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実物大アーマード・トルーパー、「鉄の星フェスティバル」にたすき掛けで登場


でーんとそびえ立つ1/1AT「スコープドッグブルーティッシュカスタム」
 社団法人日本鉄鋼連盟が主催する、近代製鉄発祥150周年記念事業「鉄の星フェスティバル」が、26日、27日に開催された。会場は、六本木ヒルズアリーナと、そこに隣接しているテレビ朝日umu(イベントスペース)。アーティストの石井竜也氏(米米CLUB)による鉄鋼イメージソング「アイラの大地」のライブや、米村でんじろう先生による親子向け鉄のサイエンスショーなどが行なわれ、夏休みということもあって多くの人を集めた。

 また、数々の鉄鋼関連の展示物が飾られたが、その中で群を抜いて目を引いていたのが、SFロボットアニメ「装甲騎兵ボトムズ」に登場するアーマード・トルーパー(AT)の「スコープドッグブルーティッシュカスタム」(劇中で、ブルーティッシュドッグと呼ばれている機体がモデルだが、異なる部分もあるオリジナルAT)1/1スケール鉄鋼製手作りロボ(以下、1/1ブルーティッシュカスタム)。倉田光吾郎氏がたったひとりで約1年かけて製作し、2005年に完成させた作品である。総重量は約2tだそうだ。接写する機会を得られたので、その模様をお届けする。


広報大使の石井竜也氏 米村でんじろう先生 石井竜也氏がデザインしたシンボルキャラクター「AIRA(アイラ)」

 ファンの方も多いのではないかと思うが、簡単に装甲騎兵ボトムズという作品を説明する。1983年にテレビシリーズが4部構成全52話(約1年間)放映され、現在も新作OVAがリリースされているほどの人気を誇る、高橋良輔氏監督のSFロボットアニメ。サンライズの作品としては、ガンダムに次ぐ人気タイトルといっていいだろう。同作品の最大の特徴は、ほかに類を見ないほど硬派で、なおかつミリタリーテイストなこと。よって、近年では、同作品のことを、「ロボットアニメの極北」とか「リアルロボットアニメの最高峰」などと呼ぶことも多い。

 物語の舞台となるのは、ギルガメス連合とバララント同盟という二大陣営が100年に及ぶ恒星間戦争を続けているアストラギウスと呼ばれる銀河。長い戦争により、人心も街も何もかもが荒廃してしまっており、主人公のギルガメス軍所属のATパイロットであるキリコ・キュービィーもそのひとり。キリコは、吸血部隊と恐れられるほど一騎当千の強者ばかりを集めた特殊部隊“レッドショルダー”にかつては所属しており、ATに乗せたら右に出る者はいないというほどのウデを持つ。

 しかし、戦いに関すること以外は何も知らず、人付き合いさえままならないほど無口で取っつきにくい性格をした青年である。そんな彼が、世界を支配する巨大な存在による陰謀に巻き込まれ、不屈の闘志と常人を遙かに凌駕する戦闘力を武器に戦い抜き、己が何者なのかを探し求めると同時に、ひとりの女性を守り抜こうとするストイックな内容だ。

 「AT」は、100年戦争末期にギルガメス陣営で開発され、わずかな間に主力兵器となった全高4m程の人型ロボットである。リアルロボット系といわれるアニメでも、普通は主人公が乗る機体といえば、ガンダムに代表されるように高性能で1機しかない機体である場合が多い。しかし、この作品で登場するATは、ほんのわずかなカスタム型を除いて量産型ばかりという点が大きな特徴である。

 キリコが軍人時代(第1話でギルガメス軍を脱走してしまう)から愛用していたミドル級AT「スコープドッグ」も、バランスの取れた傑作機とはいえ、量産機でしかなく、1話から大量に登場する。しかも、1話の早い段階でキリコ搭乗機は破壊されてしまうし、そのあと何度も乗り捨てられ、4部それぞれみんな主に乗り込む機体が異なるという具合だ。


