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日本科学未来館、国際宇宙ステーション・ISSの常設展示をリニューアル


ISSと実験棟の意義を再認識できる展示

 東京・江東区の日本科学未来館は7月30日、常設展「地球環境とフロンティア」エリアの国際宇宙ステーション(ISS)に関する展示をリニューアルすると発表した。リニューアルオープンは31日からだが、プレス内覧会が実施されたので、以下にその内容を報告する【写真1】【写真2】。


【写真1】東京・江東区にある日本科学未来館。子供たちの夏休みの自由研究にもなる面白い展示が盛りだくさん 【写真2】今回リニューアルされた国際宇宙ステーションに関する展示コーナー「こちら、国際宇宙ステーション(ISS)」

 今回のリニューアルでは、先ごろ日本人宇宙飛行士が建設にあたった実験棟「きぼう」に関する展示を新たに追加し、展示全体が宇宙空間を感じさせるデザインに仕上がっている。内覧会にあたり、総監修を務めた同館館長・毛利衛氏がリニューアルの目的について説明した【写真3】。毛利氏は「ISSの参加は、宇宙へ行って先端テクノロジーの開発やビジネスに役立てるだけが意義というわけではない。今回の展示は、私たちに今後降りかかるさまざまな問題を解決していくために、地球環境全体の関わりとしてとらえて意識してもらえるように工夫を凝らした。地球環境の問題は未来館から世界に発信できるメッセージでもある」と述べた。

 この展示エリアでは、球体ディスプレイ「Geo-Cosmos」が映し出す地球の姿も鑑賞することができる【写真4】【写真5】。人類にとって、ISSの意義を考えるために、研究者や宇宙飛行士、地上管制官など、ISSに関わる人々のメッセージも聞ける。


【写真3】日本未来館の毛利衛館長 【写真4】球体ディスプレイ「Geo-Cosmos」を背景にして説明する毛利館長。展示全体が宇宙空間を感じさせる構成になっている 【写真5】館内の吹き抜け空間からのぞく世界初の球体ディスプレイ「Geo-Cosmos」。日本科学未来館のシンボルだ

 また、エリア入口から続く導線には、円筒状のスクリーン映像装置を設置【写真6】。この装置は、地表から高度400kmの周回軌道に至るまでの環境を映像で表示することで、ISSと地球の位置関係や空間の広がりを理解できる仕組みになっている。さらに本装置の円筒に沿って複数の小型モニターが並べられ、地球と宇宙の環境の違いを映像で説明していた。たとえば、体をつくる元素、大気、重力、温度、宇宙線シールドなど、生命体が生きる条件などが示されている。ストーリー仕立ての構成になっているため分かりやすかった【写真7】【写真8】【写真9】。

 このほかにも、きぼうで搭載される物質科学や生命科学に関わるユニークな実験装置【写真10】【写真11】や、毛利館長が過去に実験したインジウムアンチモン単結晶の実験成果【写真12】、野口宇宙飛行士が宇宙船で使用した操作マニュアル【写真13】などの貴重な資料も展示されていた。これ以外にも、現在進行している宇宙実験の動向の最新情報も随時紹介していく予定があるという。


【写真6】円筒状のスクリーン映像装置。グリップを操作すると、地表から高度400kmの周回軌道に至るまでの環境を映像で表示 【写真7】ヒトを構成している元素を分類して展示。最小構成要素に分解して見ると不思議な気持ちに 【写真8】手元にある蛇口をひねると、小型モニターで映像による解説が始まる。インタラクティブな展示が面白い

【写真9】水槽めだかの展示も。1994年に向井宇宙飛行士が宇宙に運んで、地球外で初めて受精しためだかの子孫だ 【写真10】ユニークな実験装置その1。多数の応募の中から厳しい審査で選ばれた実験に対して、事前の予備準備も繰り返して実施される。上段は溶液の結晶化を観察できる装置。下段は温度・湿度・二酸化炭素濃度など条件を一定にして培養できる装置 【写真11】ユニークな実験装置その2。植物実験ユニット(PEU)。容器の中で育成される植物のデータや画像を装置に送る

【写真12】毛利館長が宇宙飛行士時代に「ふわっと'92」宇宙実験で成功したインジウムアンチモン単結晶育成の成果 【写真13】野口宇宙飛行士が宇宙船で使用した操作マニュアル。危険と隣あわせの宇宙空間では必須のものだ

日本の宇宙飛行士はラーメンがお好き!?

