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NEDO、画像モーメントセンサやVR活用リハビリシステムなど若手研究グラント成果を発表


没入歩行感覚呈示装置を用いたリハビリテーションシステム。詳細は後述
 7月22日、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)は、平成12年度に開始した産業技術研究助成事業(若手研究グラント、年間予算規模約50億円)でこれまで助成を行なった研究のうち、5件の成果発表を行なった。

 若手研究グラントは平成12年度に競争的研究資金を獲得することが相対的に少ない若手研究者を対象とした競争的研究資金制度。産業技術シーズの発掘・育成と産業技術研究人材の育成が目的。原則40歳未満で大学、独立行政法人、公設の研究機関などに在籍している人が対象。これまでの応募総数は7,399件、採択件数は983件で、平均倍率は7.5倍。

 当日、プレスリリースとして発表された成果は下記の5件。いずれも平成17年度第1回に採択されたもの。

(1)「次世代超高密度垂直磁気記録ハードディスクドライブのためのパターンドマスター磁気転写技術開発」
・研究代表者:茨城大学工学部メディア通信工学科 准教授 小峰 啓史
・垂直磁気記録ハードディスク装置出荷にかかる時間を「パターンドマスター磁気転写法」で約1時間→数秒に短縮。

(2)「画像モーメントセンサの開発」
・研究代表者:東京大学情報理工学系研究科 講師 小室 孝
・機械制御向けインテリジェント画像センサ「画像モーメントセンサ」の開発。

(3)「没入歩行感覚呈示装置を用いたリハビリテーションシステム」
・研究代表者:筑波大学大学院システム情報工学研究科 准教授 矢野 博明
・健康な人の歩行を体験しながら歩行リハビリテーション。球面ディスプレイを組み合わせたシステムにより歩行機能改善効果を向上。

(4)「低コスト製造法による高効率純緑色発光ダイオードの開発」
・研究代表者:佐賀大学シンクロトロン光応用研究センター 助教 田中 徹
・Ga、In等、レアメタルを含まない新材料テルル化亜鉛(ZnTe)をベースとした低コスト製造法による高効率純緑色発光ダイオードの開発。

(5)「ITスマートターミナルを用いた自動構造ヘルスモニタリングシステム」
・研究代表者:群馬大学大学院工学研究科 准教授 岩崎 篤
・建築物や自動車の車軸等、構造物の老朽化の自動診断システムの開発。熟練した作業員や事前の破壊試験等を必要としない統計的無学習損傷診断法。

 このうち、直接ロボットに関係するのは「画像モーメントセンサ」と「歩行リハビリテーション」システムの2つ。22日の発表ではこのほか垂直磁気記録ハードディスクの出荷にかかる時間を「パターンドマスター磁気転写技術」で短縮したという発表も行なわれた。合わせてレポートする。


画像モーメントセンサ

東京大学情報理工学系研究科システム情報学専攻 小室孝講師
 東京大学情報理工学系研究科システム情報学専攻の小室孝講師による画像モーメントセンサは、撮像を行なうイメージセンサと画像処理回路をワンチップ化したもので、産業用ロボットのリアルタイム制御や工作機械の位置決め、三次元計測などに威力を発揮するという。

 ビジョンセンサは、ロボットのほか、車、電子機器、玩具などにニーズがある。だが画像は比較的処理が遅く、制御処理においてはボトルネックになっていた。それに対する1つの回答が、センサと処理回路を1つにしたビジョンチップだ。

 今回開発された新型の画像モーメントセンサは、画像の幾何学的統計量である画像モーメントの抽出に特化したセンサ。毎秒1,000枚の画像を撮影して処理を行なう。画像内の対象の大きさ、位置、形状、重心、傾きなどの情報を取得することができる。イメージセンサーの画素ごとに光検出器、二値化、列選択機、加算器と処理回路がつけられており、画素全体で処理を並列に実行できるため高速処理が可能になっている。

 いまのロボットは一度画像処理をした後で動いているものが多い。それらのロボットはアームやボディを動かしているときには実際には画像での処理を行なっていない。だが、リアルタイムに見ながら動くときにはこのくらいの速度が必要になるという。

 今回、従来型ビジョンチップの解像度が48×32画素だったものを128×128画素と大きくした一方で、4つの検出器が処理回路を共有することで、従来の13%に回路面積を縮小した。また、感度を向上させて照明を不要にした。一般の画像処理装置とポジションセンサ(PSD)の中間的なものを目指しているという。

 ロボット以外に侵入検査などの警備用途のほか、将来的には携帯電話などに付けて指の位置を認識する入力デバイスとするといったこともできるのではいかという。現在、FAや計測関連企業からの引き合いがあるそうだ。また量産化すればコストを1,000円程度に押し下げることもできるが、そのためには民生用のデバイスなど、数がたくさん出るようなキラーアプリが必要となる。そのため、アプリケーションの開発も含め、センサの実用化に向けての共同開発パートナーを募集したいという。


画像モーメント(傾き)の抽出に特化したセンサ アーキテクチャ チップ。128×128画素が3.28mm×3.28mmのなかに

リアルタイムの画像処理ができるシステムボードを作成 従来のセンサとの比較 想定用途

没入歩行感覚呈示装置を用いたリハビリテーションシステム

筑波大学大学院システム情報工学研究科知能機能システム専攻 准教授 矢野博明氏
 筑波大学大学院システム情報工学研究科知能機能システム専攻の矢野博明准教授らによる没入型歩行装置は、半球状の没入型VRドームと歩行感覚を呈示する歩行補助リハビリ機器を組み合わせたシステムである。