 ちなみに4mほどの全高は、パイロットが搭乗するタイプの人型戦闘兵器の主人公メカとしてはかなり小型である。ミドル級ATのスコープドッグは3.804mで、ヘビー級になると4.5mぐらいのものもあるが、いずれにしろ小型だ。

 同時期の他作品のロボットたちと比較すると顕著で、まずガンダム(RX-78-2)は有名だがジャスト18m。高橋監督の前作「太陽の牙ダグラム」の主人公メカ「ダグラム」は9.63mだ。公式設定資料が手元にないために正確な数値は確認できないのだが、「超時空要塞マクロス」の「バルキリーVF-1」が10数m(最新作「マクロスF(フロンティア)」の「バルキリーVF-25」は15.59m)で、富野由悠季監督の異世界ファンタジー系ロボットアニメ「聖戦士ダンバイン」の「ダンバイン」が7m弱。いかにATの4m前後が小型であるかがわかる。

 おそらく、パイロットが乗り込むタイプの人型戦闘兵器の主人公メカとしては、スコープドッグは80年代に大ヒットしたSFロボットアニメのOVA「メガゾーン23」の主人公メカでバイクと人型の2段階に変形する「ガーランド」と並んで、最小の部類に入るだろう(ガーランドに関しても公式設定資料が手元にないので正確には不明だが、4m弱とされている)。これより小型となると、主人公メカではないが、キリコが第4部クエント編で敵から奪って一時的に乗るライト級AT「ツヴァーク」(2.912m)がある。それよりさらに下となると、おそらく搭乗型ではなく、「着込む」パワードスーツ系になってしまうはずだ。


少年の身長は170cm半ば。ATの大きさが実感してもらえるだろうか テレビ朝日社屋前にそびえ立つ。テレビシリーズはライバル局のテレビ東京系列で放映された 下からあおる形で写すと、かなりの角度になる

 また、ATは顔に表情がない点も大きな特徴。いわゆるスーパーロボットのように人の顔を模しておらず、基本的に頭部には標準ズーム、広角、精密照準の3種類のカメラが配置されているだけ(機体によって、カメラがふたつだったり、4つだったりと異なる)。スコープドッグの場合は、その3種類のカメラが使用する際に回転して切り替わる仕組みのターレットレンズ機構になっており、それにシビれたファンも多い。また、全身の装甲表面に、リベットが打たれたりボルトがはめ込まれていたりするようなデザインが施され、機体各所にロールバー(手すり)やフックなどが設けられていたりする点も、ミリタリーっぽさを醸し出している。

 なお、コックピットは、胸の部分にあり、コックピットに着座すると、パイロットの顔がおおよそターレットレンズの背後に来る形だ。機体各所にあるロールバーは、パイロットがコックピットまでよじ登るためのものである。


頭部アップ。表情がないのがATの個性のひとつ 一番長い物が標準ズームで、その次が広角、一番小さい物が精密照準だ 機体各部にボルトがある。また、コックピットに乗り込むための手すりとなるロールバーも

ヒザのロールバーは右足のみにある 肩のフック。劇中では、ヘリに牽下される際などに使用した

 そして特徴といえば、足裏やかかとなど(機体によって若干異なる)に備えたグライディングホイールを使って高速走行できる「ローラーダッシュ」機構もそのひとつだ。両のくるぶし外側にターンピックという地面に突き刺して、強引に方向転換するための仕組みがあるのだが、その部分はもちろん再現されている。ちなみにこのローラーダッシュは、モビルスーツ・ドムのホバー走行と並んで、当時のロボットアニメ好きの男の子たちのハートをガッチリと掴みにしたガジェットで、記者もご多分に漏れず、中学生時代はボトムズのバトリング(AT同士による戦闘をダシにしたギャンブル)ごっこをしたものである(笑)。


