勝つために安全よりもスピードを重視する傾向になったことは否めないと思う。

 レスコンは、一度に6~7台のロボットが活動するため、会場で各ロボットの動きを詳細に観察することは難しい。筆者も記事を執筆するにあたり、改めて動画を見て気づいたのだが、予選の時よりも乱暴な救助活動が目立った。

 ダミヤンを救助する際に、アームでダミヤンとガレキを一緒に持ち上げていたり、アームでダミヤンを保持したまま、ガレキの上を乗り越えてロボットベースに搬送したりしている。

 搬送中にスピードを上げすぎたのか、ダミヤンがベッドからこぼれおちてイエローフラッグが出されたり、ダミヤンがベッドに乗り切らないまま引きずって搬送したりなど、「自分がダミヤンだったら、これは嫌だな」と思う場面が多かった。


【動画】ベッドに乗りきらないダミヤンを引きずって搬送 ガレキに乗り上げ、搬送中のダミヤンを落としてしまった 【動画】アームでダミヤンを保持したまま、ガレキを乗り越えて走行していく

 全参加チームがミッションをコンプリートした以上、次にスピードを競うのは当然だ。しかしレスコンで重視されるのは、「安全に素早く」であることは忘れてはならないと思う。

 その点で、六甲おろしチームが、ファイナルに挑むために3号機を改良し、搬送時のダミヤンへの負荷を軽減して成果を出したことは大きく評価された。今年のレスキュー工学大賞を、六甲おろしが受賞したのも成績だけではなくその姿勢によるものだろう。

 もちろん、ダミヤン搬送中のロボットが交差点で鉢合わせして道を譲りあったりするなど、レスキュー精神を発揮するシーンもいくつもあった。

 第一競技に出走した「ミノーズ(岐阜高専)」は、いくつかの不運に見舞われていた。まず、3分間の作戦会議でヘリテレが動かなかった。コードが柱に絡み可動しなくなっていたためだが、このトラブルで最後40秒ほどしかカメラで情報収集ができなかったはずだ。

 コンテストであることを考えれば、審判に申し出て作戦会議時間の延長を要求することもできるだろうに、ミノーズのメンバーは規定時間で会議を終了した。レスキュー現場では、どんなトラブルがあるかも分からない。その中で最善を尽くすという姿勢に見えた。

 もうひとつのトラブルは、競技中に相手チームが道路上にダミヤンを落としてしまったことだ。レスキュー現場に急行しようとしていたミノーズのロボットは、路上に放置されたダミヤンを発見し、迂回ルートを取らざるを得なかった。レスコンでは、各チームが救助するダミヤンを色分けして指定されているため、相手チームのダミヤンを救助することはできないのだ。

 だが、これは観客や特別審査員、そして当のダミヤンにとっても「どうして、助けてくれないの?」と感じる場面であった。

 この件に関しては、競技後のミーティングで「あの場合は、どうすればよかったのか?」と話題になった。その場で答えが出る問題ではなく、ミノーズチーム内でも意見があるようだった。

 今回の件に直面したオペレータは、メンバーの意見をまとめる余裕もなく一人で判断をしなくてはならなかった。自分の行動次第でチームが失格になるかもしれないとしたら、コンテストのルール遵守を優先するのも致し方ないだろう。

 レスコンのフィロソフィー(考え方)では、あえて細かいルールや制限は設けていない。それは、現実のレスキュー現場では、何が起こるか分からないからであり、その場その場で各自が最善な行動を考えることを求めているからだ。

 ミノーズだけでなく多くのチームで、あの場面ではどうすべきか? を話合ってほしいと思う。できれば、話し合いの経過をレスコンサイトで公開してほしい。

 参加者だけでなく、観客も一緒に、「この場合はどうしたらいいのか? 自分だったらどうするだろう?」と考える機会が与えられたことは、レスコンの存在意義そのものだからだ。


【動画】ダミヤンの搬送中に道を譲り合う 六甲おろし(神戸大学)3号機「こがらし」。ファイナルではダミヤンを寝かせるベッドを強化して挑んだ ロボット大賞を受賞した六甲おろし(神戸大学)のメンバー

URL
  レスキューロボットコンテスト
  http://www.rescue-robot-contest.org/index.html

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( 三月兎 )
2008/08/18 20:25

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