 脳卒中等の救命率が上昇するいっぽうで、現場では入院期間の短縮、理学療法士の慢性的な不足がある。結果として患者は、最低限の機能回復で退院せざるを得ない。本来ならもっと上の回復を目指せる人が、人手不足で十分な訓練ができないという。

 そこでロボットを使ってなんとかしようという試みがある。トレッドミルや、スイスのHocoma社が開発して日本では国立身体障害者リハビリテーションセンターが導入しているロボット型歩行訓練機「Lokomat」などだ。しかしながら身体拘束が必ずしも適切であるとは言えず、また高価であること、単調であるため長続きしないといった課題があるという。そこで今回、歩行感覚呈示装置と球面没入装置を組み合わせたシステムが開発された。

 最大歩幅80cmで健常者と同じ1m/secの歩行速度を呈示できるシステムで、体重80kgまでの人なら利用できる。「1m/secで歩けるのは世界初ではないか」という。健常者の足の動きを再生することで、上に乗っている人は健常者の動きを体験できる。固定している部分は足だけで腰はフリーなので、腰の回旋は自由にできる。モーターは家庭用の100V電源で動くものが使われており、それで十分な力を出せるよう「スライダークランク機構」によって前後の動きを作り、上下は直動アクチュエーターを用いている。

 事前に測定して取り込んでおいた健常者の動きを再現することで、ひたすら20分から30分体験してもらうことでリハビリを行なうものだ。実際に使ってもらった患者さんからは「昔こんなふうに歩いていたんだと思い出した」と言われたという。

 大きな特徴は、視野をほとんど覆う実写映像呈示装置として球面型没入ディスプレイを使っている点だ。視野角は水平270度、垂直60度以上。画像は台車を使って連続的に取り込み、それを歩行タイミングに合わせて提示する。3台のプロジェクターと凸面ミラーが使われており、レンズを使って直接半球に投影するタイプよりも安価にできるという。

 実際に患者さんに訓練してもらった結果、それまでの訓練では歩行速度がフラットな状況が続いていた人が、より速く、自然に歩けるようになった。また光トポグラフィーを使って脳の活動を見ることでトレッドミルでの歩行訓練と比較すると、こちらのシステムのほうが歩行に関係する一次運動野が特に活動しており、狙ったところの活動が高まっていることが分かった。また、単なるフラットディスプレイに比べて、周辺視野の映像があるかどうかでリラックス効果が高いことが分かったという。現在は実際に製造するメーカーを探している段階とのことだ。


没入歩行感覚呈示装置を用いたリハビリテーションシステム 3台のプロジェクターと凸面鏡 前後の動きにはスライダークランク機構を採用

【動画】デモの様子 【動画】真後ろから

【動画】歩幅はけっこう大きい 【動画】提示される画像の例

歩行感覚提示装置と球面没入ディスプレイを組み合わせたシステム 歩行感覚提示装置にはスライダークランク機構を採用 3カ月間10m歩行による歩行速度訓練の結果。Bがこのシステムを使った訓練期間

トレッドミルに比べてこのシステムでは一次運動野をピンポイントで活性化させる 既存システムとの比較

超高密度垂直磁気記録ハードディスクドライブのためのパターンドマスター磁気転写技術

茨城大学工学部メディア通信工学科准教授 小峰啓史氏
 茨城大学工学部メディア通信工学科准教授の小峰啓史氏からは、垂直磁気記録ハードディスク装置出荷にかかる時間を「パターンドマスター磁気転写法」で約1時間→数秒と桁違いに短縮できる技術の発表があった。

 ハードディスクは情報を記録する装置として既に一般的になっている。ハードディスクは、スピンドルによってプラッタと呼ばれる円盤が回転しており、その上を移動するアーム先端のヘッドで情報を読み書きする仕組みだ。記録には垂直磁気記録方式が使われている。ヘッドがプラッタのトラックに精度よくアクセスするためにはヘッドの位置情報が重要になる。それを「サーボ信号」と呼ぶ。サーボ信号はハードディスクが工場から出荷される前に書き込まれている。

 サーボ信号はユーザーデータよりも精度良く書き込まれていなければならない。だが、大容量化にしたがって、サーボ信号も膨大なものになり、そのために要する書き込み時間も長くなっている。これがハードディスク製造メーカーでは問題視されていた。現在の方法ではヘッドを動かしてサーボ信号を記録しているため、おおよそ1時間かかっている(300Gbit/平方インチの場合)。

 今回、小峰氏らが提案した新首相は、シリコンにニッケルメッキしたものに鉄とコバルトの合金を磁性媒体としてくっつけたものを「マスター媒体」として使い、これを押し付けて磁化させることで、サーボ信号を一括して書き込む。マスター媒体を押し付けるだけなので、その時間と書き込み時間を含めて数秒ですむようになるという。

 サーボ信号の品質においても、記録密度がより高い1Tbit/平方インチの次世代ハードディスクでも対応できることを、計算機シミュレーションによって確認。さらに実際に動くかどうかについては富士フイルム株式会社の協力でディスクを作成した。これによって従来のサーボトラックライタと同等以上の性能が出ることが確認でき、現在、実用化を複数メーカーと検討中だという。


ハードディスクの仕組み サーボ信号 パターンドマスター磁気転写

従来技術との比較 1Tbit/平方インチにも対応可能 実際に複数のドライブメーカが投入検討中とのこと

URL
  NEDO技術開発機構
  http://www.nedo.go.jp/
  ニュースリリース
  http://www.nedo.go.jp/informations/press/kaiken/200722/200722.html

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( 森山和道 )
2008/07/23 00:57

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