ターンピック周辺のデザインも見事に再現されている ターンピックの先端。ターンする際に地面に突き刺してそこを軸に回転する

足部を正面から くるぶし内側。鉄の棒は自重で脚部が外側に広がらないようにするための物

 今回展示されていた1/1ブルーティッシュカスタムは、冒頭で述べたとおり、劇中に登場するブルーティッシュドッグをモデルにしたオリジナル機体。モデルとなったブルーティッシュドッグは、キリコが追い求めたパーフェクトソルジャーの女性フィアナが、第1部ウド編で乗っていたATだ(第2部クメン編にも少しだけ出てきて、失われてしまう)。

 スコープドッグをベースに改造された機体で、全高も同じ3.804m。パーフェクトソルジャーとして筋力や反射神経が大幅にアップしているフィアナの能力に合わせ、常人では扱えない高度なチューニングが施されているのが特徴である。

 そのほか、攻撃力を高めるために右腕の前腕が格闘用クロー付きのガトリングガンに換装されている点も改良部分。ちなみにフィアナが乗ったブルーティッシュドッグがどれだけ戦闘力を有するかというと、まさに鬼に金棒状態である。まだお互いの事情を知らずにふたりが対決した際、キリコのスコープドッグを圧倒的な攻撃力でズタボロにしてしまったほどだ。

 ブルーティッシュドッグと1/1ブルーティッシュカスタムの相違点は、まずクロー付きガトリングガンの位置。1/1ブルーティッシュカスタムでは、ブルーティッシュドッグとは反対の左腕に装備されている。また、機動力アップのためにかかと部分に増設された大型グライディングホイール、背中のPRSPパック、手の甲の装甲板などが1/1ブルーティッシュカスタムにはない。そのほかに目立つ差異はないようである。


1/1ブルーティッシュカスタムは左腕が格闘用クロー付きガトリングガン 格闘用クロー付きガトリングガンを横方向から かかとに増設された大型グライディングホイールはなし

背部は何も背負っていない 手の甲には、装甲板がもう1枚上側にあるがそれもない 手の甲を別角度から

 さて、1/1ブルーティッシュカスタムを見た感想だが、その道四半世紀に及ぶ年季の入ったオヤジファンである記者の目から見ても、文句なし! なんといっても、その存在感に圧倒されてしまうし、装甲の間の関節部分やくるぶしのターンピック機構など、細部まで正確に作り込まれていて、どこをどう見てもATである。今すぐ動いてもおかしくなさそうなほど、スジのピンと通った立派な立ち姿で、まさにファンタスティック! のひと言。そして、2次元のものを3次元化しているにも関わらず、矛盾が感じられないというところもとても感心させられてしまう。こんな巨大な2tもあるという造形物を、とてもひとりのクリエイターが生み出したとは思えない完成度の高さである。本当にどこから見ても文句がない状態なので、ぜひ写真と動画でその姿を楽しんでいただきたいし、機会があったらぜひ自分の目で確かめてもらいたい。


感動したところその1。ヒザ関節の内側 感動したところその2。ふくらはぎに左右3本ずつあるスリット 感動したところその3。アームパンチ(カートリッジ式火薬で前腕部を打突させる)の薬莢排出口

感動したところその4。切れ味鋭そうなクロー 感動したところその5。肩当ての丸み

感動したところその6。腕の関節 【動画】全身を舐めるように撮ってみた

 なお、その製作過程などを見たい人は、倉田氏のブログ「なんでも作るよ」をぜひ見てみよう。今回のイベントで設置された様子など、貴重な写真も見られる内容だ。

(C)サンライズ


URL
  鉄の星フェスティバル
  http://www.steel150.jp/event.html
  装甲騎兵ボトムズ公式サイト
  http://www.votoms.net/
  なんでも作るよ(倉田光吾郎氏ブログ)
  http://monkeyfarm.cocolog-nifty.com/nandemo/


( デイビー日高 )
2008/07/29 00:47

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