 このような新しい展示に加えて、既存展示の「宇宙居住棟」も更新され、ISSの居住空間についても考えられるようにしたという【写真14】。実験棟は地上と異なる環境下であり、無重力による長期滞在の影響なども考えなければならない。宇宙飛行士の日常生活の紹介はもちろんだが、生きる糧となる「宇宙日本食の実物展示」にも力を入れていた【写真15】【写真16】【写真17】。


【写真14】既存展示の「宇宙居住棟」の入口。棟の周りには、宇宙飛行士のサインもあった 【写真15】従来までシャワースペースがあった場所に、宇宙日本食の実物をたくさん展示している

【写真16】宇宙での生活に重要なトイレはそのまま展示されている。先ごろ実物のトイレが故障した際には、関係者が参考に見に来たという 【写真17】無重力下でも快適に過ごせる個人スペース。ちょっと狭いように感じるが、機能的な空間になっている

 宇宙日本食は、2007年に認証された日本製の食品類で、おにぎり、粉末緑茶、さばの味噌煮、野菜飲料ゼリー、ラーメン、羊羹(栗)、カレーなどがある。レトルトパックに入っているものは中身がよく分からなかったが、内覧会では日清食品の粋なはからいにより、宇宙ラーメン「スペース・ラム」(Space Ram)の試食会もあった【写真18】。これは、野口宇宙飛行士の宇宙食として開発されたもので、日清食品の故・安藤百福会長の強い後押しによって、同社研究所のプロジェクトチームが研究したものだという。

 味は「カップヌードル」をべースに、しょうゆ、みそ、カレー、とんこつ、シーフードなどを用意【写真19】【写真20】。記者が食したのはカレー味のものだ。ポテト、にんじん、ねぎなどの具も入っている【写真21】。無重力でもスープが空間に広がらないようにスープの粘度を高め、お湯が70℃でも湯戻しできるそうだ。また麺の大きさも宇宙飛行士の口の大きさにフィットする一口サイズになっており、一本一本の麺が飛び散らないように、湯戻し後でも麺の塊形状を保持する「形状記憶麺(!?)」だという。

 実際に試食した感想は、なかなか美味だった。地上で売られているものより、麺が太めで適度なコシも残っていた。味も濃くてイケてる感じがしたのだが、値段が少々高いようだ。残念ながら日清では宇宙ラーメンの地上販売の予定はないという。

 日本未来館では、これ以外にもアートを通して気候変動を知る企画展示やドームシアターでの惑星科学映像など、興味深い内容が目白押しだ。夏休み本番を迎え、涼しげな宇宙に想いをはせつつ、宇宙船地球号について再考してみるのもよいのではないだろうか。


【写真18】日清食品の宇宙ラーメン「スペース・ラム」(Space Ram)。カップに入っているのはカレー味。あんかけ風で無重力でもスープが飛び散らないように工夫されている 【写真19】宇宙ラーメン各種。しょうゆ、みそ、カレー、とんこつ、シーフードなどバリエーションがあって飽きない

【写真20】上の段は、向井宇宙飛行士のリクエストによる日本食。あんかけ五目うどん、山かけ天ぷらそば、いなり寿司、やきとり、お好み焼きなど豪華。下の段は、野口飛行士のリクエストで開発されたラーメン類だ 【写真21】記者が試食させてもらった宇宙ラーメンカレー味。湯戻し後でも麺の塊形状を保持する形状記憶麺(!?)で、コシはあって味も濃くて美味しい

URL
  日本科学未来館
  http://www.miraikan.jst.go.jp/
  イベント情報
  http://www.miraikan.jst.go.jp/info/2008/07251826.html


( 井上猛雄 )
2008/07/31 00:33

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